今シーズン4戦目の戦いを迎えたSUPER GT。予選日から不安定な天候となったが、決勝日は朝から雨が降ったり止んだりの落ち着かない天候となり、その不安定な状況が多くのチーム、そしてレースそのものに大きな影響を与えることとなった。レースは、慌ただしい状況を冷静に戦い抜いたNo. 1 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)が壮絶なバトルの末に優勝。今シーズン初となる美酒に酔っている。
決勝を前に行われるウォームアップ走行の時間を迎えると、にわかに雨雲が広がり、あっという間にコースはウエットコンディションへと変わり、走行にはレインタイヤが必要となる。ところが、決勝を控えたダミーグリッド上に全車が整列する頃には雨が上がり、各チームはドライかウエットか、装着するタイヤに最後の最後まで頭を悩ませることになった。今回も、地元警察ー宮城県警のパトロールカーに先導されてパレードラップを1周、そしてその後、フォーメーションラップに入ったSUPER GTの決勝。するとパレードラップの開始に合わせたかのようにパラパラと雨が降り始め、またたく間にコース上を濡らしてしまった。GT500クラスでスリックタイヤを装着していたのは全15台中4台。安定しない足下ではライバルとの攻防戦も叶わず、それぞれがポジションを後退させる。一方でトップ争いはポールポジションスタートのNo. 8 ARTA NSX-GTと予選2位のNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)が激しいバトルの末に、100号車が逆転に成功。この後、着実に後続とのマージンを築き、独走態勢を築き上げた。
レースは序盤に早くもセーフティカー導入となったが、トップ100号車は無難にリスタートを決め、再び快速劇を披露。レース中盤には2位との差に15秒程度の大差を構築する。だが、折り返し目前、またもSC導入となるアクシデントが発生。このリスタートを機に、ルーティンのピット作業を行うチームが多数現れた。一方で、100号車を含む、表彰台圏内の車両はレースのセオリーどおり、コースに留まり周回を続ける。だが、レースは思わぬ展開へと向かっていった。2度目のリスタートの直後、再びGT300車両が接触の末にコースアウトするなど複数箇所でアクシデントを起こし、3度目のSC導入を招くことになったのだ。
ドライバー交代の規定周回が近づく中、100号車を含む上位陣の車両4台がリスタート後に続々とピットイン。スタートドライバー達からステアリングを引き継いだ新たなドライバー達がコースへと向かっていった。ところが、SC導入中、スローペースとなってレースがコントロールされているタイミングでピットインを終えていた車両が、すでに先行。まるでSCによる”横やり”が入ったかのような展開となり、順調にトップを快走していた100号車は、前回のオートポリス戦同様、SCに泣くレースを強いられた。結果、代わって表彰台争いのチャンスが巡ってきたのは、1号車とNo.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)。その後方のNo. 6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ)とはすでに1周の差が付いており、1号車と46号車は事実上の一騎打ちで終盤を迎える。一旦、7秒近く差が広がった2台だったが、チェッカーまで5周を切ると後方の46号車がペースアップ、完全なテール・トゥ・ノーズへと様相を変えた。
セミファイナルラップ、突如上空からまた雨が降り出し、挙動を乱す車両も増える中、依然として1号車と46号車のバトルは続いていた。サイド・バイ・サイド、ときには接触しながら滑りそうになる体勢を立て直すという壮絶なバトルを見せた2台は、シンクロするような動きを見せつつ、ともになんとか車両をコントロールしながら最終コーナーを過ぎ、メインストレートへ。やや出遅れた46号車に対して1号車が粘り勝ちし、待望の今シーズン初勝利を手にしている。
一方、GT300クラスでは、No.11 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)が3年ぶりのクラス優勝を果たすことになる。装着したタイヤや車両特性の違いから、サーキットによって力の差が如実に現れるGT300クラス。SUGO戦ではマザーシャシーの強さが目立ち、ポールスタートを決めたのはNo.25 VivaC 86 MCだったが、GT300も500クラス同様に、天候とSCランによる混乱で思いもしない順位で周回を重ねていく。やはり2度目のSCが導入された直後の対応によって明暗が分かれた上位争いが起こり、これを逆手にとったのが11号車だったといえよう。
11号車は予選17位からスタート。着実なレース運びはもとより、ピットワークをよりスピーディに済ませて攻めの走りを続けると、最終的には、2〜3度目のSC導入を味方につけて逆転に成功。結果、速さだけでは戦いを制することが出来ないというシビアな展開の中で生き抜いた11号車に、勝利の女神が微笑んでいる。
