SUPER FORMULA 2024 Round.4
SF第4戦、第1回瑶子女王杯の賜杯は坪井の手に!
7月21日、静岡・富士スピードウェイにおいて「第1回瑶子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦」の決勝レースが行われた。午後3時に号砲となった41周の戦いは、ピット戦略も味方に速さを遺憾なく発揮したNo.36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が予選4番手から逆転勝利を達成。今シーズン初、そして4年ぶりの優勝を果たし、瑶子女王からトロフィーを下賜された。
梅雨明け直後の一戦となった富士戦。夏休みの最中ということもあり、多くの家族連れがサーキットを訪れ予選、決勝の両日で4万9200人のファンが戦いの行方を見守った。
午前9時20分に行われた30分間のフリー走行でトップタイムをマークした坪井。今回は、妻である斎藤愛未が予選日に開催されたサポートレースで優勝。その効果があったかどうかは定かではないが、予選は4番手に留まったものの、決勝日のフリー走行でしっかりと速さある走りを見せ、存在感をアピールしていた。
決勝レースを前にしたセレモニーでは、直々に瑶子女王(写真:左/右:スーパーフォーミュラアンバサダーの日向坂46 富田鈴花さん)からドライバーそして観客のファンに向けてのお言葉があり、いつも以上に緊張感が漂ったコース上。午後3時、気温は32度、路面温度は45度というコンディションのなか、41周のバトルを迎えることとなったが、その直前、5番手でダミーグリッドにクルマをつけていたNo.6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELIION RACING)のクルマが突然ピットへと押し戻される。チームによると発電系のトラブルということだったが、残念ながらその後もクルマがピットを離れることはなかった。
シグナルがオールブラックとなり、ポールスタートの福住が好スタートを切ってトップで1コーナーへと飛び込んでいく。だが、もう一人のフロントロウにいたNo.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)は大きく出遅れ、後続の集団に飲み込まれてしまう。これに代わって2番手に浮上したのは、予選3番手のNo.39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)。さらに予選6番手のNo.5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELIION RACING)、そして出走できなかった太田の空いたグリッドを最大限活用したNo16 野尻智紀(TEAM MUGEN)が続き、逆に予選4番手だった坪井は5番手にポジションを落としていた。だが、タイヤに熱が入るとペース的にライバルを上回る坪井が前の野尻を追い詰め、4周目の1コーナー飛び込みで逆転。同じシチュエーションで7周目には牧野をパスして3番手までポジションを引き上げる。
レースは10周を過ぎてタイヤ交換のピット作業が可能になると、上位陣からは5番手の野尻が真っ先にピットへと舞い戻る。「リスク承知で真っ先にピットインすることを決めていた」と決勝後に語った野尻はこれを好機としてその後もペースよく走行。一方、野尻を警戒していた牧野はその翌周にピットへ戻ったが、その後の2台は野尻が先行する形で周回を重ねることとなった。
トップの福住はペースよく周回し、2番手との差を3秒近く築いていく。その2番手は大湯と坪井がバトルを展開したが、12周目には坪井が先行する。3番手に順位を落とした大湯はその直後にルーティンのピットイン、コース復帰後には野尻に先行を許したが、17周目の1コーナーでポジション挽回に成功した。そしてトップ福住が満を持して14周終わりでピットへ。チームとして初めてのポールスタートとなる一戦だったが、左のフロントタイヤ交換に時間を要することとなり、コース復帰を果たすタイミングで野尻、大湯、牧野だけでなく、さらに後続の2台にも先行されてしまう。
レースは折り返しを前に6台がまだピットイン未消化の状態。そのなかで優勝争いに絡む坪井は28周終了時にピットへ。スムーズに作業を終えてコースに復帰を果たすと、背後にはポジション挽回を狙ってハイペースで疾走する福住が。だが、坪井は福住の激しいプッシュに耐え切り、4番手を死守。その後は確実、着実にライバルを仕留めるという圧巻の”オーバーテイクショー”を披露。メインストレートでスリップについて1コーナーで逆転、という鮮やかなパフォーマンスで2位まで浮上すると、32周目からは暫定トップである大湯との一騎打ちに。
