2018ル・マン 24時間レース - イベント・レースレポート

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2018ル・マン 24時間レース

2018年6月19日 更新

ル・マン24時間レース、トヨタがワン・ツーフィニッシュ達成

ようやくレース日和の天候に恵まれた今年のル・マン24時間レース。レース序盤から盤石の体制でワン・ツーを形成してきたトヨタTS050ハイブリッドの2台は、レース終盤になってもその安定さに疑う余地はなく、それよりも7、8号車のどちらが先にフィニッシュラインを通過するのかが注目されることとなった。
 
コース上で逃げる7号車可夢偉をミュルサンヌで逆転した8号車一貴。その後、7号車コンウェイ、8号車ブエミへと交代した2台は、イエローゾーンの速度違反が問われ、60秒のピットストップというまさかのペナルティが科されることになったが、態勢になんら影響はなく、そのままレース終盤へと向かっていった。
 
一方、レースコンディションとしてはセーフティカーがコースイン、その間に8号車と7号車のポジションが入れ替わるものの、ピットインのタイミング等で11時を迎える頃には再び8号車がトップに返り咲いた。その後、チェッカーフラッグが振られる午後3時が近づくに向けて、8号車はレースをリード。逆に7号車は予定していたピットインのタイミングを間違える痛恨のミスを犯してしまう。このハプニングに対してもピットストップのペナルティを科せられたこともあり、終盤になるとやや緊張の糸が切れたようになってしまった。
 
レースは残り2時間半を切ると、再びトヨタTS050ハイブリッドを一貴、可夢偉の二人がドライブ。このふたりがチェッカーを受ける形で今年のル・マンが幕を下ろすこととなり、ついにトヨタが悲願のル・マン24時間レースで勝利を実現。また、一貴は予選でポールポジションを獲得し、決勝でも優勝を果たすという願ってもない結果を手にしている。
 
◎ル・マン24時間レース決勝結果(総合トップ3および各クラストップ)
1.No.8 トヨタTS050ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)388周
2.No.7 トヨタTS050ハイブリッド(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス)386周
3.No.3 レベリオンR13・ギブソン(T.ローラン/M.ベッシェ/G.メネゼス)376周
 
クラス別トップ
・LMP1
No.8 トヨタTS050ハイブリッド(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)388周
 
・LMP2
No.26 オレカ07・ギブソン(R.ルシノフ/A.ピッツィオーラ/J-E.ベルニュ)369周
 
・LMGTE Pro
No.92 ポルシェ911 RSR(M.クリステンセン/K.エストル/L.バンスール)344周
 
・LMGTE Am
No.77 ポルシェ911 RSR(C.リード/M.キャンベル/J.アンロエア)335周
 
TEXT&PHOTO : MOTOKO SHIMAMURA
 
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2018年6月19日 更新

ル・マン24時間レース、トヨタ、ワン・ツーをキープ

7、8号車のトヨタがトップをキープし続けているル・マン24時間。終始この2台がトップを形成。大きなトラブルもなく粛々と周回を重ね、18時間が経過。最高峰のLMP1同様、各クラスも大きな動きはなく、”穏やか”なレース展開になっている。
 
トップ8号車にアロンソが3度目の搭乗をしたのは午前9時半前。セーフティカーコースイン中のため、コースに戻ると7号車が先行することとなったが、その後7号車もJ-H.ロペスへと交代のためピットイン。午前10時半過ぎの時点で、8号車がトップをキープ、2番手7号車との差は1分30秒弱となっている。
 
◎ル・マン24時間レース途中結果(9時・18時間経過/総合トップ3およびGTE各クラストップ)
1.No.8 トヨタ・ガズー・レーシング(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)296周
2.No.7 トヨタ・ガズー・レーシング(M.コンウェイ 小林可夢偉 J-M.ロペス)+41.174
3.No.3 レベリオン・レーシング(T.ローラン/M.ベッシェ/G.メネゼス)286周
 
