第5戦鈴鹿、MOTUL AUTECH Zが逆転勝利を果たす!
8月24日、三重・鈴鹿サーキットで開催されたSUPER GT第5戦。酷暑のなかで幕を開けた300kmの戦いは、セーフティカーやFCYなど荒れた展開となったが、予選2位からスタートを切ったNo.23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)がチーム総力を活かしてシーズン初優勝を遂げている。
今シーズンから1戦のみの戦いとなった鈴鹿。また、昨シーズンは同時期に予定されていた1戦が台風接近のため12月に延期されており、鈴鹿は2年ぶりとなる酷暑の戦いを迎えることとなった。
気温35度、路面温度51度のコンディションで幕を開けた決戦。今シーズンはGR Supra勢の快走が続いていたが、この鈴鹿でライバルメーカーが逆襲を果たし、No.16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮)がポールポジションからスタートを切った。一方、日産勢も負けじと奮闘。全車4台が予選2番手から5番手までを独占し、復活の狼煙を上げたと言える。
スムーズなオープニングラップを終えた全15台だったが、快調に逃げるトップ16号車を追う形で後続が激しい鍔迫り合いを見せる。そんななか、予選4番手だったNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平)が130Rでアウト側に大きくコースアウト。一気に最後尾へとポジションを落としてしまった。さらに、4周目にはNo.17 Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/小出峻)との一騎打ちの末に130Rからシケインにかけて横並びとなり、2台が接触。17号車は勢い余り、コースアウトしてそのままシケインイン側のタイヤバリアへと突っ込んでしまった。結果、セーフティカーが導入され、また接触したもう1台の24号車には、のちにドライブペナルティが課された。24号車のステアリングを握っていた松田にとっては、今大会で参戦200戦という記念すべき一戦だったたけに、なんとも悔しい結果を招くことになったといえる。
17号車の車両回収が終わり、いよいよ9周終了時点でレースが再開。SCランによって前後のギャップが詰まったことを味方にし、5番手へとポジションアップを果たしたのは、No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)。逆にNo.64 Modulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき)がひとつポジションを下げた。また、2位以下を引き離す快走を見せていた16号車も、2位との差が消滅。これから激しいトップ争いになるかと思われた矢先、ピットインが可能となった18周終了時点でトップ2台がピットへと滑り込む。またこれに続けとばかり、No. 12 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)、64号車、No.38 KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)、さらにNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)、そして今回は13番手スタートのポイントランキングトップのNo.1 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)の5台が続き、GT500車両の半数近くに当たる合計7台がピット作業に取り掛かった。
このピット作業で驚異的な早さを見せたのが、23号車。トップの16号車よりも先にドライバー交代、給油、タイヤ交換を済ませてトップでコース復帰を果たす。さらに、翌周にピットに向かった予選3番手のNo. 3 Niterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞)もスピーディに作業を終えて、16号車より前での復帰に成功してみせた。
完璧ともいえるピット作業により、実質トップに立った23号車と3号車のNISMO勢。だが今度は20周終わりでピットインしたNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)が、なんと23号車の前でピットアウト。その直後に23号車が先行したものの、3号車の前でコース周回を始め、事実上の2位へと躍り出ることになった。
レースは折り返しの26周を過ぎてなお2台がピットインを見送る。すると、29周目にそのうちの1台であるNo.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)の右リヤタイヤがバースト。幸い、最小限のロスタイムでピットに戻り、コース復帰を果たす。また、残る1台となったNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)は32周終了までピットインを引っ張り、ドライバー交代を完了。39号車はこの戦略を武器に、レース終盤になると見事な猛追を披露することになる。
レース後半、名実ともにトップとなった23号車を追うのは14号車。1秒前後の差でプレッシャーがかかる攻防戦を続けた2台は、3位以下を引き離していく。一方、3位争いも3号車と16号車による僅差の戦いとなったが、バトルに持ち込むまでには至らなかった。一方、その後方では、12号車、38号車、そして一番フレッシュコンディションのタイヤで怒涛の追い上げを見せる39号車らによる緊迫のポジション争いが繰り広げられる。なかでも39号車は前方のライバルを蹴散らすかのような勢いで次々とポジションアップ。レースは残り4周の時点で1台の車両がタイヤをバーストさせたことを受け、FCY(フルコースイエロー)が導入され、一旦攻防戦が”沈着”したが、再開時に38号車が抜け出し、これに39号車が続き、逆に12号車は、大終盤にも64号車に逆転を許して8番手までポジションを落とすことになった。
2位に6秒近い大差を着けてチェッカーを受けた23号車。車両としては2023年開幕戦以来の勝利であり、また、ステアリングを握る千代にとっては2023年第4戦富士以来、そして高星としては昨年第2戦富士以来となる勝利に破顔している。今回の23号車の勝利により、昨年第5戦以来続いていたSupraの連勝を「8」で止めてみせた。
GT300クラスは、新規チームの健闘が光る戦いとなった。まず、クラスポールのNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)が順調な滑り出しを見せ、これに予選2位、3位のNo. 7 CARGUY Ferrari 296 GT3(ザック・オサリバン/小林利徠斗)とNo. 5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(塩津佑介/木村偉織)が続いたが、4周目に導入されたSCのリスタート後は、61号車と7号車による僅差の戦いが続いた。一方、この2台に違いが出たのは、ピットインのタイミング。7号車はミニマムに近いタイミングでドライバー交代を行なうが、61号車は23周を終えてピットイン。結果、ピットを終えた車両のなかでトップに立ったのは、予選4番手のNo.60 Syntium LMcorsa LC500 GT(吉本大樹/河野駿佑)となり、以下、7号車、5号車と続き、61号車は前を走るNo. 6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン)をかわして、4番手から再び追い上げを開始した。
レースは折り返し以降、2度に渡ってFCY導入が行なわれたが、これを機にポジションにも動きが見られるように。まず、1回目のFCY明けとなる35周目、7号車がそれまで巧みに封じ込められてきた60号車の攻略を果たし、クラストップを奪取。以後、独走で周回を重ねることになった。逆に60号車は後続からの猛プッシュに遭い、苦戦。しかし、5号車と61号車が攻防戦を続けていたことで2番手キープを果たした。一方の5号車と61号車は、2回目のFCY明けに5号車が失速。この隙をついて61号車が3番手に浮上した。
レースはそのままチェッカーを迎え、独走状態だった7号車は、2位60号車に対して15秒近い差をつけうれしい初優勝を達成。60号車が2番手でチェッカーを受け、ポールスタートの61号車は3番手で戦いを終えた。なお、レース後の車検において、60号車に最低重量違反が判明。結果、不合格となってレース失格に。これを受け、61号車が2位、そして5号車が3位に繰り上がり、両チームも今シーズン初表彰台の結果を手にしている。
タフな一戦となった鈴鹿大会。続く第6戦は舞台と仙台のスポーツランドSUGOへと移す。昨年の大会は、雨で予選ができず、また決勝日も雨に翻弄された戦いだっただけに、今年はしっかりと秋晴れの下での展開に期待したい。
・第5戦鈴鹿:決勝結果(各クラストップ3)
・GT500
1.No.23 MOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠)1H47’10.646 52周
2.No.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)+5.768
3.No. 3 Niterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞)+16.569
・GT300
1.No. 7 CARGUY Ferrari 296 GT3(ザック・オサリバン/小林利徠斗)1H48’25.177 49周
2.No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)+17.452
3.No. 5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(塩津佑介/木村偉織)+23.254