SUPER FORMURA 2025 Round5
天候不良の影響でワンデーレースとなったAP。予選5位の坪井翔が制する!
5月18日、大分・オートポリスにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦の予選および決勝が行なわれた。午前の予選を経て、午後の決勝を快走したのは、予選5位スタートから速さを見せたNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)だった。
第5戦 予選
3月に鈴鹿サーキットで開幕した今シーズン。その鈴鹿、そして次のモビリティリゾートもてぎ大会は、1イベント2レースの”ダブルヘッダー”での戦いとなり、1日で予選と決勝を行なうスタイルが採られていた。そして迎えた今回のオートポリスは、土曜日に予選、日曜日に決勝を行なう”オーソドックス”なフォーマットが予定されていた。
ところが、迎えた予選日は降り続く雨、そして強風が吹き付ける悪天候に見舞われ、雨が止めば今度は濃い霧が立ち込める悪循環が続いた。結果、午前中の走行をすべて見送り、午後からフリー走行を実施する予定だったが、依然として天候回復は見込めず全セッションがキャンセルされた。
これを受け、18日の日曜日は、朝から計時方式の予選が実施され、40分間でのアタック合戦が繰り広げられた。いつもであれば、2組に分かれてノックアウトでのアタックを実施するが、全22台がセッション開始と同時にコースになだれ込む姿は圧巻。前日まったく走行する機会が与えられなかったドライバーは、持ち込みのセッティングを確認しつつ、またタイヤのフィーリングを掴もうと精力的に周回を重ねる。
セッションが折り返しを迎える段階で、トップにつけるのはNo. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)。1分27秒020を刻み、これにNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が1000分の7秒という僅差で続き、No.65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)が3番手につけた。
その後、チェッカーまで残り15分の時点で野尻が1分26秒757をマークし、トップを奪取。さらに残り10分を切ると、No. 3 山下健太(KONDO RACING)がタイムを削り、1分26秒803で2番手に浮上すると、これに続くようにNo. 7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)が3番手へとポジションを引き上げた。
セッション終了まで残り5分を前にピットへ戻っていた各車は、足元にニュータイヤを装着。一斉にコースへと向かってラストアタックを開始する。そのなかでアタックラップの1コーナーでブレーキをロックさせた野尻がコースアウト。その勢いでフロントウィングを失ったが、自力でコース復帰する。一方、No.37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOMʼS)がコースアウトし、最終コーナーのアウト側でストップ。自らコースに戻れず。このほか、No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)もバランスを崩す痛恨のミスを犯すなど荒れた展開となり、大半のドライバーがベストラップ更新のチャンスに恵まれず、不本意なポジションに甘えることになった。
結果、野尻が通算22回目となるポールポジションを獲得。最多記録をまたひとつ伸ばした。2番手は山下、そして3番手には前回のもてぎをWEC参戦のために欠場していた小林が続いた。なお、現時点でランキングトップのNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は9番手、また同2位の牧野は13番手からスタートを切ることになった。
【第5戦オートポリス 予選トップ3】
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’26.757
2.No. 3 山下健太(KONDO RACING)1’26.803
3.No. 7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)1’26.928
第5戦 決勝
曇天模様が続くオートポリス。気温17度、路面温度20度と難しいコンディションのなか、いよいよ決勝を迎える。ポールスタートの野尻がクリアスタートを決める一方、グリッド3、4番手のKids com Team KCMGの2台_小林可夢偉と8号車の福住仁嶺が蹴り出しで遅れ、その背後の5番手スタートであるNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)がオーバーテイクシステム(OTS)を活かしてポジションアップに成功。オープニングラップを終えた時点で予選2番手の山下をも逆転し、2位から追い上げを始めた。また、山下は予選7番手から大きくポジションを上げたNo.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)にも抜かれ、4番手で周回を重ねていく。
なお、今回のレースではルーティンのピット作業においてピットウィンドウを設けていない。気温、路面温度が思いのほか低いため、各チームの戦略が気になるところだったが、2周を終えて4周目まで毎周のようにピットインが続いた。
上位争いは、トップ野尻が安定した速さを披露。坪井はおよそ3秒強後ろで周回する。さらに岩佐が坪井を1.5秒前後で追う形だったが、そのなかで先に揺さぶりをかけたのが岩佐だった。レース折り返しを前にした14周目に岩佐はピットイン。ところが左リヤタイヤ交換に若干時間を要してしまう。だが、これを挽回すべくファステストラップを叩き出しながら猛追を続けた。一方、トップ2台は19周終わりで同時にピットへ。ともにスムーズな作業を終えてコースに復帰したが、冷えたタイヤをコントロールするなか、ひと足先に作業を終えていた岩佐がコース上で2台の前に出ることに成功。また、坪井も野尻を攻略し、岩佐を追った。
