SUPER GT 2021 Round.5
カルソニック IMPUL GT-R、5年ぶりの勝利を飾る
9月12日、宮城・スポーツランドSUGOにおいてSUPER GT第5戦決勝レースが行われ、秋晴れの下で83周の戦いを繰り広げた。レースは、予選3位スタートのNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治組)が安定感ある強いレース運びを見せ、トップチェッカー。シーズン初勝利を果たしている。
前日の予選は薄曇りの一日だったSUGO。低い路面温度に予選アタックで苦しむチームもいたが、決勝日は朝から秋晴れの空がサーキット一面に広がった。また気温、路面温度も上昇し、夏日の中での決戦を迎えることとなる。午後1時30分、気温29度、路面温度46度の中、フォーメーションラップがスタートし、2周を終えたところでスタートする予定だったが、隊列が整わずにさらにエキストラフォーメーションへと突入。結果としてレース周回数が1周減算されて83周での戦いへと変わった。
レースは予選と同じく、ポールスタートのNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)がライバルを圧倒する速さで順調な滑り出し。予選2位No.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹組)と同3位のNo.12 カルソニックIMPUL GT-Rが鍔迫り合いを続けたこともあり、後続との差を瞬く間に広げて12周を終えた時点で12.3秒、15周目には20秒超という大きな差を築いた。一方、予選4番手のNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組)も加わった2番手争いは、一旦17号車が先行するも16号車がポジションを挽回。しかし12号車も諦めずに攻防戦に再び加わると、21周目には2番手へと浮上。徐々に精彩を欠き始めた16号車に代わり、17号車が3番手に上がり、周回を重ねていく。
次なる動きはルーティンのピット作業。27周終わりから複数のチームがピットインを実施、トップ3の中で一番早く作業にとりかかったのが17号車で29周終わりでのピットインとなった。すると、トップを快走する8号車がピットイン。その2周後には12号車も続いた。各車コンスタントにピットへ戻り、36周目には全車両のルーティンワークが完了。これで後半戦の戦いが幕を開けることになった。トップは変わらず8号車。12号車がこれに続き、3番手には17号車、そしてなんと4番手には予選10位から大きくポジションを上げたNo.1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)が浮上する。1号車はピットインが可能となる27周終わりにピットイン。しかも同じタイミングでピットインした予選7位のNo.38 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)をピット作業で先行する圧巻のパフォーマンスを見せた。
レース前半で圧倒的な速さを見せつけていた8号車だが、後半に入ると背後の12号車がペースアップ。その差を周回ごとに削り始め、42周目には約6秒まで迫ることに。終盤にかけて2台が熾烈なトップ争いを繰り広げることへの期待が膨らんだが、45周目を走行中の8号車に対し、なんとドライブスルーペナルティの裁定が下った。本来、ピットでのタイヤ交換時は、外したユーズドタイヤを平置きしなければならないにも関わらず、車体に立てかけてしまったことが問われてしまったのだ。ただ、チームではこの状況を把握できておらず、オフィシャルへの確認に時間がかかり、すぐにペナルティを消化せずコース上でステイアウトを続ける判断を下した。すると、コース上では46周目に1台の車両がトラブルから失火。最終コーナーからメインストレートへと向かう途中でクルマを止めてしまう。ボンネット周辺から黒煙が上がり、また火災も発生したことから消火作業が必要となり、セーフティカーがコースインする。一方、8号車はペナルティの消化ができないまま引き続き周回を続けたが、ピットレーンがオープンした時点でピットに戻るなど度重なるチーム内でのコミュニケーションミスにより、複数回のペナルティがその後も続き、大幅にポジションを落としてしまった。
消火作業がようやく終わり、レースは54周目にリスタート。8号車の首位陥落でトップに立った12号車を先頭に、17号車、1号車と続き、その背後にはSCランで差が縮まったNo.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/阪口晴南組)、さらにNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一組)のSupra勢も追い上げを見せ、激しいポジション争いが繰り広げられた。そんな中、63周目を迎えたメインストレートで1台の車両がスローダウン。力なく1コーナー手前のストレートエンドのイン側にクルマを止めたことからFCY宣言が出て、車両回収が行われた。作業そのものは短時間で終了して翌周にはレース再開となったが、各車の差が再びほぼ皆無となる中、3位の1号車がすかさず17号車を逆転する。どうやら17号車はFCY解除の操作ミスがあり、1号車にその隙きを突かれてしまったという。逆に12号車は安定した速さで2位以下を引き離す走りを見せてチェッカーまで突き進み、最後は後続におよそ9秒近い大差を着けてゴール。悲願のシーズン初優勝を実現は、2016年8月の第5戦富士以来となる勝利でもあった。
