SUPER FORMURA 2021 Round.5
ポールスタートの野尻智紀がパーフェクトウィン、今季3勝目を挙げる!
8月29日、栃木・ツインリンクもてぎで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦の決勝。薄曇りの空が広がり、前日より気温も下がる中での戦いとなったが、ポールポジションからスタートを決めたNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が完璧なレース運びを見せて優勝。今シーズン3勝目を挙げて、シリーズチャンピオン争いでも優位な立場を確立した。2位には終盤まで粘りの走りでトップを追い続けたNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が続き、最後まで壮絶なポジション争いを繰り広げた3位は、No.51 松下信治(B-MAX RACING TEAM)がもぎ取っている。
予選を終えた後、夜にしばらくの間、雨が降ったツインリンクもてぎ。幸い、決勝日の朝9時から30分間にわたるフリー走行は薄曇りのコンディションながらスリックタイヤでの走行が始まった。セッション終了間際となり、ポツポツ雨が落ち始めたことからWET宣言も出てはいたが、レインタイヤを装着することもなくセッションを終えている。
今回のレースはもてぎのコースを35周する戦いで、170kmに満たないショートレース。文字通り短期決戦ではあるが、続く第6戦もこの場所が舞台となるだけに、どのドライバーも先を見据えて万全の戦いを進めたいところだろう。そんな中、決戦直前のウォームアップ走行では予選2番手の関口がトップタイムをマーク、逆に野尻はスタート前の綿密なチェックを優先したのか下位に留まっていた。
迎えた午後2時、フォーメーションラップを終えた全19台がスタートを切り、ポールポジションの野尻が文句なしのホールショットを決めて1コーナーへ。関口も決して悪いスタートではなかったが、あっけなく野尻の先行を許してしまう。一方、オープニングラップのV字コーナーでは、中団グループの中でNo. 3 山下健太(KONDO RACING)が前方No. 5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に接触。福住が体勢を乱してハーフスピンすると、その後続車両が多重クラッシュを引き起こすなど、これを機に3台がリタイヤに追い込まれた。またこのアクシデントにより、早速2周目からセーフティカーが導入。4周目終了時点でリスタートとなった。
トップの野尻はなおも快走を続け、後続との差を広げていく。すると、後続のライバルたちは逆転の糸口をつかもうとタイヤ交換作業が可能となる10周を終えた時点でピットイン。2位関口、5位No.64 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)をはじめ、計7台がなだれ込んだ。すると翌11周終わりで野尻がピットに戻り、タイヤを交換、7.7秒とやや時間はかかったものの、関口の前で帰還することには成功している。この後、タイヤのパフォーマンスが安定すると、野尻、関口はハイペースでの周回を続け、タイヤ交換を済ませた中で3番手につけるNo.39 阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)との差をぐんぐん広げる状態。一方、クリアなコースで暫定トップに立っていた松下は15周を終えてピットへ。6.7秒とすばやい作業でコースに戻ると、野尻、関口に続いて3番手での復帰に成功した。
そんな中、ひたすら”見えない敵”を追っていたのがNo.20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)。前回のSUGO戦は、WEC(世界耐久レース)のテストで欠場、久々のスーパーフォーミュラ出場となったが、得意とするコースでの逆転を見据えて力走を見せる。タイミングモニター上でのトップ平川と、事実上のトップ野尻のタイムはほぼ同等。タイヤ交換を済ませて改めて猛追するのではなく、平川がさらにハイペースで周回を続ける中、今度は野尻のタイムが平川に対し遅れを見せ始めた。実のところ、野尻はタイヤ交換後の平川とのバトルを懸念してペースを若干セーブ。後方に迫る関口とのバトルにも注意を払いながら、難しい条件での走行を続けざるを得ない状態だった。
そして迎えた26周。ピットに滑り込んだ平川だったが、作業にかかった時間はなんと8.0秒。ピットロード出口に近づいた平川の目の前で、野尻だけでなく関口が先行。なんとか松下を抑えてコースに戻ったが、1コーナーで逆転を許した。策が水泡に帰した平川は気が急いたのか、タイヤがまだ充分温まっていない中、5コーナーでオーバーラン。ポジションダウンこそなかったが、ターゲットを優勝から目前の松下に切り替えて猛追を始めた。一方、平川との”見えない勝負”をものにした野尻。この時点で2位関口との差は3秒前後。抜きどころのないもてぎでは、ほぼ勝利が決まったようなものではあったが、片や関口は、ファイナルラップになると残っていたオーバーテイクシステムをすべて使い切るまで作動し、最後の最後までライバルにプレッシャーをかけた。しかしながら、野尻のトップは揺るがず。土曜朝のフリー走行から自身が走行したセッションでほぼトップタイムを刻み続けた野尻が今シーズン3度目の勝利を達成。これでシリーズタイトルに王手をかけることとなった。2位関口に続き、3位チェッカーは松下。終盤、平川が粘りの走りで再三松下に迫るパフォーマンスを見せ、両ドライバーのバトルはまさに手に汗握る見どころ多いものだった。
次回、第7戦の舞台も再びもてぎとなるスーパーフォーミュラ。シーズン3勝を挙げている野尻が、最終戦を待たずして自身初のタイトル獲得をかけた一戦となるが、ライバル勢もそうやすやすと手渡すわけにはいかないと一矢報いる戦いになるのか。期待は高まる。
第5戦ツインリンクもてぎ・決勝結果 トップ3
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)59’07.562・35L
2.No.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)+1.039
3.No.51 松下信治(B-MAX RACING TEAM)+3.682
スーパーフォーミュラ第5戦もてぎ、野尻智紀が今季2度目のポール獲得!
