SUPER GT 2020 Round.5
SUPER GT第5戦、観客の声援を受けDENSO KOBELCO SARD GR Supraが初勝利!
前日に続き、薄曇りとなった富士スピードウェイ。観客を迎えての第5戦の戦いは、混乱をうまく味方につけたNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一組)が予選5位から戦略を活かしきり、32周目にトップに立つと後続とのマージンを構築。盤石の戦いを披露してシーズン初勝利を収めている。
朝早くから今シーズン初のライブ観戦を堪能しようとファンが訪れる中、連日エアレース・パイロットの室屋義秀選手によるフライトパフォーマンスも行われるなど賑わいを少しずつ取り戻しての一戦となった。
気温21度、路面温度29度のコンディションの中で号砲となった66周の戦い。レースはオープニングラップから荒れ模様の展開となる。まず、ポールポジションのNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)に予選2番手のNo.12 カルソニックIMPUL GT-R(佐々木大樹/平峰一貴組)が襲いかかるも、12号車が逆に2コーナーで止まりきれずラインを崩して、ポジションダウン。代わって予選4番手のNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/ヤン・マーデンボロー組)が8号車を猛追。ダンロップコーナーで逆転を果たすとトップに立った。一方、その後方ではNo.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/笹原右京組)が1コーナー先でスピン、そこに後方のNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/千代勝正組)が追突し、2コーナー先でボンネットが飛ぶアクシデントとなる。結果、レースは2周目の時点でセーフティカーがコースイン。5周目に再開となった。
レースはその後も激しいポジション争いが繰り広げられた。まずトップ争いは24号車を先頭に、8号車、さらに12号車、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)と続く。だが、13周目に8号車が再びトップを奪還。24号車は12号車に追い立てられたが、その12号車はSC中の追い越しがペナルティとして問われ、のちにドライビングスルーペナルティを課せられ上位争いから脱落することになった。結果、逃げる8号車に続くのは、24号車、一方、23号車を逆転して3番手に浮上したのが39号車だった。
レース3分の1が過ぎると、ルーティンのピットインが始まる。25周目、上位陣でまず最初に動いたのが24号車。さらに23号車、No.14 WAKO’S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井 翔組)らが次々に戻ってくる。翌周にはトップの8号車さらに39号車もピットイン。結果として、上位陣はこのピットインを挟み、イン/アウトラップ、加えてピット作業の合算タイムの差が、この後の戦いに影響を与えることになる。
31周終わりにGT500最後のピットインが完了すると、トップに立ったのは39号車。2位には予選11番手だったNo.37 KeePer TOM’S GR Supra(平川 亮/ニック・キャシディ組)、さらに同13番手のNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組) 、そして24号車というオーダーに。ところがその中で24号車が35周目に突然のスローダウン。電装系トラブルに見舞われ、大きく後退。表彰台の好機を逸した。
レースは終盤に入ると、39号車が後方を5秒以上離して盤石の走り。2番手37号車はウェイトが重く、軽量の8号車からしばし追い立てられる形となっていた。だが、そんな2台の背後に迫ったのが14号車。ウェイトが重いにも関わらず、ライバルたちを蹴散らす力走で52周目には2位へと浮上。この時点でトップ39号車が築いてきた10秒近くの差を着実に削り取っていく。だが、残り周回数もわずかとなり、トップとの攻防戦までには至らず。一方の39号車もガス欠症状が出ていたという、まさに首の皮一枚の状態だったが、なんとかトップの座を守りきってチェッカー! 昨年第6戦のオートポリス以来となる優勝は、今シーズン初勝利でもあった。14号車が2位でレースを終えたことで、シリーズランキングでは暫定トップに浮上。また3位となった8号車は念願の今季初表彰台に上がっている。
一方、GT300では過去4戦の結果により、積載ウェイトが100kg超というクルマが3台に。規則により、上限100kgの搭載となるが、戦いになるとハンディをものともしない戦いが繰り広げられた。SC明け、予選トップのNo. 6 ADVICS muta MC86(阪口良平/小高一斗組)を筆頭にしていた戦いが、予選6番手から追い上げを見せるNo.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)に追い立てられる形となり、15周目にはトップを奪取。その流れで2位以下も激しい攻防戦を展開し、No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)、No.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)が追随した。
