SUPER GT 2022 Round.2
波乱続きの富士大会、勝利はARTA NSX-GTの手に!
5月4日、静岡・富士スピードウェイにおいてSUPER GT第2戦の決勝レースが行われた。450kmと通常の1.5倍のレースディスタンスで競う一戦だったが、中盤以降アクシデントが続き、予定されていた100周での争いは実現せず。また、62周で終了したレースは、上位2台の車両がレース後ペナルティによる降格の事態となり、3位チェッカーだったNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が優勝するという波乱の展開に終わっている。
連日の晴天となった富士スピードウェイ。予選日よりも強い日差しとなり、午後2時30分からのフォーメーションラップを前に、気温は20度、路面温度は35度へと上昇。450km、100周の戦いは各チームが選択したタイヤコンディションの違いが顕著に出る可能性があった。
2周のフォーメーションラップを終えて、まずはポールポジションのNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)が好スタートを切るも、タイヤの温まりが早かった予選4番手スタートのNo.37 KeePer TOM’S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋組)があっという間にトップを奪取。オープニングラップを制した。その勢いは止まらず、僚友のNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井 翔/ジュリアーノ・アレジ組)も予選8番手から2位へとジャンプアップ。これに予選3番手のNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)がポジションキープで周回を重ねていった。逆にフロントロウを占めたヨコハマタイヤ勢の2台_19号車とNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組)は想定より上昇した気温に苦戦、ズルズルとポジションを落としていく。
一方、トップ2を形成するトムスだが、24周には36号車が13コーナーで37号車をとらえてトップが入れ替わる。またその2周後には4位走行中だったNo.100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)はじめ2台が1回目のピットインを敢行。周回数の3分の1が終了しないうちにドライバー交代を済ませてコースへと復帰する。そんな中、トップ36号車は28周終わりでピットイン、一方2番手37号車は35周終わりと、互いを牽制するかのような形でタイミングをずらしていた。なお、GT500車両の中で一番最後にピットに戻ったのがNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組)。だがそれとほぼ同じタイミングでGT300クラスの車両がヘアピンで大クラッシュ。スピンしたクルマは大破し、即座にFCY(フルコースイエロー)が宣言された。その直後にはコース上に散らばった破片等のデブリ回収、さらには衝突の際にダメージを受けたバリアの修復作業が伴うことから、セーフティカー(SC)ランへと変更。さらに48周終了時点で赤旗が提示され、一旦セッションがストップする。なお、決勝での赤旗中断は、2019年開幕戦岡山大会以来。
レースはおよそ25分後に再開すると、トムスの2台が1コーナーで激しい陣取り合戦を披露。アウト側にいた36号車はコーナー進入で痛恨のオーバーシュート。37号車にとっては願ってもないチャンスだったが、逆にその背後にいたNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組)が間髪入れず37号車に迫る。39号車は予選の出遅れを取り戻そうとライバルとは異なる戦略を敢行。もっとも遅いピットインだったことを味方にタイヤコンディションも良く、SCや赤旗によって一気にギャップも詰まっていたことから、突如としてトップ争いに絡むポジションを手にしていた。1コーナーのイン側から立ち上がっていた37号車だったが、コースに戻ってきた36号車と接触。スピードが落ちた2台に対し、39号車が間隙を縫ってトップを奪取すると、2番手には39号車の後方にいたNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠組)が浮上。37号車は3番手から再度追い上げを開始した。
逃げる39号車に対し、3号車はダンロップコーナーでイン側に飛び込むアプローチを見せるがポジションは変わらず。そして迎えた59周目のホームストレートで激しいアクシデントが発生する。39号車はストレートのイン側にいたGT300のスリップに入ろうとするも、この車両はトラブルによりスロー走行中。即座に39号車はアウト側へとラインを変えたが、39号車のスリップについていた3号車は突如現れたGT300車両を避けるべく左へとステアリングを切った。だがその瞬間に挙動が乱れ、スピードに乗ったままグランドスタンド前のガードレールに衝突。何度も回転しながらようやくコース脇に停止したが、こもアクシデントによりレースは赤旗中断となる。ドライバーは幸いにして自力でクルマから降りることができたが、ガードレールの一部が倒壊する事態となり、修復作業に長く時間を要することになった。
コース上には長らく車両が留め置かれ、のちにドライバーにも一旦降車が許されたが、このタイミングで39号車をドライブしていた関口は傷めていた車両のパーツを自ら”触診”。これは明らかな作業規定違反となるため、ペナルティの対象となる。結果、午後6時10分、約1時間半後にSCランによるレース再開を迎えた戦いだったが、延長最大時間として想定されていた午後6時20分を迎えた時点でチェッカー。最終的に62周終わりで波乱に満ちた戦いがまくを下ろすこととなった。
39号車に続き、37号車が2位、そして8号車がこれに続く形でチェッカーを受けたが、レース終了間際の時点で、39号車には前述のペナルティ、そして37号車には2度目の赤旗からのリスタート時に36号車との接触がペナルティの対象として扱われたため。各車には40秒のタイム加算が行われた。これにより、優勝は8号車の元へと転がり、2位に36号車、そして3位にはNo.12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)という結果になっている。
波乱の展開、そしてレース間際のペナルティ等でなんとも後味の悪い内容と言っても過言ではなかったGT500の戦いに対し、GT300クラスの上位争いはタイヤ交換の義務を伴わないことから、今大会ではチームにより様々な戦略が見られるのではないかという期待が集まった。
レースはクラスポールからスタートを切ったNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)に対し、予選2番手のNo.10 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき組)が早々にアプローチをかけ、コカ・コーラコーナーに突入すると立ち上がりでトップを奪取する。その後、61号車を背後に周回を重ねるが攻防戦というよりは、それぞれが単独走行という形で周回を重ねていった。一方、3位争いが激しくなったのが14周目のコカ・コーラコーナー。予選4番手のNo.34 BUSOU raffinee GT-R(柳田真孝/井出有治組)がNo.96 K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一組)
を逆転すると、その後はしばらく膠着状態が続いた。
クラスの上位から真っ先に動いたのは、10号車。29周終わりでピットインすると、翌周には3番手を走る34号車がこれに続いた。一方、クラストップの61号車は38周を終えてピットイン。ややピット作業に時間を要し、コース復帰後は34号車に対して後塵を拝し、事実上ポジションを落とす形となった。そんな中で1回目の赤旗中断が発生し、リスタート後は10号車がリードを築きながら周回を重ねていく。後半に向けて激しGT300クラスのトップ争いに期待がかかったが、その矢先に2度目の赤旗を招くアクシデントが発生。長い中断を挟み、午後6時10分にSCランによるレース再開が実現。周回を重ねる中で最大延長時間として設定されていた午後6時20分を迎えたことから、レースは終了。スタート直後にクラストップをもぎ取った10号車が勝利することとなった。2位には34号車、3位に61号車と続いたが、規定周回数の75%未満であったことから、ハーフポイントが与えられることになった。
第2戦富士 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)3:45’40.807 62Laps
2.No.36 au TOM’S GR Supra(坪井 翔/ジュリアーノ・アレジ組)+2.570
3.No.12 カルソニックIMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)+3.151
GT300
1.No.10 TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき/塩津佑介組)3:45’54.742 58Laps
2.No.34 BUSOU raffinee GT-R(柳田真孝/井出有治組)+1.555
3.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)+5.517