2016ル・マン24時間耐久 - イベント・レースレポート

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2016ル・マン24時間耐久

2016年6月20日 更新

ル・マン24時間、まさかの結末を経てポルシェが連覇!

日曜日の午前を迎え、ル・マンの天気はすっかり晴れ模様。結局、雨の心配はなくなり、各車がチェッカーを目指し、周回を重ねるステージへと入った。

午前9時を過ぎ、トップ2台はトヨタが堅守。ルーティンのピットインを立て続けに行なうと、ライバルの2号車ポルシェが代わってトップに立ち、その後方をかなりの周回遅れで8号車、7号車のアウディが走行するという形に長らく変化はなかった。だが、お昼を前に、2号車を追い立てていた6号車がカーティングコーナーで痛恨のスピン。6号車をドライビングしていた小林可夢偉が巧みなコントロールでグラベルベッドでのスタックを回避したものの、2号車との差を25秒と大きく広げてしまった。さらに、ルーティン時には傷めた部署を応急処置する悲調に迫られるなど、最後になって慌ただしい作業が重なってしまった。

レースはその後、午後3時のチェッカーに向け、静かな準備が始まることになった。トップ3台のうち、2号車ポルシェは予選で最速タイムをマークしたN.ジャニを擁してラストチャンスに照準を合せる。一方、トヨタは6号車が先にピットインし、サラザンへ。そしてこの時点でトップをひた走るトヨタの5号車には、中嶋一貴が乗り込んだ。

日本チーム、日本人選手によるル・マン初制覇の実現を目前に、3番手の6号車も2号車逆転のチャンスを狙ってはいたが、それよりも一層注目が集まったのはトップ5号車とそれを追う2号車の攻防戦。チェッカーまで残り15分となる頃には、2台の間におよそ30秒という差が生まれており、このまま何事もなければトヨターポルシェートヨタの並びで長い戦いが幕を降ろすものと思われた。だがしかし、ドラマはここで終わらない。

なんとあろうことか、中嶋がメインストレート前から超スローダウンを喫し、チーム前ピットで車両を止めてしまう。システムをリセットし、再スタートを切るには成功したが、すでに2号車の先行を許してしまった。さらに、苦労してなんとかコース1周を走り終えた中嶋ではあったが、規則により、完走扱いにはならず。待ちわびた勝利がはらはらと手から落ちていくまさかの結末となってしまった。

これまでも数多くのドラマを生み出してきた伝統のル・マン。だがしかし、今回ほど劇的な、そして悲惨な筋書きはこれまであっただろうかと思うほど、トヨタにとっては無情の結果をもって戦いを終えている。

 

◎ル・マン24時間レース決勝結果(総合トップ3および各クラストップ)

 

1.No.2 ポルシェ919ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/M.リーブ)384周
2.No.6 トヨタTS050ハイブリッド(S.サラザン/M.コンウエィ/小林可夢偉)381周
3.No.8 アウディR18(L.ディ・グラッシ/L.デュバル/O.ジャービス組)372周

LMP2
No.36 アルピーヌA460・ニッサン(G.メネセス/N.ラピエール/S.リチェルミ)357周

LMGTE Pro
No.68 フォードGT(J.ハンド/D.ミュラー/S.ブルデー)340周

LMGTE Am
No.62 フェラーリ458イタリア(W.スウェードラー/T.ベル/J.シーガル)331周

 

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(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月19日 更新

18時間を経過したル・マン24時間、5号車トヨタがトップを奪取

薄曇りのまま朝を迎えたル・マン。幻想的な朝焼けもなく、早くもレース4分の3を消化し、午後3時のチェッカーに向けて着々と周回が重ねられている。

午後3時以降、一旦は落ち着きを取り戻したかのような各チームだったが、ポルシェ勢はすでに1号車が後方に沈み、2号車が5、6号車を擁するトヨタ勢に孤軍奮闘の状態で戦いを続けていた。一方、アウディは早いタイミングで7号車が遅れをとっており、8号車に至ってもエキストラの作業が重なり、トップ争いからは差をつけられていた。