サバイバル戦となった今大会の結果により、チャンピオン争いにおけるトップは1号車の山本(牧野は途中参戦により2位)に変わりはないものの、No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)に代わり、17号車が続くことになった。
一方、GT300ではNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)が今季3度目のクラスポールポジションを獲得。予選では圧倒的な速さを誇るものの、念願である優勝がいまだ果たせていない61号車が、このSUGOでどんなレース運びを見せるのか、注目が集まったのは言うまでもない。
レースはオープニングラップからポールスタートの61号車が着実に後続との差を築き、予選2番手のNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/名取鉄平組)を引き離していく。一方、スタート直後からポジションアップを狙っていた予選5番手のNo.55 ARTA NSX GT3(高木真一/佐藤 蓮組)は、オープニングラップで4位に浮上すると、3周目には予選3位のNo.60 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑とのバトルを制して3位に。快進撃の55号車はなおも手綱を緩めることなく18号車を攻め立て、ついに21周目に逆転を果たす。この勢いで55号車はトップを目指してプッシュ。だが好調の61号車を攻略するまでには至らず、35周を終えてルーティンのピットインを行った。
これに対し、61号車はトップをキープしたまま37周終わりでピットイン。ほぼ似たようなタイミングでルーティンのピットインを済ませる他チームも多く、改めて後半戦のポジション争いが幕を開けた。レースは50周を過ぎてなおピットインをせずに周回を重ねる車両も見受けられたが、実質トップは61号車で変わらず。これに55号車、そしてライバルに先んじてピットインし、左タイヤ2本のみ交換する勝負に出たNo. 4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)が3番手に続いた。
そんな中、レースは46周の時点でGT500車両の1台が車両トラブルから火災を起こし、セーフティカー導入が行われた。54周にレースがリスタートすると、チャンスとばかり2番手の55号車がトップ61号車へ迫ろうとプッシュ。テール・トゥ・ノーズの末に2台は接触。これで61号車の左バンパーの一部が破損したが、大事には至らずそのままの順位で周回を重ねていった。その後、64周目にはメインストレート先でGT500車両の1台がマシントラブルでコースサイドに停止。今度はFCY宣言が出たが、わずか1周ほどで解除に。61号車の速さはレース再開後も変わることなく、気がつけば2位に大きな差を築く快進撃を終始披露した。
終盤、トップ61号車は2位55号車に対し、10秒強のマージンを確立。ついに待望のシーズン初勝利を挙げることになり、チームへ3年ぶりとなる勝利をもたらした。一方、55号車に次いで3位フィニッシュを果たしたのは、No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)。81kgという厳しいサクセスウェイトをものともせず、安定した粘りの走りで終盤に3位へ浮上するという底力を見せつけている。今大会の結果により、61号車はシリーズランキングでもトップに浮上。そして僅か1点差で56号車が追う形となっている。
第5戦スポーツランドSUGO 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.12 カルソニックIMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治組)1H56’41.101 83Laps
2.No.1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)+8.511
3.No.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組)+11.145
GT300
1.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)1H56’55.821 78Laps
2.No.55 ARTA NSX GT3(高木真一/佐藤 蓮組)+11.442
3.No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)+13.633