前大会からおよそ2ヶ月あまり。厳しい残暑となった8月28日、栃木・ツインリンクもてぎにおいて全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦の予選が行われ、No.16 も野尻智紀(TEAM MUGEN)がノックアウト予選のQ3で最速タイムをマーク。開幕戦に次ぐ今シーズン2度目のポールポジションを獲得した。
変異株による新型コロナウイルス感染拡大が懸念される中での大会となったもてぎ。関係者は感染防止に努めながらの開催を迎えたが、一方で一気にぶり返した猛暑の中、タフな戦いを強いられることにもなった。午前8時40分に始まったフリー走行。1時間30分におよぶセッションは、開始から30分ほど経ってスピンを喫した1台のクルマによって赤旗中断となったが、6分ほどで再開。気温33度、路面温度35度というコンディションの中、予選に向けてのセットアップを行いつつ、的確なタイヤマネージメントのシミュレーションを行った模様。その中でトップタイムとなる1分32秒367をマークしたのは現時点でシリーズランキングトップのNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)。これに前回SUGO大会でスーパーフォーミュラ初優勝を果たしたNo. 5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、そしてSUGO大会のポールシッターNo.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)が続き、好結果を残しているドライバーがトップ3に収まった。
朝から強い日差しが照りつけたもてぎ。午後になって時折薄い雲が広がることもあったが、午後2時35分からのノックアウト予選を迎えてもこの状況に変わりはなく、気温36度、路面温度43度と路面に熱がこもる中でQ1・A組のアタックが始まる。このグループでのトップタイムをマークしたのは、No.64 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)。これにNo.15 大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)、前回のSUGOを欠席したNo.20 平川 亮(carenex TEAM IMPUL)が続いた。B組では、朝のフリー走行でトップタイムをマークした野尻が、このセッションでも確実にタイムを削り、申し分のない走りを披露。万全のアタックを行い、トップタイムをマークして2番手に続いたNo.51 松下信治(B-MAX RACING TEAM)を1秒以上引き離した。なお、このB組に出走したうち、No. 1 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)はタイムを伸ばせずQ2進出を果たせなかった。
なお、予選におけるスポーティングレギュレーションが今大会から一部変更され、ノックアウト予選において、今後もQ2をA、Bに組分けして実施することが今大会から正式に決定。前大会のSUGOでの導入が概ね好評であり、何よりも安全性、公平性を確保するために導入に至ったとしている。そのQ2のA組では、Q1同組トップタイムを刻んだ大湯がまたしてもトップタイムをマーク。B組も同様で、安定感ある速さを見せ続ける野尻が文句なしにトップをキープした。そして迎えたラストアタックのQ3。僅差のタイムアタックを生き残った”サバイバー”全8選手が最後のアタックに挑む。野尻はこのセッションでもアウトラップ直後にアタックを行う”アウト−アタック”を敢行。ライバルは計測2周目にアタックする”アウト−ウォーム”を行うなど、それぞれの戦法によるアタック合戦を繰り広げた。しかしながら、野尻のズバ抜けた速さには誰もが太刀打ちできず。結果、自身通算7回目、今シーズン2度目となるポールポジションを野尻が手中に収めることとなった。
もてぎでの開催は今回に続き、次戦も同じ場所が舞台となる。それだけに、予選でのノウハウはもちろんのこと、決勝での強いクルマを仕上げようと各陣営も躍起になって戦いに挑んでくることだろう。
第5戦ツインリンクもてぎ・予選結果 トップ3
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’31.073
2.No.19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)1’31.318
3.No.51 松下信治(B-MAX RACING TEAM)1’31.371
SUPER FORMULA第5戦もてぎ プレビュー