午前7時半頃、3回目のセーフティカーがコースイン。このタイミングを利用してピット作業を行なったトヨタの2台は、先に6号車がコースイン、それに5号車が続くというルーティンワークを行なった。一方、SCランを受け、レースはピットロード出口に規制をかけており、2台のコース復帰のタイミングがほぼ同時になってしまった。結果、コース上でトヨタの2台が激しい戦いを展開。午前8時前には5号車、6号車とポジションを入れ換えて周回を重ねていくこととなった。

その後もトップ2をトヨタがキープ、その背後には2号車のポルシェが隙あらば逆転を目論む位置で走行を重ねており、予断を許さない状態。小さなミスやちょっとしたトラブルが、チェッカーに向けての結果に大きな影響を与えそうだ。

◎ル・マン24時間レース途中結果(午前9時・18時間経過/総合トップ3および各クラストップ)


1.No.5 トヨタTS050ハイブリッド(A.デビッドソン/S.ブエミ/中嶋一貴)284周
2.No.6 トヨタTS050ハイブリッド(S.サラザン/M.コンウエィ/小林可夢偉)+31.456
3.No.2 ポルシェ919ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/M.リーブ)+48.070

LMP2
No.36 アルピーヌA460・ニッサン(G.メネセス/N.ラピエール/S.リチェルミ)267周

LMGTE Pro
No.82 フェラーリ488GTE(G.フィジケラ/T.バイランダー/M.マルセリ)252周

LMGTE Am
No.62 フェラーリ458イタリア(W.スウェードラー/T.ベル/J.シーガル)245周

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月19日 更新

12時間を経過したル・マン24時間、6号車トヨタがトップを堅守

スタート時は目まぐるしい天候の変化に振り回された伝統のレース、ル・マン24時間。だが、セーフティカーが戦列を去ると、60台の戦闘車輌は次第に各々のペース配分を意識した走りを見せるようになる。

レース序盤から14周でピットインを行なっていたトヨタ勢。ディフェンディングチャンピオンのポルシェが13周だったのに対し、この1周のアドバンテージが結果的に戦いを有利な方へと導くことになったかもしれない。レース開始6時間を過ぎてトップについた6号車トヨタは、その後もペースを乱すことなく周回を重ねていった。これに対し、ほぼ同様のレース運びを見せていたのが、2号車のポルシェ。ルーティンワークのピットインごとにこの2台が順位を入れ替える新た添いとなった。

一方で、車両トラブルに見舞われたのが1号車のポルシェ。クラッチトラブルに見舞われ、ピット作業が予想以上に長引くことになり、これまで盤石だった体制、レース運びに突如として暗雲が立ち込めてきた。レースはその後、2度にわたるペースカーのコースインで、ライバルとの差が縮まることになったが、やはりその中で安定した速さをキープし続けたのはトヨタ勢。逆に1号車は水温上昇によるウォーターポンプの交換を強いられ、大きくロスタイム。まさかの後退となる。

結果、スタートから12時間が経過して、トップは6号車が堅守。ピットインのタイミングによって2号車が前に出ることもあるが、3番手には5号車トヨタが続き、4番手には8号車アウディが続いている。

 

◎ル・マン24時間レース途中結果(午前3時・12時間経過/総合トップ3および各クラストップ)

 

1.No.6 トヨタTS050ハイブリッド(S.サラザン/M.コンウエィ/小林可夢偉)187周
2.No.2 ポルシェ919ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/M.リーブ)+44.469
3.No.5 トヨタTS050ハイブリッド(A.デビッドソン/S.ブエミ/中嶋一貴)+1’41.232

