5月4日、静岡県・富士スピードウェイにおいて、2016年SUPER GT第2戦決勝レースが行なわれた。時折強い日差しが照りつける中、500kmという長丁場にわたる戦いが繰り広げられ、波乱の展開を制したのは予選4位スタートのNo.1 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)だった。
終日薄曇りだった前日、気温もさほど上昇しない中、予選は難しいコンディションでのタイムアタックとなった。さらに夜半から早朝までは暴風雨という荒れた天候で、決勝のコンディションが懸念されていた。だが幸いにも、午前7時を前にして雨はすっきりと上がり、しかも雲ひとつない青空がサーキット一面に広がる好天気に恵まれる。加えて朝のフリー走行でもほとんどレインタイヤ装着の必要がなく、各チームとも早々からスリックタイヤを着けてレースに向けての最終チェックに取り組むという好材料が揃った。
第2戦の戦いは通常よりも150km長い500km。ルーティンのピットインも最低2回が義務付けられている。ライバルとの混戦や周回遅れをうまくかいくぐり、ポジションを引き上げていくにはチームとしての戦略が問われる戦いでもある。ところが、今回はその戦略をもってしても逆らえないハプニングに泣くチームがあった。それが、ポールポジションからスタートを切ったNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)だった。
クリアスタートを決めたスタートドライバーのデ・オリベイラ。スムーズなオープニングラップから順調にタイムアップして、後続との差を着実に築いていくと、その後は安定した走りで30周を20周を過ぎる頃にはすでに2位以下と10秒以上の大差をつけていた。1回目のピットインも、ライバル達の作業がひと段落してからルーティンワークに入るなど、先を見越したレース運びで勝利への道を歩み始めていた。だが、そこに水を挿したのが、長丁場の戦いで避けることが難しいコース上でのハプニングだった。
レースは500km、110周の折り返しにあたる55周目を迎え、トップの12号車、そして2番手にNo.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)、その背後にNo.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)が続き、1号車は4番手。46号車と38号車は射程距離といえる2秒弱の差ではあったが、ほかは10秒を超える差がついていた。ところが72周目、コース上にセーフティカー(SC)がコースインする事態が訪れる。実は、後方を走っていたNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTの伊沢拓也選手が100Rでスピン、走行中にタイヤが突如バーストしたのが原因だった。さらには100号車はシャシーを激しく破損。コース上にパーツが飛び散り、他車の走行に影響を与えることからSCランが導入されたのだ。これによって、トップ12号車が積み上げてきたマージンは無残にも消失。残り40周弱での新たな攻防戦になると思われた。
しかしこのSCランによって、戦略に暗雲が立ち込めたチームは12号車だけではない。2回目のピットインを目前にしていた46号車、そして38号車はまさに崖っぷちの状態。今年からSCラン中のピットインが禁止され、作業の敢行は当然ながらペナルティ対象だったが、46号車はトップ争いよりからポイント獲得に戦略をスイッチ。一旦は上位争いからの脱落を選んだ。だが38号車は走行継続可能と判断。しかし、SCランの終了と同じ周回でガス欠となり万事休す。コース脇にクルマを止めるしか術はなく、涙を飲む結果となった。上位の2台が戦線離脱したことで、トップ12号車は、2度目のルーティンワークをノーミスで済ませてコースに復帰すれば、改めて自分たちのレース運びができるものと思っていたに違いない。だが、SCランによるマージン消失を味方に、1号車がひたひたとその背後に迫っていた。12号車よりもおよそ6.5秒も速く作業を済ませた1号車。レース終盤に入って、トップの座を奪取する。
久々の勝利を渇望する12号車は果敢に攻め立てるが、なかなか好機が巡ってこない。それでも96周目のTGRコーナーからコカコーラ・コーナーで激しい攻防戦を見せて、ついに逆転! あとは勝利へと突き進むだけだったが…。あろうことか、107周目の100Rで12号車の左リアタイヤが激しくバースト。100号車とほぼ同じような展開に場内は騒然となったが、大きな痛手を負った12号車はその場ですべてを失うことになった。
思わぬ形でトップの座が巡ってきた1号車。2番手に浮上していたNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)が最後まで攻め立てるも、バトルまでには持ち込めず。結果、1号車が開幕戦から2連勝を決めている。2位の39号車に次いで3番手には、No.37 KeePer TOM’S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮組)が入り、こちらも2戦連続表彰台に立っている。
一方、GT300も単独コースアウトや接触など、出入りの激しいレース展開となった。ポールスタートのNo.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志組)がトップをキープしていたが、好調なペースで着実なポジションアップを見せたNo.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー組)がレース折り返しを前にして首位に立つ。結果、安定したレース運びが実を結ぶこととなり、トップチェッカーをゲット。シーズン初優勝を果たし、第2戦はGT500、GT300の両クラスにおいてGT-Rが頂点に立つ形で戦いの幕を閉じている。
■第2戦富士 決勝結果
・GT500(TOP6)
1.No.1 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)2:58′58.430 110L
