SUPER GT 2015 Round.5
SUPER GT第5戦鈴鹿、No.36 PETRONAS TOM’S RC Fが鈴鹿連覇を果たす!
前日同様、鈴鹿の空は朝から灰色の雲があたり一面に広がった。また雨も時折本降りになるなど極めて落ち着かない決勝日となる。先の読めない天候を相手に幕を開けた今年の「真夏の鈴鹿1000km」は、路面コンディションや装着したタイヤをうまく味方につけたチームが強さを発揮。後方からポジションを上げたNo.36 PETRONAS TOM’S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)がダントツの強さと速さをアピールし、後方に大差をつけて長距離レースを勝利。36号車にとっては、昨シーズンに続いての1000kmウィナーとなった。
通常のシリーズ戦であれば日曜朝はフリー走行からスタートとなるが、今大会ではお昼過ぎの決勝を控えた午前11時8分からのウォームアップ走行だけが、最終確認ができる時間となる。夏らしくない低い気温、雨で濡れた路面…。さまざまな要素が重なり、難しい状況下での戦いになることは必至となったが、実際にレース開始直後から先の読めない展開が次々と訪れた。まず、予選3番手からあっという間にトップを奪取したのが、No.64 Epson NSX CONCEPT-GTのベルトラン・バゲット。いわゆる“ちょい濡れ”のウェット路面をものともせず、トップに立ってからもハイペースでレースを牽引した。ところが次第に路面コンディションが改善されるとその速さにも陰りが出始める。代わってトップを奪いにきたのが、No.15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの小暮卓史。まさに水を得た魚を彷彿するような異次元の走りを見せて、瞬く間にトップを奪うと最速ラップを連発し、場内を大いに沸かせた。その後、レース開始一時間前後から始まった1回目のルーティンワークをうまくクリアしたNo.36 PETRONAS TOM’S RC Fがポジションアップ。前日のQ1ではコースレコードを更新する速さをもちながら、それを上回るライバルに行く手を阻まれ9位スタートに甘んじていたが、レース序盤からその存在感をしかとアピール。上位で周回を重ねていく。
レースはスタートから2時間を過ぎると路面もほぼドライへ。2回目のピットワークで装着するタイヤがその後の走りに大きな影響が出ると読んだ各チームにとっては、実に頭を悩ませる選択だったといえる。事実、明暗を分ける結果が順位をして現れ、一度はレインタイヤを装着したものの、イレギュラーのピットインを敢行してスリックタイヤへと変更するチームも見られた。慌ただしい状況で周回を重ねていく中、レースは午後3時を前にセーフティカーがコースインするハプニングが発生する。
GT300の車両が他車と接触の上にコースアウト。激しくパーツがコース上に広がり、約20分に渡たりセーフティカーによるレースコントロールが行われた。レースが再開すると、トップにいたのは36号車RC F。これにNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT、No.38 ZENT CERUMO RC Fが続いたが、36号車はじりじりとリードを広げ、その後のルーティンワークを重ねるたびに2位以下との差を築き上げていく。
長丁場の戦いでは、途中パラパラと雨が落ちたり、またコンディションが改善したりと相変わらず落ち着きのない状況。それに合わせるかのように、ドライブを続ける各車もまた順位を激しく入れ替えての周回となった。その背景には、これまでの戦歴によって課せられたウェイトハンデや選択したタイヤなどさまざまな条件の違いがあり、これがまた戦いの中で大きな差となってじわりじわりと走る順位に反映されることになる。
だが、トップを快走する36号車だけはつねに安定した速さがあり、怯まぬ強さがあった。速さはあれど、出入りの激しい展開で自らペナルティを招くチームもある中、速さと強さのバランスが格段に良かった36号車は後続に1分以上の差をつけてレース後半を迎えることになる。一方で落ち着かないポジション争いを繰り広げていたライバルたち。頭ひとつ抜け出したのが38号車のRCFであり、その勢いに喰らいついてきたのがNo.12 カルソニックIMPUL GT-Rだった。ともにシーズン前半で着実な成績を残してきたチーム。今年の1000kmレースは制限のあるクルマでも強いレースをすることの重要さを改めて見せつける一戦でもあった。
今季初優勝の36号車は鈴鹿で勝利したチームに与えられるボーナスポイントを手にして、ランキングでも一気にジャンプアップ。3番手へと浮上した。また、12号車のGT-Rは3位フィニッシュで、ランキングトップのキープに成功している。
一方、GT300クラスでは、ポールスタートのNo.2 シンティアム・アップル・ロータスを先頭に、その後方ではランキング争いをしている強豪チームが重いウェイトをものともせずに、着々と自分たちのレース戦略にそって理想のレース運びを進めていた。
しかし、後方からの追い上げを見えるライバル勢は車重も軽く、またウェットからドライへとじわりじわりと変化していくコンディションにも柔軟に対応。中盤以降はさらに混戦が激しくなり、2号車の後方から追い上げを開始したのは、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORTやNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTだった。しかし、後半に向うとその様相がまた次なる展開へと進んで行く。この時点でトップを快走する61号車に追い付いてきたのが、予選2位のNo.10 GAINER TANAX GT-R。予選でも速さを発揮したこの2号車、現在のクラストップランカーであり、同時にクラス最大のウェイトハンディ88kgを背負う過酷な条件を課せられたクルマでもあるが、ベテランのアンドレ・クート、海外レースでの活躍も目立つ千代勝正、そして独自にレースキャリアを積み上げている富田竜一郎それぞれが安定した速さで周回を重ね、ついに2位まで返り咲く。
最後のルーティンワークを終えた時点でのトップは10号車のGT-R。これにNo.7 Studie BMW Z4が続き、3番手には61号車のBRZ。各車、長い戦いの中で限りなく安定した走りを継続することができた車両がトップ3へと浮上したといえる。なお今回の1000kmレースは、SCカーの導入さらには雨中のレースラップでの周回となったため、1000km走破ではなくレギュレーションに定められた“最大延長時間”が優先されることとなった。結果、午後6時25分を過ぎてレースは終了。チェッカードフラッグが振られることになり、10号車が今季2勝目を果たし、ランキングでもトップの座を守っている。
