ストリートリーガル仕様!401kWのR32ストリートウェポン登場
記事提供元:NZ Performance Car
写真: Deven Solanki
RB25DET NEOで武装した、ジャロッド・ニスベットのR32クーペに迫る!
NZPC:スカイライン、とてもカッコいいですね!そもそもチューニングカーにハマったきっかけは?
「クルマには、小さい頃からずっと夢中でした。身内がみんなクルマ好きで、自然と影響されていったんです。祖父のエイドリアン・ニスベットは、ワンガレイのドラッグレース界では有名な存在で、ずっとその世界に関わっていました。で、僕がワンガレイからオークランドに引っ越したとき、父のリントン・ニスベットが、なんとフルチューンのランエボVIを会社のクルマとして購入。毎朝そのエボで小学校まで送り迎えしてくれて、オレワやオークランドの街中を走るたびに、ワクワクが止まらなかったのを覚えている。それだけじゃなくて、叔父のリッチー(リチャード・ビドル)も常にイカしたマシンに乗ってましたね。セフィーロにスカイライン、コモドア、ファルコン、マツダ…とにかく音も速さも一級品。とにかく“速くてうるさいクルマ”が当たり前に身近にあったんです。そんな環境で育ったもんだから、年齢を重ねるにつれて自然とスカイラインに惹かれていきました。男の子なら誰でも通る道、ですよね(笑)。毎月NZPC(ニュージーランド・パフォーマンスカー)を買って、ボロボロになるまで読み込んで。お気に入りのマシンを切り抜いて、自分だけの“マイ雑誌”を作って楽しんでました。」
「クルマ好きってのは、正直、ヤワな気持ちじゃ続かない。大人になるにつれて、それが骨身に染みて分かってきました。何より金がかかるし、いわゆる“普通の人”からのウケは最悪(笑)。編み物もスポーツもまったく興味わかなかった自分にとって、結局のところ**“クルマとちょいワルキャラ”**こそが自分の居場所だったんです。毎年開催されるBig Boys Toysや4&Rotary Nationalsで、ズラリと並んだマシンたちを見るたびに、心が震えた。オーナーたちが自慢の愛機のそばに立って、通りすがりの人たちから「スゲェ」「ヤバい」って言われてる姿を見てると、本当に嬉しそうで。あの表情を見たとき、「あぁ、オレもあんな風に自分のクルマを誇りたい」って思ったんです。」
このR32、手に入れた当初はどんな状態だった?
「正直、ボロかったっす(笑)。まずミッション(RB20DET用)は終わってて、2速には入らない、3速はギア鳴り、4速はうなる、5速は減速すると勝手にギアが抜ける…って感じで、踏むどころの話じゃなかった。配線はひどい有様で、デイジーチェーンにビニールテープ、さらにボンネットがバッテリーに当たってるっていう危なすぎる仕様。でも、運が良かったのは最初からS4のRB25が載ってたことで、それが決め手になって即決。そのときの価格がWOF(車検)とレジ(登録)付きで7500ドル。見た目は、FRPとプラ製エアロのミスマッチに、バラバラのホイール。だけど当時18歳だった自分には、そんなことどうでもよかった。とにかく“念願のR”を手に入れたってだけで、もう夢みたいでしたね。納車後は、親父がウェリントンからオークランドまで自走で持って帰ってくれたんですけど、途中でタウポでブロー。その瞬間、「ああ、これは一筋縄じゃいかねぇな…」って腹くくりました。――そして、オレのR32物語が始まったわけです。
このR32、いつから乗ってるんですか? そして、一番気に入ってるポイントは?
このクルマとは、もう付き合って8年近くになります。手に入れたのは2016年10月1日。一番のお気に入りは?――やっぱりサウンドですね。あのRBの咆哮は、何度聞いても鳥肌モン。それと、R32のテールランプも外せません。あの特徴的なデザイン、誰が見ても「あ、スカイラインだ」って分かるレベルのアイコン。そして最後にもう一つ。やっぱりこのド派手なターコイズカラーでしょ!どこにいても目立ちまくるし、走ってるだけで存在感バツグン。
このクルマを仕上げるうえで、一番大変だった作業は?
