SUPER FORMULA 2020 Round.6
SUPER FORMULA第6戦、ルーキーの大湯都史樹が初優勝
連日の決戦が繰り広げられることになった全日本スーパーフォーミュラ選手権。12月6日、三重・鈴鹿サーキットでは第6戦の予選および決勝レースが行われ、冬日和の好天気の中、レース中に多発したハプニングをかわしたNo.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が初優勝。ルーキーとして自身初勝利を達成している。
冷え込みはやや厳しくなったものの、前日同様に柔らかな日差しに恵まれる中、午前9時15分からノックアウト予選が幕を開けた。前日の予選で思うようなアタックができずに後方グリッドへ沈んだ各車は挽回のチャンスとばかり、気温13度、路面温度15度の中で始まったQ1では、ニュータイヤを2セット投入して浮上の好機を伺うクルマも多く見られた。今回も、A、B二組に分けて行われたQ1。まずA組において前日予選2番手につけたNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)がタイムを伸ばせずQ1で敗退する。続くB組では、No.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が早速1分35秒を切る1分34秒924でトップ通過を果たした。Q2に入ると、ライバルとアタックのタイミングを外してコースインしたり、ギリギリまでアタックに向かうタイミングを遅くしたり、各車異なるアプローチを見せることになる。その中でトップタイムをマークしたのはNo. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。自身初となる1分34秒763を刻んで、Q3まで駒を進めた。続く2番手は大湯。これにルーキーのNo.51 シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)が続き、若手の躍進を印象づけた。
迎えた最終予選のQ3。進出した8台のうち、No. 5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とチームメイトのNo. 6 福住仁嶺、そして大湯の3台が開始と同時にコースへと向かう。一方、少しタイミングを置いてNo.15 笹原右京(TEAM MUGEN)がピットを離れたが、トヨタ勢の3台、キャシディ、No. 7 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)、No.36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)はしばしピットで待機する戦略を選んだ。セッション開始から4分を過ぎ、キャシディがコースへ。アウトラップ後のアタックラップで全セクターを最速ラップで刻んだキャシディは、1分34秒442を叩き出す。これは、前日の予選で山本がマークしたレコードタイムを改めて更新する最速タイムでもあった。キャシディを追うように他車も続々と自己ベストタイムを更新する走りを見せたが、キャシディには届かず。結果、2位には大湯が続き、3位には笹原。トップ3は今季予選でのベストリザルトを手にしている。キャシディにとっては、2018年第4戦富士以来となるポールポジション。自身通算3回目のポールとなった。なお、昨日のポール・トゥ・ウィンでシリーズランキングトップに立った山本は4位、そして前日はマシントラブルにより予選アタックの機会を喪失、レースでも他車との接触に巻き込まれて結果を残せずに終わったNo.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は14位に留まり、苦しい状況が続いている。
【第6戦鈴鹿 予選結果 トップ3】
1.No. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)1’34.442
2.No.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)1’34.642
3.No.15 笹原右京(TEAM MUGEN)1’34.871
午後に入って、さらに暖かな日差しに包まれた鈴鹿サーキット。ダミーグリッドには全20台が揃い、スタートの瞬間を待つ。なお、予選3位の結果を残した笹原だが、前日の決勝でクラッシュを演じ、マシンが大破。修復作業の中でエンジン置換を行なったことで10グリッド降格の対象となり、13位からのスタートとなる。また、No.50 松下信治(Buzz Racing with B-Max)も同様の作業から、最後尾スタートとなった。
