SUPER FORMULA 2020 Round.2
SUPER FORMULA第2戦、坪井翔が参戦2年目で初勝利!
驚愕の結果となった予選からおよそ3時間。午後2時30分に入り、決勝に向けてのウォームアップ走行が始まる。ダミーグリッド上でも引き続き、微調整の作業に取り掛かるチームの姿も多く見られた。午後3時15分、フォーメーションラップが始まる中、バックストレート先のアトウッドあたりで1台の車両がコースアウトし、クラッシュ。なんと、阪口がスタートに向けてタイヤを温めていたが、グリップを失って態勢を崩してしまったようだ。結果、車両回収のためにセッションは赤旗中断に。レース自体も予定の51周から50周へと減算され、改めてフォーメーションラップを経てレースがスタートした。
スタート前のハプニングの余韻からか、今度は1コーナーでマルチクラッシュが発生する。ポールスターとの平川は難なくスタートしたが、その隣、宮田が初のハンドクラッチスタートに手こずったか出遅れてしまい、その後方にいた予選4、5位の牧野と大湯がこれを避けながらイン側に進入。ところが、大湯が牧野とアウト側にいたフェネストラズにも絡む形で衝突。フェネストラズはその勢いでアウト側のグラベルへと押し出され、万事休す。牧野はコース中央で立ち往生となり、クルマを降りた。これでコース上にはセーフティカーが導入され、その原因を作った大湯もフロントウィングを損傷したため、2周目にピットインしてフロントノーズ交換を行った。
レースは8周目に再開。トップ平川が落ち着いてリスタートを決めてトップをキープ。波乱を経て2番手に浮上したのは、予選8番手だった坪井。背後には石浦が迫り、オーバーテイクシステムを使っての攻防戦を繰り広げ、ポジションアップを狙うも叶わず。逆に坪井はトップ奪取をもくろみ、ピットイン可能となった10周終了から1周遅れの11周目にピットへ帰還。タイヤ交換を済ませ、再び戦場に戻った。一方、トップ平川はその1周後にピットイン。坪井の前でコース復帰を果たしたが、ピット作業に手間取り、その差はわずか。1周先にコースへ出た坪井は熱の入ったタイヤで平川を攻め立て、ヘアピン手前で逆転に成功。まだピット作業を済ませていない車両が前を走ってはいるものの、坪井はこれで事実上の暫定トップに立った。
一方、レースとしてトップを走るのは予選6番手の石浦。次いで予選10番手だったキャシディ。ベテランのふたりは1分16秒前半のハイペースで周回を重ね、”見えない敵”とのギャップを積み重ねていく。レース後半に入ると、”見た目”トップの石浦から”実際の”暫定トップである坪井との差はおよそ37秒まで広がったが、石浦がルーティンのピットインを行い、コースに復帰してもなおトップを死守するにはギリギリのマージン。まして、交換直後の冷えたタイヤで互角に戦うことは厳しいため、どのような戦略を見せるのか、注目が集まった。
実際、石浦がピットインしたのは30周終わり。本来であれば終盤までピットインのタイミングを伸ばしたかったというが、タイヤパフォーマンスが落ちてきており、この時点でのピットインを決断したという。石浦はなんとかトップのままコースへと復帰。だがすぐ背後に迫る坪井がオーバーテイクシステム(OTS)を作動させ、アドウッドカーブでサイド・バイ・サイドの激戦の末に逆転。直接対決を制した。その後は石浦も34周目のバックストレートで坪井を攻略すべくOTSを使って逆転に挑んだが、その先のヘアピン、バイパーコーナーでの死闘も実を結ばず、結局、坪井の先行を許してしまった。事実上のトップ争いが白熱する一方、”見た目”のトップ、キャシディは淡々と好タイムを重ね、坪井、石浦とのギャップを削り取っていく。だが、キャシディ自身は、コース上でのトラフィックに苦戦。なんとかクリアし、見えない敵の2台を追った。
レースは大詰めを迎え、キャシディの猛追を受けて坪井と石浦の2台はトップ争いよりも、チームでのワン・ツーフィニッシュ達成を第一目標へとシフト。これにより、48周終わりでようやくピットインしたキャシディがコースに復帰すると、トップ2台はメインストレートを通過した後。キャシディは3番手で残り2周を走ることになる。この時点で背後に平川が迫っていたが、すでに使用可能なOTSはわずか。対するキャシディは余裕の残量。これにより、平川はポールスタートながら表彰台を逃し、4位という結果に甘んじている。
セミファイナルラップでようやくトップに立った坪井は、その背後にチームの先輩である石浦を引き連れてトップチェッカー。自身初となるスーパーフォーミュラでの勝利に涙した。また、坪井との激闘の末に2位でフィニッシュした石浦は、SF19では初の、そして2018年第5戦以来となる表彰台獲得となった。3位のキャシディも今季初の表彰台に上がっている。なお、4位から10位入賞は、平川、No19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、No. 5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、No.18 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)、No. 6 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、宮田、No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)という結果だった。
【第2戦岡山 決勝結果 トップ3】
1.No.39 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)1:13’11.975
2.No.38 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)+0.782
3.No. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)+3.103
SUPER FORMULA第2戦 予選は第1戦優勝の平川がポール獲得!
