SUPER GT 2021 Round.1
丁々発止の壮絶バトルを制したNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraが逆転勝利!
4月11日、岡山国際サーキットにおいて、2021年SUPER GT第1戦岡山大会の決勝が行われた。快晴に恵まれる中、大混乱の展開を見せた82周の戦いは、後半になってトップ争いがヒートアップ。シーズン初戦から熾烈な攻防戦を制したのは、予選2位スタートのNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)だった。
決勝日の朝、オープンエアのオフィシャルステージで予選トップ3ドライバーによるトークショーが開かれ、その場で2年ぶりのSUPER GTフル参戦となる山下は「Q2に進めるか心配だった」と答えていたが、そのQ2でコンビを組む大嶋が2番手につけるとと、決勝でも好調ぶりを早速見せつける。
午後1時30分にスタートした決勝。ポールポジションのNo.37 KeePer TOM’S GR Supraは、代役参戦ながら冷静かつ速さを見せる阪口がドライブし、奮闘。これを予選3番手No.36 au TOM’S GR Supraの関口が追いかけたが、すぐさま14号車は大嶋が2番手を奪還し、37号車の背後からつねに逆転のチャンスを窺った。トップ2台のペースは他のライバルよりも速く、GT300クラスとの混戦の中でもルーキー・阪口とベテラン・大嶋の攻防戦を展開する。だが、7周目のヘアピンでGT300クラスの1台がスピン。これにより、セーフティカーが導入される。コース上ではGT300、GT500に分けて順位を整えたあと、13周目からレースを再開。すると間髪入れず、大嶋が阪口を攻略すべく詰め寄るが逆転には至らない。膠着状態が続く中、逆転のチャンスはその後のピットインが鍵になるかと思われた。
レースは33周目、GT300クラスの1台が1コーナーでスピン。するとこの状況を見た大半のチームが、2度目のセーフティカーランを前に、ルーティンのピットインを敢行する。だが、GT500クラスに限らず、GT300クラスの車両も続々と戻ってきたことで、岡山の狭いピットは大混乱。通常ならピットロード前で横向きに停車して作業できるはずが、斜め停めを強いられて窮屈な状態でのドライバー交代やタイヤ交換を行うことになってしまった。そして、この状況によって窮地に陥ったのが37号車。ピット作業で大幅なタイムロスが生じ、14号車に留まらず、36号車、さらにはNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraの先行をも許し、実質4番手へとドロップすることとなった。
34周からのセーフティカーランは39周を持って終了。40周目にレースが再開すると、ピットインを済ませていないNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rがトップにいたが、44周終了時にピットイン。これを機に名実ともに14号車の山下がトップで周回を重ねていく。逃げる山下を追うのは36号車の坪井。すぐに詰め寄り、その後、長きにわたり攻防戦を繰り広げていく。60周を過ぎるとヘアピンで際どいサイド・バイ・サイドでの神経戦を展開。防戦一方に見えるものの、その後も山下が坪井を懸命に退ける走りが続いた。まさに死闘とも言える2台のバトルに決着が訪れたのは、75周目。ヘアピンで再びサイド・バイ・サイドになり、坪井はクルマをアウトへと降ってレイトブレーキング。だが、止まりきれずクルマはコースの外へ。後続車との差が大きかったことから、ポジションキープのままレースに復帰はしたもののストレートに戻ってきたときは、トップ山下との差が9秒近くに広がった。
坪井との攻防戦ですっかりタイヤを消耗させてしまった山下。残り数周で再び坪井に差を詰められたが、なんとかこれをシャットアウト。このままトップチェッカーを受け、14号車の初勝利を導いた。なお、TGR TEAM ENEOS ROOKIEとしては、参戦2年目でのチーム初勝利となる。2位の36号車に続き、3位を掴み取ったのは、37号車。56周目のヘアピンで39号車のインに飛び込みポジションアップに成功。意地の逆転を見せ、残る表彰台の一角をものにしている。
一方、GT300クラスもレース巧者の戦いを展開。勝利したのは予選4番手からスタートを切ったディフェンディングチャンピオンのNo.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)だった。まず、レースではポールスタートのNo.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)が安定した走りを見せ、その後方には予選2番手のNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)が続き、順当のレース運びを見せる。一方、予選4番手だった56号車はオープニングラップで予選3位のNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)を逆転。だが、65号車も4番手につけての攻防がしばし続いた。
