11月23日、三重･鈴鹿サーキットで行なわれた全日本スーパーフォーミュラ選手権第12戦決勝が行なわれ、ポールポジションからクリアスタートを決めたNo.15 岩佐歩夢（TEAM MUGEN）が強いレースを披露。ライバルの猛追を跳ね除けて今季2勝目を達成。この結果によってシリーズタイトルでも劇的逆転を果たし、2025年の王者に輝いた。
 

第12戦鈴鹿ラウンド　予選

最終ラウンドの鈴鹿は、前回の富士大会で決勝がキャンセルされた第10戦の決勝レースも代替戦として実施される変則的なスケジュールで執り行われた。最終日の23日はまず午前中に第10戦の決勝レースが行なわれ、その余韻が残るなか、午後2時30分から今シーズン最後の戦い──第12戦決勝が幕を開けた。
 

通常、1大会で複数のレースを実施する場合、各日午前中に予選、そして午後に決勝を行なうスタイルだが、前述のように午前中に第10戦決勝がスケジュールされたことを受け、第12戦の予選は前日22日の午前中に行なわれている。
 

なお、第12戦予選に先立ち、各選手は第11戦予選を走行済み。そのときの感触やデータをもとに第12戦予選に挑むこととなった。Q1A組、B組では、タイトル争いに可能性を残す6選手が難なくQ1を突破。一方、金曜のフリー走行から速さを見せるPONOS NAKAJIMA RACINGのNo.64 佐藤蓮、No.65 イゴール･オオムラ･フラガも速さをアピールした。
 

早朝、眩しい日差しに恵まれた鈴鹿だが、第12戦Q2を前にして少し日が陰り始める。また、コース上はほぼ無風に変わっており、各車が施したセットアップにどのような影響を与えるかも気になるところ。出走した12台のなかで早めのアタックララップに入ったNo.16 野尻智紀（TEAM MUGEN）が軽快に最速のセクタータイムを刻む一方、その後方でアタックする僚友のNo.15 岩佐歩夢（TEAM MUGEN）がこれを更新する勢いを見せる。
 

まず、野尻が1分35秒973でトップチェッカーを受けると、これに続いたNo. 6 太田格之進（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）やNo. 5 牧野任祐（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）は野尻を上回ることができず。そんななか、岩佐が1分35秒910のタイムでトップを奪取。野尻とは僅か0.063秒の差でポールポジションを獲得。第11戦に続き連続のポールポジションをゲット、さらに3点を計上することに成功した。
 

一方、先に行なわれた第11戦予選で予選9番手に甘んじたNo.1 坪井　翔（VANTELIN TEAM TOMʼS）は、第12戦予選でもその流れを変えることができず。トップ岩佐から0.435秒遅れの7番手に留まり、予選トップ3に与えられるポイントも加点できずに終わっている。
 

第12戦鈴鹿 予選トップ3

１．No.15 岩佐歩夢（TEAM MUGEN）1’35.910
２．No.16 野尻智紀（TEAM MUGEN）1’35.973
３．No.64 佐藤 蓮（PONOS NAKAJIMA RACING）1’36.192

第12戦鈴鹿ラウンド　決勝

迎えた第12戦の決勝。鈴鹿は連日晩秋の晴れ模様となり、絶好のレース観戦日和に恵まれた。土曜日は2万8千人、そして日曜日には3万6千人ものファンが来場。最終決戦でタイトルの行方を見守る戦いの舞台にふさわしい盛り上がりを見せた。
 

午前中に行なわれた第10戦の余韻が残るなか、午後2時30分、気温20度、路面温度29度のコンディション下でフォーメーションラップが始まり、31周の戦いが幕を開ける。岩佐は難なくクリアスタートを切ったが、もうひとりのフロントロウ、野尻は失速。代わって予選3番手の佐藤がポジションを上げてその勢いで岩佐に迫ると、1コーナーに向かってアウトへとクルマを振って逆転を試みた。岩佐はかろうじてこれをシャットアウト。オープニングラップは岩佐、佐藤、そして予選5番手スタートの牧野が3番手にジャンプアップを果たし、太田は予選と変わらぬ4番手から戦いを始める。
 

