SUPER GT 2024 Round.6
雨に翻弄されたSUGO300km、勝利はDeloitte TOM’S GR Supraの手に
9月22日、SUPER GT第6戦の決勝が宮城・スポーツランドSUGOにおいて行なわれた。レースウィークを通して雨が降り続き、時折強い雨脚になるなど、不安定な天候に翻弄されることに。そのなかで、レースは14番手からスタートを切ったNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)が大逆転を果たして今シーズン2勝目を達成。大量得点獲得により、シリーズランキングでも2番手へと浮上。後半戦に入り、チャンピオン争いに加わる形となった。
前日、まとまった雨量に見舞われたSUGO。午後からの予選がすべてキャンセルされ、決勝レースのスターティンググリッドは、最終的に予選日朝に行なわれた公式練習で、各車がマークしたベストラップタイムを用いることになった。
しかし、決勝日の朝を迎えても雨は一向に止まず。急に激しく降り出したり、小雨に変わったりと急変を重ね、レースそのものが天候に振り回されることになった。早い段階でウォームアップ走行から二度のスタート延期を繰り返した結果、当初の予定よりおよそ1時間遅い、午後2時22分にフォーメーションラップを開始する。
気温17度、路面温度18度という低い数値を示してはいたが、ダミーグリッドに各車がついた頃には日差しも出て空が明るくなっており、時間は必要ではあるものの回復傾向のなかでレースが進むと思われた。とはいえ、まだ走行中のクルマからは大きく水煙が上がり、川が残っている箇所も。極めて不安定な状況ながら、各車クリーンなバトルを展開し、周回を重ねていく。先頭からスタートを切ったNo.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)は硬いウエットタイヤを選択していたが、異なるタイヤを装着したであろうライバルが後方からジャンプアップ。2周のフォーメーションラップを終えて、いよいよレースが本格化するときには、38号車の背後に4番手スタートのNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)が迫った。また、5番手スタートのNo. 12 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)も比較的軽いサクセスウェイトを味方にして3番手へと浮上した。その後、36号車は16周目のハイポイントコーナーで38号車を逆転。あっという間に2位以下を引き離しにかかる。また、ダンプコンディションを得意とするNo.17 Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/太田格之進)が12号車を猛攻。最終コーナーでイン側のラインを取った17号車は、メインストレートにかけて鮮やかに逆転を決めた。
レースは、ルーティンのピット作業が可能となる3分の1を消化。この時点でピットに向かった車両はまだウエットタイヤの選択を迫られる形となり、のちのピットインでスリックタイヤを装着したライバルたちと明暗が分かれた。一方、序盤にハイペースで攻めていたクルマがジリジリとペースダウン。これを受けてポジションにも影響が出始め、
後方から追い上げを見せていたなかからNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)が大きくジャンプアップ。36周目に4コーナーのイン側から14号車を逆転して2位に浮上すると、その勢いのままトップを走る僚友の36号車に大接近。馬の背のブレーキングでついにトップを奪取した。またこれを機に、36号車は14号車、17号車にも逆転を許すことになる。
慌ただしくポジションが入れ替わるなか、レースは42周目にGT300車両がレンボーコーナーでスピン、クラッシュ。これを見て、瞬時に上位陣が一斉にルーティンのピット作業を敢行する。その後、FCYが宣言されるも直後にSCへと切り替わったため、このタイミングでピット作業を見送った2台(No.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z/No. 8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8)は、結果的に勝負権を逃すこととなった。
レース中としては2度目となるSCランは49周目の走行をもって終了。いよいよ終盤に向けてさらに攻防戦が熱を帯びていくなか、6番手にいた38号車がスリックタイヤを武器に、最速タイムを刻みながら周回し、豪快な逆転劇を披露。58周目には最終コーナーで12号車をも抜き去り、2番手へと復帰する。この時点で2台の差は8秒弱だったが、怒涛の追い上げに対してトップの36号車も応戦。ともに1分15秒台のベストラップをマークしての攻防戦を繰り広げた。
上位2台の快走はその後も続き、なかでも37号車が抜群の安定感で好タイムを刻み続ける。逆に、38号車は”スイッチが入った”37号車から遅れを取る形となり、2位キープの走りに変わってしまった。そんななか、表層台を狙って激走が続く上位陣のうち、14号車そして17号車に非情のドライブスルーペナルティが課せられることに。14号車はSCラン中のコースアウト、また17号車はピット作業時の手順違反がその理由であったが、このペナルティ消化によって、2台の後方にいた36号車が4番手に返り咲く。
スタートディレイ、さらにはレース中のSC等で2時間11分超の長い戦いとなったSUGO戦。さらに天候不順を受けて当初より15分最大延長時間が15分伸びたことで、予定どおりの84周を走破。後方からライバルを出し抜く力強いパフォーマンスを見せた37号車が2番手38号車に対して、20秒近い大差をつけて完勝。第3戦鈴鹿についでシーズン2勝目を達成した。また、38号車に次いで3位チェッカーを受けた12号車にとっては、昨シーズン第3戦鈴鹿以来となる表彰台となった。
今回の勝利によって37号車はシリーズチャンピオン争いにおいてもランキングアップを果たし、僚友36号車とわずか1点差の2番手に。これに、今回ホンダ勢トップでチェッカーを受けたNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)が続いている。
GT500同様、波乱のトップ争いが見られたGT300クラス。公式練習でトップタイムをマークしたNo.20 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎)がクラストップで周回を重ねていたが、思うようにタイムが上がらず、後続車との差が縮まっていく。逆にダンプコンディションで快調だったのが、5番手からスタートしたNo.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥ)。確実に前方車両を捕らえ、12周目に20号車からトップを奪取した。逆に20号車はその後、右リヤタイヤが脱輪。ピットへの帰還は果たせたが、ダメージが大きく、コース復帰は叶わなかった。
前半からトップに経った45号車はルーティンのドライバー交代後も事実上のクラストップをキープ。FCYやSCラン後も順調に周回を重ねていた。だが、ライバルたちと異なるタイミングでドライバー交代を済ませていたNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)が徐々に本領発揮。レース中として2度目のSCランが終わると、テール・トゥ・ノーズの激しい攻防線を何度も繰り広げ、とりわけメインストレート上では手に汗握る大接戦を見せた。巧みなブロックで45号車がトップを死守していたが、65周目から66周目に向かう最終コーナー立ち上がりで65号車が45号車を捕らえ、メインストレートで並走。1コーナー飛び込みでついにクラストップを奪い取る。
これで勢いに乗った65号車は後続をぐんぐん引き離し、このままチェッカー。第4戦富士に次ぐ連勝を達成すると、チャンピオン争いでも暫定ランキングトップに躍り出ることになった。なお、2位45号車は今シーズン初表彰台。3位には、No.777 D’station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ)が続いた。
次の第7戦は大分・オートポリスが舞台となる。例年では、サクセスウェイトが半減するが、第5戦鈴鹿が12月に延期されて事実上の最終戦になったことから、オートポリスはフルウェイトでの戦いに。タイヤへの攻撃性が高く、難しい一戦だけに、今回とはまた異なるドラマが繰り広げられるかもしれない。