2.No.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)+2.666
3.No.37 KeePer TOM’S RC F(ジェームス・ロシター/平川 亮組)+14.346
4.No.36 au TOM’S RC F(伊藤大輔/ニック・キャシディ組)+15.025
5.No. 6 WAKO’S 4CR RC F(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ組)+20.158
6.No. 8 ARTA NSX CONCEPT-GT(松浦孝亮/野尻智紀組)+1’00.064
・GT300
1.No.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー組 3:00’16.590 102L
2.No.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志組)+3.749
3.No.25 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)+18.209

ゴールデンウィークも半ばに入る中、5月3日に静岡・富士スピードウェイにおいてSUPER GT第2戦「FUJI GT 500km RACE」の予選セッションが行われた。やや曇り空が先行するドライコンディションの中、ノックアウト予選でトップタイムをマークしたのは、No.12 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)。昨シーズン達成できなかった優勝に向け、着実な一歩を進むことに成功している。
朝の公式練習では、気温17度、路面温度24度とやや低い数字を刻む中、各車が予選に向けてのセットアップを開始。この時点からトップタイムを刻んだのが、12号車のGT-Rだった。昨年はシーズン終盤まで、チャンピオン候補として名を挙げていたが、シーズン中の勝利はなく、あと一歩のところでタイトルも逃してしまった。そのリベンジシーズンとも言える今年、早速優勝のチャンスが巡ってきたといえる。
12号車の勢いは午後からのノックアウト予選でも変わることはなかった。実のところ朝のセッション終盤にはプロベラシャフトのトラブルに見舞われ、ナーバスな状況となっていたのだが、まずQ1を担当した安田が2番手でQ2進出を決め、不安を払拭。続くQ2では、デ・オリベイラがコースレコード更新の走りを披露。1分27秒453の好タイムでポールポジションを手中に収めた。12号車に続いたのは、No.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山 哲/千代勝正組)。開幕戦で3位に入った勢いもそのままに、快走。GT-R勢がフロントローを独占した。3番手に続いたのは、No.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)。レクサス勢のトップとして、決勝ではトヨタお膝元での躍進を狙うことになる。
一方、開幕戦ではFIA GT3車両が独占状態となっていたGT300。今回、ポールポジションこそ、No.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志組)が1分35秒707のレコードタイムでトップを奪取したが、2番手に続いたのはNo.25 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)。25号車は開幕戦でクラスポールを手にしたものの、決勝では6位どまりだった悔しさをこのレースにぶつけてくるはずだ。また、3番手には、No.31 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)が続いている。
今回のレースは500kmの長丁場レースとなり、ピットイン回数は少なくとも2回行われる。速さ、強さに加え、チームとしての総合力が戦いの行方に大きな影響を与えるものと思われる。
■第2戦富士 予選結果
GT500(TOP6)
1.No.12 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)1′27.453
2. No.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)1’27.687
3.No.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)1’27.960
4. No. 1 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)1’27.973
5. No.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)1’27.996
6. No.15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(武藤英紀/オリバー・ターベイ組)1′28.326
GT300(TOP3)
1. No.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志組)1’35.707
2. No.25 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)1’35.961
3.No.31 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一組)1’36.036

大型連休での一戦、さらなるバトルに注目!
2016年の新たなシーズン幕開けから早や1ヶ月。大型連休の中日の5月3-4日、静岡・富士スピードウェイにおいて第2戦の戦いが開催される。ハイスピードでの一戦は、レース距離が500kmと長く、ドライバー交代が最低2回行われるため、さまざまな状況によって戦い方が異なってくる。果たして、序盤での勢力図が見えてくるのか否か。シーズンにかける“本気モード”を見極めるのに、重要な一戦になるはずだ。
岡山と特性の違う富士。強みを見せるのは?
