フライングV:大森ファクトリー製R34 GT-R MスペックNÜR 詳細ページ(27533) - イベント・レースレポート

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フライングV:大森ファクトリー製R34 GT-R MスペックNÜR




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記事提供元:NZ Performance Car
 

Vスペック・パフォーマンスが手がけた「Mスペック NÜr R34」は、まさに矛盾の美学。公道で味わうラグジュアリーと、サーキットで鍛え上げられたメカニズムが融合。仕上げに振りかけられたのは、NISMOカタログからの濃厚なエッセンスだ。
 

荷造りをして、チケットを取り、異国の地へ飛ぶ──。それだけでも胸が高鳴るのに、目的が現地のカーカルチャーを味わうこととくれば、もうテンションはMAXだ。ネットは何でも見せてくれる「全能の目」だなんて言われがちだけど、実際には、驚くほど多くのクルマたちがネットの網の目をすり抜けているのが現実だ。先日訪れたメルボルンの旅では、「何か面白いクルマはないか?」と、片っ端からガレージをチェック。その成果は、これから数号にわたって紹介していく予定だ。そんな中で見つけた一台が、ビクトリア州ブラックバーンにあるVスペック・パフォーマンスにひっそりと眠っていたMスペック NürのR34 GT-Rだ。
 

伝説のR34の中でも、超ラグジュアリーな限定モデルとして登場したのが「Mスペック Nür」。その名の通り、GT-Rの聖地であるニュルブルクリンクへのオマージュとして誕生した1台だ。ボディに誇らしげに装着されたNür専用バッジは、ただの飾りじゃない。実はR34の生産期間中に行われた重要なバトンタッチ──長年GT-Rを率いてきた日産の総合責任者・渡邉衡三氏から、後にR35を生み出すことになる水野和敏氏への開発責任移行を象徴している。「Mスペック」の“M”は、そんな水野氏の手がけた“味付け”を意味すると言われており、このモデルは「マチュア(成熟)スペック」とも称される。
 

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インテリアには、GT-Rロゴ入りのヒーター付きレザーシートを採用。さらに、微細な路面の凹凸までも吸収するリップルコントロールサスペンションを装備。水野氏いわく、このクルマはサーキットではなく、公道でGT-Rを楽しむ大人の週末グランドツアラー。まさにジェントルマン仕様のGT-Rだった。─だが、そんな水野流の哲学に真っ向から矛盾するのが、今回紹介するVスペック・パフォーマンスの1台というわけだ。
 

Mスペック Nürは、今でもそう簡単に見つかるクルマじゃない。けれど、GT-Rハンターとして名を馳せるVスペックの面々にとっては、過去に何台か手がけたこともある「獲物」。オーストラリア市場に、希少な個体を次々と送り込んでいる彼らだが、今回のビルドで興奮したポイントは、Nürのバッジでも、レザーシートでもなかった。──そう、この個体が「NISMO大森ファクトリー」に持ち込まれていたこと。そこに彼らのクルマ好き魂が一気に火をつけられたわけだ。
 

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NISMOの大森ファクトリーは、いわばお金持ちの遊び場。レースで鍛えられた耐久性を誇る製品は、長年の開発ノウハウの結晶だ。ハンドビルドのエンジンから、R35用の大径ブレンボをR32・R33・R34 GT-Rに組み込むまで、ここなら夢のメニューが現実になる。
 

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潤沢な予算を持つオーナーたちが、自らのハイエンドスカイラインを預ける場所──それがNISMO大森ファクトリーだ。手組みエンジン、R35流用ブレーキ、ドライカーボンパーツ……まさに夢のカタログから現実へ。だが、この個体が授かったのは、そんな表メニューを超えた存在。大森の闇すら凌ぐ漆黒のチューン──それが、NISMO R1仕様のRB26DETTだ。「R1」は、名機N1仕様をベースにNISMOが開発したアップグレードエンジン。その名が示す通り、本気で走りたいオーナーのための答えとして生まれた、まさにNISMO流の「ガチ仕様」だ。
 

ベースとなるのは、もちろん24時間ニュル耐久で鍛え上げられたN1ブロックをNISMOが補強した特別仕様。鍛造のN1クランク&ピストンを中心に、NISMOのアップグレードパーツを惜しげもなく投入。その内容たるや、太っ腹な財布でも音を上げるレベルだ。だが、真の見せ場はヘッド周りにある。大森ファクトリーでポート研磨されたヘッドに、オーバーサイズのバルブトレイン、さらにNISMO社内設計による専用カムシャフトが奢られている。そして極めつけは──再設計されたN1ベースのGarrett製ツインターボ。これこそが、R1の真髄と言えるだろう。なお、ひとつだけ押さえておきたいのは、NISMOエンジン=ハイパワー番長というわけではないこと。数値上のピークパワーよりも、バランスと耐久性を徹底的に追求する。それこそが、レースで培ったNISMOスピリットなのだ。
 

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その方向性に合わせて、N1タービンのセラミック製インペラーは金属製に換装され、高容量ボールベアリングや強化アクチュエーターも装備された。NISMOはこのR1パッケージに絶対の自信を持っており、2000年のNISMOフェスティバルでは、プロトタイプR1を「チューナーバトル」に投入。名だたるアフターマーケットの強豪たちを相手に、なんとパーフェクトウィンを達成した。しかも皮肉なことに、その勝因のひとつが他社のマシンが軒並みトラブルを起こす中で、唯一壊れなかったことだったのだから、信頼性という名の勲章は間違いなく本物だ。
 

