SUPER GT 2020 Round.3
MOTUL AUTECH GT-R、SUPER GT第3戦鈴鹿で待望のシーズン初優勝!
前日の予選に続き、灼熱の太陽が降り注いだ三重・鈴鹿サーキット。2020年SUPER GT第3戦鈴鹿300kmレースは、予選2位からスタートを切ったNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が序盤にトップを奪取、再三に渡るセーフティカー導入など波乱に満ちた一戦を制し、2018年第2戦富士以来の優勝をつかんでいる。
午後1時にスタートした決勝レース。気温32度、路面温度49度と厳しい条件の下、ポールポジションスタートのNo.64 Modulo NSX-GTがクリアスタートを決めてホールショットを奪う。もう一台のフロントロウ、No.23 MOTUL AUTECH GT-Rが揺さぶりをかけるがごとくトップ64号車に容赦なく襲いかかるが、ポジションは変わらなかった。一方、はるか後方のGT300クラスでアクシデントが発生。早速オープニングラップからセーフティカーがコースインする。レースは5周目にリスタート。ところが、最終コーナーを立ち上がったNo.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京組)がコースオフ。左リアタイヤを失ったままメインストレートを走行し、そのままピットロード出口でマシンを止めた形で戦列を去る。
GT500の上位がGT300車両を周回遅れにしはじめると、レースはますます大混乱。10周を過ぎると、トップ争いが2台から3台、最終的には5台による攻防戦へと展開する。その中で、ペースを落とした64号車に対して2番手の23号車がダンロップで逆転、トップに立った。しかし、17周目には2度目のセーフティカーが導入。これはバックストレート上にNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/ヤン・マーデンボロー組)のフロントカウルが脱落したため。幸い、走行中の車両に接触するなどの大事には至らなかった。レースは23周目にリスタート。これを機にルーティンのピットインを行うチームが多い中、トップ23号車は1周後の24周目にピットイン。コース復帰を果たすと、その後方にNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組) 、No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一組)が続いた。
慌ただしい展開が続くレースにおいて、3度目のセーフティカーがコースインしたのは29周目のとき。GT300クラス同士の接触が発生し、コースのそばで1台が停止したことでまたもレースは仕切り直しに。その都度築き上げた各車のマージンがリセットされるという厳しい戦いとなったが、それでもなお23号車の力走は続き、レース終盤になると、2位100号車との差が徐々に開いていった。一方、激しいバトルとなったのが3位争い。39号車の背後に迫ったNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)。前日の予選ではまさかの14番手に沈んだが、サバイバル要素が強くなる中、徐々にポジションアップを決め、ついに表彰台の一角が見えていた。しかし、36周目のヘアピンで攻防戦の末に8号車が39号車に追突。39号車はスピンでポジションダウン、8号車はフロントバンパー左側を激しく破損し、ピットイン。負ったダメージは大きく、その場でレースを終えた。
これにより3位にNo.36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ組)が浮上。第1戦から連続2位の好調な36号車。今大会では最重量のウェイトハンディ60kgを搭載しての戦いとなり、予選も12番手に甘んじていたが、アクシデントをかいくぐり、粘りあるパフォーマンスで3番手までポジションアップ。このままチェッカーを受けて、ランキングでもトップをキープしている。そして、今季初優勝となった23号車。GT-Rとしては久々の勝利となり、松田自身はGT500最多勝利記録を通算21勝へと伸ばしている。また2位100号車も今季初の表彰台。今大会の結果でホンダ勢ランキングトップになった。
一方、GT300クラスも激しくポジションが動く展開を見せた。ポールポジションスタートのNo.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)が安定した速さでトップをキープ。これに予選2番手のNo.55 ARTA NSX GT3(高木真一/大湯都史樹組)がつけ、3位も予選同様No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が続き、金箔したポジション争いを繰り広げていた。
2度目のセーフティカーランが終わったタイミングで上位陣が続々とピットイン。このとき、31号車はピット作業に時間を要し、事実上トップ争いから脱落。さらに全車がルーティンのピットワークを済ませていないタイミングで3度目のセーフティカー導入となったため、この先、チームが採った戦略によってポジションが大きく変動した。その中でトップに浮上したのが、No.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)。予選7番手の11号車は見事なピット作業で時間を短縮。チーム総力でポジションアップを果たす。その後ろは56号車、55号車と序盤から速さのあったクルマが並び、さらにNo.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/松浦孝亮組)がペースアップを果たし4番手につける。3台がひとかたまりとなった状態で終盤戦へと突入するが、56号車と55号車が急接近し、デグナーカーブで接触。55号車が表彰台への道を閉ざされ、18号車が2位へ。さらに3位の権利が巡ってきたNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)とNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)に加え、挽回を目指す56号車による三つ巴の戦いになったが、65号車がダンロップコーナーでスピン。すると、ひるんだ2台の背後にいたNo. 2 シンティアム・アップル・ロータス(加藤寛規/柳田真孝組)がするりとポジションアップに成功。セミファイナルラップで3番手をもぎ取り、チェッカーを受けている。
・第3戦鈴鹿 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)1H58’43.467 52Laps
2.No.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組) +3.725
3.No.36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ組)+12.279
GT300
1.No.11 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)2H00’15.804 50Laps
2.No.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/松浦孝亮組)+4.049
3.No. 2 シンティアム・アップル・ロータス(加藤寛規/柳田真孝組)+15.952
SUPER GT第3戦鈴鹿、Modulo NSX-GTが今季初ポール!