ところがその矢先、No. 4 ザック・オサリバン(KONDO RACING)がコースアウトを喫し、グラベルにストップ。これで黄旗が提示され、加えてセーフティカーがコースインする。すると、まだピットインを実施していなかった上位陣の山下、No.64 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、No.38 阪口晴南 (SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)がピットイン。入賞圏内を走るNo.20 高星明誠(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)もこれに続き、結果としてコース上の全車がルーティンのピットインを終えることになった。
このあと、レースは24周終わりでSCがコースインし、レースがリスタートを迎える。トップ岩佐に1.3秒差で続くのは、坪井。ほぼ同じ間隔で野尻、山下が続いた。この頃になると、コース上には霧が出始めて視界が少しずつ悪くなってはいたが、岩佐はスピードをキープし、逃げの態勢へ。ところが、27周目に入った岩佐が突如としてスローダウン。無線を通し、タイヤが外れたという悲痛の叫びが聞こえてきた。
後続のライバルたちが続々と岩佐を抜き去り、代わって坪井がトップに。野尻も1秒を切るギャップで追い立てるが、周回を重ねるなかでトップ坪井との差が徐々に広がり、山下に至っては、トップ2台に離される形に。結果、トップ3はポジションを変えることなくこのままチェッカー。一方で、4位争いは終盤になって牧野を攻略した佐藤がモノにした。その牧野だが、予選13番手からのスタートと苦戦するなか、粘りの走りを見せて確実にポジションアップ。終盤になると、阪口に先行を許して6位フィニッシュとはなったものの、チャンピオン争いでは僚友のNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を逆転、4ポイントリードの形でランキングトップに立つこととなった。
シーズンの第5戦を終えたスーパーフォーミュラの次なる舞台は、富士スピードウェイ。およそ2ヶ月のインターバルが設けられる。この間、公式テストも行なわれるため、シーズン中盤にはまた違った勢力図を目にすることができるのか。序盤に不調が続いたドライバーやチームの挽回にも期待したい。
【第5戦オートポリス 決勝トップ3】
1.No.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)1H07’24.070 41Laps
2.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)+1.104
3.No. 3 山下健太(KONDO RACING)+4.394
SF第5戦オートポリス、予選日は悪天候に翻弄される
5月17日、大分・オートポリスで開幕した全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦。当初の予定では、午前に1時間半のフリー走行、午後からはノックアウト方式の予選が行なわれる予定だったが、悪天候による影響でスケジュールが大幅に変更された。
搬入日にあたる前日の夕方から雨が降り始めたオートポリス。明け方から激しい雨に見舞われ、あわせて強風が吹き付ける荒天となる。午前中の雨量は減ったものの、変わって濃霧がサーキットを包み込み、視界が確保できない状況となった。
そのなかで、午前9時15分から予定されていた1時間半のフリー走行開始時間の遅延が発表されたが、天候が一向に改善せず。結果、午前9時50分の時点で午前の走行セッションがすべてキャンセルされることになった。あわせて午後からの予選も見送られ、変わって午後2時30分から1時間のフリー走行と、翌18日の日曜日に予選を実施することがアナウンスされた。
午後2時を前に雨は上がったものの、霧は改善せず。また雨も完全には止まず、思い出したように降り出すなど依然として不安定な状況が続いた。加えて濃霧が居座り、良好な視界確保が難しい状態は変わらず。結果、午後2時30分を迎えても回復は見込めないことから、土曜日の走行予定はすべてキャンセルすることが発表された。
これを受け、明日の決勝日は当初予定されていた午前9時40分から30分間のフリー走行2回目に変わり、午前9時40分から40分間の計時予選を実施することが発表されている。
予期せぬ形とはなったが、第5戦も鈴鹿、もてぎ両大会同様、予選と決勝を1日で行なう”ワンデーレース”形式で実施されることとなった。
SUPER FORMULA 第5戦APプレビュー
1ヶ月ぶりの決戦。舞台は九州へ
モビリティリゾートもてぎで開催された2連戦からおよそ1ヶ月。今週末には、早くもシリーズ第5戦の戦いが控える全日本スーパーフォーミュラ選手権。その舞台となるのは、本州から離れて九州・大分へと移り、オートポリスで再びバトルを繰り広げることになる。年に一度の九州決戦、また新たなヒーローが生まれるのか。さらに盛り上がりそうな気配だ。
・山間に位置するサーキット
新緑がまぶしい季節となり、天候が良ければ初夏を存分に感じることができる時期に開催される今回の一戦。ワインディングロードを登り、観光気分も存分に味わえる先に待っているのが、オートポリス。開催時期は昨年とほぼ変わらないが、今年は5戦目。去年は2戦目だっただけに、今年は早くもシーズン中盤を意識した戦いとなる。
阿蘇山に囲まれるような場所にあるオートポリスは、アップダウンに富み、コーナーも低、中、高速コーナーが多彩に組み込まれている。また、車両のピットがメインストレートの左側、つまりコースの外側に配置されているというユニークなコースでもある。
・九州決戦の見どころは?
