スーパーフォーミュラ2014 Round.5
スーパーフォーミュラ第5戦オートポリス、ロッテラーが圧勝!
9月14日、大分・オートポリスにおいて、全日本選手権スーパーフォーミュラ第5戦の決勝レースが行われ、予選3位からスタートを切った、アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM’S SF14)がレース序盤から着実なレース運びを続け、終盤に入ると後続を完全にシャットアウト! 今シーズン2勝目を果たした。
燃料無補給のルールが採用された今大会、燃費やタイヤのマネージメントが最大のキーポイントになるのではないかと思われたが、土曜日のセッション、そして日曜日の朝のフリー走行を経て、各チームが出した答は、さほど神経質にならずとも燃料は持つのではないか、というものだった。とはいえ、レース中にガス欠となってしまっては話にならないので、決勝スタート後もしばらくはペースを様子見するような感じになったのは否めない。一方で、タイヤのマネージメントは、気温、路面温度の上昇により、ややシビアに感じたドライバーもいたようだ。
決勝日は青空が広がる初秋の好天に恵まれたオートポリス。午後2時55分、46周・220kmの戦いが幕を開けた。まずスタートでミスを喫したのが、ポールスタートだった山本尚貴(TEAM 無限 SF14)。クラッチがつながらず、後方の集団に飲み込まれることに。一方で、予選2位の国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)と3位のロッテラーは無難にスタートを決め、1コーナーへ。ロッテラーがアウト側から一気に国本を抜き去り、ホールショットを奪うことに成功した。
一方、大きくジャンプアップに成功したのが予選9番手のジョアロ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL SF14)と10位のジェームス・ロシター(フジ・コーポレーション KONDO SF14)。オリベイラはなんと一気に3番手、そしてロシターは5番手までポジションを引き上げる勢いを見せた。
序盤のレースはペース配分を意識しての走行となり、各車同士のタイム差も大きく変動しないまま周回を重ねるシーンが続いたが、折り返しを過ぎると、燃費によるマネージメントもほぼコントロールできるようになり、加えてタイヤにおいてもあとはすべてドライバーの力量次第、という戦いへとスイッチしていく。
こうなるとキャリア豊富で器用なドライバーが有利となり、強いてはペース良く周回を重ねるロッテラーに対し、2位で奮闘する国本はついて行くのが精いっぱい。じわりじわりと広がる差にも為す術なしの状態だった。一方で、3位のオリベイラは国本に詰め寄ろうとするも、リアタイヤに若干のトラブルを抱えており、さらには4位につける塚越広大(HP SF14)が虎視眈々と逆転のチャンスを伺いながらの走行を続けていたこともあって、逆襲へは持ち込めず。どのドライバーも、あと一歩の追い上げを披露することなく、周を重ねていくだけの展開になった。
唯一、展開に変化が現れたのが、残り5周を迎えた頃。もはやガソリンもタイヤも気にしないで済むようになってから、ぐんとペースアップする車両が増えたのだ。加えて、搭載するオーバーテイクシステムを使うべく、メインストレートでボタンを押すドライバーが続出。とはいえ、ポジション争いにはなんら影響もなく、そのままチェッカー!ロッテラーが第2戦富士の第2レース以来となる勝利を達成している。2位の国本にとっては、自己ベストの成績を残すことになり、また3位に続いたオリベイラは依然としてシリーズランキングにおける暫定トップを死守する結果となった。
■第5戦オートポリス 決勝結果(TOP6)
1.No.36 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM’S SF14)46Laps 1:10’08.548
2.No.39 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)+12.939
3.No.19 ジョアロ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL SF14)+14.268
4.No.10 塚越広大(HP SF14)+15.210
5.No. 3 ジェームス・ロシター(フジ・コーポレーション KONDO SF14)+16.992
6.No.37 中嶋一貴(PETRONAS TOM’S SF14)+22.538
記事・写真:島村元子/ TEXT&PHOTO : Motoko SHIMAMURA


スーパーフォーミュラ第5戦オートポリス、山本尚貴が今季初のポールポジションを手にする
9月13日、大分・オートポリスにおいて全日本選手権スーパーフォーミュラ第5戦の予選が行われ、昨シーズンのチャンピオンである山本尚貴(No.1 TEAM 無限 SF14)が最速タイムをマーク、自身今季初となるポールポジションを獲得した。
初秋の三連休の中、迎えたSF第5戦。シーズン後半戦の舞台となるオートポリスは阿蘇山麓にあるサーキット。アップダウンに富み、チャレンジングなコースとしても知られる。その中でニューマシンSF14で挑む初の戦いは予選からオドロキの速さを競うこととなり、改めてスーパーフォーミュラの魅力を強くアピールする結果を生んだ。
