SUPER FORMULA 2024 Round.9
JAF鈴鹿グランプリ、太田が逆転勝利で鈴鹿2連勝
11月10日、三重・鈴鹿サーキットで2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権第9戦が開催された。前日に続き、午前に予選を行ない、午後から決勝というワンデーレースフォーマットでの戦いでは、予選2番手スタートのNo. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がスタート直後に逆転を見せ、その勢いのまま優勝を遂げている。
第9戦 決勝
ついにラストレースを迎える鈴鹿。前日と異なり薄曇りの天候となるも穏やかな天気のなかでまずは午前の予選を迎えた。Q1はA組、B組ともにQ2の進出を果たした選手の顔ぶれは大半変わらず。とはいえ、一番の違いはNo.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)がQ2進出を果たしたこと。前日の第8戦では、セッション中の赤旗中断からの再開で他車との位置取りの関係でタイヤのウォームアップのタイミングを逸し、ベストラップを刻めず、総合14位と沈んだ。決勝では怒涛の追い上げを見せ、観客を沸かせるパフォーマンスを披露したが、結果は5位。この結果によって、タイトル獲得の権利を喪失した。最終戦は「JA鈴鹿グランプリ」のタイトルがかかった栄えある一戦だけに、強い思いをもって挑んだに違いない。Q1・B組を3番手で通過すると、Q2では各セクタータイムでベストラップを刻むアタックを披露。ライバルより早めのアタックで1分36秒542のタイムを叩き出し、トップへ。そのあとからNo.36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)がチェッカーを受けるも、2番手に。すると、前日にシーズン初優勝を果たした太田が野尻と坪井の間に割って入るタイムをマークする。一方、大逆転をかけて臨むNo. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、Q1・A組を2番手で通過したものの、肝心のQ2でタイムを伸ばせず。ポイント加点のあるトップ3どころか、10番手に甘んじる結果に終わった。
なお、タイトル争いだが、坪井が予選3番手に留まったことで牧野にもまだかろうじてチャンスは残ることに。仮に2番手となれば、この時点で坪井のタイトルが確定しただけに、まさに牧野は”首の皮一枚”状態で最終決戦に臨むことになった。
第9戦鈴鹿 予選トップ3
1.No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’36.542
2.No. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)1’36.797
3.No.36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)1’36.844
第9戦 決勝
予選終了から、およそ4時間半の時間を経て迎えた最終決戦第9戦。日差しは顔を出さずとも、気温20度、路面温度25度というコンディション下で31周のシーズンラストレースが幕を開ける。
ポールポジションの野尻を上回るスタートを決めたのが、隣の太田。1コーナーのホールショットを奪取するとその勢いのまま、後続を引き離しにかかる。逆に野尻はその太田についていけず、さらには、背後に迫った坪井に対して2周目の1コーナーの飛び込みで大外刈りを許してしまう。これで3位へと後退した野尻だったが、今度は同じ周のシケインでNo.8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)にも先行され、4位で周回を重ねることになった。
逃げるトップの太田に対し、2番手の坪井は思うように差を詰めることができず、逆にうしろの福住との攻防戦を気にかけなければならない状態。また、野尻はさらに6周目の1コーナー飛び込みでNo.65 佐藤 蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)に逆転され、5番手へとポジションを落とした。
