SUPER GT 2024 Round.4
富士350km、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8がCIVIC初勝利を達成!
8月4日、静岡・富士スピードウェイで開催された「FUJI 350km RACE」。前日の予選でチーム初のポールポジションを獲得したNo. 8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)が力強い走りを見せつけ完勝。Honda勢として今シーズンデビューしたCIVIC TYPE R-GTでの初優勝を達成している。
予選日よりも強い日差しが長時間照りつけた富士。一方で上空は連日薄曇りが続き、ついに雪のない富士山は姿を現すことがなかった。
レーススタートの午後2時30分を前に、気温/路面温度がぐんぐんと上昇。35/56度と共に前日の最高気温を超えた。レースは8号車を先頭に、77周の戦いが号砲。クリアスタートが切られる一方、中盤グループのなかからNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)がペースアップし、果敢に攻めの走りを見せた。
一方、予選でトップ3を独占したCIVIC勢は安定のペースでポジションをキープしていたが、レース開始からおよそ50分、27周走行時点でGT300クラス車両の1台がスローダウンし、ダンロップコーナー先でクルマを停めてしまう。レースはこれを受けてFCY(フルコースイエロー)が導入されたが、およそ3分後に解除され、特段大きな影響を与えることはなかった。
レースは折り返しを前にした29周目からルーティンのピットインが始まる。上位争いで真っ先にピットインしたのは、2番手を走行するNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)。レース序盤からトップ8号車を懸命に追うも、FCYや黄旗を味方にできず、大きく引き離されていた。この状況を打破しようとライバルに先んじて32周でのピットインを実施、これを見たライバルたちも次々ピットインを行なう。一方、トップ8号車は34周終わりにピットへ戻ると42.3秒の作業でコース復帰。100号車を含むライバルたちの逆転を許さず、しばし”裏1位”で周回を続けた。また、予選4位スタートから5番手で周回を続けていたNo.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)は、ピットインからのアウトラップでの力走が実り、ポジションアップに成功。ドライバー交代後のチームとして3番手浮上を果たしている。また後方では、シリーズランキングでトップにつけるNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)が燃料流量リストリクター2ランクダウンという厳しい条件の下、タイミングを大幅にうしろにずらしてのピットイン。巧みなチーム戦略を味方にしてポジションアップをやってのけた。
全車作業を終えた時点で、トップは再び8号車の手に。100号車も変わらず2番手につけ、3番手には38号車が続き、終盤の戦いへと突入する。100号車は粘り強く8号車を攻め立て、一時はその差1秒を切る詰め寄ったが、最終的には攻防戦までには持ち込めず。結局8号車が4秒強の差をつけて、トップチェッカー。新車投入となった今シーズン、CIVICでの待ちわびた勝利をポール・トゥ・フィニッシュで果たすこととなった。変わらず2位には100号車が続き、開幕戦岡山以来の表彰台を獲得。38号車も3位でゴールし、久々の表彰台を手にした。
シーズン初優勝の8号車は昨シーズン第6戦以来のトップチェッカーだが、新コンビによる優勝は初となる。なお、シリーズランキングは依然として36号車がキープ。今大会でも7位入賞を果たしてポイントを着実に追加している。一方、ランキング2位には100号車が浮上した。
GT300クラスは、クラスポールスタートのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹)が圧巻の走りを見せて、後続車を一切寄せ付けず。開幕戦ではポールポジションを手にするも、タイヤマネージメントを味方に無交換作戦を強みとするライバルに先行され、2位に甘んじていた。この富士では、ポールからスタートを切ると、レース開始から50分ほどで導入されたFCYを味方につけてピットインを敢行。これを弾みに後続のライバルとの差を一気に広げることに成功した。あとは、大量リードを活かしたレース運びを見せて
ポール・トゥ・ウィンを達成することになった。なお、65号車としては、2020年第4戦もてぎ以来の勝利。今回の優勝で、シリーズランキングもトップから僅か2点差の暫定2位へとジャンプアップ。後半戦に向けての弾みを付けている。
