SUPER GT 2023 Round.7
第7戦オートポリス、au TOM’S GR Supraがシーズン2勝目をマーク!
10月15日、大分・オートポリスにおいて、SUPER GT第7戦「AUTOPOLIS GT 450km RACE」の決勝レースが行なわれ、予選12番手からスタートを切ったNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)が大躍進。終盤に鮮やかな逆転を果たし、今シーズン2勝目を達成。シリーズタイトルでもランキングトップに浮上した。
予選日よりも好天気になると言われていた決勝日だが、実際は冷え込み厳しい朝を迎え、日中も冷たく強い風が吹いて思うように気温が上昇せず。レースはこの天候に翻弄されるような展開となった。
午後1時30分からのスタートを前にしたコンディションは、気温17度、路面温度25度。その後は気温こそ大きな変動はないものの、路面温度は徐々に下降の一途を辿ることになった。まず、ポールポジションからクリアスタートを切ったNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)。序盤なライバルを大きく離す速さを見せ、マージンを構築する。予選2位No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)や、同3位No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)が早いタイミングでルーティンのピットインを済ませたが、16号車はさらに周回を重ねることで2位以下とのマージンはさらに広げ、独走という形で19周を終えてからピットインを行なった。
レースは序盤からフルコースイエローが頻繁に導入される落ち着きのない展開に。そんな中、予選で思うようなアタックのタイミングをつかめず、12番手に沈んでいた36号車が底力を見せる。ライバル勢が続々とピットインを行なうのを尻目に、34周目まで1回目のピットインを伸ばすことでクリアラップでスピードを発揮。レース折返しを迎える頃には、入賞圏内はもちろんのこと、表彰台が狙えるポジションまで浮上する。
60周前後で2度目のルーティン作業でピットインするクルマが増えるなか、トップの16号車は59周終わりでピットイン。アウトラップではタイヤが冷える中、数台に先行されたがタイヤが発動すると、しっかりポジションを奪還し、”裏の1位”_つまり義務である2回のピット作業を終えたクルマの中で首位に返り咲いた。一方、怒涛の追い上げを見せていた36号車は65周終わりでピットイン。コースに復帰するとたちまちライバルを抜いて3番手へ浮上。その勢いのまま、今度は目前のNo. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)を77周目のホームストレートで逆転を果たし、さらにトップ16号車へと迫る。16号車は、直近のライバルが3号車から36号車へと変わり、その勢いにも圧倒されたか、瞬く間に2台の差は1秒を切ることに。すると、チェッカーまで残り15周を切って、トップ争いが一気にヒートアップ、36号車が激しく16号車を追い立てた。
このまま逃げ切れるかどうかの瀬戸際の中、16号車も粘り強く36号車を防戦。だが、87周目の第2ヘアピンで間隙を縫うようにして36号車がイン側に飛び込みトップを奪取。それまで1秒を切っていた2台の差が瞬く間に広がった。結果、36号車は16号車に対して6秒近い差をつけてチェッカー。第2戦以来となるシーズン2勝目を果たし、さらにはシリーズランキングでもトップに立って、最終戦を迎えることになった。なお、2位16号車に次いで3号車が3位に入り、3メーカーが仲良く表彰台を分ける結果となっている。一方、タイトル争いでは、36号車を筆頭に、7点差で3号車、さらにトップと16点差で16号車が続いており、今大会で表彰台を分け合った3台が、チャンピオン争いの権利をもって最終戦に臨むことになった。
GT300クラスは、前日の予選でチーム初のポールポジションスタートを切ったNo. 2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)がオープニングラップからクラストップをキープ、申し分のないスタートを切った。一方、前回のSUGOでタフな戦いを制し、シーズン初優勝を上げてランキング暫定トップに立って勢いに乗るNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)が予選4位からどんな戦略でアプローチしてくるのかが注目された。
8周目には早くもクラス2番手にポジションを上げた52号車。1回目のFCY解除後にはトップ2号車との差が一気に縮まり、序盤から激しいバトルとなったが、18周目のヘアピンで52号車が2号車逆転に成功した。その後、30周終了時に2号車がピットイン、ドライバー交代を含むフルサービスを実施する中、翌周にピットへ戻った52号車は給油だけの作業でコースへと復帰。ピット作業でも2号車との差を広げる戦略を採った。さらに52号車は45周終わりのタイミングで2回目のピットインを敢行。ここでドライバー交代を実施する。一方の2号車は予定周回数をほぼ”均等割”する戦略を採り、57周終わりでピットイン。タイヤ交換と給油作業のみでコースに復帰すると、52号車に対して1秒強の差で追随する形でレース終盤へと突入する。
GT500のトップ争いが佳境となる一方、GT300クラスでも勝者の座を巡る戦いが激しくなり、75周にはメインストレートでテール・トゥ・ノーズを展開。手に汗握るパフォーマンスを繰り広げた。最後の最後まで1秒を切る僅差の戦いが続くも、最終的に52号車が2号車の猛追を阻止。前大会のSUGOに続き、シーズン2勝目をあげた。
連勝を決めた52号車は、シリーズランキングでも2位に対して20点の大差をつけて、ほぼ”王手”の状態。タイトル獲得の可能性を残した2号車を引き離す形で最終戦を迎えることになった。
第6戦SUGO 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)2H50’39.062 97Laps
2.No. 16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)+5.474
