SUPER FORMULA 2022 Round6
スーパーフォーミュラ第6戦富士、笹原右京が自身初勝利!
7月17日、静岡・富士スピードウェイにおいて開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦決勝。前日から一転してドライコンディションでの走行となった戦いは、波乱含みの展開となった。その中から勝利を掴み取ったのは予選13番手からスタートを切ったNo.15 笹原右京(TEAM MUGEN)だった。大逆転の末に手にした自身初優勝となる。
早朝の富士スピードウェイ周辺は、まだ雨の名残りがあったものの、午前9時からの30分間のフリー走行では開始直後はウェットパッチが残る路面状況となり、レインタイヤ、スリックタイヤと各車が装着するタイヤもそれぞれだったが、すぐに路面も回復。最後は全車がスリックでのセットアップを確認する形となった。
午後に入ると気温も上昇。午後2時30分、フォーメーションラップが始まる頃には気温27度、路面温度は37度へと上昇。レースウィーク中で最も高い数値を刻んだ。全21台がグリッドに向かう中、予選9番手のNo.50 松下信治(B-Max Racing Team)が最終コーナー先からストレートに入ってすぐのアウト側でまさかのハーフスピン。タイヤを温めてようとしてのミスだったようで、コースサイドにクルマを止めてしまう。これを受けてエキストラフォーメーションラップが行われ、レースは1周減算の40周で競うことになった。なお、牽引されてピットに戻る中、エンジンがかかった松下はピットロード出口からのスタートを切ったもののオフィシャルによる復帰となったため、出走の権利が与えられず、結果としてDNS(Do Not Start)扱いになった。
レースはポールポジションスタートのNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)がホールショットを奪ってポジションキープに成功。逆に2番手のNo.38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)は3番手のNo.1 野尻智紀(TEAM MUGEN)の先行を許してしまった。一方、その後方では1コーナーを過ぎて3台が絡む接触アクシデントが発生。そこで11番手から鮮やかなスタートダッシュでポジションを上げていたNo.20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)、さらにはNo.55 三宅淳詞(TEAM GOH)が車両にダメージを負い、戦線離脱する。さらには3周目の2コーナーにおいて、7位走行中のNo.4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)にNo.64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)がラインを交錯する際に接触。スピードに乗った状態で衝突されたフェネストラズのクルマはスピンしながらガードレールに激突したため、クルマが大破する大きなアクシデントになった。これによりセーフティカーが導入され、車両回収が終わる9周終了時までレースがコントロールされた。
レース再開後の10周目を終えると、2番手の野尻のほか2名がルーティンのピットイン。さらに11周終わりで2台、12周を終えると3台がピットに戻る中、トップを快走する関口はピット前にタイヤを用意するも、そのタイミングを遅らせる判断を下し、”見えない敵”となった野尻とのタイムギャップ構築に努めた。そんな中、スタート直後の接触の一因を作ったとしてNo.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)に、またフェネストラズ選手とのアクシデントに対して山本に、それぞれドライブスルーペナルティーが出される。2台はすぐさまペナルティを消化したが、このとき、野尻の前で山本がコース復帰したために野尻は思いのほか自身のペースを上げられなくなり、逆に関口はいっそうのマージンを作ることに成功した。
レースは25周を終えて、関口が満を持してピットイン。待ち構えたスタッフは5.3秒という驚くほどの速さで作業を終えて関口をコースへと送り出す。これで野尻を押さえてトップキープのままレースに復帰できた関口だったが、あろうことか、アウトラップのダンロップコーナーで挙動が乱れてスピン。なんと左リヤタイヤが外れているというまさかの状況に陥った。関口にとっては思わぬアクシデントとなったが、これを受けて、レースは2度目のセーフティカーが導入されることになる。
一方、ピットでは関口のピットインを受けて翌周に2番手を走っていた坪井がピットイン。コース復帰直前にセーフティカー導入を知らせるボードを目にしたことで、なぜか坪井はペースを落として走行。本来であればセーフティカーに追いつくまでプッシュできるのだが、予想外の走りをしたことで、坪井の背後にいた上位陣の車両はポジションアップの好機を逃すことになってしまった。逆に、最後までピットインを遅らせた笹原、No.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、そしてNo.53 佐藤 蓮(TEAM GOH)の3台は、ポジションアップに成功。中でも笹原は坪井がメインストレートに戻る直前にコース復帰を果たしてトップを奪取。そしてレースは30周終了をもって再開を迎え、また笹原は見事なリスタートを決めて坪井を一気に引き離すことに成功した。
思わぬ形でトップに立った笹原だったが、その後も安定した速さで周回を重ねるパフォーマンスを披露。一方、坪井は背後に迫る野尻とのバトルとなって苦戦したが、その野尻もまた、フレッシュタイヤで猛追する4番手の宮田のプッシュに遭い、防戦になる。レースは最後の最後まで僅差によるポジション争いを繰り広げたものの、順位変動までには至らず。結果、笹原がフル参戦を果たした今シーズンに念願の勝利を果たすことになり、復調の走りとなった坪井が2位に。野尻は3位に続いた。ポイントランキング争いに目をやると、ランキング2位の平川、3位のフェネストラズが共にリタイヤで終わったことで、野尻のリードがさらに広がる結果となっている。次大会のもてぎは、今シーズン2度目の2レース制で開催されることから、短期決戦をどのドライバーが制するのか。シーズン終盤戦はますますチーム力が問われる戦いになりそうだ。
【第6戦富士スピードウェイ・決勝結果 トップ3】
1.No.15 笹原右京(TEAM MUGEN)1:10’52.708 40Laps
2.No.38 坪井 翔(P.MU/CERUMO・INGING)+2.098
3.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)+7.549
スーパーフォーミュラ第6戦富士、雨の予選で関口雄飛が今季初ポールを掴む!