・第4戦SUGO 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No. 1 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)81L 2:09’13.878
2.No.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山 哲/千代勝正組)+1.022
3.No. 6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組)+1Lap
GT300
1.No.11 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム組)77L 2:10’06.496
2.No.50 Ferrari 488 GT3(都筑晶裕/新田守男組)+7.269
3.No.25 VivaC 86 MC(松井孝允/山下健太組)+1Lap
今シーズンの中盤戦へと突入した2017年SUPER GTシリーズ。これから8月末までの戦いは”真夏の三連戦”と呼ばれ、シーズンの流れを左右するともいえる重要な決戦が続く。今回の第4戦の舞台は仙台・スポーツランドSUGO。起伏の激しい難コースでの一戦は荒れる展開が多いことで知られる。今年の予選日は強い陽射しが照りつける中で始まり、タイムアタックを迎える頃には通り雨となる落ち着かないコンディションとなったが、その中でNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志組)が今季2度目となるポールポジションを獲得することとなった。
第3戦オートポリスの戦いからおよそ2ヶ月。この間、公式テストやタイヤメーカーテストなどを行い、各チームはシリーズ中盤の戦いの準備を進めてきた。まず、厳しい暑さを感じる中、行われた公式練習でトップタイムをマークしたのは、No. 6 WAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組)。これに8号車、さらにNo.24 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が続き、3メーカーの車両がしのぎを削ることになった。
一方、予選を前に天候が下り坂へと急転、一瞬通り雨が降るなど慌ただしい状況となる。幸い、ウエットタイヤを装着するまでには至らず。そんな中で始まったノックアウト予選で気を吐いたのが、8号車だった。まずQ1で8号車の小林がトップタイムをマーク。僅差でNo.19 WedsSport ADVAN LC500(関口雄飛/国本雄資組)が続いた。一方、現時点でランキングトップにつけるNo.37 KeePer TOM’S LC500(平川 亮/ニック・キャシディ組)はウェイトハンデが影響したか、タイムを伸ばせずQ2進出を果たせずに終わっている。
続くQ2は、どんよりとした曇り空の下でアタックが始まる。12分間のセッションが始まってもほとんどがピット内で待機。残り時間7分を切る頃にようやく、1台、また1台とコースへと向かった。そこで完璧なアタックを見せたのが、8号車の野尻。1分10秒915の最速ラップをマーク、2番手に0.5秒近くの差をつけた。8号車は開幕の岡山戦に次ぐ今季2度目のポールを手にした上に、野尻にとっては自身で掴み取った初のポールポジションとなっている。また、ホンダ勢がトップ3を独占する結果ともなった。
一方のGT300クラス。ここ暫くはFIA-GT3車両の勢いが目立っていたが、SUGOではJAF GT車両やマザーシャシーが予想どおり奮闘。セッション中に一度赤旗中断という落ち着かない状況ではあったが、その中で、前回のオートポリスでポール・トゥ・フィニッシュを飾ったNo.25 VivaC 86 MC(松井孝允/山下健太組)が最速ラップをマーク。今季2度目のポールポジションを獲得した。
・第4戦SUGO 予選結果 各クラストップ3
GT500
1.No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志組)1’10.915
2.No.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/伊沢拓也組)1’11.469
3.No.17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/小暮卓史組)1’11.491
GT300
1.No.25 VivaC 86 MC(松井孝允/山下健太組)1’18.657
2.No.18 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/川端伸太朗組)1’18.753
3.No.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3(飯田 章/吉本大樹組)1’18.868