SUPER FORMURA 2025 Round8
ウェットコンディションの決勝、岩佐歩夢がポール・トゥ・ウィン!
8月10日、宮城・スポーツランドSUGOで開催された全日本スーパーフォーミュラ第8戦の決勝レース。ウェットコンディションのなか、荒れ模様の展開となったが、ポールポジションからスタートを切ったNo.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が落ち着いたレース運びで後続車をコントロール。悲願の自身初優勝を果たした。
23年ぶりに8月開催となったSUGO戦。夏休みとあり家族連れで観戦するファンの姿が多く見られた。一方、前日まで晴れ模様だった天気は一転して雨模様に。午前9時30分から始まった30分間のフリー走行は、シーズン初めてとなるウェットタイヤでのセッションとなる。なおスーパーフォーミュラでは、今シーズンから新しいスペックでのウェットタイヤが導入されており、全ドライバーが公式戦で装着するのは今回が初めて。この先に控える決勝では、タイヤをいかにマネージメントするかもドライバーのミッションのひとつになったに違いない。
午後2時20分からの決戦を前に、雨はほぼ止んでいたが路面はウェットのまま。気温は午前から徐々に上がり26度、路面は28度という数値を刻んだ。ダミーグリッドに全車が整列するなか、スタート5分前になって、今大会はセーフティカー(SC)スタートをもって幕を開けることが決定。定刻どおり、セーフティカーが先導して51周のレースが始まったが、展開次第では最大75分での時間レースになる可能性も含まれており、不確定要素が多いなかでのスタートとなる。
レースは4周走行中のセーフティカーのフラッシュライトが消灯、いよいよ5周目から事実上のレースが始まり、岩佐がクリアスタートを決めて1コーナーへ。一方、予選2番手のNo.37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOMʼS)はオーバーテイクシステム(OTS)を使って1コーナーでの先行を試みたが、逆転は果たせなかった。一方、予選4番手のNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)は目前のNo.38 阪口晴南 (SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)を早々と攻略してみせる。
そんななか、入賞圏内を走行していたNo.64 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)が2コーナーで縁石に乗って挙動を乱し、スピン。すぐコース復帰が果たせず、再びセーフティカーがコースインすることに。幸い佐藤のクルマはエンジンがかかっていたため、その後コース復帰は果たしたが、リスタートは15周目からとなった。逃げる岩佐にサッシャは付いていこうとしたが、逆に後続のチームメイトである坪井からの猛追に苦戦。ポジションは死守するも、再び岩佐攻略の好機をモノにできず。一方、このリスタートでNo.65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)に逆転を許したNo. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)だったが、20周目にはポジションを奪還してみせた。
序盤から慌ただしい展開になったレースだが、21周目にはNo.12 三宅淳詞(ThreeBond Racing)がコースアウトの末にタイヤバリアに激突。この直前には馬の背コーナーで並走によるバトルを展開しており、その最中にフロントタイヤをロック。その勢いで相手と接触してフロントウィングを損傷していたことが響いたと思われる。このクラッシュによって、レースは3度目のSCが導入され、折り返しを前に荒れた展開が続く形となった。
コース修復に時間を要すなか、レースは当初予定されていた51周の戦いではなく、時間レースへと切り替わる。結果、28周終了時点でレースは再開したが、残り時間は26分弱。トップ3のポジションに変わりはなかったが、4番手阪口と5番手福住との差がにわかに縮まり、リスタート後にはこの2台に加え、予選Q1で敗退して決勝は16位からの追い上げを強いられたNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が大きくポジションアップを果たす怒涛の走りで展開を盛り上げた。
レースは残り時間20分を切り、雨が再び降り始める。これに先んじて、SCラン中にNo. 7 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)がドライタイヤへ交換するというギャンブルに出て懸命に追い上げていたが、路面は一向にドライアップせず、タイムも思うように伸ばせないまま。結果、戦略が裏目に出ることとなり、最後までポジションアップを果たせなかった。
その後も表彰台を争う上位陣は僅差で縦一列の走りを続けたが、なかでも一番の動きを見せたのが、3位争い。長らく坪井がポジションを死守していたが、残り3分を切って互いがOTSを使っての攻防戦を繰り広げると、47周目の1コーナーで福住が狙い通りにインへと飛び込んで逆転に成功。ついに3番手へと浮上する。逆に坪井は後続車からの追いたてもあり、それ以上の追随は果たせなかった。
これにより、岩佐が固い守りを見せてトップチェッカー。2024年のデビュー以来、なかなか勝てずに遠かった優勝をようやく成し遂げることとなった。2位に続いたフェネストラズも、今年日本のレースに復帰後初の表彰台に。そして激しい攻防戦をものにした福住にとっても、今季初の表彰台となり、三者三様嬉しい結果を手にしている。一方、4位スタートの坪井は表彰台を逃し、ポジションキープの4位でチェッカー。これに阪口、さらにはフラガと続くことになった。
今回、岩佐がポール・トゥ・フィニッシュを達成したことにより、フルマークとなる23点を計上。結果、シリーズランキング争いは、坪井が依然として暫定トップをキープしたが。2番手に岩佐が浮上。トップとの差もわずか5点としている。そして3番手には太田。今回は後方からの見事な追い上げでポイント加算も果たしたが、岩佐に先行を許すことになった。
早いもので、残り2大会となった今シーズンのスーパーフォーミュラ。富士、鈴鹿で開催される大会はいずれも2レース制の戦い。1日で予選と決勝を行なう短期決戦では、果たして誰が強さを発揮するのか。タイトル争いも佳境を迎えるため、さらに見どころが増えそうだ。
【第8戦SUGO 決勝トップ3】
1.No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)1H15’40.082 48Laps
2.No.37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOMʼS)+0.627
3.No. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)+1.836
改修後初のSUGO戦、岩佐歩夢がポール初獲得!