LMP2
No.26 Gドライブ・レーシング(R.ルシノフ/A.ピッツィオーラ/J-E.ベルニュ)282周
 
LMGTE Pro
No.92 ポルシェGTチーム(M.クリステンセン/K.エストル/L.バンスール)262周
 
LMGTE Am
No.77 デンプシー-プロトン・レーシング(C.リード/M.キャンベル/J.アンロエア)256周
 
TEXT : MOTOKO SHIMAMURA
 



2018年6月19日 更新

開始から12時間が経過したル・マン。依然としてトヨタの2台がワン・ツーを形成している。

まず午後8時過ぎ、8号車に中嶋一貴が、そしてそのおよそ40分後には7号車の小林可夢偉がそれぞれコースイン。午後9時半を前に2台が接近戦を展開し、アルナージュ手前で可夢偉が一貴を逆転することに成功した。その後、8号車はS.ブエミ、7号車はM.コンウェイへと交代したが、日付が変わったあと、8号車に対し、60秒のピットストップペナルティが下される。これは、コース上のスローゾーンでのスピード違反に対するもの。この時点で、8号車はトップ7号車に対しておよそ36秒の遅れをとっていたが、このペナルティによって2台の差はさらに2分以上へと広がってしまった。
 
午前1時半前には、F.アロンソが2度目のステアリングを握り、コースへ。すると7号車のJ.ロペスを大きく上回るハイペースでの走行を披露した。セッションは午前3時を過ぎ、レースもはや折返しへ。8号車は午後4時を過ぎて中嶋一貴が2度目のドライビングを担当している。
 
◎ル・マン24時間レース途中結果(午前3時・12時間経過/総合トップ3および各クラストップ)
1.No.7 トヨタ・ガズー・レーシング(M.コンウェイ 小林可夢偉 J-M.ロペス)196周
2.No.8 トヨタ・ガズー・レーシング(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)+1’15.236
3.No.3 レベリオン・レーシング(T.ローラン/M.ベッシェ/G.メネゼス)192周
 
LMP2
No.26 Gドライブ・レーシング(R.ルシノフ/A.ピッツィオーラ/J-E.ベルニュ)187周
 
LMGTE Pro
No.92 ポルシェGTチーム(M.クリステンセン/K.エストル/L.バンスール)174周
 
LMGTE Am
No.77 デンプシー-プロトン・レーシング(C.リード/M.キャンベル/J.アンロエア)169周
 
TEXT : MOTOKO SHIMAMURA



2018年6月19日 更新

ル・マン24時間レース、6時間経過。トップは7号車

6月16日、第86回ル・マン24時間耐久レースの決勝スタートが、フランス現地時間の午後3時に号砲。決勝直前のグリッドは日差しに恵まれ、ようやくレース日和になったといえる。
 
そんな中、まずポールポジションの8号車はS.ブエミがスタートドライバーを担当。僚友の7号車ともども順調に周回を重ね、時折ポジションを入れ替えつつ、レースの4分の1にあたる6時間を消化している。
 
なお、スタート直後、予選3番手のNo.1 レベリオン・レーシングをドライブするA.ロッテラーは、好スタートが裏目に出て8号車に追突。クラス最後尾までポジションダウンを強いられ、またフロントカウルを交換するに至った。一方、8号車もこの接触ルーティンのピットインでリアカウルを交換したが、ピット作業時間に大きな影響はなかった。なお、日本のSUPER GTに参戦中のJ.バトンがドライブするNo.11 SMPレーシングは、電気系トラブルが序盤に発生。長くピットでの作業を要したため、最後尾までドロップ。だがその後コースに復帰し、周回を重ねている。
 
