SUPER GT 2022 Round.8
第8戦もてぎ、STANLEY NSX-GTが初勝利。王者はカルソニックIMPUL Z!
11月6日、栃木・モビリティリゾートもてぎで行なわれた、SUPER GT第8戦の決勝レース。序盤から多重クラッシュが発生するなど終始荒れた展開で、目まぐるしく状況が変わる一戦となった。そんななか、予選でシーズン初ポールポジションを手にしたNo.100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)は、タフな展開をしのぎ、”我が道”を行くかたちで待望のシーズン初優勝を遂げている。一方、僅差で最終戦を迎えたタイトル争いでは、No.12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)が戴冠。IMPULチームとしては実に27年ぶりの快挙となった。
前日の予選に続き、穏やかな小春日和の天気に恵まれたサーキット周辺。最終戦で繰り広げられるレース、そしてチャンピオン争いの行方を見届けようと、多くのファンがサーキットへと足を運んだ。
午後1時、いつもより早い時間帯でのスタートが切られた最終決戦。63周にわたる戦いは、まず栃木県警の白バイとパトカーによるパレードラップを経て、フォーメーションラップ、そして号砲を迎える。
ポールポジションからクリアスタートを切った100号車は後続を一気に引き離す勝負に打って出る。逆に2番手のNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)はライバルよりややタイヤの温まりが遅いため、すぐさま予選3番手の12号車から猛攻を受け、必死の応戦となる。また、その後方でも予選4番手で、ランキング暫定トップのNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)と予選6番手から見事なスタートダッシュを決めたNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が5コーナーで激しい攻防戦の末に接触。8号車は最後尾へとドロップする。また、その中で出遅れた予選5番手のNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組)も後退。10番手までポジションを落とした。なお、3号車と8号車の接触に対して、レースコントロールは3号車にペナルティを科したことから、タイトルが懸かる3号車には黄信号が灯った。
一方、レースは9周目の3コーナーでGT300、GT500両クラスが絡む多重クラッシュが発生。激しくぶつかりあった末に大きなダメージを負い、ここで複数の車両が戦列を離れることになった。また、このアクシデントを受けてまずFCY(フルコースイエロー)が導入されるも、11周目にはSC(セーフティカー)へと切り替わり、車両回収やコース清掃に時間を割くことに。また、メインストレート上では、12周終わりでGT300、GT500のクラス分けの隊列整理が行なわれたため、一旦ペナルティやハプニング等で遅れをとっていた後続車両は息を吹き返す好機にもなる。だが、まもなくレースがリスタートを迎えるかに思われたその矢先、ストレート上でGT300の2台による追突が発生。両車が被ったダメージは激しく、大量のクラッシュパーツがコース上に散乱し、SCランが延長される。また、コース清掃が必要になったことで、コース上の他車はピットロードを通過する形がとられる。そのなかで18周目からは再びメインストレートの左側走行でのSCランに切り替わり、ようやく21周目にレースはリスタートを迎えた。
スタート直後から後続に7秒強の大差をつけていたトップ100号車にとっては、せっかくのマージンを消失してのリスタートだったが、難なくトップをキープし、さらにプッシュを続ける。その中で、逃げる100号車、追う2番手の19号車、そして3位の座を巡って激しい攻防戦を見せる12号車と17号車という上位陣の争いが始まったが、22周終了時点でまず19号車が真っ先にルーティンのピットインを実施。すると、翌周にはトップ100号車もピットに滑り込み、完璧な作業でコースに復帰を果たした。また、なんとしても後方からペースアップしてきた3号車のポジションアップを封じ込めたい12号車、そしてスタート直後から大きくポジションを上げていたNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)もピットイン。一方、この次の周にピットインした17号車はその後、3号車とのバトルに興じたが、前には出られず厳しい戦いを強いられた。なお、レースは36周終わりで全車がピットインを完了。これで再び100号車の手に首位の座が戻ってくる。
レース後半、レースを牽引する100号車を懸命に追う12号車。両車のギャップは縮んだり広がったりと安定したものではなかったが、トップ100号車は背後の動きを意識してレースをコントロール。とはいえ、かつかつの燃料だった100号車は、アクセルをオフにした状態で惰性でクルマを走らせる燃費走行……”リフト・アンド・コースト”を続けていたといい、まさにギリギリのレースコントロールでタフな戦いを走り切ることになった。
結果、100号車が待望のシーズン初優勝を獲得。また、これは、今シーズン開幕前にチーム代表であった故・高橋国光氏に捧げる勝利でもあった。一方、2位争いは終盤に入り、3番手の14号車が12号車に追いすがるように猛追。しかし、タイトル目前の12号車も譲らない。しのぎを削りあった2台はその順位のままチェッカー。これにより、2位でレースを終えた12号車がシリーズチャンピオンを決めた。また、レース序盤にドライブするーペナルティを受けて後方に沈んだ3号車だったが、その後のSC等を味方につけ、4位でフィニッシュ。タイトルは逃したものの、シリーズランキングは2位に。また、優勝により、100号車がホンダトップとなる同3位へと浮上している。
