SUPER FORMULA 2022 Round9
SF第9戦、笹原右京が今季2勝目! 2位フィニッシュの野尻智紀は、チャンピオンタイトル2連覇を達成!
10月29日、全日本スーパーフォーミュラ選手権の第9戦が三重・鈴鹿サーキットにて開催された。全10戦で繰り広げられるシーズンの戦いが大詰めを迎えるなか、今大会は土曜日、日曜日にそれぞれ予選と決勝を行うワンデーレースが行われる。この日開催された第9戦は、ランキングトップのNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がポールポジションからスタートしたが、ハイペースでレースを進めた予選5位のNo.15 笹原右京(TEAM MUGEN)が鮮やかな逆転勝利を披露した。なお、2位入賞を果たした野尻は、最終戦を待たずしてドライバーズチャンピオンとなり、連覇を達成。また、野尻と笹原が所属するTEAM MUGENは、同時にチームタイトルをも手にする結果になった。
前回のもてぎ戦に続き、1大会2レースで繰り広げられる最終大会の鈴鹿。レース自体、2ヶ月強の長いインターバルが空いており、真夏の戦いから秋が深まる中での一戦となるだけに、持ち込みのセッティング含め、条件的に不確定要素が多いコンディション下での戦いになることが予想された。
前日の午後から1時間半の専有走行が行われたものの、予選開始は午前9時15分。気温、路面温度ともに大きく異なるコンディションで始まったアタック合戦では、チャンピオン争いを繰り広げるドライバーたちに明暗をもたらす結果が待っていた。
ランキング2位のNo. 4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)はQ1・A組に出走するも、タイムを伸ばせずQ1落ちに。一方、フェネストラズから2点差でランキング3位のNo.20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)はQ1・B組を3位で、そして野尻は同じB組を4番手で通過を果たす。続くQ2では、専有走行でトップタイムをマークし、Q1・A組でも2番手につけたNo.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)やQ1・B組トップタイムだったNo.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)の躍進にも注目が集まったが、勢いのある若手ふたりを野尻が豊富な経験を活かしてポールポジションを獲得。前日の走行では16番手に留まり、自身も認める不調から見事に復活を果たしている。また、ポールポジションを手にして3点を計上。チャンピオンへ王手をかけた。なお、チャンピオン争いのふたりだが、平川は11番手、フェネストラズは17番手からのスタートとなり、かなり厳しい状況に置かれた形でレースを迎えることになる。
第9戦鈴鹿 予選結果トップ3
1.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’36.020
2.No.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)1’36.262
3.No.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)1’36.336
第9戦 決勝
第9戦の決勝は午後2時30分にスタート。予選を終えた各チームは、その直後から戦いに向けて改めてセッティング等を見直し、短時間で決勝を迎える。気温19度、路面温度は30度と日差しも出る一方、ホームコース上では冷たく強い追い風が吹き付ける中で、戦いに臨むこととなった。ポールスタートの野尻はタイトルがかかる一戦ながら、見事にスタートを決めて1コーナーをクリア。逆にもう一台のフロントロウである宮田はスタートで出遅れ、変わって3番手スタートの大湯が先行し、これに予選5番手から一気に3番手へと浮上。これが優勝に向けていい流れの第一歩になったといえる。
一方、各車シーズン終盤の戦いということもあり、序盤から丁々発止のバトルが随所で行われ、かなりヒートアップするシーンも多かったが、一切接触などなく、実にクリーンでクレバーな好バトルが繰り広げられた。そんな中、笹原は3周目から4周目にかけてホームストレートでオーバーテイクシステムを使って大湯に大接近。1コーナーでアウト側から勝負をしかけ、鮮やかに逆転してみせた。するとその勢いでトップの野尻にも急接近。9周目にはおよそ0.6秒という僅差となる。そんな中、笹原は野尻への接近戦を続けるのではなく、タイヤ交換が可能となる10周終了時点で迷わずピットイン。だが、左フロントタイヤ交換が若干手間取り、7.3秒のピットタイムに。しかしながら、同じ周にピットへ戻った大湯には先行を許すことなくコースに復帰することとなった。続く11周終わりには、トップの野尻もピットイン。6.6秒で作業を終えてコースに復帰したが、先にコースでタイヤを温めペースアップしていた笹原が背後に迫り、2台によるバトルが始まる。すると笹原はヘアピンで一気にイン側へと飛び込み逆転に成功。野尻攻略を果たし、タイヤ交換を済ませたドライバーの中での実質トップを奪い取った。
