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- コラム(2026/04/28)
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国内の自動車大手がこのほど2025年度の世界販売の実績を公表した。各車が進める経営路線の結果として、大なり小ありの明暗があったのは事実だ。世界販売、生産ともに前年比減の結果となった日産だが、2026年3月期決算の業績予想を上方修正したという。現在、経営再建真っ直中にある同社だが、なぜこのような結果になったのか。
・再建計画が奏功
日産は、予想利益や売上高が当初の計画よりも高い数字へ引き上げる、つまり上方修正を本年3月期の連結業績予想として発表。営業損益が500億円の黒字になる見通しだと発表した。数字としては、前期の697億円に及ばないが、もともと今年2月の段階で600円の黒字、ではなく赤字を予想していただけに、大きな変化を見せたことになる。経営再建を進める同社としては、喜ばしい状況のように見えるが、その中身は決して一筋縄ではいかない実態がある。
結果として黒字になった背景にあるのは、「工場閉鎖」「人員削減」「円安」の影響が大きい。経営悪化に伴い、同社では神奈川県横須賀市にある追浜工場はじめ、世界7工場での製造終了を明らかにし、そこに携わる従業員のおよそ2万人を削減することを決定した。いわゆる会社としての固定費の削減に舵を切った。横浜市にあるグローバル本社ビルもおよそ970億円で売却。ただ、本社はそのまま賃貸契約で残るリースバックにしている。とはいえ、この売却に酔って同社はおよそ700億円超の特別利益を計上したと言われている。
・強いドルにも助けられ
「モノ」「ヒト」「場所」などにかかるコスト削減に加え、追い風となったのは、「為替円安」だった。もともとアメリカ・トランプ政権が自動車の排ガス規制の撤廃を決定していたが、これに先んじて規制対応のために準備していた資金を切り崩し、それが円安と相まって利益が押し上げられたとしている。折しも不安定な中東情勢の煽りもあり、円安が加速。輸出比率が高い同社としては、外貨建の収益が膨らむ結果に繋がったというわけだ。
平たくして言えば、ラッキーな外的要因が重なり黒字が生まれたとも言える。経営再建後に、耳目を集めるような話題の新車がリリースされたわけでもなく、イヴァン・エスピノーサCEOが時折口にする「GT-R復活」もまだ具体案が出ているわけではない。つまり、本業の実力回復とは言い難いのが、今回の実態だと思われる。たとえ、2025年夏に生産を終えたGT-Rの復活が決定したとしても、あくまでも一部の熱狂的なフリークが求める車両につき、コンスタントに収益をもたらしてくれる車両とは一線を画すものだ。GT-R復活が、再建の一縷の希望であることは違いないが、GT-Rの売上が会社のV字回復を実現する、というわけではない。コンスタントに売れるクルマを出してこそ、地に足ついた再建が叶うのではないだろうか。
他の業績としては、純損益の赤字幅が従来予想から1千億円縮小し、およそ5500億円になると見込んでいる。また、売上高も従来の予想から1千億引き上げた12兆円に上方修正している。また、自動車事業の営業損益と企業が自由に使える現金を示すフリーキャッシュフローにおいては、2025年度下半期に黒字となる見込みであるとし、ネットキャッシュはおよそ1兆円超確保できるということだ。
同社の発表を受け、早速株式市場では株価が急騰。構造改革による業績改善の成果が評価されたことを示す結果となっている。しかしながら、日産に限らず自動車メーカーは連日の中東情勢の変化に一喜一憂の状態だ。原油高による資材の確保にも影響が出ており、自動車そのものもガソリンを使用するエンジン積載車ではなく、EVに追い風の状態。警戒感が世界中で広まっている。数字を見る限り、まだまだ持ち堪えられるだけの経営体力はあるのだから、本業での事業をしっかりと底上げし、同社としての強みを改めて確立してもらいたい。