年に一度の開催、しかもシーズンオフでのテスト開催もないオートポリス。文字通り、ぶっつけ本番の戦いとなる。チームが持つ豊富なデータを活用し、ベースセットを持ち込むことになる。もちろん、経験のあるドライバーにとっては”勘を戻す”ところからの調整となるだろうが、今シーズンからステアリングを握るドライバーにとっては、その適応力が問われる戦いでもある。自身のスキルの高さをアピールする絶好のチャンスというわけだ。ただ、経験あるドライバーにとっても今年の一戦は”特別感”があるのではないだろうか。というのも、スーパーフォーミュラでは今シーズンからタイヤスペックが変更されており、そのタイヤを装着して走行するのは初めて。この点は参戦ドライバー全員が”イコールコンディション”であるため、予選日朝のフリー走行で誰がいち早く路面に見合うセッティングを導き出すか、その点も注目だ。
・シーズン中盤戦に向けて
3月上旬にシリーズが開幕した今シーズンは、鈴鹿、そしてもてぎで1大会2レースを開催、すでにこのオートポリスで5戦目を迎える。シーズン中、全12戦での開催であるため、早くもシーズン中盤に向けての一戦に位置する。つまり、タイトル争いを意識する以上、好成績を残すことが求められるのがこの大会でもある。これまでの2大会を振り返れば、No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が初チャンピオン獲得に向け、いい波に乗っているのは明らか。初戦を制した牧野の僚友、No. 6 太田格之進らに対し、ディフェンディングチャンピオンのNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)は、圧倒的な速さや強さをまだ存分に発揮できていないとも言える。ポイントランキングだけでシーズンを占うにはまだ時期尚早ではあるが、そろそろ巻き返しに入らなければ、タフな戦いが続くなかでのシリーズ連覇達成には暗雲立ち込める事になりかねない。そういう意味でも、このドライバーのポテンシャルが他のサーキットよりも問われやすいオートポリスは、いつも以上のドラマが期待できるのではないだろうか。勢いに乗る大田や牧野がこのまま突っ走るのか、あるいは、未だ優勝に手が届きそうで届かないNo.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が悲願の勝利を果たすのか。はたまた、そろそろ”エンジン始動”といきたいNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が”目覚める”のか……。そして、今大会には、WEC参戦で欠場していたNo. 7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)や怪我で参戦を見送っていたNo.19 オリバー・ラスムッセン(ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL)が出走。腕に覚えのあるドライバーたちがどのようなベストパフォーマンスを披露するのか、しかと見届けてほしい。
主なタイムスケジュール
5月17日(土)
09:15 – 10:45 フリー走行1回目
12:40 – 13:30 ピットウォーク
14:00 – 14:10 予選Q1・A組
14:15 – 14:25 予選Q1・B組
14:35 – 14:42 予選Q2
16:30 – 17:00 キッズピットウォーク
5月18日(日)
09:40 – 10:10 フリー走行2回目
10:45 – 11:35 ピットウォーク
14:30 – 決勝レース 41周/最大75分