第19回JAFグランプリとしての一戦でもある今大会。決勝レースではオーバーテイクシステムが従来の100秒から倍の200秒使用できる一戦でもある。気温16度、路面温度24度と前日の決勝よりも路面温度が格段に高くなる中でフォーメーションラップ2周が無事に終わり、シグナルレッドが消灯。1コーナーへのホールショットを奪ったのは、No. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)。これにNo.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が続き、3番手にはNo. 6 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がチームメイトのNo.5 山本尚貴を抜いて上がってきた。だが、前日同様、今大会も2周目から波乱の展開を見せ始める。
2周目のシケイン、予選5位スタートだったNo.7 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)と後方にいたNo.4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が接触。フェネストラズがコースアウトし、クラッシュパッドに激しく車両をぶつけて停車。一方の可夢偉はそのままピットインしてタイヤ交換に。一方、車両回収のためにレースはセーフティカー導入が3周目から始まったが、5周目のバックストレートを走行中の山本にトラブルが発生。ペースが急激に落ちる中、なんとかピットへマシンを滑り込ませて修復作業を続けて原因を探ったが、最終的にコース復帰は果たせなかった。レースは7周目にリスタート。すると今度は9周目の1コーナーに向かうキャシディをトラブルが襲う。メインストレートを走る車両から白煙が上がり、キャシディは1コーナー先でコースサイドへと向かい、クルマを停止。その場を離れて戦いを終えることに。さらに、チームメイトの一貴にもタイヤトラブルが発生。TOM’Sにとってはまったくツキのない一戦となってしまった。
一方、キャシディのアクシデントを受けて2度目のセーフティカーがコースインする中で、10周を過ぎたことを受け、ルーティンのピットワークを多くの車両が実施。まずトップ走行中の大湯に続き、福住、関口らがピットに戻る中、ステイアウトを選んだのはわずか2台となった。レースは13周にリスタート、ピットインを済ませていないトップ2台がサイド・バイ・サイドのバトルを展開する一方、実質のトップ争いでも大湯が後方の福住に追い立てられる。その後もオーバーテイクシステムを使い、それぞれが攻防戦を展開する中で迎えた19周目。実質4番手を走行するNo.18 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)がS字でスピン、コースアウト。タイヤのパンクによるハプニングで、またもセーフティカーが導入される。
昨日の決戦同様、3度のセーフティカーが入る波乱の展開となり、23周目にリスタートを迎え、残りまたもスプリントでの戦いになった第6戦。逃げるトップの大湯と追う福住の差は1秒3ほどの差。競り合う2台は潤沢に残っているオーバーテイクシステムを使いながらペースアップを続け、3位関口を置き去りにする形で周回を重ねていく。25周を過ぎると、2台の差は1秒を切り、神経戦へと様変わりしていく。コンマ1秒ずつ大湯に詰め寄った福住だが、逆転までには持ち込めず。結果、大湯が逃げ切りでトップチェッカー。ルーキードライバーとして待望のトップフォーミュラ初優勝を遂げている。2位福住、3位関口と続き、関口は今季待望の表彰台に立つこととなった。
なお、ランキング争いでは前日のレースで入賞を逃した平川がこの日は予選14位から7位でチェッカー。4ポイントを計上したことで、前日ポール・トゥ・ウィンを果たして暫定トップに立った山本と同ポイントに。上位入賞結果によって、平川が再びランキングトップを奪還する形で最終戦を迎えることになる。
【第6戦鈴鹿 決勝結果 トップ3】
1.No.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)1:02’59.044 30Laps
2.No. 6 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)+0.462
3.No.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)+10.449
SUPER FORMULA第5&6戦鈴鹿 プレビュー
いよいよタイトル争いも佳境! 鈴鹿戦はダブルヘッダーのタフな一戦に
シリーズ後半戦を迎える全日本スーパーフォーミュラ選手権。今週末は、第5戦および第6戦が三重・鈴鹿サーキットにおいて開催される。気温がすっかり下がる中、各チーム、ドライバーはどのようなパフォーマンスを披露するのか。タイトル争いが佳境に入る中での戦いに注目が集まる。
■シーズンの山場は寒さとの戦いに!?