GT500同様、順位に変動が出始めたのはルーティンのピット作業後。もはや定石ともいえる戦略を見せたのが、No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)。ライバルよりやや遅いタイミングでピットインすると、今回も左2本のみタイヤ交換を行い、コースに復帰。また、序盤から上位に浮上していた52号車においては無交換作戦を敢行するという形で上位争いが混沌としたものになった。結果として52号車は暫定トップに着くも、一旦2番手に下がった56号車が怒涛の追い上げ。あっという間に52号車へと襲いかかり47周目のメインストレートでスリップにつき、1コーナーで逆転すると、みるみるうちに後続との差を大きく引き離した。これで56号車の逃げ切りトップチェッカーが確定。チームとして初となるクラス優勝を果たしている。一方、2位争いは最後まで息をつかせぬ戦いになった。まず、52号車を65号車が攻め立てていたが、その背後にいたNo.55 ARTA NSX GT3(高木真一/大湯都史樹組)も加わり、三つ巴に。60周目のストレートでは縦一列だった3台から55号車が52号車と65号車の間に割って入るとその勢いで3台の先頭に立つと、そのまま2位の座を死守してチェッカーを受けた。また65号車はファイナルラップで52号車を逆転。表彰台をもぎ取る力走を見せた。
・第5戦富士 決勝結果 各クラストップ3
GT500
1.No.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一組)1:47’01.279
2.No.14 WAKO’S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井 翔組)+10.216
3.No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)+11.162
GT300
1.No.56 リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)1:48’14.287
2.No.55 ARTA NSX GT3(高木真一/大湯都史樹組)+23.787
3.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)+25.076
SUPER GT第5戦富士、ARTA NSX-GTが今季2度目のポールを手にする
いよいよシーズンも後半戦へと突入した2020年SUPER GTシリーズ。その舞台は再び富士スピードウェイ。今シーズン3度目の戦いとなるだけに、データも揃い、各車セットアップもより精度を高めているはず。一方で、好成績を収めてきたチームにとってはウェイトハンディが足かせとなり、本来のパフォーマンスを引き出すのが難しいコンディションでもある。秋晴れに恵まれた土曜日の予選は、今大会からとなる観客を迎えて実施され、No. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が第2戦富士に続くポールポジションを獲得した。Q2でアタックを担当した福住にとっては自らのアタックで手にするポールポジションとなった。
穏やかな秋晴れに恵まれた土曜日の予選。10月上旬の富士は暑くも寒くもなく、上空には雲が広がり、どちらかと言えば終始曇りの天気ではあったが、今シーズン初めて観客を迎えて開催される大会としては絶好のレース日和とも言える一日だった。
新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、SUPER GTでは今シーズンの開催サーキットを富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎの3サーキットに限定して実施。そんな中、全8戦中4戦が実施される富士大会は、今回が3回目。シーズン後半戦の初戦にもなる今大会は、前半戦で好成績を収めたチームにとって、これまでの結果に対して課せられるウェイトハンディが大きく影響を与える一戦でもある。
とりわけGT500クラスではシーズン前半に2勝を挙げたNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組)はじめ、好調だったGR Supra勢が搭載するウェイトに苦しみ、逆にウェイトが軽いチームが朝の公式練習の時点から上位に名を連ねることになった。そんな中、今大会までまだ一度も入賞を果たしていなかったNo.12 カルソニックIMPUL GT-R(佐々木大樹/平峰一貴組)がトップタイムをマーク。これにNo. 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)が続いた。
迎えたノックアウト予選。結果としてハンディウェイトが厳しいチームがQ1で敗退、今回が好機となる12号車、8号車の2台がまたしてもトップ2につけた。そして迎えたQ2。ここで気を吐いたのが8号車だった。まず、Q1からの流れを受け継いで12号車の佐々木大樹がまず1分27秒649のタイムで暫定トップに浮上。しかし、チェッカーフラッグ提示後に、8号車が1分27秒130をマークし、トップを奪取する。一方、12号車もチームベストタイムを更新して1分27秒620までタイムを削ったが、残念ながら8号車には及ばず。とはいえ、今シーズンベストリザルトとなるフロントロウから決勝スタートを切ることになった。2番手12号車におよそ0.5秒という大差をつけて、今シーズン2度目のポールポジション獲得に成功した8号車。今年GT500クラスにステップアップした福住が、前大会もてぎに続いてQ2のアタックを担当した。結果、渾身のアタックが結実し、1分27秒130のタイムをマーク。自身初となるGT500のポールポジションをつかみとることとなった。2番手12号車に続いたのは、No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋組)。そして4番手にはNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/ヤン・マーデンボロー組)が着け、ヨコハマタイヤを装着する2台がセカンドロウに並ぶ結果となっている。