■第5戦鈴鹿 決勝結果
・GT500
1.No.36 PETRONAS TOM’S RC F(伊藤大輔/ジェームス・ロシター組)5:45’55.277 163L
2.No.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)+1’25.629
3.No.12 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)+1’33.520
4.No.19 WedsSport ADVAN RC F(脇阪寿一/関口雄飛組)+1’38.813
5.No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)+1Lap
6.No.46 S Road MOLA GT-R(本山 哲/柳田真孝組)+1Lap
・GT300
1.No.10 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正/富田竜一郎組)5:47’15.336 151L
2.No. 7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒 聖治組)+1.098
3.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)+38.842

SUPER GT第5戦鈴鹿、No. 1 MOTUL AUTECH GT-Rが会心のポール獲得
今シーズンの後半戦へと突入したSUPER GT。シリーズチャンピオンを見据えた戦いが本格化する中、その一戦は1000kmというシリーズ最長のレースとなる。舞台は三重・鈴鹿サーキット。伝統の一戦としても知られ、また真夏の厳しい暑さとの戦いになることでも知られ、これまでも多くのドラマを生み出してきた。そんな中、8月29日に行われた予選は、予想を大きく外した薄曇りの天気となり、気温、路面温度も厳しい暑さを感じるまでには至らず。肩透かしのコンディションとなったが、一方で最速ラップへの競争は激化。次々と塗り替えられるコースレコードを最後に更新したNo. 1 MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリが今季2度目となるポールポジションを手にしている。
この日、午前9時20分から行われた公式練習では、気温24度、路面温度25度と数字だけを見ると秋を思わせるような状態。一方で湿度は高く、蒸し暑さを感じる中での走行となった。一方、コース上は前夜遅くに降った雨の影響が残っており、走り始めはウェットタイヤを装着しての走行となる。各チームともクルマとタイヤとのコンビネーションを確認すべく、積極的に周回を重ねるクルマが多くみられたが、路面温度が低いことが裏目に出たのかバランスを崩してコースアウトするクルマもあり、セッション中は3度にわたって赤旗中断となった。
午後に入り、コンディションは改善。GT500のQ1を迎える頃、気温は27度、路面温度33度と、例年ほどの暑さは感じられない。しかしこれを好機にドライバーたちは果敢に予選でのアタックに挑み、次々と好タイムをマークし始めた。結果、上位8台がQ2へと進出可能なGT500では、9番手止まりとなった車両ですらこれまでのコースレコードを更新する速さをアピール。激戦の予選アタックを証明することとなった。
迎えたQ2。最速ラップを刻んだのは、No. 1 MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリ。ライバルよりも長くピットで待機し、満を持してコースへと向う。じっくりとタイヤに熱を入れてアタックのタイミングを確保したクインタレッリは、1分47秒630の好タイムをマーク。コースレコードを更新してトップへ躍り出た。先にコースインしていたライバルたちもさらにもう1周アタック。だが、その後、クインタレッリのタイムを打ち負かすドライバーは現れず。結果、1号車のGT-Rが第2戦富士以来となる2度目のポールポジションを手にした。2番手にはNo.38 ZENT CERUMO RC Fの立川祐路、3番手にNo.64 Epson NSX CONCEPT-GTの中嶋大祐が続くこととなった。
一方、GT300はNo. 2 シンティアム・アップル・ロータスの加藤寛規がトップタイムで今季初となるポールポジションを獲得。こちらもGT500同様、コースレコード更新の好走となった。
・第4戦富士 予選結果
GT500(TOP6)
1.No. 1 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)1’47.630
2.No.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)1’47.782
3.No.64 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット組)1’47.785
4.No.46 S Road MOLA GT-R(本山 哲/柳田真孝組)1’48.042
5.No.12 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組) 1’48.500
6.No.37 KeePer TOM’S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川 亮組)1’48.665
GT300(TOP3)
1.No. 2 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規/濱口 弘組)1’58.248
2.No.10 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/千代勝正/富田竜一郎組)1’58.600
3.No. 7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒 聖治組)1’58.954

SUPER GT第5戦鈴鹿 プレビュー
いよいよ、シリーズ後半戦へと突入する今シーズンのSUPER GT。その戦いの舞台は三重・鈴鹿サーキット。この第5戦はシリーズ最長の1000kmレースであるが、鈴鹿で開催されるイベントとしては伝統ある一戦であり、毎回なにかしらドラマを生み出しているレースでもある。夏休み最後の週末、今年はどのような筋書きが用意されているのだろうか?
