
The Pikes Peak International Hill Climb/GTNET TOMEI BRZ
- 大会名称:The Pikes Peak International Hill Climb ( パイクスピーク )
- アメリカで2番目に古いモータースポーツレース、同国の独立記念日前後に行う「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称、PPIHC)」。究極の峠マシンがコロラドの空に向かうレースだ。
同国で人気のドリフトシリーズ、「フォーミュラ・ドリフト(通称フォーミュラD)」に2011年から出場していた吉岡稔記選手は日本の峠でスタンダードなマシン「S15シルビア」「ハチロク」に対して熱い情熱を持ち続けていたドライバー。
そんな吉岡選手にとって2013年は"老い木は曲がらぬ"、自身のチームを立ちあげてGTNETと東名パワードとタッグを組み誕生した「GTNET TOMEI BRZ」の引っさげての勝負の年となった。
このマシンのベースとなった「スバル BRZ/トヨタ 86」はルーツである「ハチロク」の峠などでのドライビングの楽しさを忠実に受け継いでいる。そのBRZの心臓部を東名パワード製EJ25改2.6Lエンジン(最高出力600馬力)に換装しモンスターマシンに変貌させた。
しかし、吉岡稔記選手の2013シーズンスタートは順風満帆とはいかなかった。サスペンションやエンジントラブルの解決・改良を進めながら上位レベルを争うことは困難なものであり、現在のシリーズランキングは3戦を終了して35位と低迷している。その為、ニュージャージー州で開催される第4戦をスキップしこのPPIHCにGTNET TOMEI BRZでチャレンジすすることを決意した。チームは2~3週間、ローカルサーキットでテストをこなしドリフト時に発生するオーバーヒート問題の原因を発見し改良を施した。吉岡稔記選手は昨年にもPPIHCにS15シルビアで挑戦しておりクラス3位の結果を残しているが、最優先課題は10分切りを達成することだ。
レースの舞台となるパイクスピークは標高2,862m地点をスタート地点とし、頂上4,301mまでの標高差1,439mを一気に駆け上がる。距離は19.99km、コーナーの数は156あり、当時コースの大部分は未舗装路だったが、2011年にトップセクションが完全な舗装路になり、2012年には全コースがアスファルトとなった。それによりレーススピードも年々上昇、マシンも1000馬力近いハイパワーマシンが登場し(ゴールの標高付近では地上の60%程度の空気密度しかないのでパワーダウンするのでハイパワー化、EV、LPGマシンが年々台数が増加してきた)、ワンミスで木に衝突によるクラッシュや崖から500m以上転落するリスクも増した。
レコードタイムは様々なモータースポーツカテゴリーで好成績を飾った実績を持つニュージーランド人ドライバー、リース・ミレンが2012年にヒュンダイ・ジェネシスクーペで記録した9分46秒164。
フォーミュラDの様に一対一のバトルであれば相手の動きをみてより自分に有利な状況するために戦略を練ったり、相手のラインをトレースしたりとあるが、パイクスピークは母なる大地、時間、そして自分との戦いとなる。その為、パイクスピークを征服するドライバーはほんの一握りでしかなかった。そんなパイクスピークを挑む時は最高の精神状態で尚且つ強い決意が必要となる。
このレースに挑むドライバー内でちょっとしたステータスとされているのが、4301mという標高を駆け上がる時にドライバーをサポートする酸素タンクを一切使用しないで走り切ることだ。レース前に彼に「スタートからゴールまで全てドリフトで走り切ってみたら?」と冗談交じりに尋ねたら、「タイヤの耐久性にもよるが、3分の1はドリフトで走るかな」と彼は答えた。決勝本番まで全てのドライバーはコースを3つのセクションに分割して走行、全てのセクションの通して走るのは本番のたた1本のみなのだ。しかし、まだ寒空の下の時期の早朝に様々な天候で練習走行を行なった。
吉岡稔記選手は入念に準備を行い、GTNET TOMEI BRZでパイクスピークに挑んだ結果、12分13秒でタイムアタッククラス5位、総合58位でゴールした。全体では9度の世界ラリー選手権(WRC)チャンピオンに輝いたセバスチャン・ローブ(プジョー208T16 Pikes Peak)が昨年のコースレコードを1分半も縮める8分13秒878という驚異的な記録を残し7分台が決して遠い未来の話ではない事を全エントラントを始め、パイクスピークファン達証明した。今回の彼の挑戦は決してこれで終わりではなく、彼とGTNET TOMEI BRZの秘めたる可能性を知っており、来たるべき年にフォーミュラD、そしてPPIHCで素晴らしい記録を残すと思っている。
- 日付: 2013年6月30日 アメリカ コロラド州 パイクスピークマウンテン