GT300のポジションに変化を与えたのも、2度目のセーフティカーランを前にしたピットインだった。セーフティカー導入を予想した上位陣が続々ピットに戻り、作業に着手。この作業を素早く済ませていち早くコースへと復帰を果たしたのが56号車。これに65号車、さらに52号車が続くも、逆に11号車はNo. 2 muta Racing Lotus MC(加藤寛規/阪口良平組)にも先行を許し、5番手へドロップ。幸い、レース再開後に2号車を抜き、再び4台によるトップ争いへと加わることはできたものの、トップへの返り咲きは果たせなかった。
レース終盤、トップを走る56号車に対し、65号車がその差を急激に詰めてバトルを展開。しかし、ベテランのデ・オリベイラがステアリングを握る56号車は、65号車の蒲生に対して最後までトップを譲らず。最終ラップには、トップ2台に加え、3位を走る52号車の吉田、さらに11号車の平中までが応戦し、手に汗握る様相を見せたが、実力伯仲の戦いから56号車がそのままトップチェッカーを受けて勝利。2位に65号車が続き、52号車が3位を守り切る形で戦いを終えている。
第1戦岡山 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)2:06’55.425 82L
2.No.36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/坪井 翔組)+1.187
3.No.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/阪口晴南組)+13.621
GT300
1.No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)2:07’21.752 77L
2.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)+0.454
3.No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)+0.660
2年ぶりの開幕戦を迎えた岡山、No.37 KeePer TOM’S GR Supraがポール獲得!
2年ぶりの開幕戦を迎えた岡山、No.37 KeePer TOM’S GR Supraがポール獲得!
4月10日、岡山国際サーキットにおいて、2021年SUPER GT第1戦岡山大会の予選が行われ、No.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/阪口晴南組)が最速タイムをマーク。初戦のポールポジションを手にした。また予選では、トップ3をGR Supra勢が獲得。ホンダ、日産勢に対し、スピードでまずリードを奪った。
昨シーズンは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、開催スケジュールを大幅に変更、夏を迎えてからようやく開幕戦が実施された。加えて、移動を極力控えるとして、開催サーキットもツインリンクもてぎ、富士スピードウェイ、そして鈴鹿サーキットの3箇所に限定するなど、従来とは大きく異なるスタイルでのシリーズ開催を強いられた。2021年シーズン開幕を前に、依然としてコロナ禍ではあるものの、2021年シーズンは従来どおり4月に初戦を迎え、その舞台も一昨年同様に岡山へと戻ってきた。
そんな中で迎えた予選日は、まず朝の公式練習から全44台が精力的に周回数を重ね、午後からのノックアウト予選に向けて入念な作業に取り掛かっていく。走り始めこそ気温、路面温度が低かったものの、穏やかな日差しに恵まれ次第に上昇。その変化に対応するような形で各車セットアップを進めることになった。GT500クラスでは、セッション終了間際になって、No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)がタイムアップ。これに今シーズンから装着タイヤをヨコハマからダンロップへと変更したNo.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹組)が2番手につけ、3番手にはディフェンディングチャンピオンのNo. 1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/武藤英紀組)が続き、トップ3をホンダが独占する形でセッションを終えている。
そして迎えた午後からのノックアウト予選。気温、路面温度がさらに上昇する中、その変化にいち早く対応するポテンシャルを見せたのはGR Supra勢だった。公式練習時ではホンダ勢に後塵を拝したが、一発の速さでライバルを一蹴。Q1ではチェッカーまで残り1分を揃った段階で、続々とタイムアップを果たしたGR Supra勢の中から37号車の平川が1分17秒966をマーク。Q1トップを奪った。その後、Q2を迎えてもGR Supraの勢いは留まるところを知らず。1台、また1台とトップタイムを更新するパフォーマンスを見せる中、37号車は、今大会サッシャ・フェネストラズの代役参戦となる阪口が1分17秒701の好タイムを叩き出す。その後を追うようにNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也も大幅にタイムを削ったが、トップに0.1秒及ばず、2番手に。そして、3番手にはトップ36号車の僚友No.36 au TOM’S GR Supraの坪井 翔がつけることとなった。一方で、公式練習で好調だった8号車や1号車は思うようにタイムアップが果たせず、まさかのQ1で敗退。開幕戦からくっきりと明暗分かれる結果となった。