今年、ニューマシンを投入したものの、オフシーズンの公式テストに十分な時間を確保するのが難しかったスーパーフォーミュラでは、レースウィークの金曜日に1時間程度の専有走行を実施、レースのためのセットアップにひと役買っていた。しかしながら、今大会での走行枠は設けられず、土曜朝のフリー走行が初セションに。加えて給油も実施しないルールの適用により、各チームとも燃費を強く意識したセットアップを意識することに。最速マシンとなった国内最高峰のフォーミュラカーによる“エコ”な戦いになるのか否か、いつもとは異なる戦いに注目が集まることになった。
予選日は終日薄曇りの中でセッションが進んで行く。多くのチーム、ドライバーたちは朝のフリー走行で燃費計算よりも、予選に向けてのセットアップを優先、結果、タイムアタックでは次から次へとコースレコード更新のラッシュに! ノックアウト方式の予選でQ1を突破した14台がレコード更新を達成するほどだった。そして迎えた最後のタイムアタックとなるQ3。8台のうち、7台が1分26秒台へと突入。中でも昨年のディフェンディングチャンピオンである山本尚貴は、1分26秒469をマーク。これまでのサーキットにおける最速タイム1分27秒188(1991年・スポーツカー世界選手権、グループCのジャガーXJR-14/テオ・ファビ選手)を軽く上回る速さだった。2番手には国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)が、そして3番手には前戦を欠場し、F1ベルギーGPにスポット参戦を果たしたアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM’S SF14)が続いている。
■第5戦オートポリス 予選結果(TOP6)
1.No. 1 山本尚貴(TEAM 無限 SF14)1’26.469
2.No.39 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING SF14)1’26.535
3.No.36 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM’S SF14)1’26.569
4.No.10 塚越広大(HP SF14)1’26.646
5.No.40 野尻智紀(DOCOMO DANDELION M40T SF14)1’26.735
6.No. 8 ロイック・デュバル(Team KYGNUS SUNOCO SF14)1’26.787
記事・写真:島村元子/ TEXT&PHOTO : Motoko SHIMAMURA

SUPER FORMULA第5戦オートポリス プレビュー
シリーズ後半戦の戦いへと突入した今シーズン。第5戦の舞台は、本州を離れて九州へと移動する。9月13-14日、大分・オートポリスにおいて全日本選手権スーパーフォーミュラが開催される。厳しい残暑から解放され、朝晩はすっかり涼しさを覚えるようになった頃。また、阿蘇山麓に位置する山あいのサーキットならではのドラマが待ち受けているようだ。
■初物づくしの一戦に!?
ニューマシンが投入された今シーズンのスーパーフォーミュラ。大会の舞台となる九州・オートポリスで迎える初の公式戦だけに、様々な「初物」がお目見えする。初の公式戦、と書いたが、つまり事前の公式テストが行われていないサーキットで迎える戦いになるというわけだ。ほぼドライバーを含むレース関係者は、今シーズン、ひと足先にSUPER GTを経験していたり、コース自体は昨年もレースをしている。だがしかし、繊細なフォーミュラマシンをどう操ればいいのかはまた別の話。というわけで、今大会は誰もが未知の世界を味わえるレースウィークになる。
今シーズン、オフシーズンの間に予定されていた公式テストが天候不順などにより十分に実施されなかったことをうけ、レースを運営・管理する日本レースプロモーション(JRP)はレースイベント前日の金曜日に専有走行の時間を設けている。だが、スケジュール上、そのセッションを実施できるのはオートポリス以外のサーキットに限られることに。よって、エンジニアはこれまでのレースデータをもとにクルマをセットアップし、それをいきなり土曜日朝のフリー走行に出走させることになる。短時間で速くて強いクルマをどのチームが作ってくるのか? 見どころとなるだろう。
さらに、今大会はルーティンワークとしての給油作業を伴わない。これはオートポリスのレイアウト、そしてSF14の車体特性に一因がある。まずレイアウト。ここは他のサーキットと異なり、コースの外側にピットが配置されている(通常、右回りのコースの内側にピットを設置)。ここでピット作業中の風景をイメージして欲しい。ピットインしたクルマの右側にピットガレージがあり、待ち受けたメカニックはガレージ側に立って給油作業を行う。さらに車体の燃料キャップは右側にのみ付いている。だが、オートポリスのピットではクルマが逆方向を向いて停車する。仮にここで給油するとなれば、困難を極める上に安全面でも危険を伴うリスクが生じることになる。結果、今回は燃料無給油によるルールが導入され、併せてタイヤ交換の義務もない。スタートを切ったら、ひたすらゴールを目指すのみ、の至ってシンプルな一戦となる。
■高速系コースをどう攻略する?