レースは2位以下で激しいポジション争いを展開。予選2番手のNo.87 METALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮/坂口夏月)が31周目にピットイン、対する3番手のNo. 4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)は35周にピットへと戻る。4号車は”見えない敵”、そして後方からポジションを上げてきたNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)を意識した走りに徹し、奮闘。最終的に87号車はポジションを下げたものの、4号車と56号車は2番手の座を巡って幾度となく攻防戦を繰り広げた。
最後は4号車が見事に押さえきり、2位を死守。今シーズン初の表彰台に立った。一方の56号車は第2戦に次いで富士で連続表彰台を獲得している。
今大会の富士に続き、第5戦鈴鹿も真夏の決戦。同じく350kmでの戦いだが、富士よりも厳しい暑さとの戦いになることは必至。まさにサバイバルレースとなることだろう。
第4戦鈴鹿 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.1.No. 8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)2H00’43.329 77Laps
2.No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)+3.277
3.No.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)+12.233
GT300
1.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹)2H01’50.865 71Laps
2.No. 4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)+31.647
3.No.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)70Laps
シーズン中盤戦の富士。ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8がポールポジションを掴む!
8月3日、静岡・富士スピードウェイにおいてSUPER GT第4戦の予選が行なわれ、No. 8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)がシーズン初のポールポジションを獲得した。
第3戦鈴鹿からおよそ2ヶ月という長いインターバルを挟んで迎えた富士大会。5月の第2戦に次ぐシーズン2度目の開催となる。ひと足先の”夏休み”の間に各チームはこれまでのレースデータを見直したり、タイヤテストに参加したりと精力的にブラッシュアップに努めてきた。午前9時、まず曇天模様のなかで始まった公式練習は、気温29度、路面温度38度のなかでスタート。1時間45分におよぶセッション中に気温は32度、路面温度は54度まで上昇するというタフなコンディションとなった。
このセッションでは、No.64 Modulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき)がスタート開始からトップに名を刻み、最後のGT500クラス専用走行時には、さらにタイムアップ。そのままトップをキープし、好調さをしっかりアピールしていた。
予選は午後2時30分にスタート。気温33度、路面温度54度のコンディション下でセッションが始まった。なお、予選に先立ち開催されたFIA-F4シリーズ第5戦決勝において、アクシデントが発生。オイル漏れの影響で一部コース上ではオイル処理が行なわれる。この状況を踏まえ、GTAでは近づくGT300クラスの予選方式変更を英断。タイム合算方式をキャンセルし、Q2でのタイムのみでグリッドを決定することになった。
そんななか、通常どおりのQ1、Q2合算タイムでのアタック合戦となったGT500クラス。Q1でトップタイムを刻んだのは、No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GTの牧野任祐。公式練習後にセットアップを変更したことが奏効。これに64号車の大草が2番手、そして3番手には8号車の松下が続き、ホンダ勢がトップ3を独占した。
午後3時59分からのQ2になると5度ほど路面温度が下がったが、このセッションでトップにつけたのは8号車の野尻。まだ軽いサクセスウェイトを味方にトップへ躍り出た。2番手にはNo.38 KeePer CERUMO GR Supraの大湯都史樹、そして3番手はNo.14 ENEOS X PRIME GR Supraの福住仁嶺が続くなか、Q1トップの100号車は6番手どまりだった。
結果、合算タイムによってポールポジションを手にしたのは、8号車。待望の今シーズン初ポールから翌日の決勝をスタートさせる。また、2番手には100号車、さらに3番手には64号車が続き、ホンダ勢がQ1に続きトップ3を独占する結果となっている。
