SUPER FORMULA 2020 Round.4
SUPER FORMULA第4戦、野尻智紀がポール・トゥ・フィニッシュを達成!
午後に入り、さらに日差しに恵まれたオートポリス。午後2時40分からの決勝直前の気温は22度、路面温度は28度まで上昇。11月中旬とは思えないほどの暖かなコンディションの中、戦いの幕が上がった。先述のとおりフォーメーションラップ2周からのスタートを切り、41周の戦いを迎える中、予選5番手のNo.65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)がクラッチトラブルによりダミーグリッドから自力でスタートできず。フォーメーションラップ中に自身のポジションに復帰はしたが、これがのちにドライブスルーペナルティの対象となる。
クリアスタートが切られ、ポールの野尻がホールショットを決めてトップをキープ。一方、後続では山本がスタートで出遅れ5番手にドロップ、宮田も6番手から8番手へと順位を下げた。レースは5周目を迎える中、予選9番手スタートから追い上げを見せていたNo.4 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)がスローダウン。ホイールナットが緩み、左リアタイヤが外れるというハプニングに見舞われ、そのままコースアウト。戦線離脱となる。だが、その停車位置がコース上に近く、車両回収が必要という判断が下り、7周目からセーフティカー(SC)が導入される。幸い、素早い作業でレースは9周目終わりでリスタート。さらにルーティンのピット作業が可能となる10周目を終えると、早速2台がピットイン。タイヤ交換を済ませてコースに復帰した。続く11周目終わりにも2台がピットへ。うち1台のNo.39 坪井 翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は6.9秒という素早い作業でコースに復帰、だが、その直後の第1ヘアピンを走行中に左リアタイヤがパンク。グラベルへとクルマを止めてしまった。
このアクシデントを機に、多くの車両がルーティンのピットインを敢行。2度目のSCランの可能性が高いという判断からだ。まずトップの野尻がピットに滑り込んだが、作業に手間取ることに。なんとかひと足先に作業を終えてコースを周回していた牧野の前で復帰を果たすこととなった。牧野からの猛追に遭う野尻だったが、このタイミングで2度目のSCがコースイン。その直前には暫定トップを走る福住はじめ計8台がピットへとなだれ込んだ。この際、ピット作業の早さによってポジションを上げたのがNo.18 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)とNo. 3 山下健太(KONDO RACING)の2台。コース上ではピットインを見送った残り3台が先を走り、実質4位からがレース順位ではあったが、国本が3位、山下が4位へとポジションを果たし、逆に福住はピットでのタイヤ交換でトラブルが発生。これでタイムロスが生じてポジションを大きく下げてしまった。
レースは15周終わりでリスタート。上位3台はレース終盤までルーティンのピットインを先延ばしする戦略を選択してるため、事実上のトップは4番手を走る野尻だったが、この時点でトップを走る山本が怒涛の追い上げで最速タイムをマークし続け、見えない敵である野尻とのタイムギャップを縮めにかかった。ピット作業後もトップに立つために最低でも28秒の差が必要である山本は、周回ごとにタイムを広げにかかり31周目には26秒1まで差をつける。だが、野尻はタイヤを労りつつペースアップを強いられるというタフな状況に耐え、その後は再び山本との差を縮めていく。その後、2台の差がほぼ変わることがなくなり、山本は39周目を終えてピットイン。粘りに粘ったタイミング、かつピット作業も6.6秒という短いものではあったが、コース復帰を果たすとすでに野尻は先行。しかし、後続の牧野を5秒以上離した2番手で復帰に成功した。
セミファイナルラップでようやく名実ともにトップへと返り咲いた野尻。再びプッシュする山本とは最後までオーバーテイクシステムを多用して応戦する形ではあったが、そのままトップを死守。待望の今季初優勝、自身3勝目となる勝利を掴み取った。
また、2位山本に続いて3位フィニッシュとなった牧野にとっては、スーパーフォーミュラ初表彰台となる。一方、タイトル争いでは、No.20 平川 亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がランキングトップを堅持。No. 1 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)がこれに続き、今大会で勝利した野尻が3番手へと浮上している。今シーズンは有効ポイント制でのタイトル争いとなるため、残り2大会3レースでは、優勝そして上位入賞を目指す戦いがよりいっそう激しくなりそうだ。