やっぱり板金(パネル修正)作業が一番キツかったですね。クルマを仕上げる以上、すべてが“完璧”じゃなきゃダメだと思ってるんで、そこには相当こだわりました。正直、パネル作業だけで200時間以上は費やしてます。サビの補修は一切の妥協ナシ。フェンダーも、ラインも、すべてがビシッと揃ってないと気が済まない。外装パーツはすべて鉄やプラスチックの地肌まで戻してから再整形。リアフェンダーなんて、5回もやり直しました。サフェまで持っていって「やっぱダメだな」ってまた削り直して……その繰り返しです(笑)。さらに、フロントフェンダーやドア、ヘッドライトも、メッキ浮きやダメージのない極上品を探すのが超大変で。そういう細かい部分を一つずつ仕上げていって、ようやく「これでいける」と思えたときに、やっと塗装工程に進めたんです。そこからは一気に仕上がっていって、最初に頭の中で思い描いていた“理想の姿”に近づいていくあの感じ。あの瞬間は、やっぱりたまらないですね。
ご自身で板金・塗装のショップを経営されているとか。その経験は今回のビルドに活きましたか?
はい、オレワ(オークランド)にある家族経営の小さな板金塗装屋『Coast Collision』をやっています。
普段は保険修理がメインなんですが、たまにカスタム系の仕事が入ると、ショップとしての本気を見せるチャンスなんですよ。2年前に、親父と一緒にこのビジネスを買い取って運営することになって、そこから毎日が充実してますね。とはいえ、正直に言うと…このR32を板金&塗装した当時は、まだ店を持ってなかったんです(笑)。だから、「ビルドに役立ったか?」と聞かれると、ちょっとタイミングがズレてるんですよね。ただ、それ以降のトラブルにはめちゃくちゃ助かってます。ボンネットが飛んだり、ちょっとバスと接触したり…(笑) そんなときでもすぐにリペアできる。傷ひとつ、飛び石ひとつでも見逃さず、ボンネットやバンパーを外して即再塗装。とにかく常に**“完璧な状態”を保つことが自分のこだわり**なんです。だって、このクルマって自分自身を表してるようなものじゃないですか。そして同時に、自分の板金技術とうちのショップのクオリティを体現するショーケースにもなってるんです。
もし過去に戻って、1つだけやり直せるとしたら?
今思うとエンジン内部にもっと投資しておけばよかったっていうのが、唯一の後悔ですかね。鍛造のボトムエンドを組んでおけば良かったなって、今になって思います。やっぱり、クルマって乗ってるうちに「もっとパワーが欲しい」ってなるじゃないですか?でもノーマルのボトムエンドじゃ限界があるんですよね。そこが今後ネックになりそうで。それから、もしガレージにもっとスペースがあって、自分にもう少し経験があれば、ロティサリーに載せて、車体丸ごとレストアしたかったです。もともとの目標は「スカイラインの栄光を取り戻す」ってところだったので、細かいモディファイを加えつつ、可能な限り原点回帰する形で仕上げたかったっていう思いもありますね。
この先、どんな計画がありますか?
将来的には、Hi-Power Performanceに預けて、ボトムエンドのビルドとヘッド周りの軽い加工をお願いしたいと考えてます。それに合わせて、SpeedTechのギアセットに載せ替えたり、E85(エタノール)仕様に切り替えたりして、もう少しパワーを狙っていけたらと。最終的な夢は、やっぱりRB28化ですね。高回転まで気持ちよく回せるし、トルクも増える。性能面でも音の面でも、自分の理想に近づけると思うんです。とはいえ、それはまだまだ遠い未来の話。今はただ、この仕様をしっかり走らせて、自分自身が楽しむこと。そして、周りの人にもその魅力を感じてもらえるようなクルマにしていきたい。――それが今の一番の目標ですね。
もし予算が無限にあったら、クルマにどのホイールを履かせますか?