メインストレートでアウト側から大湯を攻める坪井。サイド・バイ・サイドになるなか、大湯も応戦してポジションをキープする。だが、続く2コーナーではアウト側にラインをとって、鮮やかに逆転! しっかり抜ききって33周目にはピットイン終了ドライバーのなかでトップを掴み取った。
39周を終えて、岩佐がピットイン。これで晴れてトップに立った坪井はその後もペースを緩めることなく、後続をぐんぐん引き離す。そして41周を力強く走りきり、トップチェッカー! 2位に7秒強の大差をつけての勝利となった。坪井にとってはチーム移籍後初の優勝。また、2020年第3戦富士以来の通算3勝目となる。ウイニングランを終え、パルクフェルメに戻ると、感情を整えてから雄叫びをあげた坪井。4年ぶりの優勝を噛み締めることとなった。
2位に続いたのは大湯。そして野尻が3位に入り、依然としてシリーズランキングで暫定トップをキープすることとなった。なお、ピット作業で惜しくもポジションを落とした福住だったが、その後は闘志あふれる走りを見せて表彰台には届かなかったものの、4位で戦いを終えている。
次回の第5戦は栃木・モビリティリゾートもてぎが舞台。まだまだ暑さ厳しいなか、夏休み最後の週末、8月24、25日に開催される。その後、1ヶ月超のインターバルとなるだけに一層白熱の戦いが繰り広げられそうだ。
第4戦富士・決勝結果 トップ3
1.No.36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)41周 59’40.841
2.No.39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)+7.162
3.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)+10.832
SF第4戦富士、福住が自身2回目のPPを手にする
7月20日、静岡・富士スピードウェイにおいて、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦の予選が開催された。薄曇りのなかで行われたノックアウト予選では、午前のフリー走行から快走を見せていたNo.8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)がQ2でもその勢いをキープ。そのままポールポジションを掴んでいる。
第1回瑶子女王杯として開催される今回のイベント。夏休みに入ったばかりということもあり、富士スピードウェイは、多くの家族連れで賑わいを見せた。一方、富士ではこの大会を前に公式テストが行われており、シーズン中盤戦へと向かうなか、テストで得たデータをふんだんに活用して一矢報いる戦いをしたいとどのドライバーも願っており、朝のフリー走行から緊張感ある走りが見られた。
まず、午前9時20分から1時間30分にわたって行われたフリー走行では、第2戦オートポリスでSF初優勝を達成しているNo.5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELIION RACING)がトップタイムをマーク。これにNo.39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、さらには福住が続いた。一方、第3戦終了時点でポイントランキングトップのNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)は14番手に留まった。なお、ドライバーのラインナップだが、今回も前回のSUGOに続き、平良響が19号車ITOCHU ENEX TEAM IMPULをドライブ。また、これまで松下信治がステアリングを握っていた55号車 TGM Grand Prixは、大津弘樹が出走することとなった。
予選は、午後2時にスタート。気温32度、路面温度48度、薄曇りの空の下、まずQ1・A組に10台がアタックに挑んだ。この組でトップタイムを刻んだのは、No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)。好調の牧野が2番手に。だが、トップ岩佐とは0.315秒という大差がついた。3番手には前回のSUGOの決勝直前のウォームアップ走行中にクラッシュしたNo.64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)が続いた。一方、平良、大津のふたりは残念ながら、Q2への進出は叶わなかった。