GT300クラスでは、昨シーズン同様に今シーズンもQ1をA、B組に分けてのアタックが導入された。A、B両組の全29台がQ1に挑み、その後、各組上位7台、計14台がQ2へと進出する権利を手にすることができる中、順調にQ2へと駒を進めた中から躍進したのは、No.11 GAINER TANAX GT-R。アタックを担当した平中克幸が自信3度目となるGT300クラスのポールポジションを手にすることとなった。予選で2、3番手につけた両車は、決勝でタイヤ無交換作戦を採るチームとして知られるが、今大会はドライバー交代時にタイヤ4本交換が義務付けられている。従来とは異なるアプローチでどのようなレース展開を見せるのか、これも見どころのひとつとなりそうだ。
第1戦岡山 予選結果 各クラストップ3
GT500
1.No.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/阪口晴南組)1’17.701
2.No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)1’17.808
3.No.36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/坪井 翔組)1’27.729
GT300
1.No.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)1’25.275
2.No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)1’25.987
3.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)1’25.376
SUPER GT第1戦岡山 プレビュー
2021年シーズン、海幕は2年ぶりの岡山が舞台
3月下旬から国内のモータースポーツが次々と開幕戦を迎え、いよいよ今週末、SUPER GTの初戦が岡山国際サーキットで繰り広げられる。昨シーズンは新型コロナウイルス感染拡大の真っ只中で、4月の岡山開催が幻となっただけに、2年ぶりの有観客開催は地元はもちろん、多くのレースファンの期待度はより高まっている。
岡山、オートポリス、SUGOが復活へ
新型コロナウィルス感染拡大の終息はまだ道半ば。その中で迎える2021年シーズンだが、従来のスケジュールに沿って岡山で開幕戦を迎えることができるのはうれしい限り。もちろん、サーキットでは念入りな感染防止策を実施。残念ながらドライバーと身近に交流できるピットウォーク等の開催はまだ復活しないが、現地では趣向を凝らしたファンサービスが行われる予定だ。
年間8戦のスケジュールは変わらないものの、これまで実施されていた海外での開催は見送られ、国内6サーキットがその舞台となる。昨シーズンは栃木・ツインリンクもてぎ、静岡・富士スピードウェイ、そして三重・鈴鹿サーキットの3箇所に限定されたが、今シーズンは岡山、大分・オートポリス、また宮城・スポーツランドSUGOが復活する。3月には岡山、富士で公式テストが行われ、参戦チーム、ドライバーが開幕に向けて綿密な調整作業に取り組んだ。
GT500、新たな若手の活躍に注目
開幕戦の岡山に参戦するのは、GT500、GT300両クラス合わせて44台。うちGT500はこれまでどおり15台がエントリーした。今シーズン、新たにGT500のシートを掴んだルーキーは2選手。No.12 カルソニック IMPUL GT-Rのステアリングを握ることになった松下信治は昨シーズン途中に欧州レースを離れて帰国。スポット参戦でGT300クラスにデビューしたが、今シーズンは日産チームへと電撃移籍。しかも闘将・星野一義氏率いる名門IMPULでの活躍に大きな注目が集まっている。もともとシングルシーターでの活躍がメインではあったが、GTならではのパフォーマンスにも期待がかかる。コンビを組む平峰一貴もグイグイ攻めの走りを見せるアグレッシブな選手だけに、IMPULへ久々の勝利を持ち込む可能性も高そうだ。
No.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTのシートを得たのは、大湯都史樹。昨シーズン、GT300で速さと強さをしかとアピール。スーパーフォーミュラでもルーキーながらポールポジション獲得、優勝達成と大躍進を見せている成長株だ。また、チームは昨シーズンまでヨコハマタイヤでの戦いを続けてきたが、今シーズンはダンロップへとスイッチ。これまでホンダ勢で唯一ダンロップユーザーだったNo.64 Modulo NSX-GTの実力がしっかりとついてきていることもあり、今シーズンは2台体制でデータ収集もいっそう進み、より力強いレースを繰り広げるのではないだろうか。
なお、ビザの関係で来日が叶わず開幕戦を欠場するNo.37 KeePer TOM’S GR Supraのサッシャ・フェネストラズに代わってステアリングを握るのは、阪口晴南。昨シーズンもNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraで代役参戦を務めた経験値を活かし、ドライバーとしてのアピールしたいところだろう。
決戦は昨年の流れを踏襲か?