7月16日、静岡・富士スピードウェイにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦の予選が行われた。現地は午後に入って雨脚が強くなり、荒れた天候の中で実施されたセッションでは、コースコンディションやアタックのタイミングを味方につけたNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が最速タイムをマーク。自身通算6回目、今シーズン初となるポールポジションを手にしている。
今年は例年にないほどの早いタイミングで梅雨明けが発表された日本列島。しかしその後は不安定な天気が続き、シリーズ後半戦の初戦を迎えた富士も朝から雨模様に見舞われた。午前10時15分からのフリー走行は、開始直後こそ雨がほとんど降っていない状態からスタート。それでも各車ウェットタイヤを装着し、走行を開始した。その後はコースの一部が乾き始め、路面の濡れている場所を探すようにして走る状況だったが、開始から30分もするとあらためて雨が降りはじめ、不安定な足元にスピンする車両が出始める。それから程なくして横殴りの雨へと急変。大半の車両が走行を見送り、ピットで待機する時間が続いた。結果、午前11時10分には赤旗中断となって状況を見守る状態だったが、その25分後には、天候改善の見込みがないという判断から、赤旗を持ってセッション終了というアナウンスが大会競技団から出された。
予選はスケジュールどおり、午後3時10分にスタート。だが、従来のノックアウト方式ではなく、30分間のタイムトライアル方式にて実施することになる。これにより、全21台がコース上で一斉にアタックを行い、そのラップタイムをもって決勝グリッドを決定することに。また、セッションが始まると我先にとコースへと向かうクルマが続き、アタックのタイミングを合わせるのが難しいコンディションになる。加えて、開始7分後にはNo. 7 小林可夢偉(KCMG)がGRスープラコーナーで単独スピン。コース復帰が叶わず、赤旗中断を招いてしまう。およそ10分後にセッションは再開するも、雨はどんどん酷くなる一方。結果として序盤にアタックを決めたドライバーたちが上位に名を刻むことになったようだ。残り7分を切った時点で、13コーナーを走行中だったNo.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が急にスローダウン。これで2度目の赤旗となり、再開後は残り6分37秒での仕切り直しとなったが、各車がアタックを試みても序盤の自己ベストからは程遠く、このタイミングでのポジションアップは叶わない。さらに残り1分45秒の時点でNo.20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)がダンロップコーナーでオーバーラン。競技団はこの状況でのセッション継続は難しいという判断を下し、結果、3度目の赤旗が提示され、そのまま予選を終えることが決まった。
落ち着かない状況の中、トップタイムをマークしたのが関口。最初の1、2周が勝負になると読み、積極的にアタックを行うと1分35秒951をマーク。2番手に続いたNo.38 坪井 翔(P.MU/CERUMO・INGING)も、最初のアタックで好タイムをマーク。その後、ギアトラブルが発生したと言い、まさに”首の皮一枚”のタイミングでもう一つのフロントロウを手にすることとなった。3番手には、目下ポイントランキングトップのNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が続いた。アタック開始早々、別の1台と並走することになりタイムロスしたと予選後に自身のセッションを振り返ったが、それでも3番手につけ、決勝に向けて悪くない流れを構築している。
サーキット周辺の天候は翌日には回復すると言われており、41周で争う決勝は、また異なるシナリオで繰り広げられる可能性もありそうだ。
【第6戦富士スピードウェイ・予選結果 トップ3】
1.No.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)1’35.951
2.No.38 坪井 翔(P.MU/CERUMO・INGING)1’36.858
3.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’37.240
SUPER FORMULA第6戦富士 プレビュー
早くもシーズン後半戦。新たな勝者誕生は?