秋晴れに恵まれた9月27日、岡山国際サーキットにおいて、2020年全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦の予選および決勝がワンデーレースで開催された。レース直前から波乱となった決戦は、参戦2戦目のNo.39 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)がスタート直後の混乱を味方にして力走。チームメイトの追随を許さず、自身初優勝を飾り、続いて2位になったNo.38 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)とワンツー・フィニッシュを飾った。
開幕戦同様、慌ただしいスケジュールの中で始まった岡山大会。土曜日には1時間の走行セッションが2度行われ、各車限られた少ない時間を最大限利用しようと精力的にメニューに取り組んでいたが、午前中のセッションでは赤旗が断続的に出るなど状況としては不確定要素を抱えた状態でワンデーレースの予選を迎えたドライバーも少なくないようだった。
今回もノックアウト予選のQ1をA、B2組に分けて実施。レース距離も従来の250kmから51周、およそ189kmへと短縮されてはいるが、開幕戦の160kmレースからは若干走行距離が延長された。加えて開幕戦では実施しなかったタイヤ交換を義務付け。単調なレース展開にならないよう、チームやレース展開による戦略の違いに期待が集まった。
なお、新型コロナウィルス感染防止対策の関係から、日本へ入国できていない外国人ドライバーに加え、今回は9月19−20日にフランス、ル・マン24時間レースに参戦していた4選手の出場が見送られることになり、結果として、No. 3 山下健太(KONDO RACING)、No. 7 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)、No.12 タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)そしてNo.36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)の4選手が欠場。代わって3号車阪口晴南、7号車中山雄一、12号車塚越広大、36号車宮田莉朋がそれぞれ起用された。また、TEAM MUGENでは開幕戦に続いてNo.15 笹原右京が、そしてB-Max Racing team with motoparkは2台を1台にして参戦。高星明誠がステアリングを握ることになった。ちなみに、6選手のうちスーパーフォーミュラデビューになるのは宮田と高星。ただし、宮田は昨年末のルーキーテストで実走済みだ。2年ぶり2度目のスポット参戦は、阪口。2018年、SF14の車両をオートポリスでドライブしている。一方、中山と塚越はスーパーフォーミュラの参戦経験者。中山は2年ぶり、塚越は1年ぶりに岡山を走ることになった。
迎えたノックアウト予選。Q1のA組トップはNo. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)の1分13秒120。B組はキャシディのチームメイトとなる宮田が1分13秒131のトップタイムを叩き出し、鮮烈な初アタックを披露した。続くQ2にはQ1の両組から上位7台、計14台が出走した。気温22度、路面温度28度と、想定よりもやや低いコンディションの中で確実にタイムを削り取っていったのは、またしても宮田。2番手につけたNo. 4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)とわずか0.076秒差ではあるもののQ2トップに立ち、ルーキーらしからぬパフォーマンスでライバルにプレッシャーを与えたに違いない。
最終決戦のQ3。チャンスを得た8名のうち、ルーキーは3名。フェネストラズ、宮田、No.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が奮闘し、ワンラップアタックに挑んだ。結果として、昨年もこの岡山でポールポジションを獲得したNo.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が1分12秒773をマーク、2大会連続でポールポジションをゲット。これにルーキー宮田が0.336秒差で続き、3番手にはフェネストラズ、4番手にはNo.64 牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)がつけることとなった。
【第2戦岡山 予選結果 トップ3】
1.No.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)1’12.773
2.No.36 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)1’13.109
3.No. 4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)1’13.173
SUPER FORMULA第2戦岡山 プレビュー
第2戦岡山、タイヤ交換を義務付けに!