LMP2
No.36 アルピーヌA460・ニッサン(G.メネセス/N.ラピエール/S.リチェルミ)174周

LMGTE Pro
No.82 フェラーリ488GTE(G.フィジケラ/T.バイランダー/M.マルセリ)166周

LMGTE Am
No.88 ポルシェ911RSR(K.アル-クバイシ/D.H.ハンソン/P.ロング)161周

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月19日 更新

ル・マン24時間レース、6時間を経過し、6号車トヨタがトップに

6月18日、現地時間午後3時にスタートを切った第84回ル・マン24時間レース。60台の参戦車両がグリッドに整列してセレモニーが行われる中、いわかに雲が上空を覆い始め、あっという間に本降りの雨に。通常のローリングスタートではなく、セーフティカー先導による戦いの幕開けを迎えることになった。

スタートフラッグを振る予定だったブラッド・ピット、さらにはチームオーナーのジャッキー・チェンやパトリック・デンプシーなどセレブが顔を揃えても、雨を回避することができなかった今年のスタート。結局、セーフティカーは1周14km弱のコースをまるまる7周、ほぼ53分近くを走ることになり、8周からようやくレースモードに切り替わった。

水しぶきを上げて車両が走る中、早くも6号車のトヨタが果敢に攻めの走りを見せてポジションアップに成功。その一方で、あっという間に天候は回復の兆しを見せて、薄日が挿すようになった。これに合わせるように各車がタイムアップ、1号車のポルシェを先頭に、6号車、8号車のアウディと続いた。一方、思わぬトラブルに見舞われたのが、5号車のトヨタと7号車のアウディ。5号車はステアリング系のトラブルで序盤にペースが上がらず、さらに7号車はターボ交換を強いられ、遅れを取った。

その後は大きなハプニングもなく、確実に周回を重ねる中での戦いが進み、レースから3時間が経過した時点でトップは1号車、2番手には6号車、3番手に8号車という形となった。一方、ピットインのルーティンワークに目をやると、ポルシェ勢が13周であるのに対し、トヨタは1周多い14周で周回。一方、アウディは12周、13周と安定さを欠き、ライバルから遅れを取っていった。

結果、6時間を過ぎて逆転に成功した6号車がレースをリード、100周の時点ではそこから5秒強遅れて1号車が追随し、2号車が3番手で続き、アウディは8号車が番手につけている。

◎ル・マン24時間レース途中結果(21時・6時間経過/総合トップ3および各クラストップ)


1.No.6 トヨタTS050ハイブリッド(S.サラザン/M.コンウエィ/小林可夢偉)94周
2.No.1 ポルシェ919ハイブリッド(T.ベルンハルト/M.ウェーバー/B.ハートレー)+1‘01.841
3.No.5 トヨタTS050ハイブリッド(A.デビッドソン/S.ブエミ/中嶋一貴)+1’25.615

LMP2
No.46 オレカ05・ニッサン(P.ティリエ/M.ベッシェ/平川亮)87周

LMGTE Pro
No.82 フェラーリ488GTE(G.フィジケラ/T.バイランダー/M.マルセリ)83周

LMGTE Am
No.88 ポルシェ911RSR(K.アル-クバイシ/D.H.ハンソン/P.ロング)82周

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月18日 更新

伝統のル・マンから…

今年で開催84回目を迎えるル・マン24時間耐久レース。戦前から行われてきた伝統の一戦は、かつて偉大なる草レースとも言われていたが、今ではアウディ、ポルシェ、そして日本のトヨタが最新のテクノロジーを投入し、過酷な舞台から得た膨大なデータを市販車にフィードバックする場になっている。その一方で、フランス国内に留まらず、ヨーロッパ各地からも多くのレースファンがこぞって押しかける年に一度の大イベントであり、彼らが胸躍らせる“お祭り”でもある。今回は、その現場の様子の一部をお伝えする。

 

新たな歩みが次の歴史を作る

 

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ピットビルディングにデカデカと貼られたバナーはレースイベントを主催するACO(フランス西部自動車クラブ)プロデュースもの。「伝統は継続される」というメッセージそのものがル・マンの存在を意味するとも言えるだろう。伝統を大事にする一方、イベントの情報発信には最新の手法を積極的に導入。ライブカメラ、携帯端末のアプリなど、世界中にいるル・マンファンがいち早くレースの情報をゲットできるように、とその歩みは留まることがない。この継続する力こそが、新たなる伝統を作る…、そんなメッセージのようだ。

 

晴れのち雨、雨のち…!?