着々と独走態勢を構築する太田。これに対し、状況を変えるためにフォーカスされたのがルーティンのピット作業だったが、まず、真っ先に動いたのが福住。これに野尻をはじめ、全8台がピットへ。そのなかで今回がスーパーフォーミュラのラストレースとなるNo.64 山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)がピット作業で逆転に成功。コース上で攻め立てていたNo.38 阪口晴南 (VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)の前に出た。一方、2位以上を目指す坪井、さらにポジションアップが必須の牧野ら7台が翌周にピットへ。この2周で15台が早くもピット作業を終えたが、この状況をしかと見届けるような形でトップの太田がピットへ。大きなリードをもって作業を済ませると、問題なく事実上トップをキープしたままコースへと復帰を果たした。
だが、その背後にはピット作業を済ませてタイヤが発熱した状態の坪井の姿が。気迫ある力走で13周目のヘアピンでは一触即発状態の攻防戦となり、その勢いでバックストレートさらには130R、シケイン⋯⋯と激しいバトルとなったが、太田はしっかり坪井をシャットアウト。メインストレートではクルマを左右に振りつつ、文句なしにトップで1コーナーへと飛び込んでいった。
まだピット作業を済ませていない最後の1台_No.15 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)がピットインしたのは、21周終了時。チームタイトルで競うDOCOMO TEAM DANDELION RACINGを逆転するためにも、できうる限り上位でのチェッカーが必要とあって、最後まで攻撃の手を緩めることなく、攻めの走りを見せた。
レースは終盤へと向かうなか、太田は再び2位以下との差を広げにかかる。これに対し、2位を走る坪井は3位福住との差や、タイトル争いのライバルである牧野のポジションや得点差を考慮してか、ポジションキープの走りに。結果、オープニングラップで見事なホールショットを掴み、独走の戦いをしてみせた太田がそのままトップでチェッカー。最終大会2連勝による大量得点を果たし、ランキングでも富士大会終わりで8番手だったポジションを4番手まで引き上げる躍進を見せた。
そして、シリーズチャンピオンに輝いたのは、2位チェッカーの坪井。富士でマークした3勝をアドバンテージに、手堅く着実な結果を残して自身初となるトップフォーミュラの王座に就くこととなった。一方、野尻は4位でフィニッシュ。最終獲得ポイントにより、シリーズランキングでは牧野を逆転して2位の座を掴み取っている。
第9戦鈴鹿 決勝トップ3
1.No. 6 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)53:45’819 31周
2.No.36 坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)+5.460
3.No. 8 福住仁嶺(Kids com Team KCMG)+6.691
SUPER FORMULA 第8&9戦鈴鹿サーキットプレビュー
前戦に続く2連戦は王座決定戦に!
前回の戦いからおよそ1ヶ月。ついにシーズン最後の決戦が近づく全日本スーパーフォーミュラ選手権。今回もレースウィーク中に2レースを行なう短期決戦で実施される。一気に秋めくなか、鈴鹿サーキットでは果たしてどのような攻防戦を繰り広げるのか。”勝つしかない”バトルをしかと見守ってほしい。
チャンピオン争いは3選手に絞られる
タイトル決定が刻一刻と迫る今シーズンのSUPER FORMULA。各ドライバーが過ごした今シーズンの集大成を発揮する場でもある最終大会は、2024年のシリーズチャンピオンが確定するレースでもある。前回の第7戦を終えて、チャンピオン獲得の権利を持つのはランキングトップ3の坪井 翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、No. 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)そして、No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN)の3選手となる。ただ、坪井は前回の富士大会で2連勝し、シーズン合計3勝を挙げている。牧野、野尻のふたりも2勝をマークしているが、坪井と2位牧野との点差は14.5点と正直小さくはない。3選手はほぼ全レースでポイントを獲得してはいるが、これまでのレース結果の”積み重ね”、そして2勝目と3勝目の差が決定打となって、ランキングに反映しているといえるだろう。