3.No. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)+5.854
GT300
No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰/野中誠太)2H52’08.683 91Laps
No. 2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)+0.612
No.31 apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生)+1Lap
以上です
第7戦オートポリス、No.16 ARTA MUGEN NSX-GTが今季2度目のポールポジションを獲得
10月14日、大分・オートポリスにおいてSUPER GT第7戦の予選が行なわれた。薄曇りの天気となり、気温も20度まで上がらず、やや肌寒いコンディションの中でのタイムアタックとなったが、GT300、500の両クラスにおいてコースレコードを更新する好走が見られた。結果、No.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)が今シーズン2度目となるポールポジションを手にしている。
前大会からおよそ1ヶ月のインターバルを経て迎える第7戦。この間にすっかり本格的な秋となり、山間にあるオートポリスでは朝晩の冷え込みを感じるようになった。予選日は、早朝の時点で雨が多少降っていたが、サポートレース開催時には雨も上がっており、路面も時間の経過とともにドライへと好転した。
公式練習は、午前9時25分にスタート。気温16度、路面温度18度での幕開けとなったが、まだコース上にはウエットパッチが残っているところもあったようで、インスタレーションラップのみを済ませ、20分ほどピットで様子をうかがうチームも多く見られた。GT300クラスとの混走時間枠でトップタイムをマークしたのは、16号車。その後の専有走行では、アタックシミュレーションに向かうクルマが増える中でNo. 8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)が態勢を崩してスピン、コースアウトした末にタイヤバリアに激突。これで赤旗が提示され、このままセッションが終了した。結果、ひと足先にベストタイムを更新していたNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)がトップタイムを刻むこととなった。
午後のセッションに向けて、時折日差しが顔を出したオートポリス。午後3時のスタート時の路気温は18度と25度まで上昇。しかし、その後は再び雲が張り出し、曇り空の中でアタックが実施された。
Q1では、早めのタイミングでアタックに臨んだ37号車が公式練習同様にトップタイムをマーク。1000分の5秒差でNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)、さらにNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)がトップ3を形成した。一方、No. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)はじめ、No.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)さらにNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)というランキングトップ3が揃ってQ1で敗退する結果となった。
続くQ2で気を吐いたのは、16号車。Q1、Q2で装着したタイヤの種類が異なったことから、Q1では6番手のタイムに甘んじたが、Q2では満を持したアタックで1分31秒131をマーク。2021年に更新された1分31秒389のファステストラップを新たに塗り替えた。なお、16号車のポールポジションは今シーズン2度目。決勝の結果次第で、タイトル争いに加わる権利があるだけに、レースでのパフォーマンスに注目が集まりそうだ。
GT300では、No. 2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)が完璧な土曜日のレースディを過ごすことになった。まず、公式練習でルーキーの平良がトップタイムをマーク。するとQ1でもトップ通過を果たす。これで勢いづいたチームは、Q2でステアリングを握った堤が1分42秒016を叩き出し、クラストップへ。アタックを担当した堤にとっては自身初となるポールポジション獲得で、さらにはコースレコード更新をも果たす偉業となった。一方、タイトル争いに目をやると、ランキングトップのNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)は4番手という好位置を確保したが、同2位のNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)は9番手、同3位のNo. 7 Studie BMW M4(荒聖治)は11番手という結果に。決勝はオートポリスで初となる450kmの長距離レースだけに、どのような展開になるのか、話題は尽きない。
第7戦オートポリス 予選結果 各クラストップ3
GT500
1.No.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)
2.No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)
3.No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)
GT300
1.No. 2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響/加藤寛規)
2.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
3.No.31 apr LC500h GT(嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生)
SUPER GT 第7戦AP プレビュー
シーズン大詰め、ウェイト半減でレースがどう動く!?
