SUPER FORMULA 2022 Round10
SF最終戦は、野尻が圧巻の走りで完勝!
10月30日、全日本スーパーフォーミュラ選手権の最終戦にあたる第10戦の予選、決勝レースが三重・鈴鹿サーキットにおいて行われた。最終戦は「JAFグランプリ」としてJAF(日本自動車連盟)を冠した一戦となるが、まず、午前の予選でポールポジションを手にしたNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)がスタートダッシュを決めると、荒れ模様となった展開をものともせず、ライバルたちを圧倒する速さを見せつけ、完勝を飾った。
最終戦も前日の第9戦同様、まず午前9時5分からノックアウト予選が繰り広げられた。予選Q1・A組では、No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムで通過。前日、予選Q1落ちし、タイトル争いでも破れたNo. 4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)は3番手でQ2進出。ランキング2位死守に向けて好発進した。続くQ1・B組には、前戦でシリーズチャンピオン連覇を決めたNo. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が出走。前日のQ1ではグループ4番手に甘んじたが、今日はB組のトップタイムをマーク、これに第9戦はQ1どまりだったNo. 6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が続いた。
迎えたQ2。7分間のセッションながら開始と同時に出走するクルマは1台とてなく、残り5分30秒を切った時点で次々とコースへ向かい、じっくりとタイヤを温めながらアウトラップを含めて2周し、いよいよポールポジション目指してのアタックラップが始まった。
チャンピオンを決めて気持ち的にも重圧から開放されたのか、野尻は各セクターで最速タイムをマーク。1分36秒003のタイムを叩き出し、真っ先にチェッカーをくぐり、ライバルたちを待ち受ける。野尻の後方を走っていた牧野がこれに次ぐタイムをマークしたが、その直後に前日優勝をさらって勢いに乗るNo.15 笹原右京(TEAM MUGEN)が牧野のタイムを上回り、2位へ。すると、大津がまたこれを上回り、2番手を奪取した。これでトップ3が決まるかと思われたが、一番最後にアタックを終えたNo.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が野尻と100分の4秒差となる好タイムをマーク。前日に続く2番手を掴み取ることとなった。なお、第9戦に続き予選トップタイムをマークした野尻は、これで今シーズン6度目のポールポジションとなり、また通算13回目は現役最多タイ記録になっている。
第10戦鈴鹿 予選結果トップ3
1.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’36.003
2.No.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)1’36.043
3.No. 6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)1’36.468
第10戦 決勝
前日とは変わって穏やかで暖かな気候に恵まれた日曜日。秋深まる中、絶好のコンディションで迎えた今シーズン最後の決戦、JAF GPとして行われる第10戦の決勝レースは午前2時30分にスタートが切られた。気温21度、路面温度32度のコンディションのもと、クリアスタートが切られ、まずはポールポジションの野尻がホールショットを奪った。一方、前日第9戦ではフロントロウスタートながら、その蹴り出しで加速が鈍り、ポジションを落とした宮田。この日も予選3番手の大津、さらには4番手スタートの笹原にも先行を許し、4番手に。そしてその後方ではシーズン集大成となる決戦で、善戦しようとあちこちで激しい鍔迫り合いが見られた。
そんな中、1コーナーでNo.12 福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)がコースアウト、タイヤバリアにヒット。早々にセーフティカーが導入された。2周目終わりでリスタートが切られたが、このとき、先頭の野尻がぐっとスピードを落として後続車両を牽制。だが、この流れで3番手笹原のクルマはアンチストールシステムが稼働し、シケイン立ち上がりで失速する事態に。背後の2台は追突を回避するように笹原をパス。最終コーナーでアンチストールを解除した笹原は5番手でレースを重ねた。