続くQ1・B組には11台が出走。まず、セクタータイムで全体ベストを刻んだ福住より先にアタックラップを済ませた大湯がトップタイムでチェッカーを受けたが、そのあとに続いた福住がトップを奪取。以後、続々と各車がアタックを終えたが、福住のタイムを上回れず。結果、B組は福住をトップに、0.115秒差で大湯が続き、3番手には公式テストで総合トップタイムをマークしていたNo.3 山下健太(KONDO RACING)がつけた。
各組のQ1を突破し、ポールポジションを競うQ2には12台が出走。Q1からほぼ天候の変化はなく、うち6台がスタートと同時にコースに向かい、アウトラップだけを終えて一旦ピットインを行った。一方、残る6台は、先にコースインした各車がピットへと戻るタイミングを待つようにしてコースへ。ただ、VANTELIN TEAM TOM’Sの2台、36号車の坪井翔と37号車の笹原右京だけはタイミングをずらしてコースインするという選択を行なった。
チェッカーまで残り1分半のタイミングで各車がアタックラップに入ると、まず坪井がチェッカーを受けながら全体トップとなる1分22秒573をマーク。だが、その直後にチェッカーを受けた岩佐が僅か0.011秒差でこれを上回り、トップへ。次いでフィニッシュラインを切ったのは野尻。だが、タイムを伸ばすことはできず、最終的には7番手に甘んじる結果となった。また、同様に牧野も6番手の結果に終わっている。
そんななか、チェッカーを受けた福住は1分22秒543をマーク! 岩佐を0.017秒押さえてトップに立ち、ポールポジションを掴み取った。今シーズン、ホンダ陣営からトヨタ陣営へと移籍した福住。ポールポジションは2021年第2戦鈴鹿以来、自身2度目となる。一方、所属チームのKCMGにとっては、チーム初のポールポジションとなった。
すでに梅雨明けとなった東海地方。21日の決勝レースは午後3時に号砲。41周での争いとなる。
第4戦富士・予選結果 トップ3
1.No.8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)1’22.543
2.No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)1’22.560
3.No.39 大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)1’22.571
SUPER FORMULA第4戦富士スピードウェイ レースプレビュー
真夏の富士戦、勝利は誰の手に!?
前回の戦いからおよそ1ヶ月。シリーズの折り返しが近づく今シーズンのSUPER FORMULAの第4戦が、静岡・富士スピードウェイで開催される。レース開催2週間前には同地で公式テストが実施され、各チーム、ドライバーが精力的に走り込み多くのデータを入手。近づく決戦に向けて、粛々と準備を進めている真っ最中だ。
・目前の富士、そして後半戦を見据えて
3月上旬に今シーズンの戦いが幕を開けたSUPER FORMULA。今大会を含め、残るイベントは4つ。うち、終盤2つは1大会2戦のダブルヘッダーであり、レース数は6つとなる。また、富士での戦いが3つと半分を占める形だ。それゆえ、7月上旬に2日間に渡って行われた公式テストは、この先のシーズンを見据えた貴重かつ重要なものであったことがよくわかる。
なにしろ、ノックアウト形式で実施される予選はコンマ1秒に留まらない僅差の争い。Q1からQ2はもちろんのこと、Q2での最終グリッド争いにおいても、この”ほんの僅かな差”がレースでの明暗に大きな影響を与えるのは言うまでもない。確実に着実にライバルより前のポジションからスタートを切らねば、求める結果をしっかりと手にすることができない……それが今のSUPER FORMULAの難しさであり、観る者からすると最大の魅力となっているのは明らかだ。
一方、近年はサーキットでのテストが極めて限定され、基本的にシーズン開幕前のテストを除くと、シーズン中は一度しか公式テストは実施されない。余談だが、前回、第3戦のSUGO戦はシーズン初のウエットレース。だが、ドライバー誰一人としてそのウエットタイヤでのレースをしたことがなく、難しい天候のなかでレースを続けることはかなり緊張を強いられる状況であったことも事実。それを考えると、富士での公式テストは待ちわびたテストであり、誰しもが1分1秒たりとも無駄にしたくないセッションだったに違いない。