GT300クラスは、前述のように2組に分けて実施したQ1の結果から、上位16台と、それ以下のグループに2分。上位16台のなかでトップタイムを刻んだのは、No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹)。開幕戦に次ぐシーズン2回目のポールポジションを手にした。2番手は今回、バージョンアップ車両を投入したばかりのNo.87 METALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮/坂口夏月)。ポテンシャルの高さを見せるける走りだった。3番手はNo. 4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)。Q1でのフィーリングをしっかりとQ2でのアタックに反映し、タイムアップを果たしている。
決勝レースでは、シーズン初の350kmレースを実施。これまで300km
レースを経験したチーム&ドライバーにとって、この”プラス50kg”がどのような影響を与えるのか。なかなか難しい戦いになりそうだ。
第4戦富士 予選結果 各クラストップ3(GT500はQ1、Q2合算タイム)
GT500
1.No. 8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)2’56.359
2.No.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)2’56.677
3.No.64 Modulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき)2’56.705
GT300
1.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹)1’37.764
2.No.87 METALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮/坂口夏月)1’37.815
3.No. 4 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)1’38.093
SUPER GT第4戦富士 プレビュー
夏本番、今季2度目の富士戦は350kmの戦い
年間全8戦でシリーズを戦うSUPER GT。その前半戦ラストレースが今週末、静岡・富士スピードウェイで開催される。梅雨も開け、連日猛暑日となるタフなコンディションだけに、一筋縄ではいかない展開になりそうだが、シーズン2度目の開催となる富士で、どのようなドラマが待ち受けるのか?
初の350kmはまず暑さとの戦いに!?
梅雨明け以降の日本列島。本当に厳しい暑さが続いている。35度を超える猛暑日に見舞われる日も多く、完全野外のサーキットでのレース開催は、条件的にどう考えてもハードだ。夏休みに開催されるイベントだけに、親子連れでの観戦も多いと思われるがくれぐれも熱中症対策はもちろんのこと、楽しい観戦になるよう周到に準備をしてサーキットへと足を運んでほしい。
前回、第3戦鈴鹿が開催されてからおよそ2ヶ月。シーズン中もっとも長いインターバルを経て迎える今大会。いわゆる前半戦の戦いを振り返り、改善策をしっかりと練ったチーム、ドライバーがその成果を見せるべく、富士での一戦に臨むこととなる。とはいえ、各車によってコンディションが異なるため、実力派チームといえども、クルマ本来が持つポテンシャルを100%披露できる状態とは限らない。そう、いわゆるサクセスウェイトを搭載するチームにとっては、今回のレースは”ガマン”の一戦になるからだ。たとえば、現時点でシリーズランキングトップに立つNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)。74ポイントを獲得するなか、燃料流量リストリクターを2ランク下げて40kgのサクセスウェイトを積む。長いメインストレートを有する富士のコースは、トヨタ・レクサスの”お膝元”ではあるが、本来の速さを披露するにはいささか厳しい状況だ。とはいえ、展開次第で荒れたレースになると、底力を活かして上位に食い込むチャンスもある。いずれにせよ、どのようなレース運びをやってのけるか、それを注視するだけでも面白いだろう。
SUPER GTでは、これまで300kmレースは数多く開催。今シーズンもすでに開幕戦の岡山で経験済みだ。一方、プラス50kmの350kmレースは初開催。富士スピードウェイでは77周を周回することになる。果たして、この長さがどれほどの影響を与えるのか。折しも暑さ厳しい天候のもとで繰り広げられる戦いでは、まずタイヤはじめクルマへの負荷が大きくなる。もちろん、中でドライブする選手に与える影響も計り知れない。いくらエアコンを完備しているとはいえ、激しい攻防戦のなかで集中力を保つにはそれ相応のタフさが求められる。すべてにおいて消耗の激しい一戦になることには違いない。それゆえ、事前に綿密な戦略を準備し、レースでは柔軟に対応する総合力が問われる戦いとなるだろう。