レースは午後7時前、さらに午後7時17分頃、それぞれセーフティカーがコースイン。ペースダウンを強いられた各車のタイム差が消滅したことから、それぞれ激しいクラス争いがしばし続く。またレース6時間経過を前に、8号車には中嶋一貴が、そして7号車に小林可夢偉が乗り込んでおり、現在、コース上でふたりの日本人ドライバーがトップ争いを繰り広げている形だ。
 
6時間経過後の総合トップ3、および描くクラストップは以下のとおり。
 
◎ル・マン24時間レース途中結果(21時・6時間経過/総合トップ3および各クラストップ)
 
1.No.8 トヨタ・ガズー・レーシング(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)94周
2.No.7 トヨタ・ガズー・レーシング(M.コンウェイ 小林可夢偉 J-M.ロペス)+12.587
3.No.17 SMPレーシング(S.サラザン E.オルドゼフ M.イサーキャン)1Lap
 
LMP2
No.26 Gドライブ・レーシング(R.ルシノフ/A.ピッツィオーラ/J-E.ベルニュ)90周
 
LMGTE Pro
No.92 ポルシェGTチーム(M.クリステンセン/K.エストル/L.バンスール) 84周
 
LMGTE Am
No.77 デンプシー-プロトン・レーシング’(C.リード/M.キャンベル/J.アンロエア)82周
 
PHOTO&TEXT : MOTOKO SHIMAMURA

 
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2018年6月17日 更新

第86回ル・マン24時間、8号車トヨタがポール獲得!

前日に続き、予選セッションが行われた第86回ル・マン24時間耐久レース。6月14日は、まず午後7時から2時間にわたる予選2回目がスタートしたが、開始早々からコースアウトする車両が出て、早速赤旗に。車両がガードレースに接触するなどして、修復に時間を要したため、20分ほどセッションが中断した。だが、それから小一時間も経たないうちに、再びタイヤバリアに1台の車両が激突。同様に修復に時間がかかると判断した主催者は、この赤旗を持ってセッション終了を決断。結果、予選3回目のセッションで時間を30分延長し、その開始時間を前倒しすることとした。
 
午後9時30分にスタートした予選3回目。まだ日没まで時間が残されており、曇り空といえどもタイムアタックを敢行するには申し分のないコンディションの中で最後のアタックチャンスになるのは間違いなさそうだ。ピットロード出口から一番遠い場所にチームピットを構えるトヨタ陣営は、シグナルグリーンのタイミングを考慮し、まず8号車が早めにピットを離れた。それから3分後、7号車も追随。それぞれのステアリングを握ったのは、8号車が中嶋一貴、そして7号車が小林可夢偉だった。
 
限りなくクリアラップに近い状態でのアタックが可能となった一貴は、3分15秒377をマーク。初日に一貴自身が打ち立てたトップタイムを更新してみせた。一方の可夢偉もアタックチャンスを狙って一部のセクタータイムでは自己ベストを更新していたが、コース上でGTクラス車両に引っかかってしまい、刻んだタイムは3分17秒523。自身が初日の予選1回目でマークしたベストタイムに0.2秒遅れることとなり、惜しくもトップを奪取するには至らなかった。
 
その後のセッションは、終盤に入ると雨が降り始め、アタックチャンスは実質失われることになったが、かわりに雨の中の走行シミュレーションをするチームも多く、決勝に向けての下準備を行っていた模様だ。タイムアタックを終えたトヨタの2台も、その後幾度となくドライバー交代を繰り返しつつ、最終調整を継続。その流れでセッションが終了したため、結果、8号車によるポールポジション獲得が決定した。これに僚友の7号車が続き、トヨタ2台がフロントローから決勝スタートを切ることになる。
 
なお、LMP1の3番手に着けたのは、ル・マンの優勝経験者を2選手手揃えるNo.1 レベリオンレーシング(A.ロッテラー/N.ジャニ/B. セナ組)だった。
 
(PHOTO&TEXT : MOTOKO SHIMAMURA)
 