昔からずっと好きなのは、やっぱりWORK Equip 05。しかも17インチ一択です。あのデザイン、あの雰囲気、どの時代に見てもカッコいい。次点を挙げるなら、BLITZ Techno Speed Z1かな。あの無骨さとレーシーさが絶妙で、ずっと憧れてる1本です。
裏で進めてるもう一台のR32も気になります。あれは今どんな状況ですか?今後のプランは?
実は、もう一台R32クーペをコツコツとパーツ集め中なんです。あのクルマはタウポで事故車(フロントクラッシュ)の殻を、なんと箱入りのハイネケンと物々交換でゲット(笑)しました。当時はR32セダンを2台持ってたんで、そのうち1台のフロント部分をカットしてクーペに移植、足まわりもマクファーソン式(S13/S14/S15)にコンバートして修復していきました。エンジンルームはトヨタ・ブレイドブロンズに全塗装、フェンダー内側はクリーム色に塗装。このカラーリング、ピンと来た人は分かると思いますが、アダムLZのCream 180SXと同じ配色に仕上げていく予定です。搭載するのはSR20DETで、280〜300kWあたりを目指した、素直で扱いやすい遊べる仕様にします。ロールケージ、バーテックスキット、Type Mのリアスポ、DMAXのダクト付きボンネットも入れて、でも全体の方向性としてはシンプルでグラスルーツな雰囲気にまとめたいと思ってます。競技で戦うつもりはなくて、あくまで“走って遊ぶためのクルマ”。友達が来たら気軽に横乗りさせて、一緒に笑って楽しめる――クルマって、やっぱりそうやって楽しむもんでしょ?
それともう一台、トヨタ・ハイラックス LN106も現在レストア中です。エンジンはすでに完成していて、ベースは2.8Lの3Lディーゼル。そこにポート研磨&ポリッシュ加工されたヘッド、TD27用バルブスプリング、フォード・ファルコン・バラ用のバルブを組み込み、バルブシートは専用加工、さらにオーバーサイズピストン、アメリカ製の特注ヘッドスタッドを使って強化。タービンはHRC30ホルセットで、ワンオフのエキマニに40mmのエクスターナルゲート、そして12mmポンプを組み合わせて、ちっちゃな2.8Lを“月まで吹っ飛ばす”つもりで仕上げました(笑)。
この先も、まだまだクルマは作っていきたいですけど、「1台を完成させるために、他を手放す」っていうスタイルは自分には合わないと思ってます。全部のクルマに思い入れがあるし、それぞれが自分のストーリーなんで、どれも残しておきたいんです。
1992年式 日産スカイライン GTS-T タイプM(HCR32)
エンジン/モディファイ内容:
RB25DET NEO
RB26用メタルベアリング
ARP強化ヘッドスタッド
メタルヘッドガスケット(MLS)
N1オイルポンプ+REIMAX製ビレットギア
クランクシャフトはグラブスクリュー加工
DabFab製7Lバッフル&ゲート付きオイルパン
Kelfordバルブスプリング
Tomei製264度/リフト9.15mmカム
Tomei可変インテークカムギア
Franklin Performance製ヘッドドレン
同・ビレットサーモスタットハウジング
同・LSオルタネーターコンバージョン
同・R35 GT-Rコイルパックコンバージョン
JT Performance製カスタムハーネス
ATIスーパーダンパー クランクプーリー
Sinco製フロントフェイスマニ
Steve Murch HRC40RSタービン(14cmリアハウジング)
Turbosmart製60mmウエストゲート
Otaku Garage製インマニ、80mmスロットル
FENIX製100mmインタークーラー
KOYORAD製ラジエター、SPAL電動ファン
Fueled by Fab/Hi-Power製エキパン
DabFab製オイルキャッチタンク
RX-7 Heaven製パワステリザーバー&オーバーフロー
インタークーラーパイプ 3インチ、ダウンパイプ4インチ、排気3インチ
AdrenalinR製レゾネーター
全体にWigginsクランプ採用
ステンレス製フューエルライン(特注)
Frenchies Performance Garage製ビレット燃料ポンプキャリア