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フォードシケイン側から見たメインスタンド。今年のル・マンは天候変化が激しく、少し晴れ間が見えたかと思ったら、再び急激に雨雲が到来、まるで日本の梅雨みたく、しとしと雨をも降らすという実に先が読めない天気が続いている。

3度のセッションが行われた予選も、回数を重ねるごとに不安定さが増長され、ついにセッション3では、豪雨の中でコントロールを失った車両がスピンする様子は、まるで氷上を走っているかのようだった。

 

すべてにおいて安泰!? ポルシェの盤石ぶり

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今年のポールポジションを獲得した2号車のポルシェ。予選セッション1回目にニール・ジャニがマークしたタイムが結果として今年のポールポジションになるという、珍しい展開となった。とはいえ、ポルシェの仕事ぶりを見る限り、このたびのポールポジションは獲るべくして獲ったものであり、ピット内で空力パーツ、足回りの調整などの細かな作業にじたばたしているライバルたちの様子と比較すれば、明らかにアドバンテージを持って戦っているのは明白と言っていいだろう。

 

ポルシェはホスピタリティもゴージャス!

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パドックに設置されたポルシェのホスピタリティブース。チームスタッフに限らず、スポンサーやレース関係者にもアクセスを許可しており、食事時には前菜、メイン、そしてデザートに至るまでごらんのようなご馳走がズラリと並ぶ。中にはすっかりリラックスしてビールやワインを堪能する方々もおり、日本のサーキットではなかなかお目にかかれないような光景を目にすることができた。

 

トヨタ、今年は一貴、可夢偉の元F1ドライバーを擁す!

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昨年のル・マンではポルシェ、アウディの後塵を拝したトヨタ。その悔しさをバネに今年は新たな車両、ハイブリッドシステムを搭載したTS050をリリースし、長丁場の戦いに向けて着々と準備を進めてきた。5号車のアンソニー・デビッドソン、セバスチャン・ブエミ、そして中嶋一貴という布陣に変わりはないが、今年の6号車はステファン・サラザン、マイク・コンウェイ、そして新たに小林可夢偉が加わり、日本のファンにとっては、願ってもないドライバーラインナップになったといえる。金曜日のプレスカンファレンス時には日本のBSテレビ取材を揃って受け、ともにリラックスした表情を見せていた。

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月18日 更新

予選2日目は天候悪化でタイムアップならず。ポルシェがポール獲得

6月16日、予選2日目を迎えた第84回ル・マン24時間レース。前日に続いて天候は不安定で、予選セッションは雨に翻弄される一日となった。
予選セッション2回目は、気温18度、路面温度23度とやや肌寒さを覚える中、午後7時にスタート。ところにより小雨が降るコンディションながら、各車が決勝レースを見据え、雨よりのセッティング確認のため、コースインしていく。

1周13.629km、一般公道を含むサルテサーキットゆえ、「ところにより雨」といっても、時にはコンディションの差が大きく、しっかりと雨が降っているところもあれば、そうでないところもあるなど、極めて難しい状況。レースウィーク中、雨が降ったり止んだりの落ち着かない天候が続いていることからも、セッション中にタイムアップする可能性は低いと思われた。

開始から1時間を前に雨はかなり激しい状態となり、GTE・アマチュアクラスなどは走行を控えるほど。だがその一方で、トップクラスのLMP1では、状況把握を兼ねてコースインする車両も少なくなかった。日本でもウェットレースで抜群の速さを見せていたブノワ・トレルイエ(7号車アウディ)やロイック・デュバル(8号車アウディ)、さらにはLMP2参戦の松田次生(47号車KCMG)や中野信治(34号車レースパフォーマンス)らも出走。様々なコースコンディションを体感することで、決勝に向けての準備を着々を進めていた。

