今まで見たことのないワイルドなR35 GT-R 詳細ページ(17364) - イベント・レースレポート

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今まで見たことのないワイルドなR35 GT-R




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By Stefan Kotze
 

Chapters

1. Introduction
2. Let’s Go Racing
3. Designing A Monster
4. Race Against Time
5. A Year Later
6. The Lowdown
7. Running Gear
8. The Power Within
9. The Hotzone
10. Cutting Room Floor
 

1. Introduction

2019年4月に南アフリカのNissan R35 GT-R「The Sheriff」がネットで大きな話題となった。
 

R35の中でも一番大きいエアロをつけており、一年後の今日でも「Scribante GT-R」でグーグル検索をすると17,000以上のヒットが出て来る。
 

この画像は、チームに依頼され、午前5時にGT-Rが完成した直後に撮ったものだ。この画像のリリース直後、世界中の媒体から高画質リクエストが入り、受信トレイはいっぱいだった。しかし、この画像はその時Speedhuntersに載ることは無かったが、そこには理由があった。
 

この時点で車はまだ外にも出しておらず、Scribante Racingは画像を見て分かること以外、何も明かさない予定であった。他のサイトはそれでも記事を進めて行ったが、我々はきちんと取材したかった。そしてその時期がやっと来た。
 

この車のストーリーは数年前に始まったものだ。Scribante RacingのチームマネージャーCobus Jonkerは17年以上のモータースポーツ経験を持ち、5年前からFranco Scribanteの元で働いていた。Francoは当時ヒストリックカーレースに参戦していたが、少し飽きていた。興奮することもなく、撤退する考えであった。
 

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CHAPTER TWO Let’s Go Racing

CobusがScribante Racingに入る一年前に、Francoはイギリスで、Chevronが自らフルレストアしたChevron B19を購入した。ピットの奥に止まっていた小さな車は当初、好んでいなかったが、その車の速さを知って考え方が変わった。2014 Simola Hillclimb にB19を参戦することをFrancoに提案し、すぐに説得させた。その結果、Classic Conqueror クラスを5秒以上のタイムで制覇した他、総合的なKing Of The Hill賞も手に入れた。
 

2016年には再びB19でクラシッククラスを優勝したが、今回は38.646秒というコースレコードを叩き出し、新しいHayabusa V8 Chevron B26でKing Of The Hill賞をもらった。
 

残念ながら2014イベント画像はハードディスク破損のため全て消えてしまい、この画像は2017 Simola Hillclimbのものだ。Andre Bezuidenhout は2017に1989 Dallara F1カーを持ち込み、Francoがクラス優勝を果たしたにも関わらず、コースレコードを2秒差で塗り替えた。
 

Scribante Racingは、2018年に新しいサーキット仕様のポルシェを参戦したが、RWDレイアウトのため、綺麗なスタートに苦労した。さらに、サーキット専用にチューニングされた足回りがミッションを破損することになった。
 

これを機にCobusはFrancoにヒルクライムとサーキット専用に使える車が必要だと言った。AWDレイアウトとチューニング性の高いR35GT-Rがすぐに候補として上がった。
 

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CHAPTER THREE Designing A Monster

Simola Hillclimbの一ヶ月後は、2019 Pikes Peak International Hill ClimbだったのでCobusとScribante RacingのチューナーMarcoは飛行機でアメリカへ飛んだ。PPIHC では世界で一番早い(そして派手)なタイムアタックマシンが集まるので、リサーチには最適なイベントだった。
 

ちょうど同じ時期に、デュアルクラッチトランスミッションアップグレードで有名な、ニュージーランドのDodson MotorsportがR35GTシャーシキットをリリースした。このクロモリ製シャーシのことを知り、Cobusは最強のGT-Rを作成するいいタイミングだと確信した。オークランドまですぐ飛び、プロジェクトは開始した。
 

同時にScribante Racing は、Dynamic Aero Solutions のDr. Sammy Diasinos とコミュニケーションも取り始めていた。彼はあの有名なPR Tech Racing RP968のエアロを開発した男だ。RP968はシドニーオーストラリアで開催されているWorld Time Attack Challengeの2018, 2019チャンピオンである。
 

Dr. Diasinosは R35 GT-R の3Dスキャンを元に知識を貸し、最強のエアロ開発に挑んだ。
 

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CHAPTER FOUR Race Against Time

