SUPER GT 2021 Round.3
SUPER GT第3戦鈴鹿 プレビュー
灼熱の鈴鹿は前半戦の締めくくりの一戦
梅雨明け間近だったもてぎ戦から1ヶ月半。日々厳しい猛暑が続く中、8月21日から第3戦鈴鹿大会が始まる。もともと5月開催を予定していた一戦だが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点で延期になった戦いでもある。昨シーズンもほぼ同じ時期で行われた鈴鹿戦。今シーズンの前半戦を締めくくる一戦は、ライバルとの激しいバトルに加え、暑さとの戦いにもなりそうだ。
■かつては1000kmレース開催も
ギラギラ太陽が照りつける中での開催となる第3戦鈴鹿。この季節の鈴鹿は、これまでも”真夏の一戦”が行われてきた。そう、鈴鹿1000kmレースだ。かつてSUPER GTでも全日本GT選手権でもなく、単独レースの「鈴鹿1000km」として日本のモータースポーツイベントの中で長く君臨してきた。開催初年度は1966年。その後、オイルショックの影響を受けて1974年から6年にわたり中止していたが、1980年に再開。のちに国際格式のレースに格上げとなり、国内に留まらず海外からの”刺客”が訪れる名物レースとして歴史を刻んできた。
その中で、SUPER GTのシリーズ戦として組み込まれるようになったのは2006年から。当初はシリーズ戦最長距離のレースであったため、このレースに限って3名のドライバー登録が可能になるなど”スペシャル”な一戦だったが、のちに500km、700kmでの短縮して開催されることもあった。そして、2017年をもってSUPER GTとしての1000kmレースが終了。翌年からはインターコンチネンタルGTチャレンジ(IGTC)のシリーズ戦として「サマーエンデュランス鈴鹿10時間耐久レース」として開催が始まり、SUPER GTとは一線を画すことになった。
■真夏の一戦はシーズン前半戦を締めくくる戦い
8月下旬の名物レースがSUPER GTのシリーズから離れたことになり、2018年からは5月、第3戦として開催。ちょうどシリーズ序盤から中盤にかかるタイミングで実施されるようになった。まだ厳しい暑さというほどでもなく、ウェイトによる影響もまだまだ凌ぐことができるレベルの中での一戦だった。実際、2018年、2019年の戦績を見ると、予選で上位につけて手堅い戦いをしたチームが好結果を残している。ところが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、大幅にスケジュールの見直しを迫られた昨シーズンは少々勝手が違った。季節的にはほぼ今シーズンと同様だが、レース当日は厳しい暑さもあり、波乱含みの展開となった。その中で気を吐いたのが日産勢。GT500クラスではしばらく優勝から遠ざかっていたNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が2018年第2戦富士以来となる優勝を達成。GT300クラスとのダブルウィンを飾ったのも記憶に新しい。開幕戦から今ひとつ勢いを欠く日産勢が、相性のいい鈴鹿で息を吹き返すいいチャンスが巡ってきたとも言えるのではないだろうか。
■ランキング上位チームは”凌ぐ”戦いに
開幕戦の岡山、続く富士、暑さ厳しい一戦だったもてぎを終え、ランキングトップはサクセスウェイト70キロのNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)。前回もてぎでポール・トゥ・フィニッシュを飾ったNo. 1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)が同64キロで続き、同54キロのNo.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/阪口晴南組)が続く。現在、ランキング6位までが50キロ超のウェイトを搭載しており、実力伯仲といったところか。結果的にはリストリクター流量の調整が行われることから、トップスピードを発揮する走りは難しいが、そこはテクニカルコースの鈴鹿だけに、戦略をうまく組み立てたい。チーム力という総合力を武器に勝負に挑んでくるだろう。
一方、速さは存分に発揮しているものの、それが決勝結果に結びついていないチームにとっては、この鈴鹿が勝負どころになってくる。その筆頭株として上げられるのは、No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)だろう。同じホンダ&BS装着車の1号車とNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組)が各1勝を上げていることを考えると、おのずと「次は自分たちの番」と虎視眈々と今シーズン初勝利を見据えてアプローチしてくるに違いない。さらに昨年の鈴鹿優勝車である23号車の存在も見逃せない。開幕から2戦連続でリタイヤを喫し、前回のもてぎではようやく予選Q2進出を果たし……と、正直かつてのチャンピオンとしては厳しいシーズンを過ごしているのだが、真夏の一戦は足元を飾るミシュランタイヤにとっては追い風にもなるだけに、百戦錬磨のパフォーマンスに期待したいところだ。
■GT300クラス、GT3車両に特別措置
前回のもてぎでは、No.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)が申し分のないレース運びを披露。ところが、レース中、2度のFCY(フルコースイエロー)によって勝利へのシナリオが大きく変わってしまう。絶妙なピットインのタイミングで完璧なまでにFCYを味方にしてしまったNo. 2 muta Racing Lotus MC(加藤寛規/阪口良平組)に優勝をさらわれ、2位表彰台が何よりも辛いものになってしまった。一方、ランキング争いでは、この11号車とNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)が75ポイントで並び(正式には獲得ポイントによって、65号車が1位)、3ポイント差で昨シーズンのクラスチャンピオン、No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が続いていることを考えれば、シーズン中盤に向けて上位ランカーのチームは、まず手堅い戦略でライバルを牽制する戦いを続けるのが得策ともいえる。その一方で、まだサクセスウェイトが軽いチームはそのことを武器に上位進出を狙ってくるのも確か。いずれにせよ、ミスなくしっかりと戦い抜くことが最優先になるだろう。
そんな中、プロモーターのGTAは高気温、高湿度下における熱中症予防の観点から、鈴鹿戦を皮切りに第6戦オートポリス(10月23〜24日)まで、車室に換気口の設置を認める特別措置を実施するとした。この特別措置はFIA-GT3車両に限定されるが、基本的に改造が認められない車両に対して許可したことを考えれば、いかに厳しいコンディション下での開催になるか、おわかりいただけるのではないだろうか。存分な戦闘力を引き出せる環境を整えた上で、素晴らしいバトルを展開してもらいたいものだ。
■主なスケジュール
FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE
8月21日(土)
08:55〜10:30 公式練習(GT300+GT500)
10:30〜10:40 公式練習(GT300専有)
10:40〜10:50 公式練習(GT500専有)
14:30〜14:40 公式予選Q1 GT300 A組
14:48〜14:58 公式予選Q1 GT300 B組
15:03〜15:13 公式予選Q1 GT500
15:23〜15:33 公式予選Q2 GT300
15:41〜15:51 公式予選Q2 GT500
8月22日(日)
09:40〜10:00 SGTドライバートークショー
12:30〜12:55 ドライバーアピアランス
13:10〜13:30 ウォームアップ
13:30〜14:30 スタート進行
14:30〜 決勝 300km RACE(52周)