そんな中、しばしライバルの動向を見守っていたポルシェ勢も、午後8時を過ぎてコースイン。1号車はマーク・ウェーバー、2号車もマルク・リーブがステアリングを握った。2時間にわたるセッション中は赤旗こそ出なかったが、アタックもしくはタイムアップできる状況と言える状態ではなかったため、予選順位は前日の1回目から変動は見られなかった。

予選3回目のセッションは午後10時にスタート。ここから2時間が最終セッションとなる。しかし、今年の予選で一番の雨を迎えることになり、アタックはもとより走行そのものが難しいほどの本降りの雨になってしまった。

気温15度、路面温度19度の中、まず何台かの車両がコースインしていくが、路面コンディションを確認するとピットにクルマを戻す状態。さらに酷くなった雨によって、午後10時18分にはセッションそのものが豪雨によって赤旗中断となった。およそおよそ1時間後にはグリーンフラッグが振られ、走行再開となったが、場所によっては霧も出るなど、依然として不安定な状況が続いた。

チェッカーが出される深夜12時を前に、最後の確認を兼ねてコースインするクルマもあったが、そのほとんどはLMP1クラスばかり。中でもトヨタの2台がセッション終了まで走行を重ねていた。

雨に翻弄された3度の予選は、結局前日の予選1回目の結果が有効となり、2号車ポルシェがポールポジションを手中に収め、トヨタ勢は6号車が3番手、5号車が4番手。これにアウディの2台が後方につけることとなった。

予選総合結果(各クラストップ)


LMP1 No2 ポルシェ919ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/N.リーブ)3’19.733
LMP2 No.26 オレカ05・ニッサン(R.ルシノフ/S.ステヴェンス/R.ラスト)3’36.605
GTE Pro No.68 フォードGT(J.ハンド/D.ミュラー/S.ブルデー)3’51.185
GTE Am No.61 フェラーリ458 イタリア(M.W.サン/澤圭太/R.ベル)3’56.827

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月17日 更新

ル・マン24時間、不安定な天候の中、ポルシェがトップタイムをマーク

6月15日、第84回目ル・マン24時間レースの予選1回目が行われ、昨年の覇者ポルシェが盤石の走行を見せ、暫定ポールポジションを獲得した。

15日は、まず午前4時から4時間にわたるフリー走行を実施。レースウィークに入ってからのル・マンは天候不順の毎日で、この日も午前中は済み廻った青空が広がっていたが、午後に入るとにわかに下り坂へと変わり、いつ雨が降ってもおかしくない状況になった。案の定、小一時間もすると雨がポツリポツリと落ち始め、本降り状態に。その後も降ったり止んだりと、落ち着かない中でタイヤテストやセットアップなどの作業を進めていた。

途中、2度の赤旗中断をはさみ、日差しが出るまで天候が回復すると、今度はポルシェの2台が牽引するような形でタイムアップする車両が続出。セッション終了10分を前に、2号車のポルシェが3分22分011をマークし、トップに躍り出る。結果、このタイムがフリー走行でのトップタイムとなった。

迎えた午後10時。日の入りを前に薄曇りの中で予選1回目のセッションが始まる。開始10分を前に6号車のトヨタを駆るステファン・サラザンが3分20秒737をマーク、トップへ立つと、ライバル達もタイムアップ。まずは僚友である5号車のトヨタがこれに続いた。しかし、その後は先のセッションでトップタイムをマークしていた2号車が3分19秒733を叩き出し、トップに浮上。このままセッション終了まで、このタイムを上回る車両は現れず。連覇に向けて、まずはライバルに向けて軽くジャブを打つことに成功している。

2号車に続いたのは、ポルシェの1号車。トップから0.4秒強差の3分20秒203をマークしている。3番手には6号車のトヨタ、4番手は5号車のトヨタとなり、ポルシェとアウディの間に割って入る形となっている。

 

◎予選1回目結果(各クラストップ)

LMP1 No2 ポルシェ919ハイブリッド(R.デュマ/N.ジャニ/N.リーブ)3’19.733

LMP2 No.26 オレカ05・ニッサン(R.ルシノフ/S.ステヴェンス/R.ラスト)3’36.605

GTE Pro No.68 フォードGT(J.ハンド/D.ミュラー/S.ブルデー)3’51.185
GTE Am No.61 フェラーリ458 イタリア(M.W.サン/澤圭太/R.ベル)3’56.827
(Text:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月15日 更新

