SUPER GT 2023 Round.4
第4戦富士、不安定な天候を味方にNiterra MOTUL Zが逆転勝利!
今シーズンのSUPER GTシリーズ前半最後の戦いとなった第4戦富士。同じサーキットで開催された第2戦に続く450kmレースは、不安定な天候が展開に大きな影響を与え、様々な波乱を招くことに。そのなかで、チームとして理想的な条件を手に入れたNo. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が圧巻の走りで逆転勝利を果たしている。
土曜日は爽やかな夏の天気となった富士。日曜は沖縄方面に長らく居座り続けている台風6号の影響を受け、時折本降りの雨が降ることとなった。朝早い時点では強い日照りになっていたが、お昼を前に急変。ウォームアップ走行では雨こそ降らなかったが、路面はまだウエットの状態だった。
午後1時45分、いつもであれば地元警察の白バイとパトロールカーの先導によるパレードラップが披露されるが、先の読めない天候ということもあり、450km/100周の戦いはセーフティカー(SC)によるレーススタートへと切り替わった。
2周目走行中にSCのルーフライトが消灯、3周目からレーススタートとなり、ポールポジションのNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)がリードする形でオープニングラップを終了する。一方、激しく水煙が立ち込める路面コンディションとの相性が抜群の3号車は、予選4番手からあっという間に24号車の背後へと迫り、4周目のダンロップコーナーで逆転を果たす。瞬く間にトップを奪取した3号車は、その後、ライバルとは異なるパフォーマンスでひたすら”我が道”を突き進んでいった。
10周を超えると、次第に路面がドライアップ。雨の心配もないと踏み、チームによってはスタート時に装着していたウエットタイヤからドライタイヤへの換装を実施。これによってポジションの変動が見られた。そんななか、スタートからおよそ1時間の時点で、GT300車両が2コーナー立ち上がりで火災に見舞われてコースサイドに停止。このアクシデントでセーフティカーが35周目から導入され、41周目にリスタートを迎えた。
レースは折返しとなる50周を過ぎると、ルーティンのピットインが本格的に始まる。その後、暫しトップを走ったのはNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)。これにNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)が続き、さらにNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)、そして3号車が続き、これに予選上位にいたNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)さらにNo. 8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)がポジションアップのチャンスをうかがう形となった。
トップ争いの行方が気になるなか、午後3時39分、トップ車両が66周を走行中の13コーナーで、GT300車両による火災が発生。コースサイドに停車するも、漏れ出た燃料の影響で消化に時間を要すことに。また、タイヤバリアに近い場所での消火作業であったため、午後3時43分、68周目走行中にレースは赤旗中断となる。
幸い、乗車していたドライバーへの影響は少なく、レース再開に向けて各車はメインストレートで待機することとなったが、ほぼ同じタイミングで今度は上空の天候が再び悪化。近隣での落雷の報告されるなど先の読めない天候の影響でリスタートが2度ディレイとなり、午後4時30分にようやくSC先導によるリスタートが切られた。
なお、このタイミングで待機中のクルマはウエットタイヤへの交換が許可されたため、各車はチェッカーに向け、再びタフな駆け引きに挑むことに。セーフティカーがコースを離れ、レースは71周終わりで再開。すると、これを好機として勢いあるパフォーマンスを見せたのが、3号車。まず目前の39号車、さらにはトップ14号車をも仕留め、75周に改めてトップに立った。こうなるともう勢いは止まらない。周回ごとに2位以下との差をぐんぐんと広げ、別世界でのレースを披露。その後方で、選択したタイヤによって”泣き笑い”のシビアなポジション争いが繰り広げられたのも”どこ吹く風”の状態だった。3号車は他車を寄せ付けぬ強さで大荒れの富士を制覇。シーズン初優勝を遂げ、シリーズランキングでも49ポイントでトップに立つこととなった。
3号車からおよそ45秒遅れで2位チェッカーを受けたのは、16号車。3番手には終盤に追い上げを見せたNo.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/太田格之進)を退けた100号車が続いた。だが、レース後の暫定表彰台を終えたあと、16号車と100号車に対して、給油中のタイヤ交換のペナルティが判明。レース結果にそれぞれ40秒が加算されるという結末に。これによって、64号車が2位に繰り上がり、16号車が3位の結果に変わっている。
GT300もまた、装着するタイヤメーカーによる”パワーバランス”が浮き出る展開になった。6年ぶりのクラスポールに湧いたNo. 4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)は、スタートからほどなくして複数の後続車にトップを奪われたが、その後は見事にトップを奪還。スタートを担当した片岡がベテランらしいレース運びを見せつけた。さらにドライアップした路面を味方に後続との差を広げ、申し分のない形を築き上げた。
一方でレースはコース上で2度もGT300車両がトラブルからの失火で火災を招くなど、落ち着きのない展開に。折返しを過ぎると、4号車はルーティンのピットインで片岡から谷口へと交代。4号車が引き続きクラストップを死守した。
だが、2度目の火災アクシデントでは、レースが赤旗中断となり、これによって各車が築き上げたマージンもしっかり消滅。完全に仕切り直しの中でレース後半のバトルが再開する。赤旗待機中に再び雨模様となったため、ウエットタイヤでの戦いがスタート。ドライタイヤでの分がある4号車は、背後から襲いかかるライバルたちの後塵を排することに。しかし、その後のコンディション回復により、再びポジション争いが激化。まさに意地と意地がぶつかり合う見どころ多いシーンが続いた。
結果、77周目には粘る4号車がトップに返り咲き、No.11 GAINER TANAX GT-R(富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介)が2番手、3番手には今大会から新車を投入したNo.88 JLOCランボルギーニGT3(小暮卓史/元嶋佑弥)が続く。一方で、ドライアップした路面で、もうひと勝負すべく、11号車がピットインしてドライタイヤへと交換。これを”宣戦布告”と受け止めたのか、3周後に4号車もピットインしてタイヤ交換を敢行した。ところが、そのアウトラップで谷口が痛恨のスピン。無事コース復帰は果たしたが、優勝争いからは脱落することとなった。その後、賭けに出た11号車は大きくタイムアップを果たし、92周目に暫定トップを走るNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORTを攻略し、クラストップに立つ。一方、2番手争いは61号車の背後にNo.60 Syntium LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)に迫る混戦に。しかし、チェッカー目前の最終コーナーで2台が接触。61号車はスピンし、ポジションダウン。60号車は4位でフィニッシュしたが、レース後にこの接触に対するペナルティが科せられ、10位となった。結果、この2台の背後にいたNo. 7 Studie BMW M4(荒聖治/柳田真孝)とNo. 6 DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也)がそれぞれ2位、3位となり、表彰台に立っている。
第4戦富士 決勝結果 各クラストップ3
GT5001.No. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)3H45’06.900 100周
2.No.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/太田格之進)+1’04.435
3.No.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)+1’25.244
GT300
1.No.11 GAINER TANAX GT-R(富田竜一郎/石川京侍/塩津佑介)3H45’08.233 93周
2.No. 7 Studie BMW M4(荒聖治/柳田真孝)+7.904
3.No. 6 DOBOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也)+8.292