トップ野尻は、前日のレースでタイトルを決めており、この日はすべてから解放されたような走りでひたすらプッシュする走りを披露。一方、ランキング2位争いで同ポイントのNo.20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)とNo.4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が攻防戦を展開。フェネストラズはシケインアウト側からオーバーテイクシステム(OTS)を使い、果敢にアタック。メインストレートではサイド・バイ・サイドを繰り広げ、5周目の1コーナーで先行した。
レースはトップ野尻が10周目を終え、タイヤ交換のウィンドウが開く。この時点でピットインしたのは8台。翌11周終わりで3台がタイヤ交換を行った。コース上ではタイヤ交換を終えてタイヤが温まったクルマとコースに復帰したばかりのクルマ同士の激しいポジション争奪戦が展開。12周目のシケインではアウトラップ中のNo.38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)にタイヤが存分に温まった笹原が猛プッシュ。だが、笹原のフロントウィングが坪井のリヤタイヤに当たり、ウィングを傷めた笹原はその直後にピットインしてフロントノーズ交換を強いられた。一方、坪井はコースに留まるも、この接触でクルマのフロアにダメージを受け、その後思うようなペースアップを果たせなくなる。さらに、その後、再びシケインではサイド・バイ・サイドを繰り広げていたNo.36 ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)とNo.50 松下信治(B-Max Racing Team)が接触、オーバーテイクを狙った松下がバランスを崩してクラッシュを喫してしまう。レースはここで2回目のセーフティカー導入となり、これを見た野尻を筆頭とする上位陣ら、全7台がピットへ。野尻は先にタイヤ交換を終えていた大津の前でコース復帰を果たし、トップをキープ。一方、宮田は大津の後ろで中盤を戦うことになる。さらに4番手にはフェネストラズが続くも、その背後にいた平川は、先にタイヤ交換を済ませていた坪井の先行を許す形となった。
前日のレースとはうってかわって波乱の展開が続いた最終戦。17周目を走行中にセーフティカーのフラッシュライトが消灯し、18周目にリスタートを迎えると、トップの野尻は最初のリスタートと異なるアプローチを見せ、シケイン進入近くまでセーフティカーを追走。そこから一気に逃げ切りの態勢に入った。この時点で2番手は大津。これに宮田、フェネストラズ、坪井、平川と続いたが、19周目のスプーンカーブ入口で平川は坪井を逆転。するとこれを機にダメージを負いながら走行を続けていた坪井は後続の車両からの猛追をも許し、ポジションを下げてしまった。
レースは残り10周を切ると、逃げる野尻に2位以下も等間隔となり、膠着状態に。しかし、その後方では、10位までの入賞を巡る激しい攻防戦があちこちで繰り広げられた。中でも、12、13番手を走行していたNo. 7 小林可夢偉(KCMG)は、温存していたOTSを多用し、25周目のシケインで前の2台に急接近、その勢いでメインストレートでピタリと背後につくと、1コーナー飛び込みでイン側をキープして2台をまとめて”料理”。ベテランらしいスゴ技で9位へ浮上し、ファンを大いに沸かせた。
終盤を迎えてもなお、野尻は応戦で使う必要がなかったOTSをパワーアップ代わりに頻繁に活用。2位との差をさらに広げ、独走でチェッカー。2位に6,8秒強の差をつけ、今シーズン2勝目をあげてチャンピオンらしい締めくくりのレースを終えている。2位の大津は待望の今シーズン初表彰台を獲得。また、3位宮田も今季2度目の表彰台に上がり、シリーズランキング4位浮上を果たした。
7大会、全10戦で繰り広げられた2022年のスーパーフォーミュラ。次世代車両の開発が着々と進む中、来シーズンはディフェンディングチャンピオンとなった野尻がシリーズ三連覇をかけて挑む戦いになるほか、新たに躍進するドライバーの登場は見られるのか。シングルシーターならではのダイナミックなレース展開に期待が集まる。
第9戦鈴鹿 決勝結果 トップ3
1.No. 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)1:01’20.630
2.No. 6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)+6.857
3.No.37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)+8.000