8月下旬にようやく開幕した2020年全日本スーパーフォーミュラ選手権。待ちわびたシリーズ戦の第2戦は、舞台を岡山国際サーキットへと移し、9月27日にワンデーレースとして実施される。コロナ禍による変更は依然として数々あれど、今大会ではタイヤ交換が義務付けされるため、前回よりも激しいポジション争いに期待がかかる。
開幕戦と異なるフォーマットを導入
もてぎでの一戦は、真夏ならではの”高温多湿”の厳しいコンディションとなり、久々のフォーミュラレースに身を投じたドライバーにとっては、かなりタフな戦いを強いられたことだろう。そんな中、予選で圧倒的な速さを見せたNo.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、そして伸び盛りの若手ドライバーのひとり、No. 3 山下健太(KONDO RACING)やルーキーのNo. 4 サッシャ・フェネストラズが勢いある走りで表彰台に上がった。一方で、No. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)は6位入賞を果たしたものの、チャンピオン経験のあるNo. 5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は精彩を欠き、入賞を逃す結果となった。
予選、決勝をワンデーで行う今大会では、都度クルマのセットを変更するのはもちろんのこと、すべてのファンクションがスピーディに稼働しなければライバルを制することはできない。ドライバーだけでなく、エンジニア、チームスタッフが一丸となってライバルよりも高いポテンシャルを持って戦わなければ、いい結果を引き寄せることが難しくなる。ワンミスどころか、一瞬の判断が命取りになるほどのヒリヒリする戦いが今シーズンのスタイルとなっている。
コロナ禍で様々な”ニューノーマル”が導入される中、スーパーフォーミュラではレースフォーマットが見直され、開幕戦では新型コロナウイルス感染防止策のひとつとしてレース距離も短くなり、レース中のタイヤ交換および給油も禁止されていた。だが、感染者数の減少に合わせ、レースフォーマットもゆるやかに変化することとなり、今大会ではレース距離は51周/約189kmと開幕戦より30km弱伸びた上に、タイヤ交換を義務付けることになった。ただし、まだ給油は実施されない。レースを開催する日本レースプロモーション(JRP)としては、感染防止対策の規制が徐々に緩和されたことを受け、「本来4月に策定されていたフォーマットに徐々に戻していきたい。今回の変更はそのための第1ステップ」と今大会の変更について説明している。
加えて、今回はニュータイヤを4セット供給へと変更。前大会より1セット追加の供給となった。これで計算上、走行セッションにおいて土曜日の午後2時から行われるフリー走行でニュータイヤを装着することが可能となる。今大会では日曜朝のフリー走行が実施されず、午前10時40分からいきなりノックアウト予選が始まるため、土曜日にニュータイヤでのアタックシミュレーションができることは、ドライバーにとっては朗報となるはずだ。
このほか、JRPはレース中のオーバーテイクシステム(OTS)についても変更を実施。システムの使用を表す点滅のタイミングを従来より8秒遅くすることになった。バックミラーを通して背後のドライバーがOTS使用の認知が8秒遅くなることで、展開にどのような変化が起こるのか否か。この点もレースの面白みのひとつとなるだろう。
ビッグチャンスを掴んだ代役ドライバーにも注目
開幕戦では、ビザの問題などで3名の外国人選手が入国が困難となり、代役が立てられた。だが、今大会はレースウィーク1週間前にフランス、ル・マン24時間レースに参戦したドライバーが4名おり、彼らの出場も見送られている。各チームとも代役を立てて岡山を戦うことになるが、その代役のチャンスを掴んだドライバーにとっては、まさに”大役”。とりわけ若手選手においてはステップアップにつながる願ってもない機会だけに、大化けするドライバーが現れるかどうかも見どころになるだろう。
24日・金曜日の時点で発表されている代役ドライバーの中で、スーパーフォーミュラのデビューとなるのは、高星明誠。No.50 Buzz Racing Team with B-Maxをドライブすることが決定している。現在、SUPER GTのGT500クラスで活躍中の高星は、2017年の全日本F3王者。スーパーフォーミュラの開幕戦が行われたもてぎでは、スーパーフォーミュラ・ライツに出場していたが、今大会はぶっつけ本番、しかもトップフォーミュラでの一戦となるだけに、新たな挑戦の結果が気になるところだ。
1周3.703 kmとショートコースの岡山国際サーキット。ユニークなコースレイアウトは後半セクターにマッチしたセットアップが重要になるとも言われている。予選ではいかにクリーンな状況でアタックできるか、そのタイミング取りも難しくなりそうなだけに、ドライバーとチームとのコミュニケーションも結果に大きな影響を与えそう。すべてのポテンシャルが揃わなければ、好結果を手にすることができない…。そんな戦いの行方に注目が集まる。
主なタイムスケジュール
・9月26日(土)
10:20 – 11:20 専有走行
14:00 – 15:00 フリー走行
・9月27日(日)
10:40 – 公式予選(ノックアウト方式)
10:40 – 10:50 Q1(A組→上位7台)
11:00 – 11:10 Q1(B組→上位7台)
11:20 – 11:27 Q2(A+B上位7台・計14台→8台)
11:37 − 11:44 Q3
14:30 – 15:15 スタート進行
15:15 – 決勝(51Laps・190kmレース)