各チーム、エンジニアとドライバーはこれまでのレースデータ、結果をもとに、念入りに準備したプランにそってあれこれとトライ・アンド・エラーを重ねながらこの先の戦いに向けて、”なにか”を収穫したはず。その答え合わせとなるのが、今回の富士戦になる訳だ。なお、テストで好調さをしっかりとアピールできたのは、第2戦オートポリスで今季待望の自身初勝利を果たした牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。さらに、開幕戦で久々の表彰台に立った山下健太(KONDO RACING)も然り。山下はシーズンを通しての安定感に欠けるところがあり、流れを構築するのがこれまでも難しかっただけに、このテストで総合トップタイムをマークしたことを好機として、シーズン後半戦でしっかりと上昇気流を維持していきたいところあろう。
一方、チャンピオン経験者かつ現時点でのポイントリーダーである野尻智紀(TEAM MUGEN)はどうか。2日間の総合結果から見る限り、テスト中に一発の速さをアピールするようなパフォーマンスは見られず。総合タイムでは8番手に留まった。”悩み多き”実力派だけに、本番に向けて、きちんと”帳尻”を合わしてくることも十分に考えられるが、大勢いるライバルとの戦いに向け、どのような手を打ってくるのか、それも楽しみのひとつとしたい。
・ドライバー変更は2チーム
富士戦に向けて、2チーム、2戦手に変更が見られる。まず、前回のSUGO戦でトップフォーミュラへのデビューを果たした平良響が改めて今大会でも出走することになった。引き続き、名門、ITOCHU ENEX TEAM IMPULから参戦する。SUGOの決勝では、あいにくの天候で思うような走りができず。だが、引き続き第4戦富士への出場が決まったことで、事前のテストにも参加。この継続起用によって、”引き出し”の中身が一気に増えたのは間違いない。これにより、走り慣れた富士では近い将来に向けてのビッグチャンスをしかと活かしたいと平良自身が一番望んでいることだろう。
加えて、TGM Grand Prixが松下信治に替わって大津弘樹を起用すると発表。もともと外国人ドライバーでの参戦を見据えていた同チームだったが、これが叶わず松下がステアリングを握っていたという経緯がある。しかし、この先のチーム運営、体制を考慮し、新たに大津を迎え入れることになったとのこと。これまでも助っ人ドライバーとして参戦する機会が多かった大津だが、チームメイトとなるJujuとともに、新チームでの躍進を見せてもらいたい。
・『瑶子女王杯』となる第4戦
なお、シーズン初の舞台となる富士スピードウェイだが、第4戦は、『瑶子女王杯』として開催されることが日本レースプロモーションから発表されている。三笠宮家の瑶子女王殿下の賜杯をいただき、『第1回瑶子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦富士大会』として開催されるという。もちろん、日本最高峰フォーミュラレースとしては初となる。一方、これまでも瑶子女王殿下におかれては、東京モーターショー、そして昨年初開催されたジャパンモビリティーショーの総裁を務められたことでも知られており、自動車産業の発展、普及に大変ご尽力されてきた皇族のおひとりでもある。これまで、鈴鹿サーキットで開催されているF1日本GPへお成りになってはいるが、今大会では、予選、決勝両日においてお成りになられ、公式記者会見やスタートセレモニーへご臨席される予定だという。果たして、どのドライバーが瑶子女王殿下から賜杯を下賜されるのか、これも大きな話題となることだろう。
夏休みのなかで開催される今大会。縁日や屋台も用意されており、サーキットではさまざまなイベントも。楽しみな一戦となりそうだ。
主なタイムスケジュール
7月20日(土)
09:20 – 10:50 フリー走行1回目
11:55 – 12:45 ピットウォーク
14:00 – 14:10 予選Q1・A組
14:15 – 14:25 予選Q1・B組
14:35 – 14:42 予選Q2
6月23日(日)
09:20 - 09:50 フリー走行2回目
11:35 – 12:15 ピットウォーク
14:00 – 15:00 スタート進行
15:00 – 決勝レース 51周/最大75分