3選手のうち、チャンピオン経験者は野尻のみ。かつて海外からの若手選手と厳しいタイトル争いを展開するなかで2連覇を遂げている。ヒリヒリするようなプレッシャーを跳ね除ける勝負強さを都度見せてきた。今シーズンは、トップ坪井と16.5点差でランキング3位からの逆転劇を狙うことになるが、ある意味、”失うものは何一つない”状態で戦いに臨めるぶん、誰よりも平常心で鈴鹿の戦いを迎えているかもしれない。一方、追う側の牧野。今年、第2戦オートポリスで涙の初優勝を遂げ、以来、予選、そして決勝で速さを見せている。あと一歩安定感が増せば、鈴鹿でも強さを披露できることだろう。そして、一番タイトルに近い場所でレースを迎えるのは、坪井。1週間前のSUPER GT第8戦もてぎでは、ランキングトップかつサクセスウェイトと1リスダウンという条件のなか、圧倒的な速さで勝利。その勢いと”運の良さ”を鈴鹿に持ち込んでくるのは言うまでもない。先の富士で2連勝したものの、今年の開幕戦となった鈴鹿では、トップ3入りどころか、予選10位から決勝11位でノーポイントに終わっているだけに、そのリベンジを兼ねたパフォーマンスを! と本人も思うところのでは。牧野、野尻を相手に決して守りの戦いにはならないはずだ。
最終大会も2レース開催
前回の富士に続き、鈴鹿も土曜と日曜それぞれに予選と決勝を実施するワンデーレースの戦いとなる。朝の予選でクルマをセットアップし、午後の決勝に向けて調整を加え、しっかりと走り切ることの難しさは前回経験済み。季節が進み、気温や路面温度が下がり、タイヤのウォームアップ等のマネージメントも問われるだろうが、そこはチームの総合力でしっかりとカバーし、戦いたい。
トップ3選手のチャンピオン争いに限らず、今シーズンのベストリザルトを目指す他の選手の奮闘にも注目したい。なかでも、レース開催1週間を切って明らかにされた、山本尚貴選手のSF引退宣言。現在、ランキング7番手につけるベテランは、ラスト2レースでは熱い走りをすることで、表彰台を虎視眈々と狙っているはず。開幕戦鈴鹿で見せた涙の3位表彰台を超える結果にも期待が集まる。
イベントも盛り沢山
最終戦となる第9戦は、「第23回JAFグランプリ」タイトルがかかった一戦に。シーズンエンドの戦いとなるだけに、誰もが渾身の走りを披露してくれるだろうが、その一方で、サーキットで行なわれるイベントもかなりの充実ぶりだ。
目玉といえるのは、「A2RL(Abu Dhabi Autonomous Racing League)」のデモンストレーションレース。この「A2RL」は、SUPER FORMULAでも採用するダラーラ社製のシャシー「SF23」と、横浜ゴム製のカーボンニュートラルタイヤという同じツールを使用した世界最高峰の自律走行レースだが、この車両が鈴鹿サーキットでのデモランを行なう。レースウィーク中は、2台の「AI対 AI」の自律走行はじめ、「AI対HUMAN」のセッションも予定されている。なお、”HUMAN”のドライバーを務めるのは、元F1ドライバーのダニール・クビアト選手。それだけでも大きな話題を集めている。
さらに、最終戦の決勝直前、スタートセレモニーでは、EXILEのTAKAHIRO氏が国歌独唱を務める。緊張感高まるなか、サーキットに響き渡る歌声に耳を傾けてほしい。
このほか、シーズンエンドセレモニーとして、表彰式終了後には全選手が表彰台に登場。JRP近藤真彦会長はじめシリーズチャンピオンに輝いた選手による挨拶なども行なわれる。現地観戦の場合、このセレモニーを間近で見ることも可能だという。充実のレースウィークになりそうだ。
主なタイムスケジュール
11月8日(金)
14:25-15:55 フリー走行
11月9日(土)
09:05 – 09:15 第8戦 予選Q1・A組
09:20 – 09:30 第8戦 予選Q1・B組
09:40 – 09:47 予選Q2
10:55 – 11:40 ピットウォーク
14:30 – 第8戦 決勝レース 31周/最大75分
11月10日(日)
09:15 – 09:25 第9戦 予選Q1・A組
09:30 – 09:40 第9戦 予選Q1・B組
09:50 – 09:57 予選Q2
11:05 – 11:50 ピットウォーク
14:30 – 第9戦 決勝レース 31周/最大75分