シーズン前半の最後となったスポーツランドSUGOでの戦いからおよそ1ヶ月。早くもシーズン後半戦へと突入する全日本スーパーフォーミュラ選手権。その舞台となるのは、静岡・富士スピードウェイとなる。今季2大会目を迎える富士では、新たなウィナーが誕生するのか、それともさらに勝ち星を計上するドライバーが現れるのか。夏本番の一戦に期待が高まる。
■予選のアタック合戦から注目
今シーズンのスーパーフォーミュラのポイントとして挙げられるのは、ディフェンディングチャンピオンNo.1 野尻智紀(TEAM MUGEN)の予選アタック。昨シーズンはタイトル獲得のために何が必要か、を体現するかのようなレース戦略、そして自らの研鑽に勤しみ、強さをアピールするパフォーマンスを披露した。そしてチャンピオンとして臨む今シーズンは、まず予選で圧巻の速さをライバル勢に見せつけている。前半戦の5戦を終えた時点で野尻が手にしたポールポジションは4回。第2戦から続くポールポジション獲得により、シリーズポイントへは12点を計上。スーパーフォーミュラでは決勝で3位に入賞すると12点が与えられるため、まるで野尻だけが1戦多くレースをして表彰台に立ったかのような感じとなる。とはいえ、その野尻とて自身が望むパーフェクトウィン_つまりポール・トゥ・ウィンは第2戦の一度だけ。ポイントランカーとしては堂々のトップ独走中という立場ではあるが、後半戦のスタートにおいてまたポール・トゥ・ウィンを狙ってくるのは言うまでもないだろう。理想的な予選でのアタックが行える分、今後は決勝での圧倒的な強さを追求してくるはずだ。
一方で予選を巡る攻防戦を見た場合、野尻を除き、トップ3に名を刻むドライバーにはばらつきがある。この背景には一体何があるのか。まず今シーズンからのフォーマットの変更に着目したい。いわゆる”ノックアウト”方式で進む予選だが、昨シーズンまではそのステップが3段階あり、ドライバーはQ1、Q2と”ふるい”にかけられ、最終的に8名のドライバーがQ3でタイムを競った。だが、今シーズンはQ3を撤廃し、Q2でポールポジションを競うことに。Q1を2つのグループに分け、各グループから上位6名がQ2に駒を進める。つまり、Q2には計12名のドライバーが出走するため、前年のQ3よりも4名多い状態でアタックすることが求められる。わずかなコンディションの変化にもシビアに対応しなければならないフォーミュラでのアタックにつき、ドライバーとしてはより精度の高いクルマを手にすることが”マストアイテム”になる。つまり、臨機応変にその要望に応えられるかは、チーム力にもかかっているというわけだ。もちろん、最終的に好タイムを刻むのはドライバーの腕次第。だが、そのベースとなるクルマを準備し、的確なタイミングでコースへと送り出すのはチームとしての仕事。この両方がしっかりと噛み合ってこそ手にできるのがポールポジションであるため、現在、予選では最強の野尻を越えるドライバーが出てくるかどうか、その点に注目して予選を堪能してもらいたい。加えて、前半戦ではQ1突破に苦戦していたドライバーたちがシーズン2度目の富士に向けてどのような攻略を見せるのか、その”進化”も気になるところだ。
■新たなウィナーの誕生は?
ポイントランキングでダントツの独走態勢を築く野尻だが、一方でレースでの優勝は第2戦のみ。表彰台を逃したのは第4戦オートポリスだけということを考えると、レースでの強さにも安定感があるといえるが、ディフェンディングチャンピオンとしては、やはり”勝ってなんぼ”の気持ちが大きいはず。ましてや、これまでの5戦中4度のポールスタートを切っているからこそ、余計その思いはあるだろう。そこは、野尻の快進撃を支えるチームのバックアップもさることながら、各陣営も”ストップ・ザ・野尻”とばかりの包囲網で善戦しているだけに、シーズン後半戦も新たなウィナー誕生の可能性も大いにあるのではないか。スタートダッシュと勝負強さが印象的なNo.20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)はじめ、着実にステップアップしているNo.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)や、アグレッシブな速さが結果に繋がり始めたNo. 4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)といった実力派若手ドライバーの台頭、そして勝負師の強みを持つNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)、No.50 松下信治(B-MAX Racing Team)らの躍進にも期待がかかる。いずれにせよ、真夏のタブな戦いをクレバーに勝ち上がるために、全ドライバーが万全の体制で臨む今大会からは目が離せない。
■主なタイムスケジュール
・7月16日(土)
10:15 – 11:45 フリー走行
13:00 – 13:40 ピットウォーク
15:10 – 公式予選(ノックアウト方式)
15:10 – 15:20 Q1(A組→上位6台がQ2へ)
15:25 – 15:35 Q1(B組→上位6台がQ2へ)
15:45 – 15:52 Q2
・7月17日(日)
09:00 – 09:30 フリー走行
11:05 – 11:45 ピットウォーク
13:35 – 14:30 スタート進行
14:30 – 決勝(41Laps)