GT300クラスのレースもまた、GT500に負けず劣らず波乱含みの展開になった。自力/他力含め、チャンピオンの可能性を残すクルマは6台。それぞれがポジションを意識しつつ、激しいレースを繰り広げた。前日の予選Q2でクラッシュしたNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)はレース前のウォームアップ走行でも周回数を重ねることが難しく、本調子ではない様子。だが、シーズン最後までチャンピオン争いに関わっている1台として、意地の走りを見せる。思うようにペースアップできず、16番手からのポジションアップは果たせず、20位チェッカーとなったが、シリーズランキング2位でシーズンを終えることになった。
レースは9周目の3コーナーで発生した多重クラッシュで、レースはFCY導入からSCへとスイッチ。さらにリスタート直後には、31号車と5号車による接触事故が発生。SC中の追突という予想外のアクシデントの影響は大きく、メインストレートに散乱した破片の処理のため、さらに時間が費やされた。
レース再開後、トップは予選2番手のNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/太田格之進組)。これにクラスポールスタートのNo.55 ARTA NSX GT3(武藤英紀/木村偉織組)が続く。26周終わりで18号車がピットに戻るも、タイヤ交換に時間を要してタイムロス。これを機に、クラストップの座が55号車へと戻った。一方、この1周前にポジションアップを目指していたランキングトップのNo.56 リアライズ 日産メカニックチャレンジ GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)がルーティンワークを済ませ、その後、着々とポジションを上げて実質4番手を走行していた42周目の3コーナーで突然挙動を乱し、その先の4〜5コーナーでスロー走行の末に、右フロントタイヤが脱輪。なんとか走行を続けてピットへ帰還し、タイヤが取り付けられてコース復帰を果たしたが、ポジションは19位へとダウン。61号車だけでなく、56号車にもタイトル獲得に向けて黄信号が灯ってしまう。
この時点でチャンピオンの可能性が高まったのは、No.10 TANAX GAINER GT-Rの大草りき。コース上のGT300全車両がルーティンワークを終えると3番手で周回を続けていたが、その背後からNo.87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)が迫り、52周目の3コーナーでパス。すると、今度は18号車が54周目のヘアピンで10号車を逆転して4位となる。また、もう一台、タイトルの可能性があるNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)は2位を走行していたが、57周目の90度コーナーで87号車に先行され、チャンスが遠のく。一方、タイトルに一縷の望みをかける10号車は5番手を走行。タイトルを掴み取るには最低でもこの順位をキープしなければならない中で88号車との攻防戦が激化。そして、ついにレースはファイナルラップへと突入する。
ギリギリの状況でバトルに耐えていた10号車だったが、4コーナーで88号車に逆転を許すと、その流れでさらに後続車にも先行され、8位でチェッカー。悔しい最終戦となった。一方、レースはルーティンワーク後にクラストップを取り戻した55号車が後続に4秒強の大差をつけて完勝。待望のシーズン初優勝を果たすことになった。また、2位に87号車、3位に52号車が続いた。そして、シリーズチャンピオンに輝いたのは、56号車。今シーズンは開幕戦で勝利し、以後一度もランキングトップをライバルに譲ることなく安定したレース運びを見せた強さによって、念願のGT300クラスチャンピオンの奪還を果たしている。またランキング2位は61号車。そして同3位の座は10号車の大草りきが掴み取る結果となった。
第8戦モビリティリゾートもてぎ 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)2:04’58.929 63Laps
2.No.12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)+1.212
3.No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太組)+1.888
GT300
1.No.55 ARTA NSX GT3(武藤英紀/木村偉織組)2:05’07.068 60Laps
2.No.87 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)+4.048
3.No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)+8.204
2022年シリーズランキング 各クラストップ3
GT500
1.No.12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)70.5点
2.No.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組) 66点
3.No.100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)62点
GT300
1.No.56 リアライズ 日産メカニックチャレンジ GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)52点
2.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)49.5点
3.No.10 TANAX GAINER GT-R・大草りき 49点