SUPER GT 2023 Round.1
大荒れの天候を凌ぎ切ったMOTUL AUTECH Zが優勝
4月16日、2023 AUTOBACS SUPER GT開幕戦『OKAYAMA GT 300km RACE』の決勝レースが行なわれ、雨による激しいコースコンディションの変化で大荒れの展開となったが、ポールポジションスタートのNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が巧みな戦略と冷静なレース運びを武器にトップチェッカーを受け、シーズン最初の勝ち名乗りを挙げた。23号車にとっては、2021年8月に行なわれた第3戦鈴鹿以来の勝利となる。
午前中は青空が広がった岡山国際サーキット。徐々に雲が張り出し、スタート進行が進むにつれて鉛色の雲が広がるようになる。午後1時30分、岡山県警のパトカーによるパレードランが始まると、コース上にぽつりぽつりと雨が落ち始めた。
フォーメーションラップを経てレースが始まると、ポールポジションからスタートした23号車が盤石の態勢でホールショットをキープ。一方で後続では激しいポジション争いが繰り広げられ、予選2番手のNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)に続き、3番手には予選5番手のNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)が続いた。さらには予選8番手のNo.100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)が大きくポジションを上げ、4番手につけると、3周目のバックストレートエンドで19号車を逆転し、その勢いで3号車を追走し始めた。
だが、次第に雨脚が強まりスタート時に装着していたスリックタイヤでの走行が難しいコンディションになったことから、トップを走る23号車が15周終わりでピットイン。ウエットタイヤへと交換した。これに8台の車両が続き、その翌周には3号車を猛追中の100号車そしてスタート直後からポジションを落としていたNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)の2台がピットインしたが、この直前にはGT300車両が1コーナーでコースアウトしたことで導入されていたFCY下でのピットインと判断され、のちにペナルティが課せられる。コース上はなおも2台のGT300車両にトラブルが発生。FCYからセーフティカーランへと切り替わり、また上空からはスコールを思わせるほどの強い雨が降り始めた。幸いにして雨量は短時間で激減、19周目にピットレーンがオープンすると、3号車、19号車の暫定トップ2台がピットに飛び込みウエットタイヤへと交換、また1号車も作業に取り掛かる。なお、このタイミングで3号車はタイヤ交換のみならず、ガソリン補給を敢行。ライバルとは異なる戦略を採った。20周終わりでNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)がピットイン。これを持って全車両がウエットタイヤでの走行に切り替わった。
レースが再開したのは23周目。雨も小康状態で青空が見え始める回復ぶりだったが、この時点でのトップは100号車。しかしながら、天候が回復し、路面が乾き始めた途端、逆にペースが落ち始めるクルマが続出。タイヤコンディションの差が如実に表面化する。28周目、トップ100号車は36号車に逆転を許すと、その後ガクンとペースダウン。後続2台にも先行されてしまう。
その後、トップ争いが激しくなったのは、36周目。36号車を23号車が激しく攻め立て、41周に入ったばかりのメインストレートから1コーナーで逆転、トップ奪取に成功する。その後は後続を引き離す力走を続け、46周目にピットイン。松田がスリックタイヤでコースに向かった。その後、レースは2回目のFCYが48周目に導入されたが、この間に再び天候が悪化。FCY解除直後にアトウッドカーブでGT300車両同士の接触、クラッシュが発生したことで、再びSCランになってしまう。そんな中、23号車はFCY解除直後にピットイン。スリックからウエットタイヤへと交換を済ませた。このタイミングでポジションを一時的に落とすことになる。一方、雨脚が強まり、合わせて近隣での落雷が認められたことを受けて、レースは午後3時15分に安全確保のため赤旗が提示され、55周走行中に一時中断となる。午後3時35分にSCランによってレースが再開、雨降る中で続々とタイヤ交換のために各車がピットへなだれ込んだが、この状況の中、ひと足先にウエットタイヤを装着していた23号車はピットインするライバルを横目にトップへ返り咲くことに成功した。逆に暫定トップにつけていた36号車はピットでのタイヤ交換時にミスが発生。左フロントタイヤが正しく装着されておらず、2コーナーアウト側にクルマを止めざるを得なかった。結果、3号車が再び2位に復活、3位にはレース序盤、モノコック交換によるペナルティストップを課せられ、後方に沈んでいたNo. 8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)が浮上する。
レースはその後、SCラン中にGT300車両にトラブルが発生。車両回収の作業に危険が伴うという判断から61周目には2回目の赤旗中断となる。レース継続中の車両はメインストレート上に留め置かれ、午後4時20分からSC先導で再開したものの、63周目に入った時点で3度目の赤旗が提示され、レースは中断。結果、これをもってレース終了の決定がなされた。
