9月29日、宮城・スポーツランドSUGOにおいて全日本選手権スーパーフォーミュラ第6戦の決勝レースが86周に渡って行われ、ポールポジションからスタートを切ったロイック・デュバル(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)が激闘を制し、待望の今シーズン初優勝を果たした。また所属チームにとって10年ぶりの勝利となった。
レースウィーク中、申し分のない秋晴れの好天気に恵まれたSUGO。穏やかな日差し、爽やかな風が吹く絶好のレース日和になった。だが一方で決勝は、68周の戦いの中で4度もセーフティカーがコースインし、レースをコントロールするという波乱に満ちた展開となった。
スタートで気持ちわずかにスタートが鈍ったポールシッターのデュバル、なんとかトップをキープし、1コーナーに向ったが、イン側からスタートを切った山本尚貴(TEAM 無限)はそのあおりを喰い、行く手を拒まれる。さらに予選3番手スタートのアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)が山本のアウト側に並び、逆転を狙う。ロッテラーは左タイヤをダートに落としながらもクルマをコントロール。その勢いで1コーナーで山本を制し、2位を奪った。
迫力満点のオープニングラップを終えたが、レースは思わぬ方向へと進む。2周目、コースアウトの末に1台のクルマがスポンジバリアに突っ込み、車両回収のためにセーフティカーが導入される。SCランは7周終了まで続いたが、このインターバルで早くも2台のクルマがルーティンワークのピットインを行う。8周目にはレースが再開、だが、その直後に2台のクルマがストレート上で接触。1台がコースアウトし、1コーナーのスポンジバリアへと直進するアクシデントが発生した。これにより、またもSCランが! このタイミングになると、上位争いを含め、続々とクルマがピットイン。作業に取り掛かった。
一方、ピットインのタイミングをずらしたのが、小暮卓史(NAKAJIMA RACING)。今季は開幕戦で3位表彰台に上がっただけで、好成績を残せていない小暮は、ぜひ優勝を! とぐんぐん後続を引き離す好走を見せる。だが、その独走劇に水を挿したのが、3度目となるSCランだった。小暮はこのタイミングでピットイン。作業を終えてトップでレースに復帰できると自身は思っていたのだが、その目の前には伊沢拓也(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が!伊沢は1度目のSCランでルーティンワークを終えており、2台はすぐさま一触即発状態のバトルを演じはじめる。2番手小暮は、その背後にハイペースで近づいてくるデュバルの存在を感じ取っており、早いタイミングでトップを奪還したいと伊沢を猛プッシュ。だが開幕戦以来の優勝を目論む伊沢も譲れない。激しく競る2台は37周目の1コーナーで接触! 小暮が伊沢をはじき出すような形となり、伊沢は2コーナーのアウト側に飛び出し、そのままクルマがストップ。リタイヤを喫した。一方の小暮はペースを落とすことなく再び勝利への道をひた走ったのだが…。
その後、2台の接触に対し、小暮は10秒間のペナルティストップが科せられ、52周に失意のピットインを行った。これで小暮の手から優勝の可能性がこぼれ落ち、変わってトップに立ったのはデュバルだった。そしてその直後には、ロッテラー。時に際どいサイド・バイ・サイドの攻防戦を披露。文字通り“ギリギリ”のバトルが何周にもわたって続き、詰めかけたSUGOのレースファンを魅了した。
レースは最終盤、56周目に4度目のSCがコースイン。コース上のあちこちでトラブルやアクシデントが発生するという荒れた状況となり、64周終了までレースがコントロールされてしまう。そして迎えた残り4周のレースでは、リスタートからして激しい駆け引きが繰り広げられた。一旦加速したデュバルだったが、その直後にペースを落とし、真後ろにつけるロッテラーのアクセルワークを翻弄する。功を奏し、トップをキープしたデュバルだったが、ロッテラーも負けてはいない。最後の最後までチャンスを信じ、デュバルに詰め寄った。が、あと僅か及ばず。フィニッシュラインはイン側にデュバル、そのアウト側の後方にロッテラーという形で2台がチェッカードフラッグを受け、結局0.041秒という僅差でデュバルが逃げ切りに成功することとなった。
2位ロッテラーに続いたのは、山本。4度目のリスタートで、後方にいた国本雄資(Project μ/cerumo・INGING)の猛追に遭うもシャットアウトに成功。今季3度目の3位でレースを終えた。
最終戦は2レースで開催されるスーパーフォーミュラ。現時点でシリーズチャンピオン争いはロッテラーがトップに立ち、6点差でデュバルが2位につけている。だが、この2人は世界耐久選手権(WEC)参戦のため、欠場がほぼ確定している。ランキング3位には山本がつけるが、トップのロッテラーとは13点の差があるため、逆転チャンピオンを果たすには、鈴鹿での高得点獲得が必須。気の抜けない最終戦は、11月9-10日、三重・鈴鹿サーキットで開催される。
・第6戦SUGO 決勝結果(TOP6)
1.No.08 ロイック・デュバル(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)1:37’08.879
2.No.02 アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)+0.041
3.No.16 山本尚貴(TEAM 無限)+2.520
4.No.39 国本雄資(Project μ/cerumo・INGING)+4.640
5.No.20 松田次生(Lenovo TEAM IMPUL)+5.224
6.No.03 安田裕信(KONDO RACING)+9.103
記事・写真:島村元子/ TEXT&PHOTO : Motoko SHIMAMURA