・第86回ル・マン24時間レース予選順位(LMP1クラスのみ上位3台)
<LMP1>
1.No.8 トヨタ・ガズー・レーシング(S.ブエミ/中嶋一貴/F.アロンソ)3’15.377
2.No.7 トヨタ・ガズー・レーシング(M.コンウェイ/小林可夢偉/J-M.ロペス)3’17.377
3.No.1 レベリオン・レーシング(A.ロッテラー/N.ジャニ/B.セナ)3’19.449
 
<LMP2>
1. No.48 アイデック・スポーツ(P.ラファーグ/P.L.シャタン/M.ロハス)3’24.842
 
<LMGTE Pro>
1. No.91 ポルシェGTチーム(R.リエツ/G.ブルーニ/F.マコヴィッキ)3’47.504
 
<LMGTE AM>
1. No.88 デンプシー-プロトン・レーシング(M.カイローリ/K.アル・クバイシ/G.ローダ)3’50.728
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2018年6月17日 更新

ル・マン24時間、予選1回目は一貴がトップタイムをマーク

6月13日、第86回ル・マン24時間耐久レースの予選1回目が行われた。前日まで降っては止み、を繰り返す不安定な雨模様に見舞われていたル・マンのサルト・サーキットだが、この日は朝から日差しに恵まれた。その中でNo.8 トヨタTS050ハイブリッドがトップタイムをマーク。アタックしたのは中嶋一貴だった。
 
サーキットでの実走行を迎えたル・マン。フリープラクティスが午後4時から4時間という長丁場で行われ、予選に向けての最終チェックを行った。2時間のインターバルを経て午後10時から予選1回目がスタート。日没前のタイムアタックに興じることとなった。
 
気温18度、路面温度17.2度と、フリープラクティス時より空気が冷たくなる中、早々にアタックラップへと突入する車両が続出。ピット出口から一番離れたピットに位置するトヨタ陣営はできるだけ早くコースインしようと、開始前にピットを出て待機していたため、「タイヤが冷えてしまった」と7号車の小林可夢偉。さらに、コース上のトラフィックもそれなりにあった模様だが、確実にタイムアップを果たした。同様に8号車もタイムアップに成功。結果、8号車のアタックを担当した中嶋一貴が3分17秒270をマークして暫定トップに立ち、そこから0.107秒遅れの3分17秒377で7号車が2番手につけている。
 
3番手には No.17 SMPレーシングがつけ、昨年までポルシェのワークスチームで参戦していたアンドレ・ロッテラーがドライブするNo.1 レベリオンレーシングはトップ8号車から2.3秒遅れの4番手に留まった。
 
PHOTO&TEXT : MOTOKO SHIMAMURA
 
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2018年6月15日 更新

第86回ル・マン24時間レース、公開車検を終える

6月10、11日、フランスのル・マン市街地において、第86回ル・マン24時間耐久レースの公開車検が実施された。2日間ともあいにくの天気となり、時折強い雨になることもあったが、伝統レースを知るたくさんの熱心なファンが、今年も会場に足を運んでいた。その様子をお伝えする。
 

・ルーキードライバー、ジェンソン
今シーズンは、日本のSUPER GTにフル参戦中の元F1チャンピオン、ジェンソン・バトン。意外にも取り巻くプレス陣もさほど多くなく、肩透かしをくらった感じに…。一方、当の本人はとってもリラックスしており、初ル・マンを楽しんでいるとのこと。目下、SUPER GTで”学習中”のオーバーテイクのテクニックをこのル・マンで発揮できるのか!?
 

