スーパーフォーミュラ2014 Round.5
SUPER FORMULA第5戦オートポリス プレビュー
シリーズ後半戦の戦いへと突入した今シーズン。第5戦の舞台は、本州を離れて九州へと移動する。9月13-14日、大分・オートポリスにおいて全日本選手権スーパーフォーミュラが開催される。厳しい残暑から解放され、朝晩はすっかり涼しさを覚えるようになった頃。また、阿蘇山麓に位置する山あいのサーキットならではのドラマが待ち受けているようだ。
■初物づくしの一戦に!?
ニューマシンが投入された今シーズンのスーパーフォーミュラ。大会の舞台となる九州・オートポリスで迎える初の公式戦だけに、様々な「初物」がお目見えする。初の公式戦、と書いたが、つまり事前の公式テストが行われていないサーキットで迎える戦いになるというわけだ。ほぼドライバーを含むレース関係者は、今シーズン、ひと足先にSUPER GTを経験していたり、コース自体は昨年もレースをしている。だがしかし、繊細なフォーミュラマシンをどう操ればいいのかはまた別の話。というわけで、今大会は誰もが未知の世界を味わえるレースウィークになる。
今シーズン、オフシーズンの間に予定されていた公式テストが天候不順などにより十分に実施されなかったことをうけ、レースを運営・管理する日本レースプロモーション(JRP)はレースイベント前日の金曜日に専有走行の時間を設けている。だが、スケジュール上、そのセッションを実施できるのはオートポリス以外のサーキットに限られることに。よって、エンジニアはこれまでのレースデータをもとにクルマをセットアップし、それをいきなり土曜日朝のフリー走行に出走させることになる。短時間で速くて強いクルマをどのチームが作ってくるのか? 見どころとなるだろう。
さらに、今大会はルーティンワークとしての給油作業を伴わない。これはオートポリスのレイアウト、そしてSF14の車体特性に一因がある。まずレイアウト。ここは他のサーキットと異なり、コースの外側にピットが配置されている(通常、右回りのコースの内側にピットを設置)。ここでピット作業中の風景をイメージして欲しい。ピットインしたクルマの右側にピットガレージがあり、待ち受けたメカニックはガレージ側に立って給油作業を行う。さらに車体の燃料キャップは右側にのみ付いている。だが、オートポリスのピットではクルマが逆方向を向いて停車する。仮にここで給油するとなれば、困難を極める上に安全面でも危険を伴うリスクが生じることになる。結果、今回は燃料無給油によるルールが導入され、併せてタイヤ交換の義務もない。スタートを切ったら、ひたすらゴールを目指すのみ、の至ってシンプルな一戦となる。
■高速系コースをどう攻略する?
だが、この無給油によってチームはより一層緻密な戦略をもってレースに挑まなければならなくなった。なにしろ高低差が大きいオートポリス、この高速系コースは燃費との戦いでもあるのだ。幸い、レース距離は通常の250kmよりもやや短い46周、215km。また、前回のもてぎ同様、燃料流量制限(燃リス)が絞られ、エンジンへ送る燃料が通常より10%削減されるため燃費は向上する。結果、フルタンクの状態で走り切ることは、物理的に可能となる。とはいえ、当然のことながらレースはエコな走りを競うものではなく、誰が一番先にゴールするか、がすべて。「速いけれど燃費もいい」という両立させるのが難しい条件をうまくバランスさせられるかが問われる。
また、ドライバーにはエンジニアが苦心して作り上げたクルマをドライブするにあたり、繊細なコントロールが要求される。無駄な攻めばかりしていては意味もない。燃費のコントロールをはじめとする巧みなテクニックが試される。加えて、攻防戦に役立つオーバーテイクシステムも今回ばかりは多用するのがはばかれるかもしれない。スイッチひとつでパワーアップ、追い抜きや防御になくてはならないシステムとはいえ都度燃料を多く使うことになるため、ただでさえ燃費が問われる戦いでは、どのタイミングでボタンを押せばいいのか、カシコイ使い方が求められる。
そして、車両の足下を支えるタイヤ。給油のピットインがなければ、タイヤも無交換のほうがピットインの作業すべてがなくなるため、大きな時短につながる。となれば、ドライバーはいつも以上にタイヤにやさしい走りを心がけなければならない。しかしながら、このサーキットはタイヤへの攻撃性が高いことで知られる難コース。最後までコンディションをうまくキープさせつつ、速く走るという最大のミッションがドライバーを待ち受けるというわけだ。
■そろそろタイトル争いの行方が見える頃
このような、極めて難しい条件がたくさん揃うなかで迎える今大会。そろそろシリーズチャンピオンの行方もよりハッキリしてくると思われる。ポテンシャルの高い今年のクルマをうまく手なずけ、上位に名前を連ねるのは、やはりチャンピオン経験のある外国人ドライバー。そしてつねに安定した強さを見せるドライバーという布陣になっている。
現時点でランキングトップはジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ。以下、中嶋一貴、ロイック・デュバルと、歴代チャンピオンがトップ3を占める。4番手に食い込むのは、石浦宏明。トップフォーミュラは3年ぶりだが、SF14との相性も良く、自信を見せている。続くランキング5位にはアンドレ・ロッテラー。大会屈指となる難しい一戦で高得点を獲得することこそが、今シーズンのタイトル争いに生き残るポイントになりそうだ。一方、前回のもてぎで反撃の狼煙をあげたHonda勢。前回の予選でルーキーの野尻智紀が見せた速さに加え、強さが伴ってくれば、Toyotaエンジンユーザーとの闘いにも勢いが増すというもの。
これまでとはひと味もふた味も異なる展開が待ち受けていそうなオートピリス戦。レースウィーク中、どのようなドラマが繰り広げられるのか、楽しみは尽きない。
■主なタイムスケジュール
・9月13日(土)
08:00 ゲートオープン
10:00~11:15 フリー走行
12:00~12:50 ピットウォーク
14:40~ 公式予選(ノックアウト方式)
14:40~15 : 00 Q1(19台→14台)
15:10~15 : 17 Q2(14台→ 8台)
15:27~15 : 34 Q3
15:55~16:30 キッズピットウォーク
・9月14日(日)
08:00 ゲートオープン
09:30~10:00 フリー走行
10:15~10 : 15 スタート練習
11:25~12:15 ピットウォーク
14:45~ 決勝 46Laps
記事:島村元子/ TEXT : Motoko SHIMAMURA