SUPER GT 2014 Round.6
SUPER GT第6戦鈴鹿、過酷な1000kmを制したのは、ポールスタートのNo.36 PETRONAS TOM’S RC F!
8月最後の日曜日、三重・鈴鹿サーキットにおいてSUPER GT第6戦「43rd International Suzuka1000km」の決勝レースが行われ、ポールポジションからスタートを切ったNo.36 PETRONAS TOM’S RC F(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)が優勝。チームにとって待ちわびた今シーズン初優勝を飾ることになった。
例年ほどの暑さを感じないレースウィークとなった鈴鹿サーキット。日中は時折強い日差しが照りつけることもあったが、コース1コーナー側からほどよい風が吹き、気温も30度を超えることはなかった。
決勝日を迎えた鈴鹿は夏休み最後ということもあり、多くのレースファンで埋め尽くされた。前日の予選には2万5千人、そして決勝日には3万6千人がサーキットを訪れ、国内最速GTマシンによる熾烈なバトルを楽しんだようだ。なお今回の1000kmレースはシーズン最長の戦いであり、1周5.807kmの鈴鹿国際レーシングコースを173周する過酷な一戦でもある。まずは午前中にいつもと変わらぬ30分間のフリー走行があり、各チームとも本番に向けての最後の準備、確認を入念に行っている。
午後12時15分、グリッド上に整列したGT500の15台、GT300の24台、合計39台のモンスターマシンが三重県警の白バイとパトカーに先導されて、パレードラップに向う。その後、フォーメーションラップを経て、12時24分に戦いが始まる。クリアなスタートを決め、1コーナーへのホールショットを奪ったのは、ポールシッターのNo.36 PETRONAS TOM’S RC F。ステアリングを握るジェームス・ロシターは、順調に周回を重ね、着実に後続との差を広げていく。その一方で、後続車では予選8番手のNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTと同9番手のNo.1 ZENT CERUMO RC Fがダンロップコーナーで接触。100号車の小暮卓史がスピンアウト、最後尾へとポジションを落とすだけでなく破損したパーツの取り外しのためにピットインを余儀なくされた。
トップの36号車は順調な滑り出しを見せたものの、10周目、GT300の車両をラップダウンする際、130Rで行き場を失い、タイムロス。そこに2番手No.17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTの塚越広大が詰め寄り、メインストレート手前で逆転に成功する。前回の富士戦では予選でNSX CONCEPT-GT初となるポールポジションを獲得、勢いに乗る塚越は、その後も着実に2位36号車との差を広げて行く。その一方で、後続車ではトラブルが続出。No.19 WedsSport ADVAN RC F、No.24 D’station ADVAN GT-Rはともに右フロントタイヤのバーストに見舞われ、緊急ピットイン。またNo.46 S Road MOLA GT-Rはエンジン関係のトラブルが発生。一旦ピットインするも、エンジンルームからの出火があり、その後のレースを断念することとなった。
今回のような長丁場の戦いでは、ルーティンピットのタイミングも戦略に大きな影響を与える。GT500の中で最初にルーティンワークとしてのピットインを行ったのは、No.18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT。スタートからまだ1時間も経たない時で、ライバルよりかなり早めのタイミングだった。実のところ、チームでは当初4ストップ/5スティントの予定だったが、スタートドライバーの山本尚貴がタイヤに異変を感じ、チームと無線でやりとりした末にピットインを敢行したのだ。実際にタイヤはスローパンクチャーを引き起こしていたが、早めのピットインで事なきを得ている。一方で、5ストップ/6スティントを予定していたチームもこの後、次々にピットイン。レースの5分の1を消化する頃には順調な立ち上がりとなったチームがほぼ1回目のピットインを済ませることになり、各チームの戦略がほぼ明らかになった。
そんな中、トップ争いをしていた2台は異なる戦略を採っていた。2番手だった36号車は29周終わりで、一方17号車は34周終わりでそれぞれピットイン。タイヤ交換、ガソリン補給、そしてドライバー交代とすべての作業を済ませて第2章の戦いへ突入したが、ピット作業の時間で36号車が17号車を上回った結果、17号車の金石年弘がコースへと復帰したときには、すでに36号車の中嶋一貴が背後に迫っており、S字で逆転に成功。その後は36号車の快進撃に勢いがつく。
だが、好事魔多しの言葉どおり、耐久レースならではのミスがトップを襲う。58周終わりで2度目のルーティンを行った36号車。ドライバー交代の際、ハーネスが絡まってしまってタイムロスを計上。1分4秒近い作業となり、この間隙を縫って17号車がトップを手にする。68周終わりで2度目のルーティンを迎える17号車はその後もトップをキープ可能かと思われたが、36号車はロスタイムを上回るそれまでの“貯金”を活かし、再びトップを奪取する。総体的な力強さを大いに見せつけた36号車は、その後2番手以降の車両を引離しにかかり、ほぼレース中間点にあたる87周終わりで3度目のルーティンを実施した。するとその同じ周、17号車は130Rをオーバースピードで進入、コースアウトの上に、右側のリアを大きく破損させるアクシデントに見舞われる。ピットアウトしたばかりの36号車に代わってトップに立つことは叶ったが、その翌周に緊急ピットイン。ダメージは大きく、そのままクルマはピット内へと収められ、その後、姿を現すことはなかった。
