WEC第5戦富士、8号車トヨタがポール・トゥ・ウィン達成
10月12日、WEC世界耐久選手権第5戦「富士6時間耐久レース」の決勝レースが静岡・富士スピードウェイにおいて行われ、前日の予選でポールポジションを獲得したNo. 8 トヨタTS040ハイブリッド(A.デビッドソン/S.ブエミ組)が終始安定した速さを披露し、優勝。今シーズン3勝目を挙げている。
台風19号の接近による天候の悪化など影響が懸念された富士スピードウェイだったが、決勝日も薄曇りながら降雨もなく、比較的安定した天候に恵まれた。そんな中、サーキットでは決勝レースを前に朝早くからピットウォークが実施され、熱心なファンが大勢詰めかけることとなった。
午前11時、気温14度、路面温度18度の曇り空の中、27台の車両がダミーグリッドを離れ、フォーメーションラップへ。一方、レーススタートで好走を見せたのが、予選2番手のNo.20 ポルシェ919 ハイブリッド。さらに予選5番手のNo.2 アウディR18 e-tronクワトロがそれをも上回るパフォーマンスで場内を盛り上げた。だがしかし、ポールの8号車がオープニングラップをトップで終えると、レースはそのまま8号車を先頭に周回を重ねていく。
耐久レースの雄としてモータースポーツ史に名を馳せてきたポルシェとしては、ライバルのホームコースで優勝を強く意識していたと思われるが、早くも序盤にしてタイヤに問題が発生。フラットスポットが出来てパンクを招いたことから、予定外のピットインを早々と行うハメに。これによって7号車トヨタが2番手に上がり、レースはトヨタのワン・ツーで序盤を消化する。
今大会を前に、急きょ3ドライバーから2ドライバーへと編成を変更した7号車だったが、予選アタックでも最速タイムをマークしていたデビッドソンの力走が決勝でも大きく活かされた。パートナーを務めたブエミもノーミスで応え、着実にレースを進めて行く。レース中は僚友・7号車をドライブする中嶋一貴が負けじとハイペースで追随していたが、結果的に総合力で上回った8号車に分があったようだ。
トヨタがワン・ツーの座を確実に地固めしていくのとは対照に、ポルシェの2台は多かれ少なかれトラブルが重なり、本来のパフォーマンスを発揮するのが難しかったといえる。冒頭の20号車のパンクに始まり、14号車はレース中盤を過ぎてからパワートレインの問題が発生。時折大きくペースダウンするアクシデントに見舞われた。
レースは後半戦に入り、確かに7号車は中嶋のドライブでトップ8号車との差をじわりじわりと詰めてはいた。仮に、最後のルーティンワークを最小時間に留めていたら、つまり、ガソリン補給だけ行い、中嶋が引き続きスティントを担当していたら…。その後の展開に変化があったのではないかと推測もできる。「戦略としては必ずしもなかったわけではない」と、レース後に中嶋も語っていたが、7号車としては第2戦スパ以来、遠ざかっていた表彰台を確実に手にするため、ひいては、8、7号車によるワン・ツーフィニッシュを実現させるべく、タイヤ交換、そしてドライバー交代も実施する安全策を採ったといえる。
かくして富士6時間の勝利の美酒は8号車トヨタが味わうこととなり、7号車は2位を死守。トヨタがホームコースで3連覇を果たしている、また、3位には早くに痛手を負いながらも意地を見せた20号車ポルシェが続き、レースは幕を下ろすことになった。
・決勝結果 総合トップ6および各クラストップ
1.No. 8 トヨタTS040ハイブリッド(デビッドソン/ブエミ組)6:00’39.367 236Laps
2.No. 7 トヨタTS040ハイブリッド(ヴルツ/サラザン/中嶋組)+25.627
3.No.20 ポルシェ919 ハイブリッド(ベルンハルド/ウェバー/ハータレイ組)+1Lap
4.No.14 ポルシェ919 ハイブリッド(デュマ/ジャニ/リーブ組)+2Laps
5.No. 1 アウディR18 e-tronクワトロ(ディ・グラッシ/デュバル/クリステンセン組)+2Laps
6.No. 2 アウディR18 e-tronクワトロ(ファスラー/ロッテラー/トレルイエ組)+3Laps
・LMP2
No.26 リジェJS P2ニッサン(ルシノフ/プラ/キャナル組)219Laps
・LMGTE Pro
No.51 フェラーリF458イタリア(ブルーニ/バイランダー組)208Laps
・LMGTE Am
No.95 アストン・マーチン・バンテージV8(ポウルセン/ハイネマイヤー・ハンソン/ティーム組) 207Laps

総合2位は7号車トヨタ。最終スティントをサラザン(写真左)が担当、その前にドライブした中嶋(写真中央)は「決勝で次第に調子が上がり、トップ8号車と遜色のないレースができたので、僕としてはハッピーな結果」、また、ヴルツ(写真右)は「トヨタのホームコースで勝利しなければならないというプレッシャーを感じていた。結果として8号車が勝ててチームとしてうれしい」とコメント。
記事・写真:島村元子/ TEXT&PHOTO : Motoko SHIMAMURA