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・ノンハイブリッドで総合優勝なるか!?
アウディ、ポルシェと参戦チームの撤退に合わせ、チーム移籍が続くのは、アンドレ・ロッテラー。今年は日本でのレース活動もなく、日本のファンにとっては少々さみしい状態ではあるが、車検場では相変わらず素敵な笑顔を見せてくれた。「ノンハイブリッド車での優勝のチャンス!? うーん、トヨタが速すぎるから難しいんじゃないかな。だけど、向こう(のチーム)にはチャンピオン経験者がいないし、僕らは優勝経験もある(自身とニール・ジャニ)からね」とニヤリ。終わってみるまでわからない耐久レースならではの可能性に期待を寄せていた。
 

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・トリプルクラウンにリーチ
世界3大レースと呼ばれるF1モナコGP、インディ500、ル・マン24時間レース。そのうち、モナコGPとインディ500を制しているファン・パブロ・モントーヤがル・マンにお目見え。仮にル・マンでの勝利が達成すれば、史上ふたり目となるトリプルクラウンが実現する。以前、ポルシェのLMP1カーをテストした経験があるものの、レース自体はデビュー戦となる。参戦クラスがLPM2(ユナイテッド・オートスポーツ)になるため総合優勝へのハードルは高いだろうが、今年のLMP1クラスが混沌としている分、展開次第では…という夢も広がる。
 

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・悲願達成なるか!?
一昨年にはアウディが卒業し、去年をもってポルシェが撤退…。今やル・マン24時間レースのLMP1クラスに参戦するメーカーはトヨタ1社となってしまった。だからこそ、総合優勝を果たさなければならないプレッシャーの中、2台のTS050HYBRIDはどのような戦いを見せてくれるのか。
 

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・雨が心配でしたが…
公開車検の2日間は雨が降ったり止んだり、なんとも落ち着かない天候が続いたが、トヨタが恒例の集合写真を撮影するときには日差しが少し顔を出しはじめており、無事に作業が終了した。一方、ドライバーは近くに詰めかけていたファンへのサインや写真撮影に興じており、その中にはアロンソの姿も。
 

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お祭りモードの序章を経て、いよいよ本格的なセッション開始となるル・マン。走行セッションのない火曜日は、コース上で出場ドライバーの集合写真撮影が行われた。実走行は現地時間(日本との時差hは7時間)の水曜日の午後4時から。まずは4時間の練習走行を迎える。
 

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PHOTO&TEXT : MOTOKO SHIMAMURA



2018年6月10日 更新

なるか、トヨタ悲願のル・マン制覇

4年に一度のサッカーワールドカップ・ロシア大会が近づく中、ヨーロッパではもうひとつのビッグイベントが刻一刻と近づいている。今年で86回目の開催を迎える伝統レースは、F1モナコGP、アメリカのインディ500とともに”世界三大レース”として知られている。先週末にはテストデーが行われ、あとは本番を待つのみ。そんな中、まだ達成されていない初勝利へ向かって邁進するのがトヨタ。大本命と言われる中、悲願達成となるのか。
 
■ライバル不在の中で
2016年にアウディ、そして去年はポルシェがル・マンを含む世界耐久レース(WEC)への参戦を終える中、トヨタは、唯一ハイブリッドカーでLMP1クラスに参戦するマニュファクチャラーズとなった。伝統ある一戦での勝利を是が非でも実現させたい、そしてハイブリッド車両の販売というマーケティングを考慮し、トヨタは直接的なライバルが不在となっても参戦継続を決断した。これまでLMP1クラスは「ハイブリッドか否か」で細分化され、プライベーターチームはノンハイブリッド車での参戦を行ってきたのだが、ワークス対プライベーターで優勝しても、正直そのバリューは無いに等しい。レースは同じ土俵の上で戦ってこそ、のものだからだ。レースファンとて同じ思いであるのは言うまでもない。
 