第2戦から2週間と短いインターバルで第3戦を迎えることになった2020年SUPER GTシリーズ。真夏の決戦の舞台となるのは、三重・鈴鹿サーキット。強い日差しが終始コースを照らすタフなコンディションの中、朝の公式練習か好タイムをマークしていたNo.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組)が2番手を引き離すパフォーマンスを披露。今シーズン初となるポールポジションを手にしている。
第1、2戦が開催された高速サーキットの富士スピードウェイとは異なり、テクニカルコースである鈴鹿は、シーズンオフに公式テストを実施する機会がなく、どのチームにとっても”ぶっつけ本番”での予選となった。一方で照りつける太陽の下、朝から気温、路面温度がじわりじわりと上昇。気温32度、路面温度42度でスタートした公式練習は、最終的に気温34度、路面温度48度まで上がり、午後からのノックアウト予選に向けてさらに厳しい暑さとの戦いになることが予想された。
開幕戦から続く無観客開催の下、迎えた予選は気温こそさほど変化はなかったものの路面温度はさらに上昇。50度超の中でのアタック合戦となった。その中でも朝から好調だった64号車が改めてトップタイムをマーク。ルーキーの大津が大役を果たし、コンビを組む伊沢へとQ2アタックのバトンをつないだ。そしてその伊沢も朝からの流れを活かし、納得のアタックを披露。1分46秒239のトップタイムをマークし、64号車に今シーズン初となるポールポジションをプレゼントした。なお、2007年にGT500へデビューを果たした伊沢にとっても自身初のポールポジションを手にする結果となっている。
なお、今回のGT500クラス予選では、Q1、Q2ともトップ3が不動のポジションとなった。2番手はNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が続き、今シーズン初のフロントロウを獲得。3番手のNo.38 ZENT GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)も久々に好順位につけ、結果として3メーカーがトップ3を分け合う形になっている。
GT300クラス予選は開幕戦から引き続き、Q1をA、Bの2組に分けて実施。各8台がQ2にコマを進めることになった。その中で1分58秒189のタイムをマークし、ポールポジションにつけたのは、No.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)。Q1のA組でもトップにつけた31号車。その勢いのまま、Q2でもトップ争いを展開する。一旦、No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が1分58秒053をマークし、トップに立つもまさかの走路外走行の対象となり、該当タイムが抹消された。結果、31号車が5年ぶり、Q2アタック担当の嵯峨にとって自身3回目のポールポジションが実現した。また、予選2番手はNo.55 ARTA NSX GT3(高木真一/大湯都史樹組)が続き、幻のポールポジションに終わった56号車が3番手となっている。
・第3戦鈴鹿 予選結果 各クラストップ3
GT500
1.No.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組)1’46.239
2.No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)1’46.699
3.No.38 ZENT GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)1’46.769
1.No.64 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組)1’46.239
2.No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)1’46.699
3.No.38 ZENT GR Supra(立川祐路/石浦宏明組)1’46.769
GT300
1.No.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)1’58.189
2.No.55 ARTA NSX GT3(高木真一/大湯都史樹組)1’58.430
3.No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)1’58.826
SUPER GT第3戦鈴鹿 プレビュー
今季初の鈴鹿戦。新たな展開に期待!