8月9日、宮城・スポーツランドSUGOにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の予選が行なわれた。夏の暑さに見舞われるなか、No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が今シーズン初となるポールポジションを手にしている。
8月の夏休みにSUGOでのフォーミュラレース開催は2002年以来、実に23年ぶりのこと。朝から安定した夏の天気に恵まれたSUGOでは、気温29度、路面温度41度のなかで午前9時にフリー走行が行なわれ、1時間半のセッションでルーキーのNo.50 小出 峻(San-Ei Gen with B-Max)が最速タイムを叩き出し、伸び代をアピールしてみせた。一方、現時点でシリーズランキング暫定トップのNo.1 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOMʼS)は約0.1秒差で3番手に。ふたりの間に割って入ったのが、ここのところ勝利から遠のいているNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)だった。
ノックアウト方式による予選セッションは午後2時にスタート。気温は31度、路面温度は49度まで上昇するなか、まずは全22台が2組に分かれてのQ1が行なわれる。
Q1・A組には野尻、さらにランキング暫定2位のNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、さらにフリー走行で4番手時計だったNo.37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOMʼS)らがコースイン。タイヤのパフォーマンスをいかに引き出すか、タイミングを見計らいながらのアタックが繰り広げられたが、まずはライバルより早いタイミングでフェネストラズが1分05秒930のタイムでトップに躍り出た。一方、後方ではNo.14 大嶋和也(docomo business ROOKIE)が3コーナー入口で痛恨のスピン。幸い、アタック中だった他車に大きな影響はなかった模様で、このままセッションは終了。フェネストラズのトップタイムは変わらず、これにNo.39 大湯都史樹(SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が0.158秒差で、また野尻が3番手で続いたが、グリップが得られずに苦戦していた太田は最後までタイムアップならず。痛恨のQ1落ちを喫した。
Q1・B組には、フリー走行でトップタイムをマークした小出が出走。さらなるパフォーマンスに注目が集まったが、アタック中に突然クルマが挙動を見出し、縁石に乗り上げて大きくクルマが跳ねてしまう。さらに右フロントタイヤがバーストし、その場にストップ。ポールポジション獲得の夢が潰えた。なお、このアクシデントによってセッションが赤旗中断に。事実上、再開後に慌ただしくアタックが始まり、そこで最速ラップを刻んだのは、No.65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)。これに0.092秒差で岩佐が続き、さらにNo. 4 ザック・オサリバン(KONDO RACING)が躍進してみせた。
Q1・B組での赤旗中断の影響を受け、当初の予定より13分遅れで始まったQ2。進出を決めた全12台がポールポジションを目指して7分間のセッションが幕を開けた。開始すぐにコースインし、1周してから一旦ピットに戻ってアタックラップのタイミングを見計らう選手と、開始からピットを動かず待機し、満を持してコースインする選手とに分かれるなか、セッションが動いたのは残り時間2分を切ってから。まずトップタイムをマークしたのは、フェネストラズ。だが、間髪入れず、岩佐が1分05秒517の好タイムでトップを奪取する。その後も続々とチェッカーを受ける車両がなだれ込んだが、岩佐のトップタイムには届かず。
結果、岩佐が今シーズン初となるポールポジションを獲得。サッシャも2番手の座を守り切ることに成功した。3番手にはNo.38 阪口晴南 (SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が続いている。一方、ランキングトップ3のうち、Q2に駒を進めた坪井は4番手、No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は7番手から翌日の51周で競う決勝を迎えることとなる。近年は東北地方とはいえどもサーキットのあるSUGOでも気温が高く、夏のタフな戦いが展開されると思われるだけに、タフなバトルになりそうだ。
【第8戦SUGO 予選トップ3】
1.No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)1’05.517
2.No.37 サッシャ・フェネストラズ(VANTELIN TEAM TOMʼS)1’05.766
3.No.38 阪口晴南 (SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)1’05.775
SUPER FORMULA 第8戦 SUGOプレビュー
短い梅雨が明けてからというもの、酷暑が続く日本列島。全国各所で最高気温40度超えのニュースも、もはや珍しくないほど。ただ、今週末の東北地方は不安定な天候に見舞われ、天気の行方がはっきりしない。そんななか、8月9、10日には全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦が宮城・スポーツランドSUGOで開催される。シーズン中盤から終盤へと向かいレース数が少なくなるなか、シリーズタイトルを巡る戦いから目が離せそうにない!