一方の坪井はスタートで出遅れ、ひとつポジションを落として周回。また、2番手スタートの野尻は12番手までドロップ。厳しい状況を変えようと1周終わりで早速ピットイン、タイヤ交換を済ませてコース復帰する。”ウラ”のトップからレースを組み立てる戦略を採る形となった野尻だが、復帰した先には坪井が立ちはだかることに。だが、タイトルがかかる坪井も粘りを見せ野尻の猛追をシャットアウト。ひとつでもポジションを上げるべく、周回を重ねた。
 

ライバルの動きを見て、次に動きを見せたのは太田。6周目にピットへ飛び込み、タイヤを交換。見事坪井の前でコース復帰を果たしてみせる。対する岩佐は太田のアンダーカットを防ぐため7周目にピットイン。これが奏功し、タイヤ交換組のトップに立って”ウラ”のグループで再びレースを牽引した。
 

レース中盤に向かうなか、11周目のシケインを走行する2台が接触。その勢いで1台がシケインイン側にクルマを止めたため、コースにはセーフティカー（SC）がコースイン。このタイミングを味方にしようと佐藤や牧野を含め、ピットイン未完了の全車がコースに帰還する。結果、岩佐を先頭に、太田、佐藤、牧野、さらにフラガと続き、坪井は7番手で”追いかける”戦いが改めて始まった。
 

レースは14周終わりでリスタートを迎えると、1コーナー飛び込みで圧巻の逆転劇を見せたのが、フラガ。間髪容れず牧野を抜き去り、4番手に浮上する。また、佐藤が16周目のシケインで太田に迫るとその勢いのままS字で逆転。PONOS NAKAJIMA RACINGの2台の躍進がシリーズタイトルの行方に影響を与える展開になる。牧野は逆転を狙ってフラガを猛追するも、この日の午前に行なわれた第10戦で自身SF初優勝を遂げたフラガは冷静にこれを退けポジションを死守。牧野も最後まで粘りの走りを見せたが、ポジションを取り戻すことはできなかった。
 

ホンダ勢が上位で緊迫のポジション争いを繰り広げる一方、タイトル獲得に黄信号が灯る坪井は、トヨタ勢同士のポジション争いに耐える展開に。レース序盤は前を走るNo. 8 福住仁嶺（Kids com Team KCMG）を追っていたが、思うようにペースが上がらないなかで終盤を迎え、背後のNo.38 阪口晴南 （SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO･INGING）に21周のメインストレートで逆転を許して8番手となる。
 

レース終盤、トップ岩佐と2番手佐藤の差は依然として1秒を切る僅差ながら似たようなペースで周回を続けており、ほぼ膠着状態。また、3番手の太田はチーム無線でクルマの不調を訴えており、その後はポジションキープでの走行を優先することに。よって31周にわたる戦いは、岩佐がトップチェッカーを受けて優勝。佐藤がキャリアハイの2位を獲得し、3位には太田が続く形でシーズン最後の戦いが終わった。
 

この結果を受け、今シーズン2度目となるポール･トゥ･ウィンを達成した岩佐が大逆転によるシリーズチャンピオンを獲得。8位フィニッシュの坪井が2位となり、太田が坪井と1.5点差で3位に続いた。
 

最終戦まで混沌としたタイトル争いを繰り広げた今シーズンのスーパーフォーミュラ。来場者数もレースを重ねる毎に増え、シーズンを通して26万3900人の動員となった。引き続き来シーズンも白熱の戦いに期待が集まる。
 

第12戦鈴鹿 決勝トップ3

１．No.15 岩佐歩夢（TEAM MUGEN）57’05.362 31Laps
２．No.64 佐藤 蓮（PONOS NAKAJIMA RACING）+0.731
３．No. 6 太田格之進（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）+5.797
 

2025年シリーズランキング トップ3

１．No.15 岩佐歩夢（TEAM MUGEN）124点
２．No.1 坪井　翔（VANTELIN TEAM TOMʼS）119.5点
３．No. 6 太田格之進（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）118点