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R35 GT-Rは、開発コンセプトである「マルチパフォーマンス・スーパーカー」をかかげ、国産スポーツカーファンの期待に応える高性能と市街地走行時における快適性やオールラウンドで発揮するスタビリティを極限状態でバランスさせた究極マシンだ。標準車こそが完成形…。GT-Rの公式ホームページにおいても、同一コンセプトのまま、すべての性能を"均等"に引き上げることは容易ではない、との趣旨が明記されている。
発売からおおよそ1年が経過した2009年1月8日。R35 GT-Rの発表当初から、その存在が公に約束されていた大本命グレード「スペックV」の全貌が明らかになった。スペックVの進化論、それは正攻法で全性能を引き上げるのではなく、乗り心地や利便性といった快適装備の一部を"妥協"し、走りの性能に特化することを指す。レーシングライクなステージにおいて、マニアックかつ突出したセミ・サーキット性能を引き出すことを目標に開発された特別な1台なのだ。
実際、ハードサスの装備や2シーター化によるユーティリティの低下や快適性の悪化は避けられようにない。しかし、合計60kgに及ぶ軽量化やハイグリップタイヤ、さらに世界最高峰のブレーキシステムを身につけた恩恵は、あまりに大きい。路面から伝わる振動(インフォメーション)は正確無比。マシンをドライバーの支配下に置き、自由自在に操ることができる感覚は、まさに人車一体だ。サーキットやワインディングロードにおいて、歴代GT-R最強のドライグリップ性能を余すことなく発揮することができるのだ。
国産車としては比類希なコンセプトで仕立てられたスペックVは、公道最速のGT-Rを熱望する熱狂的なGT-Rファン、すなわち卓越したドライビングスキルを備え、車両価格1575万円という価値観に怯まない経済的に恵まれたユーザーにとっては「NISSANからの最高のプレゼント」になるに違いない。GT-Rの歴史に名を刻むであろう"名車候補"をリアルタイムで所有できる喜びは格別だ。
最先端の優れた技術とブランド・パーツを惜しみなく投入するなど、コストを度外視してまで最高性能に拘るスピリットは、もはやメーカー仕立てのチューニングカーの域を超え、レーシングカーに通じるエネルギーを感じる。そのストイックな性格から、1ヶ月間に生産できる台数はわずか30台。というわけで、超プレミアムな存在である「1575万円」の中身とポテンシャルを、次項においてGTNET流に検証する。
スペックVの専用装備で大きな注目を集める「ハイギヤード・ブースト」機能。ステアリングのボタン操作で、ブースト圧を一時的に高めることができる"秘密兵器"だ。
スペックVの専用装備で目を引くNCCB(カーボンセラミックブレーキ)は、鋳鉄ローターに比べ1輪あたり約5kgの軽量化を実現。バネ下重量の軽減に大きく寄与する。
車両価格1575万円 月産30台