中盤に入ったレースではその後しばらく宮田がトップで周回を重ねていく。ペース良く周回を重ねた宮田はレース終盤までピットインのタイミングを引っ張る作戦を採り、25周終了の時点で最後にピットへと戻った。あとは、どの順位でコース復帰を果たせるかに注目が集まったが、あろうことかピット作業で左タイヤの交換にミスが出て、大きくタイムロス。なんと13.4秒の停止時間となりすべてが水泡に帰すこととなる。結果、宮田は事実上の6番手へと順位を落としてしまった。
その後、平川が27周終わりでピットイン。これで全ドライバーによるタイヤ交換も終わり、これで名実とも笹原がトップに立つ形で終盤へと突入。笹原がペース良く周回する中で、これに対してややペースが劣っていると判断した野尻はタイヤマネージメントに徹しながら周回を重ねた。一方、その後方では大湯が3番手を死守していたが、その背後にNo.53 佐藤 蓮(TEAM GOH)が迫る。予選9番手スタートの佐藤は、まず26周のシケインでNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)を逆転しようとアウト側にクルマを振って攻め入ったが、関口がこれを封じ込める。しかし諦めない佐藤は、OTSを使ってさらに畳み掛け、26周から27周目に入るホームストレート上で関口を攻略した。その勢いのまま大湯にも迫ると、今度は28周目の130Rで同じように大接近。大湯が粘って3番手を死守してホームストレートに戻ったが、またしてもOTSを活かして逆転劇を披露。これで3位を掴み取り、このままチェッカーを受けて自身シーズン初となる表彰台へと上がっている。その後、大湯はなおも宮田に背後から迫られ、猛攻を受けたがこれをシャットアウト。意地の守りで4番手を死守して戦いを終えている。
今シーズン2勝目を挙げた笹原は2位野尻に対しておよそ12秒6という大差をつけて完勝。また、2位に続いた野尻は、この勝利によって最終戦を待たずして今シーズンのチャンピオンを決め、シリーズ2連覇を達成した。これは2007、08年の松田次生以来となる。加えて、圧巻のワン・ツーフィニッシュを飾ったTEAM MUGENは、初のチームタイトルを獲得することになった。
第9戦鈴鹿 決勝結果 トップ3
1.No.15 笹原右京(TEAM MUGEN)53’00.126
2.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)+12.589
3.No.53 佐藤 蓮(TEAM GOH)+14.212
SUPER FORMULA第9・10戦鈴鹿 プレビュー
いよいよチャンピオンが確定! 王座は誰の手に?
前回のもてぎ大会から2ヶ月強。長いインターバルを経て、いよいよ今シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権が最終大会を迎える。その舞台となるのは、三重・鈴鹿サーキット。シーズンの締めくくりに相応しく「JAFグランプリ」のタイトルがかかった戦いとなる。シーズン最後の鈴鹿戦では、どのようなドラマが待ち受けるのか。そして今年のタイトルはどのドライバーが手にするのか。
■短期決戦ならではの見どころ
7大会、全10戦での戦いが繰り広げられることとなった今シーズンのスーパーフォーミュラ。開幕戦の富士、そして前大会のもてぎに続き、最終大会の鈴鹿も土曜、日曜日にそれぞれ予選と決勝を行う2レースで開催される。午前中にノックアウト予選を、そしてほぼ4時間後には決勝が行われるという短期決戦だけに、緊張感もいっそう高まるものと思われる。しかも今回はシリーズチャンピオンが決まる重要な大会。タイトル獲得の可能性があるドライバーはもちろんのこと、JAFタイトルがかかるレースでの勝者となるべく、どのドライバーたちも全力を尽くして戦うことになる。
そのために、まずは予選で理想的な形を構築することが”マスト”。なにしろ、今シーズンのノックアウト予選はとにかくシビアな展開が多い。Q1落ちをしたかと思えば、別の大会ではトップ3にもなる。どのドライバーもポールポジションを手にする可能性を秘めており、またその逆もしかり。まばたき一つできないほどの僅差で”天国と地獄”と言えるほどの差が待ち受ける……そういうタイムアタックがこのノックアウト予選でもあるのだ。言っておくが、これは決して”運の良し悪し”ではない。これ以上ないと言っていいほどの緻密なアプローチによって予選に挑まなければならないのだ。セッション直前の気温、路面コンディションを誰よりもよく把握し、そして味方につけること。誰もがわかってはいても、それが一番難しい。決して容易ではないこのタイムアタックが、レースウィークの流れを左右することになる。