【第4戦オートポリス 決勝結果 トップ3】
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1:07’11.228 41Laps
2.No.5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)+0.663
3.No.64 牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)+9.735
SUPER FORMULA第4戦、野尻智紀がポール
今シーズンの折返しを迎えた2020年全日本スーパーフォーミュラ選手権。一戦の舞台は九州大分にあるオートポリス。強い日差しが照りつけ、思いのほか暖かな天気に恵まれた中での予選、決勝はハプニングも多く、慌ただしい展開となった。11月15日、今シーズンを通して展開中のワンデーレースでは、気候的な天候も視野に入れ、予選や決勝での規則が一部改正される中で実施され、その中で予選ポールポジションを獲得したNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が決勝でも力走。昨年最終戦以来となる勝利を上げている
今大会でようやく参戦が叶ったのは、No.51 シャルル・ミレッシ(Buzz Racing with B-Max)。コロナ禍で来日に時間を要したが、昨年まで全日本F3選手権で戦っていただけに、初SFレースとはいえオートポリスでのレース経験値を活かしたパフォーマンスに期待がかかった。一方、同じチームで前回のSUGOでミレッシよりひと足先にSFデビューを果たしたセルジオ・セッテ・カマラは突然の欠場となり、急きょFIA F2に参戦していた松下信治がステアリングを握ることになった。セッテ・カマラは20−21年FIA フォーミュラEへの参戦が決まっており、そのテストに出走するために苦渋の決断をした模様だ。なお松下は先週のSUPER GTでもGT300クラスでも代役参戦済み。2週連続での”助っ人”仕事に勤しむこととなった。この他、No.12 タチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)は開幕戦以来の参戦を果たした他、WEC(世界耐久選手権)の最終戦に出場するためSF欠場となったNo.36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)とNo. 7 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)に代わり、それぞれ宮田莉朋と中山雄一が出走している。
ノックアウト予選は今大会から一部フォーマットが改正。これまでQ2、Q3の時間が7分間だったが3分増えて10分となった。これはコロナ禍でレースカレンダーが大幅にずれ込み、11〜12月の開催を強いられたことが背景にある。低気温、低路面温度の中でレーシングタイヤを使用することを考慮し、十分なパフォーマンスを引き出すために時間を延長することとなった。加えてレーススタートのフォーメーションラップも通常の1周から2周へと変更。これらの改正は今大会から適用されたが、12月に開催される鈴鹿2レース、最終戦の富士1レースにおいては、タイヤの加熱行為も認められるように。いわゆるタイヤウォーマーではなくジェットヒーター等を活用することでタイヤの発動を高めるのが狙いということだ。
そんな中で実施された予選は、A、B二組に分かれて出走したQ1ではともに赤旗中断という波乱含みに。結果、セッション終盤に提示された赤旗により、残り3分という僅かな時間でほぼ全車が再アタックを強いられるなどシビアな展開となった。Q1ではA、B組ともにDOCOMO TEAM DANDELION RACINGのNo.5 山本尚貴とNo.6 福住仁嶺が各組でトップタイムをマーク。続く、Q2ではスポット参戦の宮田が最速タイムをマーク。だが、最終アタックとなるQ3でトップタイムを叩き出したのは野尻。Q3へとターゲットを合わせ、2018年第3戦SUGO以来となる自身通算4度目のポールポジションを手にした。
【第4戦オートポリス 予選結果 トップ3】
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’24.140
2.No.6 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)1’24.155
3.No.5 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)1’24.257
SUPER FORMULA第4戦オートポリス プレビュー
特色あるコースで、真の実力を見せるのはどのドライバー?