2020年シーズンのSUPER GTは11月最終週で全戦を終えているが、日本最高峰のフォーミュラーレースである全日本スーパーフォーミュラ選手権ではまだ3戦が残っている。12月に入り、本来であればシリーズチャンピオンも決まり、どのカテゴリーも”オフシーズン”を迎える頃だが、コロナ禍で大幅に開催スケジュールが遅れたモータースポーツ界において、このSUPER FORMULAでは12月に2大会3レースを開催することになっている。
幸い、今週末の天気は安定しているようでウェットタイヤでのレースは避けられそうだが、どうしても気がかりなのは装着タイヤの発動だと思われる。元来、SUPER FORMULAではタイヤへの加熱はレギュレーションで禁止されている。だが、12月開催という状況を鑑み、今大会と最終戦富士の全3戦は加熱作業が容認されることになった。ただし、F1等で使用されている個々のタイヤをブランケットのようなもので包み込む「タイヤウォーマー」は使用を禁じており、布やパネルなどで個々あるいはセットごとに覆うことも不可となっている。タイヤを温める、とは言うものの、やみくもに熱を入れるものではなく、提供されるタイヤをいかに上手く発動させるかを見極める力が求められる。幸い、前大会オートポリス戦からノックアウト予選に与えられる時間の見直しがあり、これまで7分間だったセッションがすべて10分間へと変更された。タイヤ加熱のノウハウ、またそのタイヤでのアタックラップへのアプローチ。そして10分間の使い方…。これらすべてがうまく噛み合ってこそ、好タイムが期待できるわけで、まさにチーム一丸となったアタック合戦にも期待が集まる。
レースウォーク初日の金曜日は、午前9時45分から専有走行が1時間実施されたが、その中ではタイヤバーストを起こすチームなどもあったという。タイヤに限らずクルマのセットアップ等とコンディションを確認するために、金曜日は午前の専有走行、そして午後からのフリー走行では多くのミッションを次々とこなしたことだろう。
■ダブルヘッダーの戦いに求められる即戦力
今シーズン、すべての日程において予選と決勝を同日に行う「ワンデーレース」が行われてきたSUPER FORMULA。レーススケジュールの進め方という点では、どのチームもすでに手慣れたものになっているだろう。だが、今大会はそのスケジュールが土曜日、日曜日とそれぞれ1戦ずつ実施される「ダブルヘッダー」の形式に。ただし、これまでの戦いよりも若干短く、今大会は30周・180kmでの戦いになる。
トップドライバーであっても、2日間の両日で予選と決勝を消化するという極めてタフなスケジュールは、いくら冬場の戦いとはいえ肉体的にも精神的にもハードワークになることが予想される。その中で問われるのは、やはり精神的な強さになってくるのではないだろうか。もちろん、その強靭な精神力は健全な肉体があってこそ。つまり、ドライバーとしてのスキル、ポテンシャルが明確に現れてくるだけに、また別の意味でも興味深い点といえる。
■第5戦と第6戦との違いは
今大会におけるレースフォーマットはこれまでと変わりはない。第2戦岡山大会以降導入されているタイヤ交換義務(トップ社業が10周回を終えてから最終ラップに入るまでの間に終えることが必要)が生じる。一方、給油作業は認めていない。今シーズンを見る限り、レースの展開次第ではどのタイミングにルーティンのピットインを済ませるかで明暗が分かれることもあった。特にセーフティカー導入のタイミングは、ときにチーム戦略を大きく揺るがしかねない。それだけに、”不確定要素”に戦いの邪魔をされないよう、と早めのタイミングでピットインを実施するチームもあるやもしれない。特に、ピットで温めていたタイヤを手早く装着するメカニックの技量も問われる今回は、すべてにおいてひとつのミスも許されない状態にある。ひりひりとした緊張感の中で戦いが進んでいくこと、間違いなしだ。
なお、レース中の攻防戦に有効となるオーバーテイクシステムについては今回変更がみられる。第5戦ではこれまで通りトータルで100秒間の使用が可能となるが、日曜日決戦の第6戦ではその時間が2倍へ。つまりトータル200秒が使用できることになるため、激しいポジション争いの中でどのような作用を生むのか、見どころが多くなると思われる。
冬晴れの中、果たして鈴鹿の2レースを制するのはどのドライバーか。タイトル争いも絡む終盤の戦いから目が離せそうにない。
■主なタイムスケジュール
・12月4日(金)
09:45 – 10:45 専有走行
13:45 – 14:45 フリー走行
・12月5日(土):第5戦
09:10 – 公式予選(ノックアウト方式)
09:10 – 09:20 Q1(A組→上位7台)
09:30 – 09:40 Q1(B組→上位7台)
09:50 – 10:00 Q2(A+B上位7台・計14台→ 8台)
10:10 − 10:20 Q3
12:30 – 13:15 スタート進行
13:15 – 決勝(30Laps)
・12月6日(日):第6戦
09:15 – 公式予選(ノックアウト方式)
09:15 – 09:25 Q1(A組→上位7台)
09:35 – 09:45 Q1(B組→上位7台)
09:55 – 10:05 Q2(A+B上位7台・計14台→ 8台)
10:15 − 10:25 Q3
12:30 – 13:15 スタート進行
13:15 – 決勝(30Laps)