そこでトヨタは、これまでのように参戦車両同士がしのぎを削る戦いを存続させるため、プライベーターチームに同じ土俵へ上がってもらうという策を講じたのだ。そのため、LMP1のノンハイブリッド車両のポテンシャルを大きく引き上げ、トヨタとコース上で戦える状況を作り上げた。一方で、自チームの車両開発を凍結。よって今シーズンの車両は、昨シーズンの最終戦で投入した仕様に留まっている。結果、ルール上「EoT」(イクイバレンス・オブ・テクノロジー)と呼ばれる技術の均衡を取り入れた性能調整が随時適用されるようになった。ルール変更によって、トヨタのライバルに名乗りを上げる既存のLMP1プライベーターチームに加え、LMP2クラスからステップアップするチームも出現。トヨタが送り出す2台のハイブリッド車両に対し、8台のノンハイブリッド車がライバルとして出走する。彼らもまた、伝統の一戦でクラス優勝ではなく、総合優勝という大きな目標に向かって新たな挑戦を選択したのだ。
 
先の開幕戦、スパ・フランコルシャンでの一戦は、準備不足のチームも見られ、まだ新たなルールに則って万全の体制を構築できていないような場面もあった模様。レース自体、一日の長があるトヨタに軍配があがり、3位以下のライバルに大きな差をつけて1−2フィニッシュを達成することとなった。とはいえ、そのトヨタ自身も完璧なレース運びではなく、予選でトップタイムをマークしたTS050の7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)は、予選で使用したヒューマンエラーとも言える燃料流量計の違反に問われるというミスを犯している。参戦の積み重ねによるコース上での速さや強さに信頼性を伴ってきたとはいえ、レースはチェッカーを受けるまでその結果を断定することは不可能であることを忘れてはならない。また、トヨタ同士によるガチバトルになる可能性も残されている。”テッペン”を取ることが目標である以上、最終的には7号車と8号車(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組)による壮絶なバトルになる可能性もゼロではない。このため、チームでは「特別ルール」を設定。レース中の最終ルーティンワークでピットインをした際、その順番のままチェッカーを受けるという”暗黙の了解”を用意しているという。新旧のF1ドライバーを多くラインナップするチームならではの配慮なのかもしれないが、それ以上に、電撃参戦表明をしたアロンソ対策にも思えてしまう。いずれにせよ、トヨタは外から内からあらゆる方法を使い、喉から手が出るほど欲する勝利に向けてひた走っているというわけだ。
 
■変更点あれこれ
LMP1クラスの編成が変更の大きなポイントとなった今年のル・マン。だが、この他にも小さな変更点がいくつか見られるので、それを紹介することにしよう。
 
まず、スパ6時間で幕を開けた2018年シーズンは、2019年へと年をまたぐ「スーパーシーズン」となる。ル・マンウィークはもちろんのこと、その1週間前に実施されるテストデーの日程には変化はないものの、今年のル・マンはシーズン2戦目として開催され、その後、ヨーロッパ、アジアを転戦し、再び来年の6月にル・マン24時間レースがシーズン最終戦として実施されることになった。1シーズンにル・マン戦を2度行なうというスペシャルな1シーズンになったのだ。
 
次にル・マンのコースについて。サルテ・サーキットおよび一般公道を組み合わせた特設コースだが、今年はポルシェカーブ周辺の改修が行われており、結果的にコース全長が3メートルほど短くなったそうで、1周の距離が13.626kmに変更されている。さらにパーマネントコースにおいてもスタートラインの場所が1コーナー方向に移動されたという。これによってコースのメインストレート上で参戦する全車両がきちんと隊列を組むことが可能になった。
 
また、レース中のピット作業においてルールが改正された。これまでピットストップ時の作業は給油とタイヤ交換を同時に行なうことを禁止していたが、同時作業が認められることになった。これまで給油後のタイヤ交換の作業時間で生まれる小さな差の積み重ねが戦いに少なからずとも影響を与えていたが、その有利/不利さによる影響力は小さくなりそうだ。
 
新しく導入されたり、見直しが行われたルールの下で行われる”スーパーシーズン”の第2戦「ル・マン24時間レース」。その決勝は16日(土)の午後3時に号砲となる。

 
 

TEXT : MOTOKO SHIMAMURA








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