FIA WEC 富士6時間耐久レースが3年ぶりの開催。トヨタがワンツーフィニッシュ
9月9−11日、静岡・富士スピードウェイにおいて世界耐久選手権レース第5戦が開催された。秋晴れの好天気に恵まれた決勝日。レースはポールポジションスタートを決めたトヨタGAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッドが、しばしトップを快走。だが、開始から3分の1を前に姉妹車の8号車がトップを奪取。その後は両車とも安定した速さで周回を重ねたが、2台の差は詰まることなく8号車が終始リードしたままチェッカーを迎えた。8号車にとっては、6月のル・マン24時間レース以来、2度目の勝利となった。
・小林可夢偉がポールポジションを獲得
土曜日の予選。朝はやや薄曇りだったが、午後に入ると好天となり、絶好のアタックコンディションに恵まれる。午後3時にスタートしたハイパーカー及びLMP2クラスの予選アタックでは、7号車に小林可夢偉、8号車はブレンドン・ハートレーが乗り込み、コースへと向かった。一方、今シーズン途中、前回のレースでデビューを果たしたプジョー9X8は、93号車にジャン・エリック・ベルニュ、また94号車はかつて日本のレースでキャリアを積んできたロイック・デュバルがステアリングを握り、リヤウィングのない斬新なマシンでアタックを開始した。
たった10分間という短い予選セッション。アウトラップでタイヤを温めると、すぐにアタックへ。可夢偉が1分29秒234をマークし、トップに立つと、ハートレーが1分29秒265の僅差で2位に。一方、プジョーは93号車が4番手、94号車が5番手の結果となり、36号車のアルピーヌA480・ギブソンが両チームの間を割って入る形で3番手につける結果となった。
予選結果
ハイパーカークラス:No.7 トヨタGAZOO Racing(トヨタGR010ハイブリッド)
LMP2:No.38 JOTA(オレカ07・ギブソン)
LMP2 ProAM:No.83 AFコルセ(オレカ07・ギブソン)
LMGTE Pro:No.92 ポルシェGTチーム(ポルシェ911 RSR-19)
LMGTE Am:No.33 TFスポーツ(アストンマーティン・バンテージAMR)
3年ぶりの日本開催に、4万人超のファンが来場
コロナ禍で日本での開催が中止されていたWEC。3年ぶりの開催を心待ちにしていたファンにとって、日本で初めて出走するトヨタGR010ハイブリッドやデビューして日の浅いプジョー9X8はもちろんのこと、今シーズンを持ってクラスが廃止されるLMGTEの”日本ラストラン”を楽しみにしていたことだろう。安定した天気が続いた現地から、富士山も勇姿を惜しげなく披露。ただ、時節的に雪化粧には早過ぎたのが残念だった。
グリッドセレモニーで全車がズラリと整列。国歌独唱やスタートマーシャルへの日本国旗の手渡しなどが行われ、午前11時に6時間にわたる決勝レースがスタートを切った。
ハイパーカークラスはポールポジションの7号車が好スタート。ドライバーはアタックも務めた可夢偉。対する8号車にはセバスチャン・ブエミが乗り込む。オープニングラプのダンロップコーナーでは、LMP2クラス2台が絡む接触が発生したが、その後、レース中はほとんど大きなアクシデントもなく、クリーンな展開が続いた。最初のピットインは、レース開始からまだ1時間も経たないタイミングで実施。トヨタ勢は7号車からピットインし、翌周には8号車が続き、両車ともドライバー交代せず、ダブルスティントを行った。
その後、この2台の順位が入れ替わったのは、64周のダンロップコーナー。8号車が先行して周回を続けた。すると、7号車は開始から2時間を前に2回目のピットイン。今度はタイヤ交換、給油に加えてドライバー交代も行う”フルサービス”でホセ・マリア・ロペスへと代わった。また、これに続くように翌周には8号車もピットへと戻り、同様の作業を実施。ハートレーがステアリングを握った。
レース3分の1を過ぎ、94号車のプジョーに異変が生じる。折りしもデュバルがドライブ中にクルマ後方から白煙が確認され、このままピットへ。すぐに修復はできず、ガレージに一旦クルマを収めて作業に取り掛かることとなった。トラブルの原因はオイルリークだったようで、修復には20分ほどかかったが、コース復帰後はそのまま走行を続けた。ところがその後、今度は姉妹車の95号車にも同様のトラブルが発生。すでに原因が明らかであったため、手短に修理を済ませてコースへと復帰している。
一方、トヨタ勢は安定したペースで順調に周回を重ねていく。中でも8号車のペースが良く、時間の経過とともに2台のタイムギャップはおよそ30秒近くまで広がることに。そしてレースは残り2時間となり、7号車にはマイク・コンウェイが、また8号車は平川亮がドライブを担当。トヨタ2台がレースを牽引する形で、終盤へと向かった。
コンウェイと平川によるドライブが1時間を過ぎ、最後のピットインを実施。すでに2台には1分近くの差があり、何事もなければ8号車による勝利の可能性が広がってくる。今シーズンからGAZOO Racingのメンバーとなり、トップクラスでWECフル参戦を始めた平川は、母国日本での凱旋レースでも冷静かつ攻めの走りを披露する活躍。堂々とした戦いぶりに一歩、また一歩と優勝が近づいて行った。
結果、スタートから6時間を経過した午後5時、平川が乗る8号車がトップで232周走破のチェッカーを受けると、その1分8秒後に7号車がフィニッシュラインを通過。そして予選3番手の36号車が230周を走って3位となっている。また、デビュー2戦目のプジョーは93号車が225周を走り、4位となっている。
LMP2クラスでは、終盤になってもトップが激しい争いを展開したが、オープニングラップでクラストップを奪取したNo.31 WRTがクラストップをキープ。クラスポールの38号車が猛追を重ねたが、31号車が逃げ切った。
LMGTE Proクラスでは、予選ポールの92号車に代わって、AFコルセの51号車、52号車(Ferrari 488 GTE Evo)が激しい同士争いを展開。92号車もこれに続いたが、逆転には至らず。51、52号車は時折ポジションを入れ替えての走りを展開したが、最終的に51号車が安定した走りでトップチェッカーを受けた。
そしてLMGTE Amクラスは、日本のチームとしてシリーズ参戦を続けるNo.777 D’Station Racingのアストンマーチンが奮闘。予選では違反が発覚し、そのペナルティによりクラス最後尾スタートを強いられたが、レース序盤に見事な追い上げでその遅れを解消。時にクラストップ争いを演じる優れたパフォーマンスを披露し、クラス3番手でレースを終えている。一方で優勝を果たしたのは、クラスポールの33号車だった。
今シーズンは全6戦で開催されるWEC。早いもので、次回が最終戦となる。舞台はバーレーン。ル・マン24時間レース以外のシリーズ戦は基本的に6時間レースにて実施されるが、最終戦は8時間レースで開催。11月12日に決勝を迎える。
決勝結果
ハイパーカークラス:No.8 トヨタGAZOO Racing(トヨタGR010ハイブリッド)
LMP2:No.31 ART(オレカ07・ギブソン)
LMP2 ProAM:No.83 AFコルセ(オレカ07・ギブソン)
LMGTE Pro:No.51 AFコルセ(フェラーリ488 GTE Evo)
LMGTE Am:No.33 TFスポーツ(アストンマーティン・バンテージAMR)