全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦のレース2決戦は、タイヤ交換義務を伴う35周の戦い。気温22度、路面温度28度の中、見事なスタートを決めたのが予選2番手のNo.41 ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が抜群のスタートを決め、その勢いで1コーナーを制した。ポールポジションのNo. 1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)は2番手、そして3番手には予選5番手から見事な加速を見せたNo.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)、また予選6番手のNo.37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)もポジションアップを決めてあとに続いた。一方、レース1の覇者で、タイトル争いをリードすることになったNo. 2 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)は、逆に勢いに乗れず、予選3番手から6番手まで後退してしまった。
タイヤ交換必須の戦いのため、各チームどのような戦略を採ってくるのかも見どころのひとつであったが、早くもオープニングラップを終えて6台がピットへと舞い戻る。中でも一貴はタイヤ交換に加え、給油も行い、コースへと復帰した。さらに2周目終了後には、13位スタートのNo.20 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)を含む3台がピットインを行なったのだが、関口は同時ピットインしていたNo.8 小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS)にピットアウト時に先行され、ポジションアップにつなげることができなかった。
序盤のピットインが落ち着くと、トップ争いはバンドーンと石浦の一騎打ちに。一方、3番手のロッテラーはトップ2台に差をつけられる。しかし、12周終了時にピットインしてタイヤ交換と短時間の給油を済ませてコースに復帰すると、ペースアップを開始する。そして16周終了時には、トップのバンドーンとこれを追う石浦が同時ピットイン。タイヤ交換と給油をそつなく作業を済ませてコースに復帰した。
レースは折り返しを過ぎ、23周目。スプーンカーブ2つ目の立ち上がりでスピンし、クラッシュを喫す。これを受け、セーフティカーがコースインし、さらにその翌周には国本とNo.3 ジェームス・ロシター(KONDO RACING)がピットイン、タイミングよくコースに復帰するチャンスをモノにした。SCランが終わり、レースが再開したのは27周目から。この際、トップのバンドーンが完璧なリスタートを披露する。シケイン手前で絶妙なスローダウン、そこからの加速に2番手の石浦は翻弄され、一気に差をつけられてしまった。逃げるバンドーン、追う石浦の背後にはロッテラーが虎視眈々と逆転を狙って猛追を開始し、緊迫の上位争いが再燃した。
ところが、それからほどなくしてNo.16 山本尚貴(TEAM 無限)が最終コーナーで挙動を乱して単独クラッシュ。再びセーフティカーがコースインする。そのリスタートは32周目。チェッカーまで残り4周。そしてここから激しいバトルが幕を開ける。まず、3番手のロッテラーが31周目のシケインで前の石浦に迫ると、1コーナーまでに石浦を逆転して2番手に浮上。さらに前を行くバンドーンに猛追し始める。
一方、その後方で4位争いを展開していたNo.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とNo.10 塚越広大(REAL RACING)がサイド・バイ・サイドの末に、塚越が痛恨のオーバーラン。さらにコースへ戻ってきたときに、コース上のロシターと接触。フロントウィングを傷めたロシターはピットインを強いられ、ポイント獲得のチャンスを喪失した。そしてこのアクシデントによって、国本が6番手に浮上する。仮にランキング暫定トップの国本が6位キープ、そしてロッテラーが逆転して優勝した場合、1点差でロッテラーが大逆転王者を果たすだけに、ロッテラーは気迫あふれる走りでトップのバンドーンに迫っていく。
周回ごとに2台の差は縮まる一方で、トップのバンドーンはそつなく安定した走りで応戦。まだ使い切っていなかったオーバーテイクシステムを有効活用し、見事にロッテラーの猛攻をシャットアウト! 今季2度目の勝利は、シーズン最後の戦いそして彼自身にとって、スーパーフォーミュラ卒業レースでの有終の美を飾る幕引きとなった。2位ロッテラーに続いたのは、石浦。そして国本が6位でチェッカー。最終戦で逆転シリーズチャンピオンの座を射止めている。
■最終戦・レース2 決勝結果(TOP6)
1.No.41 ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)35Laps
2.No.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)+0.726
3.No. 1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)+3.988
4.No.19 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)+6.471
5.No.65 ベルトラン・バゲット(NAKAJIMA RACING)+8.500
6.No. 2 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)+13.012

渾沌とするチャンピオン争い。戴冠するのは果たして誰?