GT300クラスは、前半戦に結果を残し、100kgを超えるハンディウェイトを課せられた車両がなおも躍進する。だが、クラストップタイムを刻んだのは、No. 6 ADVICS muta MC86(阪口良平/小高一斗組)。Q1で阪口がトップタイムをマークすると、Q2でも小高が負けじと力強いアタックを披露する。一旦暫定トップタイムをマークし、なおも最終アタックで自己ベストタイム更新に成功。チームにとって第2戦富士に続く、シーズン2度目のポールポジションをモノにした。No.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)が2番手に続き、3番手は暫定ランキング2位につけるNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)。65号車はレギュレーションによって最大搭載ウェイトは100kgとなる車両の中でトップタイムをマークするパフォーマンスを見せている。
・第4戦もてぎ 予選結果 各クラストップ3
GT500
1.No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)1’27.130
2.No.12 カルソニックIMPUL GT-R(佐々木大樹/平峰一貴組)1’27.620
3.No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋組)1’27.688
GT300
1.No. 6 ADVICS muta MC86(阪口良平/小高一斗組)1’36.090
2.No.31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(嵯峨宏紀/中山友貴組)1’36.475
3.No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)1’36.803
SUPER GT第5戦富士 プレビュー
シーズン後半戦がスタート、新たな勝者は登場するか
7月中旬のシーズン開幕から9月末の間に4大会を実施した2020年のSUPER GTシリーズ。無観客開催である一方、待ちわびたレースをドライバーはもちろんのこと関係者がみな全力で戦いに挑み、その成果は各車のしびれるような攻防戦となって表れた。そして迎える第5戦富士大会。全8戦を予定しているシリーズ戦の後半戦の初戦となる。”新たなる日常”を取り入れながらイベントを実施する中、今大会からは観客を迎え入れての大会となる。ようやくサーキットでの観戦が叶うファンのリアルな声援を受け、いっそうバトルも激化するかもしれない。
今季3度目となる富士での戦い
これまでのSUPER GTでは、全8戦のうち、富士での戦いは2回。一方、今年はコロナ禍でレースカレンダーが大きく変更され、第1戦、第2戦、そして第5戦と合計3回に。レース距離も一律300kmであるため、今大会は過去2戦のデータを活かした形で戦うことが可能となる。高速コーナーが多く、メインストレートも長い特性を持つ富士ならではのセットアップをより分析し、クルマへとフィードバックさせる中、どのチームがその”答”に近づくかを見るのも楽しみといえるだろう。
とはいえ、第4戦まで戦ってきた各車のコンディションはバラバラ。というのも、戦歴によって課せられるウェイトハンディが存在するからだ。2勝を挙げ、現時点でのポイントリーダーであるNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組)は該当ウェイトが86kgとなり、うち34kg分を2ランクダウンのリストリクターを装着することで”相殺”。ロングストレートでスピードを稼ぐことは難しいだろうが、条件が厳しい戦いをどこまで耐え忍ぶことができるか、今回は文字通り”ガマン”のレースに挑むことになる。
17号車は第2戦の勝者だが、このとき、予選でポールポジションを手にしていたのは同じホンダのNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組)。開幕戦でも予選2番手を獲得、ホンダが新たに今シーズンから投入したフロントエンジン&リヤドライブ(FR)のNSX-GTにおける富士での速さをどのホンダ勢よりも証明しているのが8号車でもあるのだ。ところが、不運なことに決勝結果という点においてはまったく納得のいく形を作れていない。富士に限らず、その後の第3戦鈴鹿、第4戦もてぎでも結果に繋げることができておらず、悶々としたシーズンを過ごしている代表格が8号車と言ってもいいだろう。そんな8号車をはじめ、レースで結果を出せていないチームにとって、この大会は好成績を残せるチャンスが大いにある。前半戦で結果を残し、それに見合ったウェイトハンディを搭載する車両のほうが台数的にも多くなっており、”身軽”なクルマで上位浮上を目論むのであれば、過去2戦の戦いによってデータも揃い、セットアップにもうまく反映させることができる今大会が、そのタイミングとしては最適となるからだ。中でも、富士との相性がいいホンダ勢には願ってもないチャンスが巡ってくると考えていいだろう。
ホンダに次ぐ、2勝目はトヨタ?日産?