・上位陣が”耐える”なか、大量得点を狙う好機に
シーズン前半の最後の戦いは、シーズン中盤の一戦にも当たる。序盤、本領発揮が叶わなかったチームとしては、まだサクセスウェイトも軽く、350kmという長さをうまく活用し、できうる限り上位でチェッカーをうけたいと願っている。序盤戦の予選で好調だったものの、決勝で結果を残せず、辛酸をなめたチームなどはそのリベンジとばかり、しっかりと成績を求めるレースをしてくるだろう。この富士、そして続く鈴鹿で結果を出さなければ、シリーズ争いに暗雲が立ち込める。それゆえにまずは暑さを克服し、ライバルを蹴散らし、自分たちのベストな戦いを目指す一戦になるはずだ。
一方、メーカー別では、レクサス勢が第1戦と第3戦で勝利。前回の富士、第2戦では日産勢が優勝している。つまり、今シーズンからCIVIC TYPE R-GTを新たに投入したホンダ勢のみが未勝利の状態。それだけに早く勝ち名乗りを上げたいし、さらにシビック勢として”初優勝”を狙いたいと、同じメーカー同士による激闘も興味深いところだ。
・搭載ウェイトの上限が80kgから50kgになったGT300
緻密な戦略を繰り広げるGT300クラス。今シーズンから使用できるタイヤの本数制限が厳しくなるなか、昨年同様にタイヤ無交換での力走によって、現時点でシリーズランキング暫定クラストップに立つのが、No. 2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)。昨シーズン、手にできなかったクラスチャンピオンを今年こそ獲得しようと、文字通りチーム一丸となっての戦いを見せている。足下を支えるブリヂストンタイヤの功績も大きいが、ドライバーふたりの速さと強さがより強固になったことも好調の理由と思われる。
一方、今シーズンは、いわゆる”黒船”の活躍も目立つ。第2戦でNo.88 JLOC Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)が、そして第3戦ではNo.777 D’station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ)が優勝。つねに表彰台の一角にはFIA-GT3勢が上がっており、その流れはこの先も続きそうだ。ただ、GT300クラスではこの富士大会からサクセスウェイトの上限が見直されている。これまで80kgだったものが、今大会から50kgへと変更。この先しばらくは表彰台争いよりも、着実な戦いを続けてコツコツとポイント獲得を狙う”地道な”レースを重ねることになりそうだ。
その間、大量得点を狙おうと目論んでいるその筆頭は、やはりNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)か。今シーズンは、最低重量に悩まされて思うような結果を残すことができていない。それでもチャンピオン経験を活かしたアプローチをすることで、虎視眈々とビッグチャンスを狙ってくることだろう。そしてさらなるダークホースとして名を挙げたいのがNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT。予選での速さ、決勝での強さを見せていた61号車だが、今シーズンは”鳴かず飛ばず”の状況に甘んじている。第1戦と第3戦でかろうじて入賞はしたものの、表彰台が遠い状態となっている。そろそろファンを喜ばせるためにも、まずは予選から好位置を狙ってくるのではないだろうか。
真夏のレースはライバルとの戦いに留まらず、より多くの不確定要素を敵にしてのタフな一戦となる。様々な”天敵”をも足下に寄せ付けず、力強い走りを見せるのは、果たしてどのチームなのか。
■主なスケジュール
FUJI GT 350km RACE
8月3日(土)
09:00〜10:25 公式練習(GT300+GT500)
10:25〜10:35 公式練習(GT300専有)
10:35〜10:45 公式練習(GT500専有)
11:20〜11:50 サーキットサファリ
13:10〜13:55 ピットウォーク
14:25〜14:35 公式予選Q1 GT300 B組
14:43〜14:53 公式予選Q1 GT300 A組
14:58〜15:08 公式予選Q1 GT500
15:18〜15:28 公式予選Q2 GT300 Gr.2
15:36〜15:46 公式予選Q2 GT300 Gr.1
15:54〜16:04 公式予選Q2 GT500
17:00〜18:05 キッズウォーク
8月4日(日)
10:55〜11:40 ピットウォーク
11:50〜12:10 ドライバーアピアランス
13:00〜13:20 ウォームアップ
13:20〜14:30 スタート進行
14:30〜決勝350km・77周レース