タイトル争いの行方を左右する後半へ
梅雨明け後、猛暑が続くも東京オリンピックが終わると日本各地に災害をもたらすような長雨が続き、しばらくの間”真夏”が不在だった今年の夏。その中で、全日本スーパーフォーミュラ選手権は、前回のスポーツランドSUGOからおよそ2ヶ月ののインターバルを経て第5戦を迎える。早くもシーズン残り3戦、ついに後半戦へと突入、ストップ&ゴーのレイアウトを持つ栃木・ツインリンクもてぎでは、どのようなレース展開を見せるのだろうか。
勝負はまずノックアウト予選から
もてぎでレースウィークを迎える頃、天気予報によると、日本列島は再び真夏の暑さが戻ってくるようだ。路面やタイヤへの影響がいっそう厳しくなるウェットコンディションよりも、日差しが照りつけるドライコンディションのほうがタフなバトルを目の当たりにできる分、見どころも多くなると思われる。
スーパーフォーミュラでは今シーズン初レースとなるもてぎ。ストップ&ゴーのレイアウトを持ち、ブレーキに厳しくクルマには負荷がかかりやすい。極力ストレスのないクルマを持ち込むことが必要となる。そこで重要になってくるのが予選順位。フレッシュエアを問題なく吸い込むポジション__つまりできる限り上位につけることが大事な要素となる。このため、まずは持ち込みの時点でしっかりとセットアップを見極めてフリー走行で方向性を確実に絞り込み、予選、そして決勝への下準備に勤しみたいところ。予選のグループ分けが導入されてから、ますます僅差でQ2、Q3への進出に明暗が分かれることとなっており、些細なことすら足を引っ張る要因になりかねない。それゆえに、与えられた条件を最大限引き出すことが問われるだろう。このシビアな条件を汲むように、今回はQ2でもA、Bの2組に分けて実施されるようになった。各クラス上位4位に入れば、ラストアタックのQ3へと進出可能となる。レース自体、2ヶ月ぶりの開催になるが、実のところ前週には三重・鈴鹿サーキットにおいてSUPER GTが実施されており、参戦ドライバーにとっては実戦の感覚に対する不安は極力ないはず。また、予選や決勝で好成績を残したドライバーやチームの場合は、上昇気流をこのスーパーフォーミュラへも持ち込む形でいい戦いを目指すに違いない。
今大会はレギュラードライバー4名が欠場
鈴鹿でSUPER GTが開催されていた頃、はるか遠くフランスのル・マン24時間レースに参戦していたドライバー3名(タチアナ・カルデロン、小林可夢偉、中嶋一貴)は、帰国後2週間の自己隔離期間をクリアできないことから、自ずと欠場となる。一方、サッシャ・フェネストラズに関しては、未だ入国許可が下りず参戦が見送られた
。なお、代役ドライバーは前回と同じメンバーが顔を揃える。
思わぬ形で代役ドライバーの活躍に注目が集まる今シーズン。その中でもダントツなのは、ジュリアーノ・アレジにほかならない。なにしろ父親が元F1ドライバー、そして母親は日本人女優として知られる存在だけに、すでに”持ってる”ものがある。今シーズンはスーパーフォーミュラライツに参戦し、日本のコース、日本のレーシングチームとのコミュニケーションの取り方、さらにはクルマのセットアップ等、すべてを学習するシーズンにする予定だった。ところが、代役ながらも第3戦雨のオートポリスではポール・トゥ・ウィンを達成してみせる活躍(規定により、ハーフポイント扱い)。貪欲なまでの探究心、順応性の高さなどがうまく噛み合ってルーキードライバーならではの良さが存分に発揮できているといえるだろう。
一方、タイトル争いに目をやると、毎戦緻密な戦いから結果をうまく引き出すことに成功している野尻智紀が後半戦をどう戦うか、気になるところ。もちろん優勝を狙ってくる。今シーズンは、速さと強さがうまく噛み合い、開幕戦からスタート奪取を決めて2連勝を達成。後半戦の初戦でいい流れをつかむことでタイトル獲得のアプローチにもいい影響を与えるのではないだろうか。
早いもので今シーズンも残すところあと3戦。そのうち、今大会と次戦が同じツインリンクもてぎとなるだけに、このもてぎを攻略することが大きな目標になるのは言うまでもない。
主なタイムスケジュール
8月28日(土)
08:40 – 10:10 フリー走行
14:35 – 公式予選(ノックアウト方式)
14:35 – 14:45 Q1(A組→上位7台がQ2へ)
14:50 – 15:00 Q1(B組→上位7台がQ2へ)
15:10 – 15:17 Q2(A組→上位4台がQ3へ)
15:22 – 15:29 Q2(B組→上位4台がQ3へ)
15:39 – 15:46 Q3
8月29日(日)
09:00 − 09:30 フリー走行
13:15 – 14:00 スタート進行
14:00 – 決勝(35Laps)