今年は9月も暑さが厳しい日が続き、前回のSUGO戦もタイヤ選択等を含めて難しいレース戦略となったSUPER GT。次なる第7戦の戦いは、10月14、15日に大分・オートポリスにおいて開催される。シーズンも残すところあと2戦。年に一度となるオートポリスでの戦いも、過去に様々なドラマを生み出しているだけに、今年もどのような展開が待ち受けるのか、大いに気になる。
■サクセスウェイトが半減する今大会
”ガチ勝負”の開幕戦を経て、毎戦入賞を果たしたチームに課せられ続けたサクセスウェイト。前回のSUGO大会までは、獲得したポイントを2倍し、ウェイトの単位である”キログラム”に変換したものをウェイトとして各車に搭載してきた。だが、今大会からは倍率が等倍となり、各車はこれまで獲得したポイントそのままのウェイトを搭載して戦うことになる。ちなみに、GT500では暫定シリーズランキングトップのNo. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が51点を獲得しているため、オートポリスにおける3号車のサクセスウェイトは51kgとなる。GT500では、参加台数全15台が第6戦までに入賞を果たしているため、どの車両もウェイトを搭載しているが、トップ3号車に続き、ランキング2位につけるNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)は49kgと僅差。この2台にとっては、まだまだウェイトの存在が大きくのしかかることになるだろう。とは言え、条件的に厳しい戦いの中で確実にポイントを積み重ねるという、緻密な戦いを見せて1点でも2点でもライバルより多く計上すれば、タイトルへの道がより明確になることも事実。ウェイトが重くて苦しいから、とノーポイントに甘んじるのではなく、「重くても1点を」という粘りと執着がチャンピオンへの近道になることは間違いない。
ランキング2位の36号車とランキング3位につけるNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)との差は9点と少し差がつくが、3位以降がこれまた接近しており、同4位のNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)と同5位No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)がともに37点で続き、23号車との差は3点となる。さらに、残り2戦の戦いで表彰台、しかも優勝という好成績を収めることができるのであれば、タイトル争いの可能性があるチームがぐんと増える。かつては、勝つかノーポイントか、の戦いでタイトル争いを繰り広げたチームも多かったが、近年は確実にポイントを計上しつつ、僅差の戦いでライバルに先んじる展開でタイトル獲得に臨むチームも少なくない。つまり、今回のオートポリスの結果を見なければ、まだタイトル争いのチームを絞り込むことはできない、ということになる。それだけに、ウェイトが半減したオートポリスの戦いこそが、”落とせない”一戦になるというわけだ。
■タイヤ選択が明暗を分ける!?
