SUPER GT 2021 Round.6
ARTA NSX-GT、待望の今シーズン初優勝を達成
10月24日、大分・オートポリスにおいてSUPER GT第6戦決勝レースが行われた。当日はうっすらと薄雲が広がるも、時折穏やかな日差しに恵まれたが、気温がぐっと下がり、寒さを感じる中での決戦となった。レースはクルマのトラブルやコース上でのアクシデントなどで落ち着きのない展開となり波乱が続いたが、その中で予選4番手からスタートしたNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が様々なレース中の”要素”を味方につけて圧勝。悲願の今シーズン初優勝を手にすることとなった。
冷たい風が吹き、気温が思ったほど上昇しない中、各チームを困らせたのはタイヤマネージメントだった。ただでさえ、オートポリスはタイヤへの攻撃性が高いコースとして知られており、存分にパフォーマンスを発揮するのが難しい。それに加え、想定していたよりも路面温度が上がらないことによってタイムが伸び悩んだだけでなく、タイヤ本来の働きを期待するのが困難な状況になってしまった。結果として、どのチームも手探りの状態で決戦の準備を進めたのは言うまでもない。
タイトル争いが絡む今大会。シーズンも残り3戦となり、まさに”天下分け目”の一戦として捉えられる。そんな中、気温12度、路面温度20度とかなり低めのコンディションでフォーメーションラップ2周が終わると、35周の戦いが幕を開けた。いきなりオープニングラップから仕掛けていったのが、予選2番手のNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)。14号車は今大会からシーズン3基目のエンジンを使用しているため、そのペナルティとして5秒間のピットストップが課せられている。ペナルティの消化で大幅なポジションダウンは避けられないこともあり、少しでもマージンを稼ごうとばかり、先を急いだ。その14号車は6周を終えてペナルティを消化。これで予選ポールのNo.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹組)が再びトップに返り咲いた。その一方、14号車と同じくNo.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/サッシャ・フェネストラズ組)、さらにNo.38 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)がエンジン交換によるペナルティを消化したが、その中では38号車がオープニングラップからポジションアップを狙って気迫の走りを見せており、ペナルティ消化を迎えるまでに予選10番手だったポジションを6番手まで引き上げていた。
そんな中、第1ヘアピンでアクシデントが発生。クラッシュしたGT300車両がタイヤバリアに激しく衝突、フルコースイエロー(FCY)が導入された。しかし、このあとセーフティカー(SC)導入へと切り替わり、さらに14周目を迎えるメインストレート上でGT500とGT300クラスの隊列を整える作業が行われた。レースは16周終わりで再開され、16号車が再び逃げの態勢を見せていたが、その翌周の2コーナー先であろうことか、右リヤタイヤがホイールごと脱落するというまさかのハプニングに見舞われる。思いもしない形で16号車はトップはおろか、レースから脱落。衝撃が走った。すると、今度は20周目の大3コーナーでGT300車両がクラッシュ。追突でパーツがコース上に散乱。すぐさまSCが導入される。コースクリーンの作業が長引く中、周回数はドライバー最低義務周回数(レース距離の3分の1)を過ぎたことから、複数のチームピット前には交換用のタイヤが出され、”その時”への準備を進めていた。レースは24周終了時点で再開。すると、6台の車両がピットイン。翌周以降も1台、また1台とルーティンを消化した。その中で、16号車に代わってトップを走るNo.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組)はコース上のGT500最後となる29周終わりでピットイン。すると、その復帰ラップでは冷えたタイヤでの走行に苦戦して4位へとドロップ。これでトップに立ったのが8号車だった。すると、タイヤが温まった64号車も応戦。ライバルを上回るラップタイムであっという間にポジションアップを果たし、トップ8号車の背後に迫る。似通ったラップタイムでコンマ1秒での壮絶なトップ争いを繰り広げる2台。だが、次第に8号車のペースが上回るようになり、いつしか10秒超の大差へ。逆に64号車は激しい3位争いを続ける4台に飲み込まれるようになる。
53周目、集団の中から3位を狙うNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が目前のNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一組)に仕掛けると、39号車も負けじと2番手の64号車をロックオン。容赦ない追い上げに対し、第2ヘアピンでアウトへとラインを取った64号車は、続々とイン側に飛び込んできた後続車の後塵を拝することに。”事切れた”状態となった64号車は6番手まで後退した。だが、激しいポジション争いはこれだけに終わらない。中でも5番手の38号車が怒涛の追い上げで1号車、さらに23号車をも逆転。54周目に3番手まで浮上すると、39号車を猛追。翌周、メインストレートで39号車のスリップにつくと、1コーナー飛び込みでオーバーテイクに成功。ついに2番手まで上り詰めた。これに対し、39号車は再三のバトルに耐えきれず、58周目には23号車が3番手となった。
結果、残り7周でトップ3が確定することになったが、この時点でトップの8号車は2位28号車に対して35秒超という大きなマージンを築き、独走態勢のままチェッカー。最終的には28.5秒の大差で待望のシーズン初優勝を達成している。
一方のGT300クラスは、ポールポジションスタートのNo.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)が、クラストップでチェッカーを受け、理想的な形でシーズン初優勝を達成した。この段階で、サクセスウェイトを搭載していない31号車。レースも順調な走りでトップをキープ。だが、予選2番手のNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)が早々にトップをうかがう好走を見せたが、しばらくこのままのポジションが続いた。逆に、予選3番手のNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)はトップ2台と次第に距離が生まれ、自身のポジションキープを目指すことに。
序盤に導入されたFCYーSC、さらに2度目のSCが明けてなおトップ3に変動はなかったが、この中から最初にルーティンワークを行ったのは、52号車。24周を終えてピットに向かったが、トップを走る31号車は29周終了時、また2番手の61号車は30周終了でのピット作業を実施した。このとき、61号車は31号車の前でコース復帰に成功したものの、コールドタイヤでの応戦は難しく、31号車、さらには28周終了時にルーティンワークを済ませたNo.96 K-tunes RC F GT3(新田守男/阪口晴南組)にも先行を許してしまった。その後、上位争いは膠着状態が続いたが、トップ31号車は軽い車両を武器に、ハイペースで周回。2位との差を少しずつ重ねて終盤15秒近い大差を築いた。2位、3位もともに”ひとり旅”状態となる一方で、4番手の52号車が幾度も61号車に迫って表彰台の一角を狙ったが、その52号車もNo.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)に追い立てられる形となり、このままチェッカー。結果、安定感あるレース運びを見せた31号車がシーズン初優勝を飾り、現行プリウスPHVGTとしての初勝利をものにしている。
・第6戦オートポリス 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)2:04’50.793 65Laps
2.No.38 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)+28.548
3.No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)+33.469
GT300
1.No.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)2:04’54.908 61Laps
2.No.96 K-tunes RC F GT3(新田守男/阪口晴南組)+10.946
3.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)+16.980