これで暫定トップに浮上したのは、No.23 MOTUL AUTECH GT-R。次第にペースアップを見せはじめた23号車は、36号車の最強のライバルとしてレースを牽引。116周終わりで4度目のルーティンを終えてコースに出てきたばかりの36号車・ロシターとひと足先にルーティンから復帰していた23号車松田との丁々発止は、レース後半の中でもひとつの見どころとなった。結果は、ロシターの粘り勝ち。これを境に2台の距離は少しずつ開きはじめ、残り20数周を迎える頃には、36号車は2位との差を40秒強つけて、盤石の態勢を作り上げることに成功。そのままノーミスを貫き、トップチェッカー! 今季待望の初勝利をポール・トゥ・フィニッシュで果たすことになった。2位の23号車に続き、3位に入ったのは、No.18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT。終盤、18号車の前を走るNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(石浦宏明/オリバー・ジャービス組)とNo.8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ組)が立て続けにトラブル発生。序盤の出遅れを粘りと攻めで挽回した18号車が表彰台の最後のひとつを手にしている。
予選ではJAF GT車両がトップ3を独占したGT300。しかしながら、レースはまた異なるドラマが展開することになった。決勝ともなると、それぞれが思うほどペースアップできず、代わって黒船集団であるFIA GT車両が幅を利かせるようになる。中でも早い段階からペースアップに成功していたのが、No.60 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹/佐藤晋也組)。レース開始からおよそ2時間で2番手までポジションアップを果たしていた。
一方、ポールポジションからのスタートを切ったNo.55 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志組)は、なおもトップの座をキープ。後方から忍び寄る60号車の存在をつねに気にしつつ、ノーミスでの周回を重ね、緊迫したレース展開が長らく続いた。そして迎えた61周目。メインストレート上で55号車を捕らえた60号車がその先の1コーナーで逆転に成功。ついにトップに浮上する。だが抜かれた55号車も懸命の猛追。再び激しい攻防戦をも展開したが、徐々に60号車の底力がこれを上回り、2台の差がじわりじわりと広がっていった。
最後の最後までこの2台による駆け引きが続くかと思われたが、終盤、55号車が急激なペースダウンに見舞われ、攻防戦に終止符が打たれる。2台の差がうんと縮まったと思った矢先、エンジン系トラブルが発生。緊急ピットインで対処しようとしたが、ピットイン後は失火なども見られたため、チームでは出走を断念。まさかの幕引きだった。これで60号車はトップ安泰。2位に浮上したNo.31 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀/中山雄一組)も満身創痍の状態のため、ペースアップは難しく、逆に3位に浮上したNo.7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治/アウグスト・ファルフス組)の猛追をかわすのが精いっぱい。結果、60号車が逃げ切りに成功。チーム創設初年度に初勝利をあげることになった、2位の31号車は今季3度目の入賞で初表彰台を獲得。3位の7号車は、開幕戦2位以来の表彰台に上がっている。
■第6戦鈴鹿 決勝結果
・GT500
1.No.36 PETRONAS TOM’S RC F(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)5:37’27.911 173L
2.No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)+50.549
3.No.18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ組)+1Lap
4.No. 8 ARTA NSX CONCEPT-GT(ヴィタントニオ・リウッツィ組)+1Lap
5.No. 6 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋和也/国本雄資組)+2Laps
6.No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀組)+2Laps
・GT300
1.No.60 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹/佐藤晋也組)5:39’21.300 160L
2.No.31 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀/中山雄一組)+1Lap
3.No.7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治/アウグスト・ファルフス組)+1Lap