開幕戦の岡山はSUPER GTが開催されるコースの中でもよりコンパクトでコース幅も狭く、中・低速コースのため、クルマのセットアップによって明暗が分かれやすい。ところが今回の富士は、日本のサーキットの中でも屈指の高速コースとして知られる。まったくキャラクターが異なるサーキットでの戦いとなれば、開幕戦で活躍したクルマに変わって、新たに優位に立つクルマが出現するのだろうか? その答はおそらく「NO」だ。というのも、クルマは日々開発と改善・進化を目指してセットアップが進んでおり、一度優位に立ったチームをそのライバルが追随するという形が多く、あとは、搭載するハンディウェイト、さらには気温や路面温度にマッチングしたタイヤを手にできるかどうかなど、クルマに付随する条件の違いによって結果の差が生み出されることになる。予選でのタイムアタックを見ても、近年はフォーミュラレース並の僅差でポジション争いが展開されているだけに、まずは絶対的なセットアップを見出しているチームが頭ひとつ抜き出てくるのは間違いない。あとは、微調整でどこまで帳尻を合せることができるかどうか。まったくもって総合力での強さが今のSUPER GTの勢力図を描いているといえる。
ホームコースでのRCFが逆襲に出る!?
過去2年の第2戦富士での戦いを振り返ってみよう。なんと、日産GT-R勢が連勝している。となれば、先に述べた“絶対的なセットアップ”を見出しているということになる。当日、サーキットで観戦予定の方は、まず予選日朝のフリー走行で今シーズンの完成度をしかとチェックしてみてほしい。中でも、開幕戦を独走で逆転勝利を果たしたNo.1 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)は優勝と引き換えにハンディウェイト分として40kgを搭載しているのだが、富士は長いメインストレートを持つレイアウト。40kgのハンディをどこまで相殺できるかどうか、これも見どころのひとつになるだろう。
富士におけるGT-R勢の安定感に対し、逆襲を狙っているのがレクサス RC F勢であるのは言うまでもない。なにしろホームコースで迎える戦い、3年連続でライバルに勝利をさらわれるわけにはいかない。なんとしても阻止しなければ、という強い意思で戦いに挑んでくるはずだ。さらに、岡山の開幕戦で1号車が優勝し、そのドライバーである松田が最多勝利数で単独トップに立ったことも記憶に新しい。ともにしのぎを削っていた立川祐路がドライブするNo.38 ZENT CERUMO RC Fをはじめ、開幕戦で2位に入ったNo.37 KeePer TOM’S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮組)がどのようなパフォーマンスを披露するか、こちらも目が離せない。
なお、開幕戦ではエンジントラブルが発生するチームをはじめ、全体的にスピードでライバルメーカーから遅れをとっていたHonda NSX CONCEPT-GT勢。チームというよりは、むしろメーカーがどこまで本腰を入れて富士での一戦に挑むのか。これから続くシーズンを見据えての戦略が気になるところだ。
GT300は、さらに激戦
開幕戦では、圧倒的な強さをアピールすることになったFIA-GT3車両。ニューカマーのメルセデスAMG GT3、BMW M6 GT3が表彰台を独占し、早くも今シーズンの勢力図が垣間見えたような気がした。果たして、富士ではどうなるのだろう。やはり、今回も彼らが優位に立ちそうな気配だ。そこで視点を変えて富士での見どころをピックアップするとすれば、同じ車両を投入するチーム同士の戦いを挙げることができるだろう。もちろん、開幕戦で苦汁を飲まされたハイブリッド車両やマザーシャシーがこのまま黙っているとも思えない。策を講じて富士攻略を目指しているはずだ。
長距離レースならではの波乱もある?
レース距離が500kmとなる今回、ピット作業はドライバー交代を含めて最低2回。そのタイミング、ライバルとの駆け引き、そして装着するタイヤ選択など、さまざまなファクターが入り乱れ、周回を重ねるごとに戦略も都度変更を強いられることになるだろう。複雑な形をしたパズルのピースが、すんなりパチッと収まればはライバルより先んじて優位な立場にいられるのは間違いないだろうし、戦いを制する確立は格段上がる。さて、どのチームがその権利をいち早く手にするのか。その戦いが間もなく始まる。
主なタイムスケジュール
5月3日(火)
07:00 – 07:45 オープンピット
09:00 – 10:45 公式練習
09:00 – 10:25 : GT500 & GT300
10:25 – 10:35 : GT300
10:35 – 10:45 : GT500
10:45 – 11:10 サーキットサファリ
12:05 – 12:45 ピットウォーク
14:30 – 15:05 ノックアウト予選_Q1
14:30 – 14:45 : GT300
14:50 – 15:05 : GT500
15:15 – 15:47 ノックアウト予選_Q2
15:15 – 15:27 : GT300
15:35 – 15:47 : GT500
17:25 – 18:25 GTキッズウォーク
5月4日(水)
08:30 – 09:00 フリー走行
11:45 – 12:25 ピットウォーク
12:50 – 14:00 ウォームアップ走行、スタート進行
14:00 - 決勝レース(110Laps)
17:05 – 18:00 コースウォーク