ル・マン24時間、公開車検を終える

6月12、13日、フランスのル・マン市街地において、第84回ル・マン24時間耐久レースの公開車検が行われ、昨年の覇者ポルシェをはじめ、タイトル奪還を目論むアウディ、そして新型車両を投入してリベンジに燃えるトヨタなど、各チームが2日間にわたって全60台が今年の戦闘車輌を“公開”した。

今年は84回目!

2016ル・マン24時間 車検
伝統の一戦を伝えるツールとして、いつの世も変わらないのがレースプログラム。毎年、プログラムやポスター、そして記念ステッカーを飾るのはどのチーム、どのクルマなのか、それも注目のひとつなのだが、今年は至ってシンプルなデザインが施された。ちなみに、タイトルの「MYTHIQUE(ミティーク)」はフランス語で、「神話の、神秘的な」という意味なのだとか。昨年の覇者、ポルシェが最多通算勝利回数を更新して新たな伝説を作るかどうか、そこに注目しての「MYTHIQUE」なのかもしれない。

敗者のままでいいわけない!

2016ル・マン24時間 車検
昨年はル・マン、そしてシリーズ戦でライバルたちの後塵を拝することになってしまったトヨタ。事前に東京で行なわれたメディア説明会では、TOYOTA GAZOO Racing自らが、「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」と自身にカツを入れるかのようなメッセージを用意し、長くタフな戦いに向けて準備を進めてきた。車検後のトークショーでは、ル・マン5年目となる中嶋一貴はなにやら難しい顔をして、そして今年がトヨタからの初挑戦となる小林可夢偉はケータイを手にチームメイトを撮影するなど、リラックスしているようにも見えたが、果たしてその心境はいかに!?

フォードGT、新型車両で参戦

2016ル・マン24時間 車検
今年お目見えするフォードGTは、かつて1960年代にル・マンのレースで大活躍したフォードGT40をイメージしたものであり、ちょうど、ル・マン24時間初制覇から50年のアニバーサリーイヤーが今年にあたるため、これに合わせて市販車モデルがリリースされている。半世紀ぶりの参戦にあたり、フォードは、ル・マンに限らず、WECのシリーズ戦へのフル参戦を実現。今回はその2台に加え、北米のWSCC(ウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ)参戦中の2台の計4台をラインナップする。公開車検時に撮影した69号車には、ライアン・ブリスコー、リチャード・ウェストブルック、スコット・ディクソンが収まるが、うちブリスコーとディクソンがインディカーシリーズ参戦キャリア組。そしてウェストブルックはコルベットのワークスドライバーで経験を積んでいる強豪トリオ。またディクソンは、デイトナ24時間での2度の優勝実績を持つなど、耐久レースでの実績も豊富。しかしながら、ル・マン自体は初参戦のため、”ルーキー”。様々なレースキャリアを駆使して挑む、初ル・マンとなる。

二世ドライバーもエントリー

2016ル・マン24時間 車検 2016ル・マン24時間 車検

ネルソン・ピケ、アラン・プロストと聞けば、かつてのF1チャンピオンだと思い浮かぶ人も多いはず。そんな彼らの息子たちがル・マンへと姿を見せている。以前は、ナイジェル・マンセルも息子ふたりとともに参戦して大きな話題となったが、今回は息子らに限っての参戦だ。ピケの息子はピケJr.、そしてプロストの息子ニコラ・プロストは、同じチームでLMP1のハイブリッド非搭載車リベリオン R-ONE-AERをドライブ(写真左がネルソン・ピケJr.、右がニコラ・プロスト)。ちなみに、残るチームメイトはというと、元F1ドライバーであるニック・ハイドフェルド。なんと豪華な、そしてイケメンぞろいのトリオだけに、色んな意味で注目を浴びそうだ。