しかしながら、小さなミスひとつ許されないタイムアタックで好ポジションを手にしたとて、決勝で自身が思い描く理想のレースができるわけでもない。完璧なスタートを切り、レースを先導しても、今度はタイヤ交換というピット作業が待ち受ける。つまり、ドライバー自身はもちろんだが、その先はチームスタッフ全員によってパーフェクトなレース運びを作り上げないと、勝利は手に入らないのだ。今大会は土曜、日曜のワンデーレースに備えるための意味合いで、金曜日の午後に専有走行が設けられている。両日の予選が午前中に行われるため、コンディションという意味合いでは若干異なるとはいえ、持ち込みのセッティングを確認したり、変化に対する調整を重ねたりすることは、翌日からの作業にも有効となるはず。どのチームも、与えられた時間をフルに活用することとなるだろう。
■タイトル獲得の可能性があるのは
今シーズン、開幕戦から安定した結果を出してきたのは、ディフェンディングチャンピオンでもある野尻智紀(TEAM MUGEN)。昨シーズン、タイトルを手にした野尻だが、今シーズンは常に勝つための戦いに努め、表彰台に立てないときはどんな戦いをするのが最善かを考えるレースをしてきたように思う。速さと強さが絶妙なバランスを生み出し、緻密なレースを展開している。それは結果を見ても明らかだ。というのも、優勝は第2戦の富士のみだが、予選でのポールポジションはこれまで4回。そして表彰台は6回とダントツの安定感を誇る。そしてこれまでの全レースで入賞し、ポイントを積み重ねてきた。これこそが、野尻の戦闘スタイルと言えるだろう。そしてその結果によって、現在シリーズポイントで113点を獲得してトップに立ってる。
一方、32点差でランキング2位につけるのは、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。速さを見せるも、決勝での結果にムラがあるのは正直否めない。だが、レース中の”不運さ”も多く、本人だけの問題ではないため、予選でフロントロウを手にしてレースを牛耳るような形を作ることができれば、伸び盛りのドライバーらしい速さと勝負強さで今シーズン2度目の優勝の可能性も充分にある。それだけに、彼がまず最初に狙うのは当然のことながらポールポジションとなる。ここで1点を追加し、レースに挑むのがファースト・ミッションだ。フェネストラズに続くのは、トップと34点差の平川亮(carenex TEAM IMPUL)。今シーズンはチャンピオン経験もあるSUPER GTのフル参戦を中断し、世界耐久選手権(WEC)へ挑戦。ル・マン24時間レースを初制覇し、WECのシリーズタイトルも手に入れた。大舞台で戦う勝負強さも備わり、あとはシングルシーターのこのスーパーフォーミュラで王座をつかむことが目標になっている。トップ3のドライバーの中で唯一シーズン2勝を挙げている一方、レース中のトラブルに巻き込まれるシーンもあるなど、今シーズンは”アップダウン”の多い展開が続く。しかし、後方ポジションからの追い上げは目を見張るものがあり、その勝負強さはどのドライバーも舌を巻くことだろう。
レースは先述のとおり、ポールポジション獲得時に1点、そして勝利すれば10点の加算となる。フェネストラズと平川にとっては、まず初日、土曜日の予選と決勝でポール・トゥ・ウィンを達成することが”マスト”となる。野尻とのポイント差が大きく、残念ながら自力タイトルが不可能であるため、まず自身がベストを尽くしてあとは”天命を待つ”形での勝負になるためだ。つまり、このふたりのどちらかがポール・トゥ・ウィンを果たしたとて、野尻がこれに続いて2位入賞を果たせば、この時点で野尻のチャンピオンが決定してしまう。相当厳しい条件ではあるが、まずは自身の勝利を目指し戦いに挑むしかない。もちろん、レースはこの3名だけで繰り広げられるものではなく、他のドライバーも今シーズンベストなレースをすべく、そのチャンスを伺っている。いずれにせよ、シーズン最後を締めくくる2戦は、どのドライバーにとっても重要な一戦。それだけに、思いもよらないドラマが見られることもある。波乱に満ちた展開になるのか、それともあっと驚くような逆転劇になるのか……。晩秋の鈴鹿は2日連続で白熱のレースが繰り広げられそうだ。
主なタイムスケジュール
・10月29日(土)第9戦
09:15 – 公式予選(ノックアウト方式)
09:15 – 09:25 Q1(A組→上位6台がQ2へ)
09:30 – 09:40 Q1(B組→上位6台がQ2へ)
09:50 – 09:57 Q2
11:15 – 12:00 ピットウォーク
13:40 – 14:30 スタート進行
14:30 – 決勝(31Laps)
・10月30日(日)第10戦
09:05 – 公式予選(ノックアウト方式)
09:05 – 09:15 Q1(A組→上位6台がQ2へ)
09:20 – 09:30 Q1(B組→上位6台がQ2へ)
09:40 – 09:47 Q2
11:15 – 12:00 ピットウォーク
13:40 – 14:30 スタート進行
14:30 – 決勝(31Laps)