Bosch BR540 インタンクツインポンプ仕様
ツインフィードフューエルレール
Aeroflow製 8インチ ビレット燃料フィルター(カートリッジ交換式)
NZ Wiring製トリガーキット
ドライブライン:
R33 RB25DET 5速MT
Xtreme製ツインプレートクラッチ(オーガニック)
Drive Shaft Specialists製2ピースプロペラシャフト(特注)
非HICASリアサブフレーム+R200 LSD(シム入り)
Harry Switzer-Corbett製の特注サブフレームブッシュ
インテリア:
スエードブラックのBRIDEリクライニングシート(フロント)
R32 GT-Rリアシート
ルイ・ヴィトンのスカーフでリア席をドレスアップ
スエード張りルーフ
インテリア全体をブラック塗装カスタム
ナルディクラシック 360mmステアリング
NRGショートハブ&クイックリリース
9インチ Apple CarPlay対応ヘッドユニット
Haltech IC-7デジタルダッシュ
Mako Motorsport製ダッシュパネル
GKTech製ビレットハンドブレーキ
Vertexシフトノブ
ヒューズボックスはダッシュ下へリロケート
A/Cは完全撤去
エクステリア:
タイプM純正バンパー/サイドステップ/エンドキャップ
インテグラDC2用フロントリップ
シルビアS13用Origin Laboリアスポイラー
FRPルーフスポイラー
R32 GT-Rヘッドライト&ウインカー
加工ボンネット
GT-Rグリル
特注ターコイズペイント+Vibrance DX78レインボーフレーク仕上げ
ホイール/タイヤ:
17×9.5J(+15)CST Hyper Zero(BMWアルピンホワイト3+グリーン〜ブルーパール)
235/45R17 Kenda KR-20
サスペンション:
BC Red調整式車高調
Hardrace製 フロントキャンバー/キャスターアーム
Hardrace製 リアキャンバー/トー/トラクションアーム
R33ロアアーム
GKTech製ロックスペーサー
A32セフィーロ用タイロッドエンド(インナー&アウター)
ブレーキ:
純正キャリパー
297mmスリットローター
Endless Racingブレーキパッド
出力:
401kW(20psi時)
燃料:
BP Ultimate 98
セッティング:
JT Performance/ジェームズ
オーナー名: Jarod Nisbet
年齢: 25歳
所在地: オークランド
職業: 板金職人
製作期間: 約6年半
所有期間: 約7年
Special Thanks:
まず最初に、家族のKiley & Linton Nisbetへ。最初の4年半、家のドライブウェイでこのクルマを組み上げていたのをずっと見守ってくれました。
Ethan & Duane(Hi-Power Performance)、仕上げの段階で大きな力になってくれて感謝しています。
Lord Bemrose(R’s Garage)、パーツ探しの支援をありがとう。
Trent Wilson(RX-7 Heaven)、ファブワーク全般ありがとう。
Brad Foremen(DABFAB Motorsport)、初期の頃からのアドバイスに感謝しています。
Wade Larsen、スプレー作業含めいろいろ助けてくれてありがとう。
James(JT Performance)、セッティング前後含めて継続的なサポートに大感謝。
Kaleb Jordan、パーツ探しと組み付けの相談など、いつもありがとう。
Mitch Murphy(Engine Parts)、ANフィッティング関連と豊富なアドバイスに感謝。
Sinco、インタークーラーとエキマニ素材の供給ありがとう。
Vinny Fab、Wigginsクランプ一式含め、細かいサポートありがとう。
**他にも、全工程に関わってくれた仲間一人ひとりに感謝。**みんながいなければ、このRは完成しなかった。
※この特集記事は、ニュージーランド・パフォーマンスカー誌 Issue 310 に掲載された内容を元に構成しています。