アウディ、今年は優勝なるか

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車検を待つアウディのトランスポーターには多くのカメラマンが鈴なりに。テストデイを終えてさらにブラッシュアップされたアウディR18をいち早く写真に収めようとスタンバッっている模様。そんな中、日本でも活躍した/活躍中のドライバー3人(写真左のアンドレ・ロッテラーと中央のブノワ・トレルイエはチームメイトで7号車をドライブ。右のロイック・デュバルは8号車のドライバー)が集まって、日本のレース雑誌を手になにやら楽しそうな雰囲気。つねにリラックスモードの様子だった。

一方、トランポからクルマが降りてくると、カメラマンの撮影モードもピークに。今年のR18はこれまでの車両と比較し、外観に大きな変化が見られる仕上がりとなっており、空力コンセプトに合せてハイノーズ化されたフロント部も特徴のひとつといえる。

恒例の集合写真撮影も終了。あとは本格的なレースモードへとスライドしていくル・マン24時間レース。まず。14日、火曜日は参戦ドライバーの集合写真等が行われ、実走行は15日、水曜日から。現地時間(日本との時差は7時間)の夕方4時から8時までがフリー走行、そして午後10時から深夜12時までが予選1回目となる。ウィークを迎えてからは毎日雨模様のル・マン。降ったり止んだりの忙しい空模様がこのまま続くともいわれているだけに、複雑に入り組んだドラマが待ち受けているような気がする。

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)



2016年6月12日 更新

2016年のル・マンは、トップ3の「進化」を比較せよ!

日本列島がほぼ梅雨入りすることとなった6月上旬。日がすっかり長くなったヨーロッパでは様々なスポーツイベントが花盛り。フランスでは、サッカーのユーロカップも始まっているが、モータースポーツ好きであれば、いよいよ恒例の「お祭り」が気になるはず。そう、今年もフランスでのル・マン24時間レースが幕を開ける。すでに第一週目の日曜日にはテストデイが実施され、本戦に向けてのカウントダウンが始まったと言ってもいいだろう。世界の名だたる自動車メーカーが先陣を切って参戦し、その技術の進歩に合わせてレース規則も年々シビアになっているこの戦いで、今年はどんなドラマが生まれるのだろうか。

 

トヨタ、惨敗からの学び

一昨年、念願のゼッケン1を手にしたトヨタ。だが昨シーズンほど辛酸を舐める戦いはなかったのではないか。というのも、進化した車両で挑んだ戦いでは、ライバルのポルシェ、アウディの更なる進化に及ばず、ディフェンディングチャンピオンとして納得のいかないシーズンを過ごすことになったからだ。そこで首脳陣は2017年からを予定していた新車投入の前倒しを敢行。2年後の予定を1年後にするというのは、レース界においてかなりの荒技。だがしかし、ル・マンに限らず、今や世界耐久シリーズ(WEC)としてシーズンでの戦いを考慮すれば、それしか手段は残されていなかったとも言える。

結果、トヨタは新車「TS050 ハイブリッド」を誕生させ、新たに2.4リッター・V6直噴ターボエンジンというユニットの搭載を決行。またハイブリッドシステムとして、これまで使用してきたキャパシタ式の蓄電装置を廃止、代わりにリチウムイオン電池を採用した。これは、ル・マン24時間という長距離レースで戦う車両の進化としては、保守的な進歩ではなくかなりの革新と言っていい。昨年の惨敗で明白となった弱点を見直し、そこに手を加えるのではなく、新たなアプローチで今年の戦いに挑むことへの決意そのものに他ならない。一方、3.7リッター、V8のNAエンジンからコンパクトなターボエンジンへの変更については、ル・マンだけに限らず、WECというシリーズ戦で、特色をもつ各サーキットを戦うことを見据えたものととらえていいだろう。なんでもターボエンジンのメリットは、レース中の気温の変化やサーキット毎の特性にアジャストさせやすいこと。イギリスを皮切りに、ベルギー、フランス、ドイツを経てアメリカ大陸へ渡り、秋にはアジアへと遠征。最終的に11月のバーレーンまで世界を転戦する過酷な条件下で、より最適なエンジンとしての選択と考えられる。

