トヨタ新型「スープラ」初公開 in デトロイトモーターショー2019
今年のデトロイトには欧州メーカーが展示しなかったためいつもと比べ、会場は寂しかった。
しかし、その分だけこの車の注文度は高く、ここ数日リークが止まらなかったトヨタスープラがようやく姿を現した。
満席の会場で豊田社長は自分とスープラの長い歴史、そしてスープラを乗った思い出を語った。今回のスープラは5代目であり、17年ぶりの登場だ。BMWとのコラボプロジェクトにより現実し、オーストリアのマグナ・シュタイア工場で生産される。チーフエンジニアの多田氏は、元々ハチロクとBRZのチーフエンジニアであり、コラボでの経験を持っていた。
スープラの絶対条件だった直6エンジンを作っていたのは当時BMWしかなかったため、パートナー対象になったと言う。
しかしハチロク・BRZコラボと今回の関係は違ったという。前回はコストを抑え、なるべく共通のパーツを使ってビジネスケースを成り立たせる必要性があったが、今回はもっと高いポジションの車だということで、各チームはなんの制約もなく好きな車を作ることができた。
ハードウェアは共通しているが、開発はBMW Z4チームと別に行った。同じプラットフォームとシャーシパーツを使っているのに完成するまでお互いの車に乗らなかったというからびっくりする。それだけ開発は独立していたと言うことだ。
開発期間は7年間もかかり、通常トヨタの2-3年開発期間に比べるとかなり長い。それだけ気合が入っていたのだろう。
エンジンとシャーシは共通化しているので同じ走りかと思われがちだが、Z4はオープンスポーツでスープラはクーペのため、根本的に違う。ボディ剛性、ステアリング、車重も違う。Z4の方が若干パワー出ているが、スープラの方が軽く、本格的なハンドリングが期待される。
スープラは初めからレース目的として開発されたため、最初から色々な工夫が組み込まれた。市販モデルボディにある穴は塞がれていて批判されやすいかもしれないが、これはダミーではなく冷却とエアロを想定し、作業時間を少しでも減らすために設けられた。
さらにパフォーマンスロスの原因となる熱を抑えるためにエンジン、ミッション、デフ周りなどにクーラーなど取り付けるちょっとしたスペースも配慮した。エンジンはBMW製の直6 B58タイプで335馬力発生。ライトスポーツの4気筒バージョンも日本で発売される予定であり、軽いメリットがある。ハードウェアはBMWと一緒だが、ステアリング、シフトポイント、足回りのセッティングはまったく違う。GRラリーエンジンからヒントも得てレスポンスの良いターボラグのない仕様にした。
マニュアルミッションの選択はないが、高いトルクにも耐えられるZFスポーツ8ATを積んでいる。街乗りがしやすいノーマルモードと走りに最適なスポーツモードがある。ハチロクに比べ、スープラの走行スピードが高いためマニュアルギアチェンジに気を取られず、ドライビングに集中できるように使用したという。
外見は好評だったFT-1コンセプトカーに似ているが、寸法が違うため全て作り直したという。とにかく軽量化するため小さい車にしたかったらしい。FT-1のデザクィンテーマが「Extreme」だったため今回のデザインテーマは「Condensed Extreme」にしたとチーフデザイナー中村氏が語った。
デザインには2000GTとA80スープラの面影も作り込んでいた。再度プロフィール、リヤフェンダーあたりや、サイドウィンドウがポイントだという。ネット上では賛否両論だが、我々はかなり気にいっている。実物を見ると、画像では伝えきれない迫力があるのでぜひ実物を早く見てもらいたい。今後のアフターパーツエアロにも期待したい。
インテリアは新世代コクピットをイメージしたデザインでありBMWのスイッチをいくつか使っているが、それ以外のパネル、ソフトウェア等は全てトヨタのオリジナルである。もう少し近未来的なデザインが欲しかったが、この方向性も嫌いではない。
車離れが進む中、SUVやCUVが流行る時代にこういうワクワクするスポーツカーをリリースするのはとても嬉しいことだ。メーカーとしては非常に難しく、大きな決断が必要だったと思う。やはり豊田社長の情熱がプロジェクトを押していたはず。
今後さらに進化していくと思われるスープラに期待したい。
スポーツカーの将来はまだまだ明るい。