まさに波乱万丈の荒れた展開となったシーズン初戦。その中で冷静な戦略を完遂した23号車がポール・トゥ・ウィンを達成。今回の優勝によって、松田は自身が持つGT500での最多勝記録を24勝にした。また、2位に続いたのは3号車。これに8号車が3位に入り、日産、ホンダが表彰台を分け合った。トヨタ勢トップは、昨年まで2年連続で岡山大会を勝利したNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)。4位でチェッカーを受けている。
GT300では、ピットインのタイミングや装着するタイヤによって状況が大きく変わるレース展開となった。その目まぐるしい変化を味方につけたのがNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)だった。
レースはクラスポールスタートのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)が安定の走りでレースを牽引。これに予選2番手のNo. 2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)と3番手のNo. 7 Studie BMW M4(荒聖治/ブルーノ・シュペングラー)が続いた。一方、中団グループは激しいポジション争いを繰り広げていたが、ほどなくして本格的に雨が降り始めると、ドライからウエットタイヤへと交換するため、ピットインする車両が出始めた。また、濡れた路面に足元をすくわれコースアウトする車両も続出。さらにマシントラブルでレースを離脱する車両も現れる。立て続けのトラブルを受けてコース上ではFCYが導入され、その後は天候悪化も加わり、SCランに切り替わるほどだった。
なおSCラン中にピット作業を行ない、ウエットタイヤへ交換したチームも多く、これにより順位も大きく変動。その中でNo. 9 PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG(阪口良平/リアン・ジャトン)やNo. 52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)、さらにはNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)がポジションアップを成功させた。
レースは22周目にリスタート。雨は降っていたが日差しが戻り、路面もこれに合わせて次第にドライアップする。これを受け、再びピットインし、ドライタイヤに戻すチームも見受けられたが、その中でも予選18番手スタートから4番手まで大きくジャンプアップしていた18号車が37周終わりのドライバー交代に合わせて敢行。翌周には、クラストップをキープしていた65号車も同様にルーティン作業でドライタイヤへの交換を行なった。
レースは午後3時を前に、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)がヘアピンでコースアウト。グラベルで動けなくなり、FCYの導入となる。このタイミングでまた雨が強くなったが、午後3時5分にはFCY解除に。だが、このタイミングで6番手争いを展開していた9号車とNo.88 JLOCランボルギーニGT3(小暮卓史/元嶋佑弥)がコースアウト。9号車はコースで動けなくなり、またもSCランに切り替わる。すると、午後3時15分には2度目の赤旗が提示され、レースが一時中断となった。これはサーキット近隣で落雷があったことを受けての安全確保のためだとした。
その20分後にはSC先導によってレースが再開したが、降り続く雨の中、大半の車両が装着するドライタイヤでの走行は難しく、ほぼすべてのチームがピットインしてウエットタイヤへと交換する。コース上ではまだSCランが続く中、今度は2号車の左リアタイヤが脱落。車両回収の間にまたも天候急変、悪化に伴う赤旗が提示され、2度目の中断を迎える。レースは午後4時20分に再開を迎えたが、依然として強い雨が続いたため、午後4時25分には3度目となる赤旗が提示され、これをもってレースは終了することとなった。
結果、18号車が優勝を果たし、小林にとっては2018年以来の自身2勝目を挙げることに。チームとしては、NSX-GTでの初優勝となった。2位はクラスポールスタートだった65号車。3番手には予選12位スタートのNo.244 HACHI-ICHI GR Supra GT(佐藤公哉/三宅淳詞)。多くのGT300車両がタイヤ交換になだれ込むタイミングを逆手に取り、大きくジャンプアップ。21年第3戦鈴鹿以来の表彰台に上がった。
チーム総合力、そして装着したタイヤパフォーマンスが結果に大きく影響した今大会。コンディションによって目まぐるしく順位が変わることになった。第2戦富士は450kmの長丁場。ドライコンディションであれば、今回とは異なる展開になる可能性が高いだけに、期待が集まる。
第1戦岡山 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)2H44’47.342 61Laps
2.No. 3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)+1.496
3.No. 8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)+4.788
GT300
1.No.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)2H45’26.030 59Laps
2.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)+3.592
3.No.244 HACHI-ICHI GR Supra GT(佐藤公哉/三宅淳詞)+15.613