SUPER FORMULA 2023 Round.1
23シーズン初戦を制したのは、ルーキーのローソン!
4月8日、2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権が開幕。戦いの舞台となった静岡・富士スピードウェイの初戦はサバイバルレースで展開され、予選3番手スタートのルーキードライバー、No.15 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)がいきなり勝利し、センセーショナルなデビューを飾っている。
初戦の富士大会は土曜、日曜にそれぞれ予選と決勝を行う短期決戦。このため、前日の金曜には専有走行が行われる予定だった。しかし、当日の現地は天候が優れず。結果、午後1時40分から1時間30分間予定されていたセッションがキャンセルになり、土曜日にいきなり予選セッションを迎える形へと変わった。
Round.1 予選
文字通り、”ぶっつけ本番”の予選となったことから、従来のQ1、Q2へと選抜するノックアウト方式ではなく、計時予選に変更されることに。一方でコンディションは午前9時20分のスタート直前にはウェット宣言が出されるなど曇り空でスタートしたが、次第にドライへと好転した。
3月上旬、三重・鈴鹿サーキットで実施された公式テストを最後におよそ1ヶ月のインターバルを挟んで迎えた第1戦予選。富士スピードウェイを走るのが初めてのルーキードライバーはじめ、鈴鹿を諸事情で走行できなかったドライバーもおり、それぞれ異なる条件下でのアタックとなる中、安定した速さを見せたのはディフェンディングチャンピオンであるNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)。ライバルたちが路面コンディションを探りながらクルマのセットアップを続ける中、セッション折返しのタイミングで野尻は1分22秒062をマークし、トップへ。このタイムをターゲットにライバルたちもセットアップを重ねて、セッション終盤を迎える。
残り10分を迎え、足元にニュータイヤを装着した各車がラストアタックへと向かう。そんな中、No.37 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)がタイムアップを果たして2位へ。このあと、野尻も自己ベスト更新を狙ってアタックするが、タイムアップには至らない。また他車も同じであと一歩、野尻のタイムに手が届かないまま。急激に日が陰り、気温も下がるなど条件が味方しなかったこともあり、このままチェッカーを迎えた。
結果、野尻が通算14回目となるポールポジションを手にすることとなった。2位の宮田に続いて3番手につけたのはローソン。初走行かつ難しいコンディションをものともせず、表彰台を見据えた位置を手にしている。
第1戦富士 予選結果 トップ3
1.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’22.062
2.No.37 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)1’22.108
3.No.15 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)1’22.266
Round.1 決勝レース
計時予選から4時間あまり。迎える初戦は41周の戦い。給油作業はなく、レース開始から10周を過ぎてからのタイヤ交換が義務付けられる中での戦いとなる。徐々に天気も回復し、薄曇りながら気温18度、路面温度29度のこの季節らしいコンディションの中でシーズン初戦の火蓋が切って落とされた。
申し分のないスタートを見せたポールポジションの野尻。だが、その隣の宮田は出遅れる。一方でロケットスタートを見せたのが予選4番手のNo.53 大湯都史樹(TGM Grand Prix)。1コーナー進入前に早くも2番手に浮上する勢いを見せた。また、予選10番手のNo.64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)も好スタートを決めて、5番手大きくポジションアップに成功した。一方、スタート直後、1コーナー進入までに接触したのがNo.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、No.3 山下健太(KONDO RACING)、No.7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)。うち、関口はそのままレースを続行できたが山下と小林はここで戦列離脱になってしまった。また、2周目の1コーナー進入時には、No.38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)にNo. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が追突する形で接触。2台ともそのまま走行し、ピットへ。坪井はリタイヤとなり、一方の牧野はフロントノーズとすべてのタイヤを交換してレースを続行した。なお、この接触によって1コーナー進入付近にはカーボンパーツが散乱。コース清掃のため、セーフティカーが導入される。
波乱の幕開けとなった初戦。その流れはその後も続き、レース再開となった8周目には2番手大湯と3番手ローソンのサイド・バイ・サイドの争いでヒートアップ。コカコーラコーナーでのバトルは意地の張り合いとなり、ローソンが我慢比べで勝利。コースサイドに押し出されるようにオーバーランとなった大湯は後続車に飲み込まれ、大きくポジションを落としてしまう。2番手にアップしたローソンの後ろには山本、宮田が続き、さらには関口とその僚友である平川。その中でも関口と平川は、時折僅差のバトルを繰り広げた。
ピットストップが始まったのは、10周終了時。まず3台がピットイン、その後、タイミングを見計らい1台、また1台とルーティンを消化する。だが、上位3台はステイアウトで周回を重ねていく。そして迎えた22周終了時、ついにトップ野尻がピットに向かうと、これに続けと山本もピットへ。野尻は無難にトップでコースに復帰したが、なんとその背後には野尻より1周先にピット作業を終えていたローソンが迫りくる。実は、野尻よりも短時間のピット作業を済ませたローソン。タイヤがまだ冷えている野尻との差を一気に詰めてあっさり逆転。一方の野尻はタイヤが温まってもペースを思うように上げられず、周回を重ねるごとにローソンとの差が広がっていく。
レースは折返しを過ぎて、暫定トップの宮田、それを追う平川の2台が徐々に攻防戦へと変化。そして28周目の1コーナー進入時に平川が宮田を攻略。その後、31周目にピットへと滑り込んだ。さらに宮田も32周を終えてピットへ。これでコース上の全車がタイヤ交換義務を終え、再びローソンにトップの座が戻ってくる。この時点でローソンと野尻の差は5秒強。チェッカーまで残り8周でどのような展開が待ち受けるのかと思われる中、野尻の後方で3位争いを繰り広げていた平川が山本をオーバーテイクを果たす。また、37周目の1コーナーでは入賞争いをしていたNo.12 福住仁嶺(ThreeBond Racing)とNo.36 ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S)が接触、2台は1コーナー先でクルマをとめてしまう。これでこのレース2度目のSCが導入され、5秒以上あったトップ2台の差がこれを機に一気に縮まることになる。
コースマーシャルによる清掃や車両撤去が進む中、レース再開が待たれたが、SCのルーフライトは点灯したまま。結果、SC継続のままレースはチェッカー。初レースながら冷静かつアグレッシブなパフォーマンスを見せつけたローソンが自身初優勝、23年シーズン最初の勝ち名乗りを上げることになった。
第1戦富士 決勝結果 トップ3
1.No.15 リアム・ローソン(TEAM MUGEN)1:15’37.813 41L
2.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)+2.058
3.No.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)+3.771
SUPER FORMULA第1・2戦富士 プレビュー
23年SF開幕! 新車での第1、2戦は富士で!
