8月28日、三重・鈴鹿サーキットにおいて、2016年SUPER GT第6戦決勝レース「INTER NATIONAL SUZUKA 1000km」が行われ、予選8番手スタートのNo.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)が、待望の初優勝。雨が降ったり止んだりという不安定な天候にも動じない力走で、ライバル達とのタフな戦いを制している。
決勝日を迎えた鈴鹿は、朝から雨模様。ひと足先に開催されたサポートレースでは、途中で激しい雨になるなど、落ち着かない状況となった。その後、一旦雨が上がり、決勝目前のSUPER GTのダミーグリッドにはスリックタイヤを装着する車両で溢れるも、依然として雨の戦いになる可能性も含んでおり、まさに不確定要素だらけのスタートを迎える。
気温27度、路面温度30度の中、パレードラップ、そしてフォーメーションラップを終えたGT車両が一斉に1コーナーへ。まず順当にポールポジションからスタートを切ったNo.15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTの武藤英紀がポジションキープでオープニングラップを終了、その後方では、瞬く間にポジションアップしたNo.38 ZENT CERUMO RC Fの立川祐路が上位争いへ喰い込んでくる。序盤の見どころになったのは、2番手No.46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rの本山哲と38号車の立川による好バトル。テール・トゥ・ノーズからサイド・バイ・サイドへと形を変えながら繰り広げる攻防戦は、ベテランのふたりだからこそ、のパフォーマンスそのものとなり、レースファンを喜ばせた。
最初のルーティンを迎え、ひと足先に46号車がピットへ向ったことで、2台のバトルは一旦終了。すると38号車の立川は、ターゲットをトップの15号車武藤へと変更。ハイペースでトップに追いつき、シケインでの逆転に成功。22周目にしてレースを牽引する立場となった。
今年の1000kmは、ドライバー交代を含む5回のピットインが義務化されたため、各チームとも最初のルーティンをどのタイミングで実施するか、その行方が気になったが、今回はレース前半において30周を前にピットインを行なうチームが多く、その後は30周前後を軸に交代する形となったが、そんな中で一番の懸念材料が雨だった。スタートこそドライコンディションで幕を開けたレースだが、気温、路面温度はその後も大きく変動することはなく、逆に雲行きが怪しくなってくる。開始から2時間を前にパラパラと雨が降り始め、一瞬にしてウェットコンディションになったが、その雨は5分と降らず、ドライバーは濡れた路面をスリックタイヤで周回しなければならないという極めてタフなコンディション下に置かれてしまう。
レースはその後も似たような状況を幾度か繰り返したが、セーフティカーが出動したのは、わずか1回のみ。一方で、トップの38号車に対し、No.36 au TOM’S RC F(伊藤大輔/ニック・キャシディ組)がじわりじわりとポジションアップを果たして攻防戦に持ち込むことになったが、レース運びにアドバンテージがあった38号車は抜きつ抜かれつの展開の中、やや有利な立場で周回を消化していくことになる。
だが、36号車とて、チームとしての鈴鹿1000km3連覇がかかった大事な一戦。逆転勝利に賭け、最後のピットインで先手を打つ。それを見て38号車も翌周に作業を行なったが、ピット作業で上回った36号車がトップを奪取。このまま逃げ切りに持ち込みたいところだった。ところが、タイヤ交換から10周ほど過ぎ、サーキットにはまた激しい雨が降り始める。このとき、36号車はGT500ルーキーのキャシディが、そして38号車にはベテラン立川が乗り込んでおり、不安定な天候の中でふたりのGT経験値の差が出たのか、立川がキャシディに詰め寄る形となって、スプーンカーブで走行ラインを外したキャシディを一気に抜き去ってしまった。
実はこのスプーンカーブでは1台の車両がコースアウトしており、その後、立川に対して黄旗無視の可能性があるとして検証の対象となったが、のちにセーフの判定が下されることになり、38号車はこのままトップで周回を重ねていく。そして迎えた最後のピットイン。チェッカーまで30周ほどを残して今度は38号車が先にピットに戻り、立川から石浦へと交代。その翌周に36号車が続き、キャシディから伊藤へと代わって猛攻を再開した。チェッカー目前となっても、トップ2台の差は5秒前後という緊迫したコンディションはその後も変わらず。加えて、またしても雨が降り出すというドラマチックな演出まで飛び出したが、ポジション変動までには至らず。結果、38号車は立川&石浦コンビによる待望の初勝利を達成。また長距離のレースに与えられるボーナスポイントを味方にして、ポイントランキングも2番手へとジャンプアップすることに成功した。2番手36号車に続いたのは、46号車。一度、黄旗無視によるペナルティストップを受け、厳しい立場に置かれたが、好タイムを刻み続け、ポジションを回復。表彰台に上がっている。
一方のGT300。予選ポールのNo.18 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/山田真之亮組)が奮闘し、レース終盤までトップ争いを繰り広げ、ポール・トゥ・フィニッシュを目指した。だが、ライバルとのバトルが次第に激しくなり、中でも予選4番手スタートのNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)の猛追によって、トップが入れ替わる。さらに序盤の出遅れからポジションを回復してきたNo.31 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)に詰め寄られてしまう。またNo. 0 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/富田竜一郎組)も安定した速さで着実にポジションアップを果たすなど、ギリギリまで群雄割拠の争いが繰り広げられた。結果、61号車がこのまま勝利をもぎ取り、2番手には31号車が続くと、3位には0号車が浮上。18号車も最後のピットインでタイヤ無交換の賭けに出たが、惜しくもライバルに遅れをとることとなり、4位でレースを終えている。
■第6戦鈴鹿 決勝結果
・GT500(TOP6)
1.No.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)5:45’34.230 173L
2.No.36 au TOM’S RC F(伊藤大輔/ニック・キャシディ組)+1.241
3.No.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山 哲/千代勝正組)+1’15.104
4.No. 6 WAKO’S 4CR RC F(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組)+1’31.514
5.No.19 WedsSport ADVAN RC F(関口雄飛/国本雄資組)+1’48.254
6.No. 1 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)+1Lap
GT300(TOP3)
1.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)5:46’48.117 161L
2.No.31 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)+8.395
3.No. 0 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/富田竜一郎組)+8.752