久々に夏開催となったSUGO戦
コロナ禍での開催を除き、SUGOでの一戦はここしばらく6月中旬頃に行なわれてきたが、今年はもともと海外での一戦を計画していたこともあり、レースカレンダーが変更されてSUGO戦は8月へと”お引越し”になった。夏休み期間での一戦は、なんと2002年以来となる。例年と開催時期が異なれば、チームやドライバーが持つ経験値とどれくらい異なってくるのか、そのあたりも含めてレースの行方を見守る必要がありそうだ。
やはり一番気になるのは、レースウィーク中の天候。日本を代表するもうひとつのレース、SUPER GTが開催されるのは9月中旬が多く、天気次第ではまだまだ残暑厳しいコンディションになることも多い。また、逆に雨天になれば気温がぐっと下がり肌寒いほど。今回のレースはまだ8月上旬のため、天候が崩れても寒さを感じるまでには至らないだろうが、昨今の天候不順は予想を超えるものであり、まったく先が読めない。一日違うだけで気温が10度近く異なることも珍しくなく、とりわけエンジニアは事前の持ち込みセットに頭を悩ますのではないだろうか。ただでさえSUGOはエンジニアやドライバーにとって難コースであり、クルマのセットアップが重要視される場所として知られる。決勝中はオーバーテイクが難しいため、予選で好位置を確保してこそ決勝で十分なパフォーマンスを披露することができる。それだけに、予選がことのほか重要になってくる。このレースでは、コンマ1秒がとてつもない大きなギャップとして受け止められるだけに、当然のことながら、予選でもヒリヒリとしたタイム合戦が繰り広げられるに違いない。本来ならば、Q2の残り時間を逆算するかのようにコースインしてアタックラップへと向かうところだが、スーパーフォーミュラを実施する全国のサーキットのなかでもショートトラックの難コースであるがゆえ、ミスを誘発しやすく自身がアタックの最中に他車が飛び出してしまう可能性もある。しかるべきタイミングでコースインしてアタックラップを確保したいところだ。息をもつかせぬアタック合戦は、決勝とはまた違った魅力たっぷりのセッションになるはずだ。
タイトルの行方は?
先の富士戦は、土曜、日曜にそれぞれ1レースを実施。現在ランキングトップの坪井翔(No.1 VANTELIN TEAM TOM’S)が初日の第6戦、そして同2位の太田格之進(No.6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が第7戦で勝利した。坪井にとっては、シーズンをまたいで負け知らずだった富士で土がついた形だ。一方、富士戦を前に暫定トップだった牧野任祐(No.5 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は大量得点を果たせず、ランキング3位へと後退。今回のSUGOが、自身初となるチャンピオン獲得実現に向けてのターニングポイントとなるのではないだろうか。
暫定トップの坪井を除き、現時点のランキングを見る限りホンダ勢が結果を残している。2022年に圧倒的な強さで王者となった野尻智紀(No.16 TEAM MUGEN)も、あと一歩で強さと速さががっちりと組み合わさった走りができそうなだけに、今回のSUGO戦は、終盤そしてシリーズチャンピオンの行方を占う試金石のような位置づけになると思われる。
同じシャシー、タイヤを使用し、その一方でSUPER GTでおなじみのサクセスウェイトも搭載しない。リアルガチ勝負のフォーミュラレースでは、クルマのセットアップとそれを引き出すドライバーのスキルが試されるレースでもある。チームとしての総合力でより高みを目指さなければ勝利に手が届かない。僅差のタイムで繰り広げられる決勝は51周の戦い。SUGOはミスを誘発しやすくドライビングに厳しいコースだけに、夏の厳しい暑さと相まってタフな戦いになりそうだ。サバイバルの要素が幅を利かせる大会で、最後に笑うのはいったいどのドライバーになるのか、楽しみは尽きない。