新車両と新パワートレインでの戦いを迎えるチームには、今季から小林可夢偉がレギュラー参戦。ひと足先にWECデビューを果たしている中嶋一貴とは異なるコンビネーションでの出走だが、F1GP出身の日本人ドライバーがそれぞれの車両をドライブすることは、日本のモータースポーツファンにとって大きな楽しみにもなる。

 

アウディ、ハイノーズを採用、空力コンセプトを一新

ル・マンで多くの優勝をさらってきたアウディ。2010年から5連覇を達成し、アウディ王国を作り上げたが、昨年はついにポルシェの襲撃に遭い、6連覇達成の夢を阻止されてしまった。アウディはハイブリッドシステムを導入した2012年以来、ディーゼルエンジンを採用。そのパワーユニットは4リッターのV6直噴ターボエンジンであり、電動フライホイールとの組み合わせを継続していた。だが、エネルギーの放出量を4MJから6MJへと変更したことで、ついにリチウムイオンバッテリーへと移行。併せて大幅な空力コンセプトの変更に取り組んだ。結果、「16年型アウディ R18」は、フロント周りのデザインが大きく変わり、見た目からして新たなアイデア投入がはっきり伝わってくる。ハイノーズ化され、またスリムにもなった。これにより、ドライバーが座るコクピットについての見直しも行なうこととなり、着座位置が後方へとスライドされた。同時にマウントするエンジンそのもののサイズも見直され、新たな設計が施されることになり、コンパクトサイズへと生まれ変わった。

開幕戦のイギリスではトップでチェッカーを受けたが、その後、レギュレーション違反が問われ、残念ながら優勝は取り消されるという波乱のシーズン幕開けとなったが、その後は着実にステップアップを見せており、第2戦スパ・フランコルシャンでは8号車が優勝を果たすことに成功。ル・マンでのタイトル奪還を目指し、いい流れを構築しているといえるだろう。

 

ポルシェ、正常進化による体制強化で連覇へ脇固め

ル・マン復活2年目にして、昨シーズンの覇者となったポルシェ。白地ベースのカラーリングから黒地へと一新したことが、一番の変化と言ってもいいほど、ディフェンディングチャンピオンとして、着実な進歩を果たしているようだ。ライバルたちがパワーユニットやシステム面での変更を加える中、ポルシェは車両のコンセプトをキープ。より速く、より強い「ポルシェ919ハイブリッド」でル・マンの戦いに挑むこととなる。だが、キープという言葉は、当然のことながら「何もしない」わけではなく、今年の戦いにおいて何をすべきか、を熟慮した上で着々と準備を進めているのは当然のこと。関係者の言葉を借りれば、「ゼロから開発をスタートさせている」らしく、去年の戦いで得たライバルとのアドバンテージをさらに広げるべく、進化を続けているということになるだろう。

結果、モノコックは現状キープながら足回りや空力パッケージの見直しを重ねることでよりタフなクルマ作りを実行。ル・マンは耐久レースとはいえ、近年はスプリントレースに負けじと劣らぬ戦いになっているため、ピットでの余分な作業があとあと勝敗を分ける命取りの行為になり兼ねない。それだけに、些細なトラブルさえも事前にシューティングすることで、完成度を高めることが求められる。王者・ポルシェならではのアプローチもあるはずだ。

今年、84回目の大会を迎える伝統のレース。まずは、12・13日の両日に公開車検を実施。夜間セッションでのタイムアタックを含む予選は、15・16日の2日間。市内のパレードで場の空気が一気に盛り上がる17日を経て、土曜日18日の午後3時(現地時間・日本時間は同日午後10時)に号砲を迎える。なお、今年はスタートセレモニーを俳優のブラッド・ピットが担当することがアナウンスされている。王者・ポルシェを軸に、ライバル達の戦略、そしてアプローチに注目だ。

 

(Text&Photos:Motoko SHIMAMURA)








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