「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句にあるとおり、これまでにないほどの残暑が続いた9月も秋分を終えると、一気に朝晩の空気が変わり、秋らしい天気へと変わった。10月5日には、富士山での初冠雪が確認され、平年より3日、昨年より5日遅い観測だったというが、いよいよ秋も本番というところだろう。そんな中で迎えるオートポリスだが、サーキットが位置するのは、阿蘇山に連なる外縁部。気温がぐっと下がる時期は、朝晩のサーキットへと向かう山道が霧立つことも珍しくない。
レースウィークの天候も気になるところだが、それ以上にエンジニアたちを悩ませるのが、タイヤ選択だろう。もともと、高低差が大きく、コースに盛り込まれた中高速コーナーはスピード感もあり、チャレンジングなレイアウトというイメージがある。結果として攻めの走りを引き出すこととなり、アプローチも難しく、当然のことながら、タイヤへの負荷が大きくなる。当日の気候に見合うタイヤ選択も難しい判断となるが、さらに戦いの行方をより混沌とさせるのが、レース距離ではないだろうか。これまで300kmレースで開催されてきたオートポリス戦だが、なんと今シーズンは450kmを競うことになる。もちろん、このサーキットでの450kmは初となるだけに、各チームはタイヤ選択はじめ、ピットインのタイミング、ライバルとの駆け引きなど、より緻密な戦略を用意し、レース展開に準じてよりよい条件での戦いに持ち込みたい。コースの上ではステアリングを握るドライバーがライバルとの攻防戦に火花を散らすことになるが、そのバトルを見守るピット側も、エンジニアや監督の”頭脳戦”とメカニックたちの”テクニック勝負”で臨まなければならない。まさに、チーム一丸となって、勝ちを狙いにいく戦いがよりハードなものとなりそうだ。
■混沌としたタイトル争いが続くGT300
前回、レース中のフルコースイエローをうまく味方につけたNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)。セーフティカー導入を前にルーティンのピット作業を済ませたことで、一気にクラス上位にポジションアップを果たし、最終周にはライバルのマシントラブルも味方してクラストップチェッカーを受けた。残念ながら、その後の再車検において最低地上高違反が判明、レース失格となってしまったが、ランキングでは2位につけ、タイトル争いにおいては依然として優位な立場にある。一方、ランキングトップは、一度は”ガス欠”で優勝を逃したNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)。18号車の失格により、2位から繰り上げ優勝となり、シーズン初勝利かつランキングトップといううれしい結果を手にしたが、シリーズタイトルを巡る戦いは、GT500クラス以上に混沌とした状況にあるともいえる。
トップ52号車と18号車のポイント差は10点。ランキング3位以降も数点差で複数のチームが王座を虎視眈々と狙っている。また、GTA-GT300車両とFIA-GT3車両とでは、戦うアプローチも異なるため、レース展開を読むことが難しい。これこそがGT300の特徴であり、魅力でもあるわけだが、レースを観るファンとしては、長いレース展開で、”一体どのチームがトップなのか!?”と分かりづらい展開になる可能性もある。そこは、各チームの戦略をチェックしつつ、2度目のピット作業を終えてどのチームがトップを走ることになるか、レースの流れにも注意しながら観ることをオススメしたい。
大きくチャンピオン争いの行方が動くであろうオートポリスの戦い。ここのところ、再車検での結果変更が続いてきたが、今大会こそは、表彰台でシャンパンファイトを披露したドライバーたちの笑顔がそのまま変わらずに終わって欲しい。
■主なスケジュール
AUTOPOLIS GT 450km RACE
10月14日(土)
09:25〜10:50 公式練習(GT300+GT500)
10:50〜11:00 公式練習(GT300専有)
11:00〜11:10 公式練習(GT500専有)
11:20〜11:40 FCYテスト
11:55〜12:15 サーキットサファリ
12:30〜13:15 ピットウォーク
15:00〜15:10 公式予選Q1 GT300 A組
15:18〜15:28 公式予選Q1 GT300 B組
15:33〜15:43 公式予選Q1 GT500
15:53〜16:03 公式予選Q2 GT300
16:11〜16:21 公式予選Q2 GT500
16:45〜17:15 キッズウォーク
10月15日(日)
10:00〜10:50 ピットウォーク
11:10〜11:35 ドライバーアピアランス
12:00〜12:20 ウォームアップ
12:20〜13:30 スタート進行
13:30〜決勝 450km RACE(97周)