■長距離レースならではの戦略に注目
第4戦富士からわずか3週で迎える鈴鹿戦。夏休みに繰り広げられる一戦は暑さという要因だけでなく、1000kmという長丁場を戦い抜かなければいけないとてもハードな連戦でもある。クルマの信頼性は向上し、厳しい戦いへの対策も存分に行なわれているのは言うまでもない。しかしながら、レースは水モノであり魔物でもある。つまり何が起っても不思議ではないという不確定要素が待ち受ける中で、そのハプニングを回避できる底力が問われるというわけだ。
底力とはドライバーに因るものに限らない。シーズンも後半を迎え、これまでの戦歴によってしっかりとウェイトハンディを搭載するチームも少なくないことから、チームとしてどのようなレース戦略を立てて挑むのか、その総合力に因る部分も大きい。いわゆる“SUPER GTらしい戦い”の完成度がより高いチームに分があるわけで、展開次第では、速さよりも強さで勝るチームがより優位に立つ可能性も高いと考えられる。
■チャンピオン争いを意識した着実な戦いがカギに
通常、300kmレースで開催されることが多いSUPER GT。第2戦富士では500kmと若干距離の長いレースも行なわれているが、この鈴鹿戦は1000kmとズバ抜けている。レースでは、レギュラードライバーのふたりに加え第3ドライバー登録が可能ではあるが、最近ではGT500クラスの場合、第3ドライバーを追加登録するものの未出走のまま終わることも多く見られる。以前に比べてドライブ時の負担が軽くなったというのがすべての理由ではないが、現状のSUPER GT車両のポテンシャル、ドライバビリティの向上が影響していることは充分に考えられるだろう。だが一方で、注目の第3ドライバーを擁するチームもある。No.39 DENSO KOBELCO SARD RC Fは、今年から元F1ドライバーのヘイキ・コバライネンがレギュラー参戦中だが、今回、第3ドライバーとしてクリスチャン・クリエンがエントリー。彼もまた元F1ドライバーだけに、日本のレースファンにとっては楽しみがひとつ増えることになるだろう。
戦い方を見ると、ウェイトハンディが大きいチームにとってはクルマへの負荷が高くなるぶん、いつも以上にクルマに優しい走りを追求することになるだろう。場合によっては、ラップタイムのアベレージをやや遅めに設定し、周回を重ねる戦略を採るかもしれない。いわゆる“ウサギとカメ”のカメに徹する可能性もある。逆にシーズン前半で思うようなレースができず、ウェイト搭載が少ないチームは、ここぞとばかりウサギに変身してライバルを引き離す走りを見せる可能性もある。1000kmの戦いゆえに、チームの思惑がくっきりはっきり分かれることが予測されることから、各チームが置かれている現状を図り知ることになるだろう。
■GT300は今回も混戦模様となるか
前回、富士戦ではポールポジションを獲得したNo.55 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志組)が、決勝では必勝態勢で挑むためにクールスーツの装置を外して挑むという驚きの展開で勝利をもぎ取った。さすがに今回の長距離戦ではそのような無理はできないが、天候次第でクルマやドライバーへの負荷が軽減されれば、レースの展開にもその影響は多少なりとも出てきそうだ。つまり、それだけ多くのチームに勝機があると考えられる。強豪チームが安定したレース運びを見せるのか、はたまた伏兵が勝ち名乗りをあげるのか、1000km先の結果を見守りたい。
夏休み最後の週末、タフな戦いを終えたサーキットには花火が上がり、夜空一面を彩ることになる。これも鈴鹿1000kmならではの風物。このほか、施設内では車両展示やドライバーによるトークショーなど、さまざまなイベントも予定されている。
■主なタイムスケジュール
8月29日(土)
08:00 – 08:50 オープンピット
09:20 – 11:05 公式練習
11:15 – 11:30 サーキットサファリ
12:35 – 13:25 ピットウォーク
14:30 – 15:05 ノックアウト予選_Q1
14:30 – 14:45 : GT300
14:50 – 15:05 : GT500
15:15 – 15:47 ノックアウト予選_Q2
15:15 – 15:27 : GT300
15:35 – 15:47 : GT500
17:20 – 18:00 GTキッズウォーク
18:20 – 19:20 前夜祭
8月30日(日)
10:05 – 10:50 ピットウォーク
12:30 - 決勝 173Laps