第2戦からわずか2週間という短いインターバルで迎える2020年SUPER GTシリーズ第3戦。待ちわびた開幕から、レースは2戦連続静岡・富士スピードウェイでの開催となったが、戦いの舞台がようやく三重・鈴鹿サーキットへと移る。一方、今夏は豪雨が続いた梅雨が明けた途端、例年以上の厳しい暑さが続いており、第3戦の戦いはクルマ同士の激しいバトルだけでなく、様々な”敵”を相手に挑まなければならない一戦になりそうだ。
■かつて”鈴鹿1000km”だった真夏の一戦
”真夏の祭典”鈴鹿1000kmという伝統のレースが長らく開催されていた鈴鹿サーキット。かつては単独イベントとして国内外のプロ&アマチュアドライバーが集い、戦うお祭り的なレースでもあった。初開催は1966年と古く、過去にはオイルショックの影響で開催が中断したり、世情を反映し、1000kmではなく700kmや500kmへと距離を短縮する形を採りながらも2017年まで「1000kmレース」としての開催を継続させてきた歴史あるイベントでもあった。
一方、この1000kmレースがSUPER GTのシリーズに組み込まれたのは2006年のこと。これにより、SUPER GTの規定に伴う車両のみが出場可能なイベントになり、2017年までSUPER GTの一戦として実施された。だが、2018年からは「鈴鹿10時間耐久レース」と名称も変わり、SUPER GTのシリーズ戦からも外れる形を取ったため、2018年シリーズにおける鈴鹿戦は5月へと移動し、レース距離も300kmで競われることになった。
真夏から初夏へと変わった鈴鹿戦だったが、今シーズンはコロナ禍でレーススケジュールの変更が余儀なくされたことから、思わぬ形で”真夏の祭典”が復活。灼熱の太陽の下、奮闘するドライバーとともに厳しい暑さの中で声援を送ったことがあるレースファンにとっては懐かしく、また見どころの多い一戦であることは百も承知だろう。第1、第2戦に続き、今大会も無観客開催になってしまうのはとても残念なことだが、TVなどのリモートメディアを最大限活用し、応援してもらいたいものだ。
■高速サーキットからテクニカルコースへ
序盤の2戦は高速サーキットの富士スピードウェイが舞台であったことから、ストレートスピードに自信のあるGR Supra勢が速さと強さを遺憾なく発揮した。一方で、今シーズンからFRとなった搭載する”新たな”NSX-GT勢も予選で速さをしかとアピール。No.8 ARTA NSX-GTがポールポジションを手にしたことは記憶に新しい。決勝では同じNSX勢のNo.17 KEIHIN NSX-GTが躍進し、その勢いをキープしたまま初優勝をさらっただけに、8号車にとっての今大会はリベンジ戦という位置づけになると思われる。
加えて8号車、17号車の活躍に対し、やや遅れを取っている感じがするのがNo.100 RAYBRIG NSX-GT。今シーズン、新たに牧野任祐を迎え入れ、公式練習やノックアウト予選での速さはすでに披露しているものの、予選や決勝でのアピールが今ひとつパンチ不足という状態だけに、この鈴鹿戦でライバル達に引けを取らない活躍をしたいところだ。いずれにせよ、NSX-GT勢にとってはホームサーキットである鈴鹿での戦い。これまでNSX-GT勢は夏場に苦戦すると噂されてきたが、それはミッドシップ時代に冷却系が不安要素のひとつであったからだと言われている。FRになった今シーズン、その心配要素もなくなり、思う存分、ライバルとのバトルを繰り広げてくれるのではないだろうか。
一方、悲痛なファンの声が聞こえてきそうなのが、日産GT-R勢だ。GR Supra、NSX-GTの後塵を拝する形が続いており、厳しい結果を突きつけられている。とはいえ、第2戦ではGT-R勢最速のNo.12 カルソニック IMPUL GT-Rが予選4位を獲得し、レースでも粘りあるバトルを披露していた。終盤、激しいポジション争いの末にGT300車両と接触したことによるペナルティに泣き、結果こそ残せなかったが、序盤の2戦で好成績を得て搭載するハンディウェイトの影響が出始める今大会こそ、GT-R勢の大逆襲になるやもしれない。試合巧者のNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rのパフォーマンスも気になるところだ。
■GT300、今大会からタイヤ交換義務は白紙に
第2戦では参加車両唯一のミッドシップのマザーシャシーであるNo.2 シンティアム・アップル・ロータスが粘りの戦いでシーズン初優勝を果たしたGT300。ベテランドライバーふたりによる”これぞSUPER GTの戦い方”というテクニカルな戦略が実を結んだ結果でもあった。鈴鹿ではいったいどんな展開を見ることができるのだろうか。
なお、ノックアウト方式の予選では、今大会でもA、B組に区別してQ1を実施。第2戦までの戦歴をもとにクラス分けして実施される。Q1は各15台ずつが出走、上位8台がQ2へ進出できるのだが、この組み合わせがチームによって明暗を分ける可能性もあるため、レースファンにとっては新たな”お楽しみ”になっているとも言われている。JAF GT勢やマザーシャシーの底力にも期待が高まる第3戦鈴鹿は、GT500以上に混戦模様になる可能性も高い。第2戦で導入されたタイヤ交換義務は今大会から白紙になったが、戦略含め、厳しい暑さをどうマネージメントし、ライバルを上回る結果を残すか。あらゆるポテンシャルを最大限に引き出すことが、勝利への近道になりそうだ。
■主なスケジュール
2020スーパーGT第3戦 SUZUKA GT 300km RACE
8月22日(土)
10:00〜11:25 公式練習(GT300+GT500)
11:25〜11:35 公式練習(GT300専有)
11:35〜11:45 公式練習(GT500専有)
14:30〜14:40 公式予選Q1 GT300 A組
14:48〜14:58 公式予選Q1 GT300 B組
15:03〜15:13 公式予選Q1 GT500
15:23〜15:33 公式予選Q2 GT300
15:41〜15:51 公式予選Q2 GT500
8月23日(日)
09:40〜10:00 SGTドライバートークショー
10:30〜10:50 ドライバーアピアランス
10:55〜11:25 ウォームアップ
11:40〜13:00 スタート進行
13:00〜決勝 300km RACE(52周)