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コラム(2025/12/25)
このほど、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が、2035年にガソリンなどで走行するエンジン搭載車の新車販売について、禁止案の緩和を発表した。この「二酸化炭素基準の改正と法人車両の提案」文書を公表するや、日本でもマスコミ各社において「エンジン車容認」「エンジン車禁止を撤回」などという文字が踊るようになった。販売を禁止することを掲げ、突き進んできたはずのEUに一体なにが起こっているのか。果たして、その真相は?

・2021年に掲げられたEUの「Fit for 55」
「Fit for 55」という名称で発表されたのは、2021年。その政策として、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減することが掲げられた。内容としては、新車をゼロエミッション化することであり、「二酸化炭素を出さないものしか認めない」という規制だった。だが、それからわずか4年でその根幹が緩いだことになる。

欧州委員会が明らかにした2035年に内燃機関車の新車販売を原則禁止する方針の撤回案は、またたく間に世界中のメディアによって広がった。なお、この際、代替案として2021年比で90%の二酸化炭素排出量削減を課す新基準を示している。加えて残り10%の排出量削減策として、EU域内で製造される低炭素排出量で生産する鉄鋼_いわゆるグリーンスチールと呼ばれるものの採用、あるいは、”eフューエル”と言われるバイオ燃料などを使うことが条件となる。各自動車メーカーは、新たに提示された条件をクリアすれば、2035年以降禁止するとしていたハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド(PHV)の新車販売を生産、販売できるようになる。

・理想と現実の間で
その背景には、欧州の大手自動車メーカー_とくにドイツやイタリアといった自動車メーカーが主軸となり、緩和策へのロビー活動があったとも言われている。各国も日本同様、自動車産業を強みとする一方、アメリカのトランプ政権により関税措置によって逆風が強くなっている。当然ながら人員削減に舵を切ることを迫られており、EV製造、販売もままならないなか、中国が注力する”輸入EV”との販売競争を強いられるなど、苦境が見られる。とにもかくにも一部のエンジン車が販売継続になったことは、欧州の一部自動車メーカーのみならず、HVに強みを持つ日本の自動車メーカーにとっても少なくとも朗報だと言えるだろう。

また、撤回ばかりが目立たないようにしたかったのだろうか、加えてEUに加盟する27カ国で生産される安価な(日本円でおよそ245万から326万円)コンパクトなEVを製造するメーカーには「スーパークレジット」の付与が提案されている。メイド・インEUのEVを擁護することを明らかにした。

参考までに、今年1月から10月におけるEU域内の新車販売のうち、EVの割合は16.4%。対するPHVを含むHVは43.7%だった。また、ガソリン車は27.4%。日本ほどではないが、それでもなおHV販売はガソリン車の販売を下回っているのが”現実”なのだ。また、EVを推進する一方、そのクルマには部品から完成車までメイド・イン・チャイナがつきまとう。EV推進を掲げる以上、中国の存在を消し去ることはできないという悩ましい問題が重くのしかかることに違いはない。

ところで、このほどEUが発表した公表文は、確かに従来の規制案を修正してはいるものの、日本のメディアが声高にいう「エンジン車禁止案を撤回」という言い方とはややニュアンスが異なっているという。EUとしては、決してEV化を断念したわけでもエンジン車の内燃機関に逆戻りするわけでもない。35年からのエンジン車販売の完全禁止から、禁止に向けてのゆるやかな着地方法がないものか、さまざまな策を講じはじめた、ということなのだ。先述のように、欧州の自動車メーカーでは、日本の軽自動車に相当するサイズのBEV開発を模索しはじめている。だが、すでにBYDは日本市場で来夏に軽EV「ラッコ」の導入予定をアナウンス済み。軽自動車”王国”である日本のユーザーからの声を吸い上げ、どんどんブラッシュアップした軽EVを開発、製造する流れになる可能性もありそうだ。これに対し、EUの自動車メーカーがこれから軽自動車サイズのEVを手掛けるとなると……。かくしてEVだけのクルマ市場にすることは、中国メーカーの台頭と自動車を国家基幹産業とする国にとっては大きな死活問題へと繋がることを意味するように思えてならない。EUが抱える問題は、ひいてはいずれ日本も直面する問題であると言えるだろう。

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