早いもので、ついにシーズン最後の戦いを迎える今年度の全日本スーパーフォーミュラ選手権。その最後の舞台となるのは、今年の開幕を迎えた三重・鈴鹿サーキット。毎戦覇者が変わる展開が続き、前回のSUGOでようやく2勝目を手にしたドライバーがただひとりという、近年稀に見る激戦となっているだけに、そのシーズンエンドがどのような形で幕引きを迎えるのか、実に楽しみなイベントとなりそうだ。
■なるか!?、ルーキーチャンピオン誕生
第6戦を終えてポイントランキングトップに立つのは、No.20 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。今季2度目のポールポジションを獲得、決勝ではスタートダッシュを決め、順風満帆のレース運びを見せていた。途中、まさかのセーフティカーランとなり、築いたマージンを一瞬にして喪失するという不運が襲うハプニングが発生。雲行きが一気に怪しくなる中、関口はそれを見事に跳ね返し、怒濤の追い上げで逆転に成功。自らの力で今季2勝目を文字通り“もぎ取る”こととなった。その試合巧者ぶりたるや圧巻で、とてもルーキーとは思えぬ役者ぶりに、ベテランの外国人ドライバーも舌を巻いたはずだ。
現時点でトップ関口と、ランキング2番手につけるNo.2 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)とのポイント差は4.5点。また、3番手のNo.36 アンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)とは6点、4番手のNo.37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)とは8点、そしてディフェンディングチャンピオンであるNo.1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)と来シーズンはF1フル参戦を実現させるNo.41 ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とは9点の差がある。この中でチャンピオン経験者は、ロッテラー、一貴、そして石浦の3人。これに対し、国本とバンドーンは、ともに2レース制で開催された第5戦岡山の勝者であり、加えてスーパーフォーミュラでの初勝利を挙げたばかり。実に対照的なライバル達が関口のタイトルを阻止すべく、最終決戦に挑むことになる。
■今季初優勝を目指して
最終戦としてチャンピオン争いに注目が集まるのは、当然のことだが、その一方で今シーズンの初優勝を目指す戦いもあることを忘れてはならない。興味深いのは、チャンピオン争いをしながらも、今季まだ未勝利のドライバーがふたりいる。ロッテラーと一貴のふたりだ。トムスのふたりは、今季、絶対的な強さでレースをしたという印象が正直薄い。また、一貴においては、第5戦第1レースでポールポジションを獲得しながらも、正規グリッドに付く際、場所を間違えるというまさかのミスを犯し、最後尾グリッドへの降格というペナルティーを課せられ、優勝のチャンスを自ら逃してしまったという不運があった。それだけに、ベテランのふたりこそ、勝ってシーズンを締めくくりたいという気持ちがなおさら強いのではないかと思われる。
さらに、シーズン開幕から、自身の言葉を借りると“まだ開幕していない”No.8 小林可夢偉(SUNOCO TEAM LEMANS)の存在にも着目したい。大小さまざまなトラブルに見舞われることも少なくなかった可夢偉。キラリと光る速さを感じさせることはあっても、それがレースウィークを通してしっかりと披露できない悔しさが沸々と溜まっている状況を打破するために、今年最後の戦いでしっかりと帳尻を合せてくることができるのか。先のWEC(世界耐久選手権)では、アウディ、ポルシェの怒濤の追い上げを封じ込め、No.6 トヨタTS050ハイブリッドを今季初勝利へと導いた強運の持ち主だけに、最終戦の鈴鹿でその底力を発揮することに期待がかかる。
なお、鈴鹿のイベントは伝統のJAFグランプリのタイトルが懸けられている名誉ある大会でもある。また、これまで同様に2レース制での展開となる。予選Q1の結果がレース1のグリッドとなり、Q3での最終結果がレース2のグリッドとして採用されるため、いつも以上に緊迫のアタック合戦が繰り広げられることだろう。そして迎える日曜の決戦。まず、午前中のレース1はピット作業の義務付けがないスプリントレース。スタートがすべてを決めるといっても過言ではない戦いになるはず。そして午後のレース2はピットストップを伴う一戦。そこにはチーム戦略が含まれるため、まさに集大成のバトルが待ち受けていることだろう。泣いても笑っても最後の決戦。そこで勝利の女神に一番愛されるのは、果たしてどのドライバーなのか。その結果を見届けたい。
■主なタイムスケジュール
・10月29日(土)
09:10~10:10 フリー走行
10 : 25~10 : 40 サーキットサファリ
12:00~12:50 ピットウォーク
14:15~ 公式予選(ノックアウト方式)
14 : 15~14 : 35 Q1(19台→14台)
14 : 45~14 : 52 Q2(14台→ 8台)
15 : 02~15 : 09 Q3
16:30~17:00 キッズピットウォーク
・10月30日(日)
09:00~09:45 スタート進行
09 : 45~ 決勝レース1(19Laps)
11:50~12:40 ピットウォーク
14:00~14:45 スタート進行
14:45~ 決勝レース2(35Laps)
16 : 30~16 : 50 シーズンエンドセレモニー