だが、この無給油によってチームはより一層緻密な戦略をもってレースに挑まなければならなくなった。なにしろ高低差が大きいオートポリス、この高速系コースは燃費との戦いでもあるのだ。幸い、レース距離は通常の250kmよりもやや短い46周、215km。また、前回のもてぎ同様、燃料流量制限(燃リス)が絞られ、エンジンへ送る燃料が通常より10%削減されるため燃費は向上する。結果、フルタンクの状態で走り切ることは、物理的に可能となる。とはいえ、当然のことながらレースはエコな走りを競うものではなく、誰が一番先にゴールするか、がすべて。「速いけれど燃費もいい」という両立させるのが難しい条件をうまくバランスさせられるかが問われる。
また、ドライバーにはエンジニアが苦心して作り上げたクルマをドライブするにあたり、繊細なコントロールが要求される。無駄な攻めばかりしていては意味もない。燃費のコントロールをはじめとする巧みなテクニックが試される。加えて、攻防戦に役立つオーバーテイクシステムも今回ばかりは多用するのがはばかれるかもしれない。スイッチひとつでパワーアップ、追い抜きや防御になくてはならないシステムとはいえ都度燃料を多く使うことになるため、ただでさえ燃費が問われる戦いでは、どのタイミングでボタンを押せばいいのか、カシコイ使い方が求められる。
そして、車両の足下を支えるタイヤ。給油のピットインがなければ、タイヤも無交換のほうがピットインの作業すべてがなくなるため、大きな時短につながる。となれば、ドライバーはいつも以上にタイヤにやさしい走りを心がけなければならない。しかしながら、このサーキットはタイヤへの攻撃性が高いことで知られる難コース。最後までコンディションをうまくキープさせつつ、速く走るという最大のミッションがドライバーを待ち受けるというわけだ。
■そろそろタイトル争いの行方が見える頃
このような、極めて難しい条件がたくさん揃うなかで迎える今大会。そろそろシリーズチャンピオンの行方もよりハッキリしてくると思われる。ポテンシャルの高い今年のクルマをうまく手なずけ、上位に名前を連ねるのは、やはりチャンピオン経験のある外国人ドライバー。そしてつねに安定した強さを見せるドライバーという布陣になっている。
現時点でランキングトップはジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ。以下、中嶋一貴、ロイック・デュバルと、歴代チャンピオンがトップ3を占める。4番手に食い込むのは、石浦宏明。トップフォーミュラは3年ぶりだが、SF14との相性も良く、自信を見せている。続くランキング5位にはアンドレ・ロッテラー。大会屈指となる難しい一戦で高得点を獲得することこそが、今シーズンのタイトル争いに生き残るポイントになりそうだ。一方、前回のもてぎで反撃の狼煙をあげたHonda勢。前回の予選でルーキーの野尻智紀が見せた速さに加え、強さが伴ってくれば、Toyotaエンジンユーザーとの闘いにも勢いが増すというもの。
これまでとはひと味もふた味も異なる展開が待ち受けていそうなオートピリス戦。レースウィーク中、どのようなドラマが繰り広げられるのか、楽しみは尽きない。
■主なタイムスケジュール
・9月13日(土)
08:00 ゲートオープン
10:00~11:15 フリー走行
12:00~12:50 ピットウォーク
14:40~ 公式予選(ノックアウト方式)
14:40~15 : 00 Q1(19台→14台)
15:10~15 : 17 Q2(14台→ 8台)
15:27~15 : 34 Q3
15:55~16:30 キッズピットウォーク
・9月14日(日)
08:00 ゲートオープン
09:30~10:00 フリー走行
10:15~10 : 15 スタート練習
11:25~12:15 ピットウォーク
14:45~ 決勝 46Laps
記事:島村元子/ TEXT : Motoko SHIMAMURA