コロナ禍で一部変更を余儀なくされているのがレース規定の制限。GT500では空力開発の凍結が続いており、昨シーズンから外観上の変更は見られない。とはいえ、昨シーズンを戦い抜て得たデータ、そして3月に岡山で実施した公式テストからのフィードバックをベースにしかと開幕戦の準備を進めてくるのは言うまでもない。一方、タイヤに関しては、メーカーがよりポテンシャルを高めたタイヤ開発を進めているはず。見た目としては変化はなくとも、つねに進化を求めるのがSUPER GTの真骨頂であるだけに、関係者が持ちうるスキルを全投入し、戦いに挑むことを期待したい。
スポーティングレギュレーションを一部改定
今シーズン、一部改定が行われたスポーティングレギュレーション。内容は変わらずともSUPER GTではおなじみのとある名称が変わる。それがウェイトハンディだ。レースでは、決勝結果に応じて上位10位までにポイントが与えられるが、これに併せて車両にウェイトを搭載するハンディキャップ制度が取られていた。システムそのものは継続されるが、新たに「サクセスウェイト」になる。レースでいい結果を残したことにより与えられるウェイトなので、「サクセス」というわけだ。
一方、使用タイヤ制限にも見直しが行われる。これまでドライタイヤのセット数は各大会で7セットだったが、6セットになった。戦略の見直しが必要となるが、第2戦以降はシーズン中の未勝利チームに限って1セット(ただしドライタイヤ)を追加供給してもらえる。近年、タイヤが勝敗のカギとなるレース展開も多く、シーズンを通して”ひとり勝ち”の状況をできるだけ回避すべき、というSUPER GTならではの”見せ方”を意識した規制改定といえるだろう。
そしてGT300クラスでは、各大会ごとに規則書で定められていた予選の組分けが正式にレギュレーションに則った扱いになった。Q1をA、Bの二組に分け、Q2をかけたタイムアタックが実施されることになる。
なお、岡山での開幕戦は特別規則によって、決勝時には最低1下位のタイヤ交換義務が発生する。これはドライタイヤ(スリック)でスタートすることが前提だが、タイヤ交換も同時に4本交換を義務化。GT300クラスではタイヤ無交換で上位フィニッシュを目論むチームも少なくないため、戦略の変更を強いられるチームもあるのではないだろうか。
今シーズン、各チームの戦闘力を垣間見るのにふさわしい開幕戦。戦いの行方に注目だ。
主なスケジュール
たかのこのホテル OKAYAMA GT 300km RACE
4月10日(土)
09:45〜11:10 公式練習(GT300+GT500)
11:10〜11:20 公式練習(GT300専有)
11:20〜11:30 公式練習(GT500専有)
14:00〜14:10 公式予選Q1 GT300 A組
14:18〜14:28 公式予選Q1 GT300 B組
14:33〜14:43 公式予選Q1 GT500
14:53〜15:03 公式予選Q2 GT300
15:11〜15:21 公式予選Q2 GT500
4月11日(日)
09:00〜09:30 SGTドライバートークショー
10:50〜11:15 ドライバーアピアランス
11:30〜11:45 オープニングセレモニー
11:55〜12:15 ウォームアップ
12:15〜13:30 スタート進行
13:30〜 決勝 300km RACE(82周)