いよいよ、国内トップフォーミュラである全日本スーパーフォーミュラ選手権が今週末に開幕戦を迎える。新車を投入し、カーボンニュートラル対応レーシングタイヤを装着した”新たな装い”で各車が激しいバトルを繰り広げることになりそうだ。
全7大会、9レースでの開催に
昨シーズン同様、7箇所のサーキットで大会を繰り広げるスーパーフォーミュラ。開幕の富士大会および最終戦の鈴鹿大会のみ、土曜、日曜にそれぞれ予選と決勝を実施することから、レース数としては全9戦になるが、大会数は昨年と変わらない。北は宮城・スポーツランドSUGOから南は九州の大分・オートポリスにかけて、5箇所のサーキットで開催される。また、昨シーズン同様レースフォーマットに大きな違いはない。しかしながら、今シーズンの難しさは「SF23」への対応ではないだろうか。
既存のSF19をベースに、新たなエアロパッケージが装着されて出来上がったSF23。昨年の車両と比較すると、全体的にダウンフォースが削られており、合わせて車体広報に流れる空気がセンター寄りとなったことで乱流が軽減。結果として、これまで以上にスリップストリームを活用したパッシングが見込めるようになるという。SFオリジナルのオーバーテイクシステム(OTS)と併用すれば、激しいポジション争いをさらにホットなものにしてくれることだろう。なお、このOTSだが、これまではドライバーがOTS機能を使う際にボタンを押すと、”使用中”がわかるうようにロールオーバーバーおよびリヤのクラッシャブルストラクチャーのライトが点滅する仕組みとなっていた。しかし、今シーズンからはライト点滅を廃止。作動しているかどうかは、外部からの判断が難しくなったことで、ドライバー同士による接近戦の駆け引きを面白くすることが狙いのようだ。ちなみに、どのタイミングで使用しているか、手持ちの残り時間等を把握するには、デジタルプラットフォーム「SFgo」を使用すれば確認可能とのこと。昨シーズン中は開発を兼ねて各チームが使用していたが、今シーズンから正式運用されるこのメニューを使えば、把握可能としている。
海外ドライバーも参戦へ
開幕戦の舞台となるのは静岡・富士スピードウェイ。今年は例年になく桜の開花が早かったこともあり、おそらくそのピークは過ぎているだろうが、顔を揃えるドライバーたちの布陣はまさに百花繚乱といえるはず。過去3シーズンが、新たな外国人ドライバーを迎え入れることが難しかったが、規制もなくなった今シーズンは、新しく3人の外国人ドライバーが島国ニッポンでの新たな挑戦をスタートさせることになった。
ニュージーランド出身のリアム・ローソン(TEAM MUGEN)、イギリス出身のラウル・ハイマン(B-Max Racing Team)、そしてトルコ出身のジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)はいずれも世界のステップアップカテゴリーにおいて腕を磨いてきた”ツワモノ”たち。タイヤマネージメントが難しく、僅差のバトルが多いスーパーフォーミュラでみっちりと腕を磨き、再び国際レースの舞台へ”舞い戻る”ことも視野に入れてチャレンジしてくるはず。一方、”先輩”ドライバーとしてジュリアーノ・アレジもフルシーズン2年目を迎える。センセーショナルだったスポット参戦を経て、昨シーズンは伸び悩んだ形となったが、そのリベンジとばかり意気込んでいることだろう。
新パッケージでの予選アタックに注目!
新たなエアロ、開発された新たなタイヤをまとったSF23で迎える初戦。なんといっても見どころは、ノックアウト予選だ。短い時間で多くの車両がタイムアタックを行うセッションは、ちょっとした”何か”によって、泣き笑いが生じるシビアな時間でもある。テストで収集したデータを活かしつつ、予選セッション当日のコンディションもしっかり把握し、無駄のないアタックをしなければならない。限られた時間をどのドライバーが最大限フル活用して、セッションをコントロールするのか、目が離せない。
また、今回の富士は土曜日、日曜日にそれぞれ予選と決勝が行われる。
この”短期決戦”こそが、レースをより難しく面白くさせる要素となっている。ありとあらゆる条件を味方につけたものがポディウムの真ん中に立てるだけに、ドライバーだけでなくチームとしての総合力も問われることになるだろう。筋書きのないドラマと言われるレースだが、開幕戦はそのドラマのシナリオも予測不可能なものになる気配がしてならない。
主なタイムスケジュール
4月8日(土)第1戦
09:20 – 09:30 予選Q1・A組
09:35 – 09:45 予選Q1・B組
09:55 – 10:02 予選Q2
14:15 - 決勝レース 41周/最大75分
4月9日(日)第2戦
09:00 – 09:10 予選Q1・A組
09:15 – 09:25 予選Q1・B組
09:35 – 09:42 予選Q2
14:30 - 決勝レース 41周/最大75分