ニュージーランドから南アフリカに到着した強化シャーシは、Simola Hillclimbの2ヶ月前に届き、レースまでに間に合わせる事は困難だった。さらに、Dodson GT シャーシはドラッグレース用に設計されており、ヒルクライムとサーキット仕様に変えるにはかなり作業が必要であった。
 

チームは6週間休まず、車の作業を続けた。時間の制約を踏まえ、エアロパーツアップグレードを妥協する必要があり、CobusはScribante Porsche のディフューザーとDASのトリプルエレメントリヤウィングを利用することにした。これでリヤ側のエアロはまとまったが、フロント側はまだだった。ここでDr. Diasinos と相談し、Porsche のリヤウィングを加工し、R35のフロントに付けることにした。
 

通常イベント前の2週間はテストに使う期間であり、車は完成していたものの、天候が悪く、テストは不可能だった。雨は1週間以上も降り続け、新しい車のシェークダウン期間はほとんどなかった。
 

テスト開始後、様々な問題が発生した。インジェクターの不具合でエンジンは、ミスファイヤーし、トランスミッションも正常にギアシフトを行わなかった。レベルの高いプロジェクトには当たり前のような問題だが、時間に追われてさらに深刻だった。
 

Port Elizabeth のAldo Scribante サーキットで5日間ノンストップ作業し、問題点を一つずつ解決して行った。その間、DodsonはNew Zealandで新しいミッションを準備し、空輸で緊急発送を手配していた。新しいギアボックスは、イベント前日Knysnaに届き、チーム全員は徹夜で車の作業に取り掛かった。
 

車は奇跡的に朝までに完成し、GT-Rはスタートラインに並ぶことができた。これは努力以外の何ものでもない。
 

車の画像はネットで掲載され、特にエアロを批判する声が多かった。やり過ぎだと感じた人達がほとんどであった。しかし、車は初日問題なく走行し、Modified Saloon記録まで塗り替え、世間を黙らせた。
 

レースイベント本番に向けて期待は高まったが、最後から2番目の走行で、ギアボックスの問題がまた現れた。5速シフトが行えず、止むを得ずエンジンのレブリミットを上げ、4速ギヤを長くホールドできるようにした。イベント側の進行も遅れ、Francoが勝利をかけるアタックのためにスタートラインに並んだ頃はほとんど暗かった。
 

車にはヘッドライトもなく、視界が悪いなか、Francoは今まで以上にコースを攻め、見事優勝に輝いた。この不思議なルックスのGT-Rに優勝する実力があるということを、世の中に証明できたことがチームにとって大きな出来事であった。車のポテンシャルもまだまだあった。
 

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CHAPTER FIVE A Year Later

この車はかなり前から取材しようと思っていたが、Scribante Racingは4台もの車を走らせており、連絡の取り合いが難しかった。そしてその後はコロナ…
 

しかし、ようやっと1週間前に取材を実現することができた。
 

この日はチームにとって数ヶ月ぶりのサーキット走行だった。過去の問題点は全て解決され、さらなるアップグレードもされていたので、良い結果が出せるとチームは自信を持っていた。
 

この短いテストも成功だった。これで車はいつでも南アフリカのレースに参戦できる状態になった。その日がいつ来るか分からないが、早いに越したことはないと全員思っている。
 

CHAPTER SIX The Lowdown

このモンスターマシンの正体を知りたい人もきっと多く、ここで公開できる日がようやく来た。
 

FIA基準4130 クロモリスチール製の手作りDodson Motorsport GT シャーシキットがベースになっていることはもう知っていると思う。シャーシ剛性は非常に高く、何よりもノーマルR35 GT-Rのユニボディーよりはるかに軽い。フルカーボンファイバーボディーパーツでさらなる軽量化を図っている。
 

フロントエアロにはDynamic Aero Solutions カーボンファイバースプリッターと、以前説明したPorscheのリヤから外したSimon McBeath デュアルエレメントカーボンウィングを利用している。
 

リヤ側の巨大なスワンネックウィングが目立つ。これもDynamic Aero Solutions 製であり、調整式トリプルエレメントブレード式だ。巨大なエンドプレートはコーナリングの安定性のためにCobusとチームによって付けられた。エンドプレートはロッドでシャーシに直接繋がっており、最大限のボディー剛性を発揮している。リヤにはScribante Racing カーボンファイバーディフューザーも取り付けてある。
 

結果として、最低ダウンフォースは280km/hで550kg/wheelとなる。
 

右後ろのクォーターウィンドーにはエアジャッキシステムのコネクションがあり、車の作業もやり易くなっている。横のドライブレークフィラーで燃料をカスタムタンクに入れる。
 