開幕戦の富士では表彰台に留まらず、上位5台までがGR Supraとなったのは記憶に新しいが、その後も安定した速さを披露しており、どのGR Supraでも秀でたパフォーマンスを持ち合わせていることがよくわかる。だが、決勝結果では17号車に2勝を許しているだけに、Gr Supraのお膝元でもある富士での今季3回目戦いは、是が非でも勝たなければならない…そんな意気込みで挑んで来るに違いない。
一方で、日産勢も搭載するウェイトの関係上からチャンスが広がるチームが複数おり、そろそろこのあたりで本領発揮といきたいところ。ライバルがウェイトに苦しむのを横目にしっかりいい戦いをして、高ポイント獲得といきたいところだろう。
展開が見えにくいGT300。今回躍進するのはどのチーム?
タイヤ交換を義務付けた戦いから、前回はそのルールを撤廃したGT300クラス。これにより、見えない敵との駆け引きやタイヤマネージメント、決勝中の走行ラップのペースなど、緻密な戦略にそって精度の高いパフォーマンスを見せながらライバルとのバトルを展開している。加えて百花繚乱ともいえる様々な参戦車両が揃うこともあり、それぞれのクルマが持つ特性を活かしながらの駆け引きは、結果として思わぬドラマを生むことも決して珍しくない。また、最後の最後まで戦いの行方がベールに包まれた状態、ということも起こりうる。まさにレース終盤まで勝者が見えにくい展開は、GT300ならではの醍醐味とも言えるだろう。
GT300、GT500両クラスにおいて、今大会ならではの激戦に期待がかかる第5戦富士大会。サーキットでの観戦者は、新型コロナウィルス感染拡大防止策の観点から現地での行動範囲を限定される。このため、パドックやピットそして決勝直前のグリッドに足を運ぶことは残念ながら禁止されているが、サポートレースとして再開するFIA-F4レースも含め、サーキットに響くSUPER GTマシンの轟音を身体いっぱいに感じ取りながらバトルに一喜一憂しつつ、熱い戦いを最後まで見届けてほしい。
主なスケジュール
2020スーパーGT第4戦 MOTEGI GT 300km RACE
10月3日(土)
09:15〜10:45 公式練習(GT300+GT500)
10:45〜10:55 公式練習(GT300専有)
10:55〜11:05 公式練習(GT500専有)
14:00〜14:10 公式予選Q1 GT300 A組
14:18〜14:28 公式予選Q1 GT300 B組
14:33〜14:43 公式予選Q1 GT500
14:53〜15:03 公式予選Q2 GT300
15:11〜15:21 公式予選Q2 GT500
10月4日(日)
09:00〜09:20 SGTドライバートークショー
10:50〜11:10 ドライバーアピアランス
12:10〜12:30 ウォームアップ
12:00〜13:00 スタート進行
13:30〜 決勝 300km RACE(66周)