ただでさえ、レース直系のエンジンを超ラグジュアリーモデルに載せるという時点で、かなりの矛盾なのだが──オーストラリアに上陸した後、VスペックのクルーはそのMスペック Nürのフロント周りを、まるごとNISMO Z-tune製のドライカーボンパネルに換装してしまった。NISMOのエンジニアによれば、このZ-tuneフロントは純正比2.2倍のダウンフォースを発生し、スタイルも一気にタイムアタック仕様に様変わり。ルーバー付きのワイドフェンダーは、エンジンルームやホイールアーチ内の空気を効率よく排出し、冷却とダウンフォースを両立している。
 

ドライカーボンのフロントはあまりにもリアルで、見た人は「ラップ(ラッピング)じゃないの?」と首をかしげるほど。本物かどうか、思わずカーボンを触って確かめる人もいるくらいだ。
 

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純正パーツの半分の重量でありながら、剛性は2.7倍というスペックを誇るドライカーボン製フロント。まさに「ヤバい」パーツだが、そこにさらに手を加えたのが、SL Customsのスティーブ・リング。ボディ全体を覆うミレニアムジェイドにはあえて合わせず、表面にはUV耐性のあるマットクリアを何層にも重ねるというこだわりのフィニッシュで仕上げられている。その結果──見た人は「ラッピング?」と困惑し、手で触れて確認してしまうというわけだ。
 

もちろん、面白いのはフロントだけじゃない。リアまわりにもZ-tuneのエッセンスがしっかり注ぎ込まれている。Z-tune製のオーバーフェンダーが、FRP製のZ-tuneサイドスカートと純正リアバンパーをつなぎ、バンパー自体もスカートに合わせて成形加工。さらに、そこにカスタムディフューザーまで組み込まれているという徹底ぶり。トランクには、NISMOカーボン製ウイングブレードとFD製のスーパー・スポーツ・カーボンウイングステーのコンビネーションが鎮座。見た目も性能も、一切の妥協なしだ。
 

言うまでもなく、純正サスペンションは即お役御免。すでにお察しのとおり、このMスペック Nürは普通の個体とはひと味もふた味も違う。代わりに奢られたのはR-Tune製車高調だ。足元を固めるのは、RAYS製の19×9.5インチ NISMO LMGT4に、265/30のヨコハマADVAN Neova AD08Rをセット。その内側には、フロント6ポット/リア4ポットのブレーキシステムを隠し持つ。しかもキャリパーは、贅沢にもR35 GT-R用のブレンボを移植。まさに走れる大人仕様、ここに極まれり。
 

このVスペック製「走る広告塔」が初お披露目されたのは、2016年にシドニー・モータースポーツパークで開催されたGT-Rフェスティバル。以来、地元のさまざまなイベントでVスペックの実力を象徴する存在として注目を集め続けている。R34の歴代トップグレードから美味しいところだけをつまみ食いし、そこにNISMOのスパイスをたっぷり投入。一見するとちぐはぐな組み合わせのようでいて、全体を通して見れば「完璧な矛盾の調和」として成立しているのだから面白い。
 

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V-Spec Performance
所在地:メルボルン(オーストラリア)
 

Special Thanks
V-Spec Performance の Allen Cheng、Simon Ong、Rey Jakov
SL Customs の Steve Ling
 

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ENGINE
NISMO大森ファクトリー製 RB26DETT(R1仕様)、2600cc 直6
 
BLOCK
NISMO RB26 N1ブロック
NISMO N1ピストン/N1リング/N1ベアリング
NISMOオイルポンプ
NISMOバッフルドサンプ
 
HEAD
NISMO 0.9mmメタルヘッドガスケット
 
INTAKE
NISMOドライカーボンインテークパイピング
NISMO FRPインテークダクト
 
EXHAUST
NISMO N1チタンエキゾースト
NISMO N1エキゾーストマニホールド
 
TURBO
NISMO R1ターボキット
 
IGNITION
NISMOレーシングタイプ #8プラグ
 
ECU
NISMO R1 ECU
 
COOLING
NISMOドライカーボンICパイピング
NISMO R34 GT-Rインタークーラー
NISMOオイルクーラー
ARCラジエーター
 
EXTRA
NISMOビレットオイルキャップ
NISMOレーシングラジエーターキャップ
NISMOカーボンクーリングパネル
NISMOオイルセパレーターキット
 

GEARBOX
6速
 
CLUTCH
NISMOスーパーカッパーミックス・コンペティション
 

STRUTS
NISMO R-Tune 車高調
 
BRAKES
(フロント)R35 GT-R用ブレンボ6ポットキャリパー/DIXCELローター
(リア)R35 GT-R用ブレンボ4ポットキャリパー/DIXCELローター
 
EXTRA
NISMOチタンフロントストラットブレース
 

WHEELS
RAYS製 NISMO LMGT4 19×9.5インチ(+12)
 
TYRES
265/30R19 ヨコハマ アドバン ネオバ AD08R
 

PAINT
SL Customs スティーブによるUV耐性マットクリア仕上げのドライカーボンフロント
純正ミレニアムジェイド塗装
 
ENHANCEMENTS
NISMOスモークフロントウィンカー/サイドウィンカー
NISMO LEDテールランプ
NISMOカーボンウイングブレード
NISMO MFDスーパー・スポーツカーボンウイングステー
NISMO Z-Tune リアフェンダーフレア/FRPサイドスカート/リアスカート
NISMO Z-Tune ドライカーボンフロントバンパー/フロントフェンダー
NISMO R-Tune カーボンボンネット
NISMO Z-Tune カーボンフロントディフューザー
 

SEATS
純正 Mスペック レザーシート
 
STEERING WHEEL
純正 Mスペック
 
INSTRUMENTATION
NISMO MFD クラスター

EXTRA
NISMOチタンGTシフトノブ
レザードアカード
 

出典:NZ Performance Car issue No.248
紙面で読みたい方は、ぜひカバーをチェックしてみてほしい。
 

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