最後にカーボンファイバーカスタムボンネットにはエンジンルームの熱を効率よく逃すダクトが、リヤ側に設置されている。
 

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CHAPTER SEVEN Running Gear

4輪には18×13インチBC鍛造センターロックホイールが利用され、ヒルクライム専用の31/71-18サイズMichelin Pilot Sport H S5Cスーパーソフトスリックタイヤを履いている。
 

ブレーキキャリパーにはAP Racing 6ポッドを使用し、フロントにはVari製、リヤにはノーマルR35bremboディスクを使っている。レーシングコンパウンドブレーキパッドとカスタムエアダクトでシステムはコンプリート。
 

足回りにもかなり力が入っている。Öhlins Racingダンパーを利用しているが、リヤはインボード形式になっている。フロントとリヤサブフレームはVerkline製で、ステアリングにはWisefabパーツをチョイス。
 

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CHAPTER EIGHT The Power Within

VR38DETTエンジンのチューニングパーツリストは長い。スリーブ加工されたエンジンブロックにはWinbergクランクシャフトが導入され、Manley Pro Series Turbo Tuff I ビーム コンロッドと鍛造ピストンで腰下をまとめている。シリンダーヘッドにはKelfordカムシャフト、オーバーサイズFerreaバルブを利用。Auto Verdi Racingドライサンプシステムでエンジンにオイルを常に回している。
 

吸気側にはPWRインタークーラーとAMS Alphaカーボンファイバーマニホールドが取り付けられている。ハイキャパの燃料システムにはWeldon A16000-Aポンプ、Weldonバイパスレギュレーター、T1 Race Developmentプライマリー・セカンダリー燃料レールにInjector Dynamics ID1700X インジェクターx12個を使用。M&W CDI システムで点火をコントロールしている。
 

ETSマニホールドにマウントされたGarrett GTX3582R Gen II ターボチャージャーx2個でパワーを発生し、排ガスはDodo Fab チタン製フロントパイプからチタン製シングルサイド出しマフラーに繋がっている。
 

この結果はお見事だ。PDM15, PDM30 とSVIM モジュール付きのMoTeC M150 ECUはMarcoの手によってセッティングされ、8500rpmの回転数を実現し、エタノールで0.7bar (10.2psi) 〜 2.5bar (36.7psi)までブーストをかけられる。ピーク出力は1,600hpで最大トルクは1,070ft-lb。
 

ハイパワーR35 GT-Rの弱点はGR6トランスミッションだ。前にも言ったがこの車は Dodson MotorsportアップグレードミッションとShepTransビレット製フロントデフハウジングを利用している。リヤにはWavetracデフがマウントされている。
 

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FINAL CHAPTER The Hotzone

内装では、カーボンファイバーが目立ち、完全にレース仕様だ。ダッシュボードとドアパネルも全てカーボン製。
 

Racetech 119 Seriesシートが左側にマウントされ、Racetech 5点ハーネスとペアリングされている。
 

ステアリングはAPS Sport Line製で、シンプルなデザインと簡単にたくさんのボタンが取り付けられる事で選ばれた。Woodward クイックリリースハブ、MME MotorsportシフターとScribante Racingの自社製電気モーター駆動油圧式パワーステアリングシステムユニットも使用している。
 

15ボタンキーパッドと組み合わせられたMoTeC C187カラーダッシュディスプレイで重要な情報を確認している。奥にはTiltonペダルボックスと軽い小型レースバッテリーが設置されている。
 

内装に残っている純正GT-Rパーツはギヤレバーとstart/stopボタンを取り囲むセンターコンソールハウジングだけだ。
 

Franco、 Cobusと才能溢れるチームは究極のモンスターマシンを作った。今後はさらなる活躍をするだろう。
 

2020 Simola Hillclimbは5月に開催される予定だったが、コロナの影響で中止になった。
Francoは10月に予定されているBraga, Portugal のFIA Hill Climb Masters にも招待されたが、本当に開催されるかどうかはまだ未定だ。もちろんオーストラリアで10月予定のWorld Time Attack Challenge も検討している。
 

とにかくScribante Racing GT-Rが1日でも早くフルポテンシャルを発揮できることを願っている。
 

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Stefan Kotzé
Instagram:stefankotzephoto
www.stefankotze.com
info@stefankotze.com
 

記事提供元:SPEED HUNTERS
 

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