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TOYOTA 86 RCグレードをGTドライバー青木孝行選手がセントラルサーキットでインプレッション!
トヨタ86は、スポーティな雰囲気を高めるため、吸気脈動ノイズをわざと運転席に入れているんですね。アクセルを踏み込むと、吸気音が"ガオ~"と聞こえて、なかなか気持ちよい演出だと思います。ただ、サーキットを全開走行すると、NAで200psのエンジンパワーは、ターボエンジンを搭載したスポーツカーと比べると、ちょっともの足りない印象ですね。エンジンフィーリングは、中回転域重視の味付けが施されていて、7000回転までスムーズにふけ上がりますがラスト400回転が重たく感じました。
とりあえず、VSCをスポーツモードに設定(モード3)して走ってみました。効果はてきめんに現れ、ドライバーがラフな運転をしても、ブレーキが積極的に介入してアンダー/オーバーの挙動をクルマが自動的に抑えてくれます。とうぜん、VSCをスポーツモードにしているとテールスライドが抑えられてしまうのでドリフト状態は維持できません。上級者の方がサーキット走行を楽しむためには、VSCとTRCをすべてカットした状態(モード5)にする必要がありますね。逆に、初心者の方は、VSCとTRCをONにした状態で走行した方が、安全に速く走行できるかも知れません。
アイシン製6速ミッションのシフトフィーリングは、同じミッションを搭載するアルテッツァやロードスターに比べて剛性感が増した印象です。"スコンッ、スコンッ"とシフトチェンジが決まります。ギヤ比については、ファイナルギヤの設定がロングで、エンジンパワーに対してワイドな印象があります。セントラルサーキットのストレートは、一般的なクルマなら5速ギヤまで入りますが、トヨタ86は4速6000回転までしか使いませんでした。
サスペンションのフィーリングは、エコタイヤ(ヨコハマdB E70・205/55R16)を履いた状態でも、フロントがよく入り、よく曲がります。サーキットを走行した場合「弱オーバー」の味付けが施されています。ハイグリップラジヤルのようなグリップ感は得られませんが、滑り出しがとてもマイルドなのでコントロール性は良好です。ただし、ハイトが高く、サイド剛性もそれほど高くありませんので、コーナリング時にタイヤのヨレが気になるかもしれません。
「RC」と「G」グレードには、標準状態でトルセンLSDは入っていません。本来なら、コーナーの立ち上がりでアクセルをラフに踏み込むと内輪からトラクションが抜けてしまい、ドリフトができませんし、クルマが前に進んでくれません。しかし、トヨタ86にはVSCの機能の一部に擬似LSD機能が搭載されているのでトラクション抜け防いでくれます。個人的な推測ですが、左右輪の回転差をブレーキで制御しているのではないでしょうか? 詳しいメカニズムはわかりませんが、この機能がなければ内輪がひたすらホイールスピンすると思いますので効果絶大です。カウンターを当てる技術がある人なら、簡単にドリフトに持ち込む事ができる画期的な機能だと思います。リヤタイヤを自在に滑らす楽しさや、コントロール性についても、とても高いレベルにあると思います。とくにドリフトコントロールはすごくイージーですよ。
一番安い「RC」グレードでこれほど質の高い走りが楽しめるのなら、これで十分だと思ってしまいます。クルマを購入したら、とりあえず標準タイヤは履きつぶして、鉄チンホイールは"スタッドレス用"に使用するのが自然の成り行きかもしれませんね。RCを購入してタイヤ&ホイールを交換しない人は100%いないと思いますので、17インチぐらいのハイグリップラジアルを履かした状態でもう一度テストしてみたいです。理想的なスタイルだと思いますよ。無塗装のバンパーや質素な内装は、カスタマイズで補いたいですね。
ブレーキは、サーキットタイムアタックで耐えられるのは3周程度が限界です。4周以上はフェードの兆候が徐々に現れ、ブレーキタッチが悪くなります。サーキットを全開走行するなら、スポーツパットの交換は必須です。