シーズン中盤、折返しを迎えるこんしーずんの全日本スーパーフォーミュラ選手権。第4戦は11月15日、大分・オートポリスがその戦いの舞台となる。雄大に広がる阿蘇の外輪山に位置するサーキットは、アップダウンに富み、テクニカルなコースとして知られるだけに、また面白みのあるレース展開が期待できそうだ。
■ミレッシ、松下が初参戦
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、海外を拠点とするドライバーの来日に規制がかかり、なかなか参戦が実現しなかったドライバーが多く見られた今シーズンのSUPER FORMULA。前回第3戦のSUGOでは、ようやく来日&参戦が叶ったBuzz Racing with B-Maxのセルジオ・セッテ・カマラ。初のSF19、SUGOにも関わらず、ワンデーレースの予選アタックで、なんと最速タイムをマーク。ポールポジションを手中に収め、チーム関係者やライバルはもとよりレースファンを驚愕するパフォーマンスを披露したのは記憶に新しい。残念ながら決勝ではタイヤ交換後にコースオフを喫してしまったが、そのインパクトある走りは実力の高さを証明しただけでなく、今後のドライバーとしての成長がいっそう楽しみに思えるものだった。
そのセッテ・カマラだが、残念ながら今大会への出走は見送られることに。というのも、彼自身2020−21シーズンのフォーミュラeへの参戦が決定しており、そのテストや準備等で日本との往来が厳しい状況となっており、苦渋の選択を迫られたようだ。欧州のサーキットでの経験豊富なドライバーが好むオーポリスでは、前回を上回る走りに期待がかかっていただけに惜しい結果となったが、代わってステアリングを握るドライバーにも注目して欲しい。なんと、松下信治がその代役を務めることとなったからだ。
自身、SUPER FORMULAへの参戦は2018年以来。この時はフル参戦したが、翌年再び渡欧。FIA F2に参戦し、F1への道を探ったのはレースファンなら知るところ。今シーズンも同選手権で1勝を上げたがレース継続が難しい立場となり、断腸の思いで帰国。折しも、先週、ツインリンクもてぎで開催されたSUPER GTにも負傷した選手に代わってGT300クラスデビューを果たしたところ。連続で代役参戦することとなったが、彼本来はツーリングカーよりもフォーミュラで育っているだけに、今大会の様子は高い関心を向けられるに違いない。ただ、2018年時とはクルマもタイヤも異なるものとなっているだけに、短時間でどこまでモノにできるかも気になるところ。いずれにせよ、国内に留まらず海外からの注目されるこのカテゴリーだけに、一気に躍進すれば再び海外でのレース参戦に繋がるチャンスもある。何より発奮しているのは松下自身かもしれない。
一方、レギュラードライバーとして早々にシートを得ていたにも関わらず、ようやく戦いの場に姿を現すことになったのが、シャルル・ミレッシ。すでに全日本F3選手権でのキャリアを持つためサーキットは熟知しているが、SF19でのドライブは初。その適応能力が試されることだろう。
この他、開幕戦以来の出走を果たすのが、ThreeBond Drago CORSE SF19のタチアナ・カルデロン。開幕戦ではややSF19に手こずっていた感じも見受けられたが、決勝になるとチャンピオン経験のある山本尚貴をしっかりとブロック。その度胸の良さ、レースセンスが評価されたのではないだろうか。
■WEC参戦組は欠場へ
今回、世界耐久選手権(WEC)との重複で参戦できないのが、小林可夢偉と中嶋一貴のふたり。WECもコロナ禍でレースカレンダーの変更を余儀なくされており、残念ながらオートポリスでの走りは見られない。一方、今年からWECシリーズ参戦を始めた山下健太は、所属チームが出場しないことからWEC参戦がなくなり、結果としてSUPER FORMULAへの出場が可能となった。現在、タイトル争いの渦中にいる当人としては、日本のレースに集中できたのが幸いだったと言える。だが、小林と中嶋は逆にWECでのタイトルがかかっており、WECを優先することとなった。
それぞれの代役はこれまで同様、中山雄一と宮田莉朋が務める。中嶋の代役、宮田は第2戦岡山で予選2位を獲得。だが、決勝ではスタートで出遅れて9位チェッカーとなっただけに、今大会ではきっちりとそのリベンジを果たしたいところだろう。とはいえ、自身のメインレースであるスーパーフォーミュラライツとダブルヘッダーだけに、タフな戦いにもなりそうだ。
開幕戦から継続して有観客での開催を続けるSUPER FORMULA。今大会では土曜、日曜に「ピットビュー」と名付けたイベントを初めて実施する。十分にソーシャルディスタンスを確保した上で、ファンサービスを行うという。参加できるのは、プレミアムチケット購入者およびピットビューチケット購入者に限られ、各日最大840名(A、Bの二組に分け、各420名に限定)が、マスクさらにフェイスガードを装着してピットを観覧するとしている。”ニューノーマル”でのレース観戦スタイルを心待ちにしているファンもいることだろう。
レースは、オートポリスならではのドラマを繰り広げる可能性も高く、今大会もこれまで同様、思わぬ結果が待ち受けているやもしれない。有効ポイント制ながら、タイトル争いも含め、その展開が気になるところだ。
■主なタイムスケジュール
・11月14日(土)
10:05 – 11:05 専有走行
14:45 – 15:45 フリー走行
・11月15日(日)
10:15 – 公式予選(ノックアウト方式)
10:15 – 10:25 Q1(A組→上位7台)
10:35 – 10:45 Q1(B組→上位7台)
10:55 – 11:02 Q2(A+B上位7台・計14台→ 8台)
11:12 − 11:19 Q3
14:00 – 14:40 スタート進行
14:40 – 決勝(42Laps)