SUPER FORMURA 2025 Round11
今シーズン最終決戦、初日開催の第11戦は野尻智紀が今季初勝利!
11月22日、三重・鈴鹿サーキットにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第10・第11・第12戦が開幕。初日は第11戦の予選および決勝レースが行なわれ、予選2番手からスタートを切ったNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が波乱の幕開けを制して、トップチェッカー。待望の今シーズン初優勝を果たした。
前回、富士スピードウェイで実施されたワンデーレーススタイルの第9、第10戦は、不安定な天候で大幅なスケジュール変更を強いられることに。第9戦は雨の影響を受けてセーフティカーランでのスタートが切られたが、降り続く雨にコンディションが回復せず。赤旗を挟んでリスタートしたものの、14周のセーフティカーランのみでチェッカー。実質的にはレースとは言い難いものだった。さらに翌日の第10戦は予選こそ無事に行なわれたが、午後からは霧が濃くなりはじめ、開始時間が大幅にディレイ。だが、天候回復には至らずキャンセルとなっていた。これを受け、最終ラウンドの鈴鹿において第10戦振替えの実施が決定。晩秋の鈴鹿は3レース開催という前代未聞のレースイベントに様変わりした。
レースウィーク初日は第11、第12戦の予選を午前中に実施。午後から第11戦の決勝を行なうタイムスケジュールで進められた。これに先立ち前日の21日には2度にわたるフリー走行が行なわれ、各車は予選、決勝に向けてのクルマ作りに勤しむこととなった。
第11戦の予選は午前8時にスタート。気温13度、路面温度14度と季節を考慮してもまずまずのコンディション。しかも1コーナーに向けてまぶし日差しが照る絶好のレース日和になった。A、B2組に分けて行なわれた予選Q1では、タイトル獲得の可能性がある6選手(No.1 坪井 翔、No.15 岩佐歩夢、No. 6 太田格之進、No. 5 牧野任祐、No.16 野尻智紀、No.37 サッシャ・フェネストラズ)が順当にQ1を通過。さらに今大会をもってスーパーフォーミュラからの引退を表明しているNo.14 大嶋和也もQ2へと駒を進める走りを見せた。
Q2に進出した12台によるポールポジション争いは、タイトル争いに向けて1点でも加点したいドライバー同士の激しいアタック合戦となる。Q1よりも3分短い7分間によるセッションでは、残り1分を切って各車がアタックラップへと向かったが、そのなかでも早めのアタックを行なっていたTEAM MUGENの野尻と岩佐が競うように各セクターで最速タイムを刻んでいった。まず野尻が1分35秒945でトップに立つと、すぐさま岩佐が逆転して1分35秒736でトップを奪取。ポールポジションを手にして、3点の加点に成功した。一方、ランキングトップの坪井は9番手どまり。前方にはタイトル争いを繰り広げるライバルだけでなく、自身初優勝を狙う選手も立ちはだかるなかで決戦を迎える形となった。
【第11戦鈴鹿 予選トップ3】
1.No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)1’35.736
2.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’35.945
3.No.65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)1’35.976
午後に入っても燦々と日差しが降り注ぐ鈴鹿。その一方で少し風が強まり、体感的には寒さを感じるようになる。午後2時30分にフォーメーションラップが切られたが、130Rからシケインに向かうストレートのイン側で1台の車両が白煙を上げてスローダウン。スロットルトラブルに見舞われたNo.28 小高一斗(KDDI TGMGP TGR-DC)は、クラッチを切ってコース上にクルマを止めることになった。結果、レースはスタートディレイ扱いとなり、改めて午後2時40分にフォーメーションラップ5分前を迎える。また、この事態を受けて、レースは1周減算の26周での戦いへと変更された。
小高を除く21台による26周の戦いが号砲を迎え、そのなかでクリアスタートを切ったのは野尻。1コーナー進入を前にして岩佐を押さえる形でホールショットを奪ってみせる。逆に先行を許した岩佐は、予選3番手からインに飛び込んできたフラガと逆バンクで接触。この勢いでコースアウトを喫し、その場で戦線離脱という最悪のシナリオとなった。一方、予選5番手から逆転優勝を狙った太田はスタートで大きく出遅れ、大きく後退。厳しい状況に置かれる。
レースはこのアクシデントを受けてセーフティカー(SC)が導入され、5周終了時にレースが再開。逃げ切りを狙う野尻はリスタートのタイミングでオーバーテイクシステム(OTS)を多用。2位以下を引き離しにかかる。また、9番手スタートに甘んじていた坪井はポジションアップに成功。6番手から仕切り直しを迎える。その一方で、9周目の1コーナーでは1台の車両がコースアウト。再びセーフティカーが導入されたが、それとほぼ同じくして各チームは近づくピット作業に向けてタイヤを準備することとなり、10周終わりで全車がピットへと帰還。野尻がトップでコース復帰を決め、2番手にはフラガが続いた。しかし、3番手を走っていたフラガの僚友、佐藤は作業待機というロスタイムを強いられてポジションダウン。代わって牧野が3番手に浮上する。
コース上のSCランは11周終わりで終了。2番手のフラガは野尻を仕留めるべく、OTSを使って猛追。対する野尻は序盤のリスタートでOTSをかなり使っていたが、先行を許すまじと同じくOTSで対抗。緊迫の状況ながら、ベテラン野尻は攻防戦をうまく凌ぎ、フラガの動きを封じ込めてつつじわりじわりと2台の間に差を築くことに成功した。
一方、トップ争いには加われないものの、タイトル争いの渦中にある坪井や太田にも動きが見られた。ピット作業を機にポジションを一つ上げて4位となった坪井はペースが思うように上がらない牧野をマーク。ところが、その後方からは太田が着実にポジションアップを見せており、攻撃よりも防御に気を取られる状況に置かれることに。太田は他を圧倒する速さを武器に、18周を前にして坪井に追いつくと、22周目にはその差を1秒強さらに24周目には0.7秒差まで迫る走りを披露。だが後方から追い上げるなかでほぼ使えるOTSが残されておらず、対する坪井はここぞとばかりOTSを使って応戦。力と力がぶつかり合う熱戦は、ほぼ2台揃ってOTSがなくなった25周目のシケインで太田がレイトブレイキングで勝負に出たものの、逆転には至らず。これで2台の差が開くこととなり、坪井が薄氷を踏む状態ながら4位を死守してチェッカーを受けることとなった。
スタート直後はタイトル争いで優勝を狙っていた僚友の動きを気にしつつ、自らトップに立ったあとは後続をうまくマネージメントして待望の今シーズン初優勝を手にした野尻。予選結果と合わせて22点を計上し、大会前には40点近くあった坪井との差を25点にまで縮めることになったことを受け、喜びもひとしおという表情を見せていた。
明日、23日は午前10時前から富士でキャンセルされた第10戦の決勝を実施。午後2時30分からは、いよいよシーズン最後となる第12の決勝レースが行なわれる。ノーポイントに終わった岩佐は、坪井との差は広がったものの、依然としてランキングは2位を死守している。残り2レースの展開によっては逆転の可能性も充分あるだけに、今日とはまた異なるドラマが見られる可能性もありそうだ。
【第11戦鈴鹿 決勝トップ3】
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)52’03.951 26Laps
2.No.65 イゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)+1.159
3.No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)+5.734